「子どもが熱を出したら?」「ワンオペの工夫は?」子育てクリエイターのお悩み持ち寄り座談会

子育てしながらのクリエイター活動、なかなか大変じゃないですか……!?
〆切があり、代わりが立てられないクリエイターの仕事と、責任を持ってお世話しなければならない存在がいる、子育て。うまくやろう、賢くやろうとしても、気付けばいつも体力と気合に頼っている気がします。
今回は、異なるジャンルで活動をしている子育てクリエイター3人が集まり、それぞれの悩みや工夫について話し合いました。
よその家庭では、親とクリエイターをどのように両立しているのでしょうか。事前に設定した5つのトークテーマに沿って話していきます。
座談会の参加者
焼まゆる(X:@yaki_mayu YouTube:焼まゆるのお絵かきちゃんねる)
プロイラストレーター兼VTuber(チャンネル登録者数31.3万人)。著書に『絵が上手くなる5つの習慣』。子どもの年齢は2歳、生後4か月から保育園に預けている。
斎藤充博(X:@3216)
イラストレーター/漫画家、ライター、編集者。子どもの年齢は3歳。小規模保育園を経て、この4月からは認定こども園に預けている。この記事のイラストも担当。
ヒガキユウカ(X:@hi_ko1208)
フリーライター。主な専門はVTuberやボカロPへのインタビュー、ライブレポなど。子どもの年齢は1歳、この4月から小規模保育園に預けている。
テーマ1「子どもが生まれて、仕事に使える時間は減った?」

斎藤
ちょうど1歳、2歳、3歳と、それぞれの子どもの年齢がきれいにばらけましたね。まずはみなさんの出産前後の仕事状況をうかがっていきたいと思います。
ヒガキ
私は臨月から仕事をセーブして、付き合いの濃いクライアントさんとの仕事や、どうしてもやりたい仕事のみ、事情を了承いただいた上で引き受けていました。
焼まゆる
出産が近づいたら、受注仕事の方は完全にストップしていましたね。自分の場合はYouTubeというセルフコンテンツがあったので、そちらは産む直前までやっていました。
斎藤
僕は自分が産むわけでもないのに、妻の臨月から仕事していませんでした……。
焼まゆる
えーっ! 素敵な旦那さんですね。
斎藤
いやいや、妻の出産にかこつけてサボってたんですよ。さらに、産後3か月は育休を取りました。といってもフリーランスなので手当があるわけでもなく、ただクライアントに「育休を取ります」と宣言して、実際に稼働をしないというだけです。
それで4か月目から復帰したんですが、すぐには仕事がこなかったんです。依頼が来るようになるまで少しラグがあって、その間は「自分はもう業界から干されたんじゃないか」と不安でたまらなかったです。お2人の復帰はいかがでしたか?
焼まゆる
本格的な復帰と言えるのは、生後4か月で保育園に入れたときですね。でもその後の仕事量は、産前と比べると比較にもならないです。もともと私は仕事が大好きな人間で、当時のスケジュールは休みが1か月に1日あるかないかぐらい。それに比べれば、保育園に預けている間の稼働時間なんて本当に微々たるものですね。
ヒガキ
私も、1歳児クラスに入園したこの4月が本格的な復帰でした。納品量でいうともともとの6割ほど、売上でいうと7~8割くらいだと思います。リソースが限られる分、自分が仕事しやすい案件に絞った結果、生産性が少し上がりました。斎藤さんは家事育児をかなり担っているパパだと思うんですが、稼働量は産前と比べてどうですか?
斎藤
フルで復帰できたのは子どもを保育園に預けてからで、稼働量は7~8割くらい。僕も少し採算が上がって、収入は産前より若干良いくらいです。理由はちゃんと分析できていないんですが……。親になったから「キビキビ働こう」なんて思っているんでしょうかね?
テーマ2「子どもの急な発熱、どう備えてる?」
焼まゆる
これ、みなさんにうかがいたかったんです。うちは保育園に入った後、洗礼がひどくて。
斎藤
洗礼?
焼まゆる
入園後の体調不良です。いつ風邪引くかわからないし、引いたら自分にも移るので、スケジュールの50%くらいしか埋められなくて。最近ようやく落ち着いてきたんですけど、1歳半になるまで、鼻吸器を使わなかった日が数えるほどしかありませんでした。
斎藤
ああ、なるほど。うちも洗礼はありましたね。1歳の4月に小規模保育園に入ったんですが、最初の3か月くらいはずっと風邪をひいて、親にも移って、を繰り返していました。妻が会社員なので、僕が小児科に連れて行ったり看病したりすることが多かったです。

焼まゆる
フリーランスの方が融通利くし、そうなりますよね。となると、お子さんを見ながらお仕事とか?
