こんにちは、GENSEKIマガジン編集部です。
今回はたべものアーティストのもみじ真魚先生を審査員にお迎えして、「わたしのご褒美ごはん」イラストコンテストを開催しました。がんばった日に食べたい「ご褒美ごはん」を340品以上ご応募いただきました。
総評では「自分の長所の見つけ方」も伺いました。食欲が刺激される選考レポート、ぜひ最後までご覧ください!
- 食べ物イラストのいろいろな表現方法
- もみじ真魚先生流「自分の長所の見つけ方」
▼結果発表と受賞者コメントはこちら
もみじ真魚(X:@mamomiji/Instagram)
たべものアーティスト。「光」と「色彩」に特化した飯テロ表現を得意とする。 武蔵野美術大学油絵学科卒、2019年からSNSで毎日イラスト更新をスタート(2024年3月時点で1800点超)。2024年5月には国内で「#美味しくてかわいい展」を開催。香港、米ロサンゼルス、ニューヨークでも個展を展開し、国内外で多数のファンを獲得。代表作に画集「飯テロ!」「甘テロ!」(PARCO出版)、アニメ「ダンジョン飯」フードカラーデザインなど。
インタビューした人
サイトウ
GENSEKIマガジンの運営サポートスタッフ。
【大賞】物語が想像できるシチュエーション。仕掛けがたくさん込められた楽しい作品
おうち純喫茶開店!/松峰
もみじ
大賞は松峰さんの『おうち純喫茶開店!』です。おめでとうございます!
- 一枚絵としての完成度の高さ
- テーマをシチュエーションで表現していて、物語まで想像できる
もみじ
今回、本当にたくさんのご応募をいただき、一覧を見るだけでも「食べ物イラスト」にいろいろな表現方法があるとわかります。
その中で、この作品は「シチュエーション」を使ってテーマを表現してくれました。本来ならお店で食べるようなメニューを、あえて家で作って食べているのがすてきです。女の子の表情からも、おいしそうなことが伝わってきますよね。
サイトウ
「わたしのご褒美ごはん」というテーマにぴったりですね。
もみじ
おいしそうな食べ物を取り巻く環境までしっかりと描くことで、絵のストーリーまで見えてきます。
インテリアや後ろのカーテン、ツールが並べられている様子も描かれていて、とても雰囲気があります。ていねいに背景を描き込むことで、よりシチュエーションに説得力を持たせられていますね。
サイトウ
松峰さんのこれからに向けた、応援コメントをお願いいたします!
もみじ
松峰さんの描く作品をもっと見たい、と思わせられました。すでに独自の世界観を確立されているので、このまま迷いなく、自信を持って進んでいってください!
【佳作】おいしそうさ、楽しさ、多様なオリジナリティで表現された7作品
とある日のぶどう/スー
- 絵をここまで仕上げられる高い集中力
- 細部まで抜かりない精密な描写
もみじ
まず、これだけの絵を描き上げる集中力がすばらしい! ぶどうの一粒一粒まで、非常にしっかり描写されています。
サイトウ
スーさんは複数ご応募くださいましたが、この絵が選ばれたのはなぜでしょうか?
もみじ
発注者の視点で見たときに、「仕事を頼みたい」と思うのはこの作品だからです。描き込みが見せられるし、全体のバランスも一番いいですね。
ただ、僕の好みだけで見るなら、他の作品と迷いました。
もみじ
「いちごソーダ」は、食べ物モチーフとしてはややニッチです。でも、この絵はとにかく、いちごソーダの魅力、冷たさや清涼感などが、よく表現できています。難しい液体表現も、しっかり描けています。スーさんが今後、個性や強みを見せられるのはこのような絵かもしれません。
- 色使いに遊びを入れて、さらに絵の世界を広げよう
もみじ
本当に抜かりない描写で言うことないですが、あえて言うなら、「色味の遊び」があると、もっとおもしろくなりそうです。
全体的にきっちり描けているからこそ、影の色使いまで、全てがきっちりしてしまっています。隣り合うぶどうの色や、奥の房の影色に、周りから反射する色・モチーフと違う色味を取り入れると、より魅力がアップすると思います。例えば、次の『ふわふわはちみつパンケーキ』のような色の世界も参考にしてもらうと、わかりやすいと思います。
ふわふわはちみつパンケーキ/まろね
- 楽しい世界観で、他にないオリジナリティ
- アナログは描けば描くほどうまくなるので、先が楽しみ
もみじ
楽しい世界観です。他にないものを見せてくれた印象で、オリジナリティで選びました。
サイトウ
絵本のようなあたたかい雰囲気ですね。
もみじ
あたたかい黄色がメインの世界観ですが、よく見るとお皿の影などに寒色を加えています。きちんと全体の色味は感じさせつつ、色使いが広げられています。また、アナログで描かれていますので、今後さらに上達していけば、よりいいものを見せてくれそうな期待感があります。
- 基礎を勉強して描写力をアップ!
- このままオリジナリティを持って描き続けて
もみじ
技術面ではもっと引き上げられる将来性を感じます。手前のポットなど、モチーフが浮いたように見える影のつけ方になっている部分がまだあるので、そういった技術を学んでいけばさらにすてきな作品になっていくでしょう。
僕は、絵には独自の目線が大切だと思っています。まろねさんはオリジナリティをすでにお持ちなので、あとはこのまましっかり描き続ければ、数年で一気にプロになる可能性もあると思います。
サイトウ
みんなが見たことあるような工業製品の形はしっかり取るのが大事、とよく聞きます。
もみじ
あえて形を崩す作風もありますが、絵に違和感として残ると鑑賞のノイズになってしまいます。
僕の尊敬する先生は、グラスを正円ではなく斜めに崩して描いても、絵として成立させられます。基礎ができているから、フィクションの形にしても説得力が出せるんです。押さえるところを押さえていれば、いい絵にできます。
なので、この作風と感性は生かしつつ、まず基礎を取り入れてみてください。正直なところ、基礎勉強は面倒なものですが(笑)、ぜひがんばってください。
夏祭り/ツナツ
- 他にないものを描こうとする心意気と、描き上げる集中力
- 食べ物の「楽しい」ところまで表現できている
もみじ
全部茶色の食べ物で攻めていて、すばらしい。「茶色でいくんだ、これがおいしい!」と、一本筋が通っていて、惚れましたね。「他にないものを見せよう」という意識があり、目を引く作品です。
サイトウ
茶色いごはん、おいしいですよね。
もみじ
茶色で攻めつつ、涼しげな青色も使われていて、鮮やかな配色が見やすいですね。イカ焼きの光り方もしっかりこだわって描けています。ツナツさんは、描き続けたらどんどんうまくなるでしょう。
ご飯の「おいしさ」だけでなく、「楽しさ」が描けています。僕がやっているリアルに寄せた画風とは違い、デフォルメの路線で十分に料理の魅力を発信できる方ですね。
サイトウ
キャプションにも「楽しい雰囲気」というキーワードが書かれていました。
もみじ
「おいしそう」だけが食べ物の魅力じゃないですよね。「おいしそう・楽しそう」のどちらかだけでなく、両方のいいバランスがあると思います。このままさらに、イラストらしいフィクションを加えた楽しさを追求していってほしいです。
- 時間をかけた焼きそばを、もっとわかりやすく魅力的に描いてみよう!
もみじ
焼きそばに時間をかけたとキャプションにありましたが、がんばって描いたのに少しわかりにくかったのがもったいない。さりげなく気づいてほしい意図があったかもしれませんが、もっとガツンと「焼きそば」を魅せてもよさそうです。
サイトウ
もっと画面の中での面積を増やしたり、焼きそばだとわかりやすい描写をすればいいのでしょうか?
もみじ
そうですね。他にももっとキャラクターと絡めるなど、いろいろな方法があると思います。
ここまでの絵を描き上げる集中力がほんとうにすばらしく、このまま行ってほしいです。ぜひがんばってください!