斎藤
そうしていたはずなんですが、もう当時の記憶がおぼろげで……。子どもは熱があると静かになるタイプなので、寝かせながら横で仕事していた気がしますね。
ヒガキ
うちはお二方に比べると幸い短めで、2か月ぐらいでほぼ休まなくなっていました。逆に私が貧弱で、子どもがかかったわけでもない、当時保育園で流行っていたわけでもない溶連菌に、家族でなぜか私だけがかかったりしていたんです。親側も新生活に慣れている途中なわけで、体調を崩しやすくなっていたのかもしれません。
斎藤
ちなみに昨日の夜も子どもが盛大に熱を出しまして。
焼まゆる
あらま!
斎藤
今、妻が面倒を見てくれています。
焼まゆる
私も打ち合わせがあるときは、夫に「何かあったとき子ども見られる?」「ここ念のため空けといてほしい」と事前に言っておくようにしています。そういう調整を都度しながら、結局はそのとき対応できる人が対応する感じになりますよね。
ヒガキ
そうですね。うちは会社員の夫が週に1~2日は在宅にできるので、私に対面取材が入って外出しなきゃいけないときなど、あらかじめ在宅にしてもらっています。親も隣県なので、前もって言っておけば来られる距離ではあるんですが、たとえば「今日の保育園のお迎え行ってほしい!」とかは難しくて。
焼まゆる
うちの実家もヒガキさんと同じくらいの距離感なので、「みんな熱で倒れちゃってどうしようもないんです」みたいなときじゃないと頼りづらいですね。やっぱり家の中でうまく回していくしかないのかな。
斎藤
うちはシンプルに遠方なので、一切頼れないんですよね。
ヒガキ
家事代行とかベビーシッターとか、そういう外部のサービスは利用されてます?
斎藤
いや……なんかそういうの利用するのも、意外と難しくないですか? 調べたことはあるんですけど、事前登録や面談が必要だったりして、「まあ僕ががんばればどうにかなるからいいか」と思っちゃうんですよね。
ヒガキ
わかります! あと私、知らない人を家に上げることにめちゃくちゃ気を使うタイプで。「そのための準備をしなきゃ」と思っちゃうんですよ。
斎藤
家事代行を呼ぶための家事が発生してしまう……。
ヒガキ
病児保育もあるにはあるんですが、隣駅だったりして、車がないと微妙に行きづらくて。行った先で別の病気を拾ってくる可能性もありますしね。
焼まゆる
これから子どもを産む人は、意外と病児保育や外部サービスを頼るのにもハードルがあるということを、知っておいた方が良いかもしれないですね。特に家庭内にフリーランスの人間がいると、いざとなったときもがんばればどうにかできちゃうから、余計に重い腰が上がらない……。
ヒガキ
これは自分の反省点のひとつなんですけど、本当に必要になる前にあらかじめこうしたサービスを試しておけばよかったと思いますね。お気に入りのシッターさんを見つけておくとか、サービス利用の流れだけでも経験しておけば、本当に大変になったときにすんなり頼めるかなと。
焼まゆる
確かに。つわりのときや臨月のときに頼めば、ふつうに助かりそうですしね。
テーマ3「子どもが夜寝なくて、日中眠くなってしまう……」
斎藤
これは僕の愚痴でもあるんですが、子どもが3歳になるまでなかなか夜寝てくれなかったんですよ。僕もずっと眠くて、日中ぼんやりしながら仕事をしている状態で。みなさんのところはどうでしたか?
焼まゆる
うちの子は多分珍しい方だと思うんですが、生後2か月くらいからは8時間ぶっ通しで寝てましたね。ただそれまでが大変で、私、同じマンションの別室を仕事用に借りてるんですけど、産後2か月間はそっちで子どもと寝起きしていたんですよ。うちは夫もフリーランスなので、育休なしで普通に働いていたので。
ヒガキ
適切な表現かわかりませんが、ほぼ別居のような……?