マルゲリータ/ねむいのか
- 高い観察力と描写力で描かれた「おいしそうさ」の表現
- オリジナリティとユーモアがある世界観
もみじ
ねむいのかさんも複数応募してくださいました。オムライスの絵と迷いましたが、トータルのバランスと「おいしそうさ」でマルゲリータを選びました。マルゲリータの生地の、割れて焼け焦げている表現などもすばらしいです。
サイトウ
オムライスの作品も、ツヤ感がすごいです。
もみじ
光の描写もいいですね。基礎力をお持ちで、細かいディテールまできちんと描けています。絵的なよさやキャラが食べ物に入っているアイデアなどは、エビチリの絵もおもしろいです。
描き切る力と見る力がありつつ、そこにキャラも入れようというユーモアやオリジナリティ。楽しい世界観で、これからどうなっていくのか見たいと思いました。今後への期待や、可能性を感じます。
- 自分の長所を自覚しながら、このまま突き進んで。
もみじ
ねむいのかさんには、このまま突き進んで行ってほしいです。特に、観察する力をとてもお持ちなので、それは自分の強みだと自覚して、このまま大事にしていってください。
ごほうびメニュー/あらもん
- 光の反射を描くのが上手で、ていねいな色選びのセンスもある
- 絵の見ごたえを増す「モチーフ選び」の勝利!
もみじ
あらもんさんは全6枚のイラストでご応募くださいましたが、この1枚目が特によかった。画集を作るなら表紙に使いたくなりますね。全部の作品を見ると、あらもんさんは光の反射を描くのがうまい方だとよくわかります。
サイトウ
シロップや卵など、つやつやとした質感がおいしそうです。
もみじ
題材選びの勝利ですね。粉砂糖も絵としての見ごたえや深みを増してくれていて、ずっと見ていられる作品です。
- 描き味のよさときっちり描くバランスを探って、さらにクオリティUP!
- 特殊ブラシを使うときは、細部まで抜かりなく仕上げよう
もみじ
和風なお皿の質感や背景の木目など、よく描けていますが、塗りに比較的ラフな部分が見られます。描き味は作風のよさに繋がっていますが、ていねいさも取り入れるとよりいい作品になりそうです。きっちり描きすぎても絵としておもしろみがなくなってしまうので、モチーフの形だけていねいに取るなど、いいバランスを探ってみてください。
また、粉砂糖は特殊ブラシで描かれたかと思いますが、それが描写の油断に繋がった面もありそうです。 僕も特殊ブラシは使いますし、それ自体はいいのですが、もう少し仕上げの描写が詰められるといいですね。パンケーキの側面に粉砂糖がこぼれる様子まで描けたら、もっとおいしそうさが追求できます。ディテール表現は先ほどの『マルゲリータ』なども参考になると思います。
優しい色あいで、光も単純な色ではなくモチーフの色に寄り添っていて、ていねいな色選びができています。それはあらもんさんの強みだと思いますので、そこはぜひ続けて、伸ばしていってください。
ご褒美ご飯は明日の活力/リーオカ
- 迫力のある構図とカメラワーク
- 難しいアイデアにも挑戦する力
もみじ
とにかく迫力! 構図の取り方やカメラの使い方など、なかなかないセンスをお持ちです。リーオカさんの強力な武器ですね。
サイトウ
「餃子の絵」からこのアングルを思いつくのはすごいですね。
もみじ
本当にすばらしいワクワク感です。「これから来る! 餃子! ご版!」と三段階で飛び込んできますね(笑)。おいしそうさの伝え方がモチーフの描写だけではなく、カメラと構図の段階で作ってあって、僕も学びになりました。思いつくのがすばらしいし、描くのが大変なアイデアでも妥協せず挑戦する姿勢に、拍手です!
また、ハイライトに少しオーバーレイが使われていると思うのですが、ビビットないい色使いで、餃子が輝いているのが伝わってきました。
- 見切れているビール、もうちょっと見たい……!
- ブラシ塗りのラフに見える部分を繊細に描き込んでいこう
サイトウ
端にちらっとビールが映っていますね。
もみじ
そうそう! それが少しもったいない。ビールももう少し見たかったです。
それから、ブラシ塗りのラフな部分が少し目立つので、餃子の迫力の先に見えている湯気など、繊細に描けるようになると、もっとすごい作品にできそうです。アイデアに挑戦する力に加え、『とある日のぶどう』のように、一つ一つの描写に対する集中力が備わったら無敵ではないでしょうか? 末恐ろしいですね。
ご褒美めし『たこの丸かじり』/とりくん
- とにかくインパクトとオリジナリティ! すばらしい!
もみじ
インパクトが強くて、一度目に入ってしまったら目が離せなくなります。まさにオリジナリティで選びました。モチーフにタコを選んだのも、人がタコに入ったように見える構図もすごい。
応募作品一覧で目を引くために、独自の目線や構図がとても大切なんだな、と僕も学ばせてもらいました。「オリジナリティ」について考えさせられましたね。
サイトウ
なんと表現したらいいのか、とにかくすごいです。市場にあったら目立ちそうです。
もみじ
このポスターがあったら、絶対忘れないですね! また、不思議なところもあります。吸盤の照りなど立体感がよく描けているのに、ふっと平面的に見えるところもある。キャラの服だけ突然デザインチックになっていたりと、そこも含めて本当に目が離せないです。
- アドバイスは野暮。すばらしいものを持っているので、描き続けて
- 人の話から取り入れる、取り入れないのバランスを決めていこう
もみじ
とりくんさんにアドバイスは余計かもしれません。このまま描いていけばどんどんよくなるのではないでしょうか。GENSEKIに投稿されている他の作品を見ると、デザイン風、実写風などいろんなジャンルに興味があるようなので、アーティストのような印象も受けました。
僕は美大の油絵科出身なんですが、学校や美術予備校にはいろんな人が集まっていました。僕は生真面目に描くタイプでしたが、友人の中には、きっちり描いているのにいきなり1つのモチーフだけ平面的に描いて、先生に褒められたり怒られたりしている人もいて(笑)。アーティストだな、と感じたのを思い出しました。
とにかくすばらしいものをお持ちなのは間違いないので、このままいろんなものに興味を持って、引き続き描き続けて欲しいです。
もし、ひとつ言えるとしたら、人のアドバイスを聞くところと、聞かなくていいところを自分で判断していってください。
聞きすぎもよくないし、聞かなさすぎてもダメなときもある。いいものを持っているのに人の話を聞かなさすぎて、うまくいかず描くのを辞めてしまう方も見てきました。そうなるともったいないですよね。だから、自分で取り入れるものを選んでいってください。「もみじがこんなこと言ってたな」と頭の片隅に残してもらえたら幸いです。
人の意見を聞く、聞かないのバランスはどう取っていく?
サイトウ
初心者ほど「人の意見を聞く・聞かない」のバランスを取るのは難しそうです。適度に自分を持つ秘訣はあるでしょうか?
もみじ
「自分のバランスは自分で決めていい」です。
今日は自分を大事にする絵、今日はみんなの気持ちを取り入れた絵、と日や時間で決めてしまいましょう。それで、描いたら発表してみて、どちらが反応がいいか。その積み重ねで、だんだん自分がわかってきます。
いくら反応をもらっても、心がときめかないときもあります。逆に、人に認められたいと強く思う人もいます。自分はたくさん反応をもらうとモチベーションになるのか、反応をもらうのは好きではないクリエイターなのか。特定の人に褒めてもらえたらいい、という場合もあるかもしれません。人にあわせる、あわせないも、そういう自分を大切にしましょう。
ただ、それは決まりきった個性ではなく、時期によっても変わります。例えば、今までさんざん人にあわせて描いてきたから、次は自分のために描こう、なんてタイミングもありますよね。
サイトウ
ひとつの考えに凝り固まるのはよくないんですね。
もみじ
そうですね。昔、漫画を描いていたときに編集さんから教わった話があります。
ある作家さんに「オリジナリティがすばらしいからそれで行こう」と伝えたら、すごすぎて読者がついてこれなかった。逆に、人にあわせる才能がありそうな人に「万人受けするジャンルを描こう」と伝えたら、ウケたけれど好きなものじゃなかったので、描くのが辛くなった。結果はどちらも打ち切りです。
最終的に楽しく続けられるのが理想ですが、売れなくても、自分に嘘をついても続かない。なので、人にあわせるのも自我を大切にするのも両方あって、自分なりのバランスを見つけていくのが大事です。
サイトウ
柔軟さが大切なんですね。
もみじ
それと、作品を出しながら自分を観察する能力も大切ですね。
失敗してもへこたれないでください。失敗したら学んだ、と思うことも大切です。それこそ、おいしいカツ丼を食べて、次もがんばろう! と思ってください。
【総評】「食べ物イラスト」を魅せる方法はひとつじゃない。自分の得意なことで表現しよう!