焼まゆる
そんな感じです。それでご飯やお風呂のときだけ居住用の部屋に戻っていたんですが、もっと夫を頼ったりミルクを頼ったりすればよかったなと思います。でも2か月だけでも本当にキツかったので、3年間はすごい。
ヒガキ
うちは生後3~4か月頃からは比較的安定して寝てくれました。夜泣きはありましたが、ある程度タイミングが決まっていたので対応しやすかったというか。今も鼻づまりで睡眠が浅いときはよく夜泣きするんですけど、そういう時期は私も昼寝して補っていますね。

焼まゆる
お昼休みと決めている時間内ならいいですよね。
ヒガキ
そうですそうです。会社でも、福利厚生でシエスタを導入しているところがあるじゃないですか。「あれを個人でやってるんだ!」という気持ちで……(笑)。斎藤さんの夜寝られない問題は、どうやって対策していたんですか?
斎藤
妻と交代で子どもと寝るようにしていましたね。1日おきに、一人で寝られる夜が来る感じです。でも1日おきに子どもの夜泣きに付き合っていたら、一人で寝られる方の日もなぜか眠れなくなってしまって。最終的に病院に行って睡眠薬を処方してもらいました。子どもも3歳をすぎたら泣かなくなってきたので、徐々に解決してきたという段階です。
焼まゆる
よかった……!
斎藤
「睡眠薬もらいに行ったら?」というアイデアは、実は子育てをしている女性に教えてもらったんです。その人も産後で睡眠のリズムが崩れていたころ、病院に行って処方してもらったらしくて。
ヒガキ
実際に自分がやる側になって痛感してるんですけど、子育てって大人一人や二人でやるものじゃないんですよね……。それでもやるしかないし、仕事もあるから、もう頼れるものは全部頼った方が良いなとつくづく思います。
テーマ4「リフレッシュの時間が取れず、子どもにイライラしてしまう」
斎藤
これ、事前に焼まゆるさんに聞いたら、そういうストレスは一切ないとおっしゃっていて。
焼まゆる
そうですね。私はもともと子どもが大好きで、自分の子どもにもまったくイライラしないです。悪いことをしたら、「それは危ないよ」という話はしますが、怒ったことは一回もありません。

斎藤
え~! 離乳食ぶん投げたり、口に入れたものを出して遊んだりされても?
焼まゆる
子どもってそういうものだと思っているので、極力こっちが困らない状況をつくる方にシフトしてます。体も机も覆えるようなエプロンを使うとか。食べる量が少なくて心配とか、保育園に遅刻しそうで困るとか、そういうことはありますけど、イライラとはちょっと違うかな。
斎藤
見習いたいです。僕、子どもが産まれたら、何されてもニコニコしてられる人間だと思っていたんです。割とおおらかな性格だし。でも子育てが始まってみたら普通に怒っている自分がいて……。子どもが出かけたがるからしぶしぶ散歩の準備を始めたのに、その準備を邪魔してきたりするもんだから、「そっちが言ったんじゃん」ってイライラしちゃう。
ヒガキ
うちは年齢的にこれからが大変なのかもしれないですが、今のところは未知との遭遇みたいな楽しみ方をしていますね。ものすごい食べ散らかし方をしたときなんかは、「1歳児ってすげー!」「撮れ高だ!」と思いながら写真撮ったり。
焼まゆる
そこはフリーランス、というか在宅ワークなのもあるのかなと思っていて。通勤がある人に比べると、心に余裕があるじゃないですか。朝家がぐちゃぐちゃの状態で出発することになっても、帰ってきた後にちょっと片づけてから仕事始めればいいやとか。
斎藤
確かに。妻は僕以上にイライラしているんですけど、それは妻の性格というより、通勤のある正社員だからかなと思います。「この時間までに出勤しなきゃいけないから、逆算していくと何分までに着替えさせないといけない、何分までに朝ごはん食べ終わらないといけない」がありますもんね。
ヒガキ
通勤しながらの子育てを経験したことがないので比較はできないんですが、在宅フリーランスでよかったなと感じることは多いですね。でも恵まれているなと思いつつ、私は一人の時間もないと耐えられないタイプで、土日は夫とワンオペを交代してリフレッシュ日を確保しています。一人で外出したり、部屋にこもって思いっきり仕事したり。
焼まゆる
私の場合は子育てが好きすぎて、夫が「子どもと一緒に出掛けてくるよ」とか言ったら、ついて行きたくなっちゃいます。少しでも子どもと一緒にいたいと思っちゃって。
ヒガキ
すごい……! 焼まゆるさん、もともと仕事が大好きだったとおっしゃっていましたが、子育てが始まってかなり仕事が減ったのは大丈夫でしたか?
焼まゆる
ああ、そうですね……仕事ができないことが唯一のストレスかも。こんなに働けなくなるなんて思ってなかったし、保育園入ってからもこんなに休むことになるって思ってなくて、自分の中で葛藤がありました。
でも諦めるしかないから諦めた感じですかね。仕事ができないストレスは、仕事をしないと解決しない。でも仕事はできない、となったら、もうしょうがないなって。今は子どもが保育園に行っている間が、自分のための時間って感覚ですね。
斎藤
うちも土日はかなり厳密にワンオペを交代してそれぞれが一人の時間を取ってるんですけど、なんかそれでも足りないと思ってしまう……。
多分僕、自分はもっと子ども大好きなタイプで、子どもと遊んだり仕事をしたりしていれば、ある程度満たされるだろうと思い込んでいたんですよね。でもやってみたら全然そうじゃなくて。
焼まゆる
理想と現実にはギャップがあって、それを受け入れる時間も必要なのかなと思いますね。私は受け入れちゃいました。唯一心苦しいのは、活動を楽しみにしてくれているファンの方々をお待たせしちゃってることです。
テーマ5「子育てを乗り切るために頼っているものってある?」
斎藤
最後のトピックです。サービスに頼ってみたり、パートナーとの協力体制を構築したり、自分の負荷を下げる工夫ってしていますか?
焼まゆる
私は料理がそんなに好きじゃないので、宅食サービスに助けられています。特に子どもが離乳食だったころは、大人のご飯はそれで楽をしてましたね。
あとは保育園に預けていると、保育園がすごくしっかりした食事を用意してくれるじゃないですか。だから家のご飯はそんなにがんばりすぎなくていいかなと思っています。
ヒガキ
自分が苦手なことや嫌なことって、人やサービスを頼ったときの効果が大きいですよね。うちは私が朝苦手なので、夫が出社の前に子どもの朝ごはんを用意してくれています。

帰りが夜遅いのでその他の世話にはほとんど関われないんですけど、私が朝起きるしんどさの方が大きすぎるので、気持ち的にはこれでしっかりバランス取れているんです。
もし「仕事が忙しくてあんまり育児にコミットできないな……」と悩む人がいたら、無理してパートナーと同じようにがんばろうとするのではなく、そういうクリティカルな所をサポートするのも良いかもしれません。
斎藤
僕の場合はAmazonPrimeに助けられました。家の中で日用品を全部注文できるのって、子育てしているとありがたさが身に沁みます。消耗品を定期的に自動で注文してくれる「定期おトク便」も本当に楽です。その上、安くなるし言うことなし。
子どもが小さいころの子育てって、みんな悩むポイントは似ているので、こういう定番のサービスを漏れなくチェックしておくのは重要だと思いますね。
子育てとクリエイターの相性って、悪くないかも
斎藤
最後に、「クリエイターの子育て」について、総括的なコメントをしていきたいと思います。僕はクリエイターをしながら子育てをしていて、良かったなと思う面が多いんですよね。
もちろん家庭の中で、家事や育児の負担が多少偏ることはあると思うんですけど、それを差し引いても子育てそのものは楽しいですし。自分の場合は子育て漫画の案件が来るなど、子育てが仕事にプラスになることもあります。
焼まゆる
今の働き方は、子育てとの相性が良いなとは思ってます。私、自分の子どもを「推し」だと思ってるんですよ。だから世話をするのも推し活のようなものだし、「それを楽しむためならどんどんお金も時間もかけちゃおう!」という気持ちで日々過ごしています。
仕事量が減ってしまう歯がゆさはありますが、子どもが「ママ、ママ」と言ってくれるかけがえのない時間を堪能して、思いっきり推し活ができている現状にはすごく満足しています!
ヒガキ
フリーランスのクリエイターってすごく裁量が大きい働き方で、「今この瞬間だけは子どもの方を優先したい!」と思ったら、その通りにできるのがすごく良いなと思っています。あと子どものいる生活って、日常をいかに維持するかが大事だと思うんですけど、家に一人自由度の高い人間がいるとそこがかなり安定するんですよね。将来への不安はありますけど……!
今回3人で話してみて、子どもの個性や体質などでバラつきはあれど、「家庭での負荷が自分に偏る……」「でもやっぱり通勤がないのは楽!」というのが子育てクリエイターの特徴として共通していると感じました。
また、日々子育てしていると子どもばかり観察しがちですが、自分の得意不得意や気持ちの変化に自覚的であることも大事だと思いました。自分がものすごくエネルギーを消費するタスクや、逆に負担なくできるタスクがわかっていれば、パートナーとの分担もスムーズになりそうです。
構成
ヒガキユウカ(X:@hi_ko1208)
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