サイトウ
全体を振り返って、いかがでしたか?
もみじ
コンテスト審査員という光栄な大役をやらせていただき、とてもうれしいです。300点を超えるたくさんのご応募で驚きました。全部食べたいけれど、胃袋には限界があって(笑)。本当は全ての作品にコメントを差し上げたいのですが、コンテストなので心をシェフにして選考させていただきました。
・食べ物に対する愛情、こだわり
・クリエイターとして今できる限りを尽くしたかどうか、作品に集中力をそそいでくれたか。
サイトウ
テーマについてはいかがでしたか?
もみじ
ごはんの主菜だけでなく、デザートまで選べる、幅広いテーマにできてよかったです。
「一日がんばったし、今日は絶対これ食べよう」というのは万人共通の気持ちだと思います。みなさん時間をかけて、それぞれの「好き」を詰め込んで描かれていて、どの作品にも「ここはいい!」という点がありました。コンテストを通じて、
- おいしさ
- 楽しさ
- 臨場感
- 食べ物の形の魅力
- 食べ物自体にフォーカス
- シチュエーションにこだわったもの
- 文字を入れて平面デザイン的にしたもの
など、食べ物イラストにもいろんな表現があると学ばせていただきました。
もみじ先生流、「自分のよさ」の見つけ方
もみじ先生の参考イラスト
サイトウ
先生の「ご褒美ごはん」を描くコツ、食べ物を魅せるコツはありますか?
もみじ
人によるので、食べ物はこう描く! という具体的なアドバイスはできませんが、自分のいいところを伸ばして描いてほしいです。これは僕の持論なんですが、食べ物に限らず、才能の正体は「好き」だと思っています。
僕は、もちろんご飯が好きだから専門で描くようになりました。毎日絵を描くのは大変で、イヤになるときもあるんですが、そういうときって大体、何かを食べて気分転換して、また描くんですよね(笑)。
「好きであること」が一番です。好きなことだからこだわったり、人より見えるものがあって、それが他の人との違いを生みます。だから「本当に自分はこれが好きなのか」を意識しながら、いろいろ見て、描いていけばいいのではないでしょうか。
サイトウ
普遍的なコツはなく、自分の得意を生かして描こう、ということなんですね。
もみじ
そうです。僕はもともと、光や光の反射が好きなので、結果として食べ物の描写に活きたんだと思います。だからって僕と同じように光を描いたらいい、なんて野暮。カメラの構図が好きな人はそれを磨けばいいですよね。明らかに寿司職人が向いてる人にケーキ職人を勧めるのはもったいないですよね。
サイトウ
自分の得意は、どうやって見つければいいのでしょうか?
もみじ
僕は以前、キャラものも描くのが好きでコミティアなどで描いていましたが、あるとき「キャラより食べ物がいいね」と言われました。これは描いて発表したから気づけたことです。僕が今の僕になったのは、たくさん描いてフィードバックをもらって、学びを得たから。
だから、まずは自分の好きなものを描いて、発表して、人からフィードバックをもらいましょう。それを繰り返すうちに、だんだん自分の得意なことが見えてくると思います。
そうやってまさに自分の「原石」を磨いていっていったらいいかな、と常に思っています。
絵の毎日更新、目標は1万日!
サイトウ
先生は以前から、各SNSで 毎日絵を投稿されていますが、それも長所を探すために始めたのでしょうか?
もみじ
まさにそうで、僕は常に壁打ちがしたいんです。1枚の絵に時間をかけすぎると、どうしても絵に主観が入ってしまいます。でも「1日1枚、3時間で描く」と決めてしまえば、しっかり描く日もあまり描けない日も、とにかく発表して何らかのフィードバックがもらえます。逆に肩の力が抜けて、褒められることもあります。
サイトウ
見る人と毎日コミュニケーションを取りながら、いいところを探っていくんですね。
もみじ
3時間ぐらいかけたものなら、ウケる絵かどうかの反応はもらえます。評判がよかったものはさらに時間をかけて、クオリティを上げてみる。それがまたいい評価をもらえたら、試みは成功……と繰り返します。
もちろん「今日はもう描けない、ダメかも」と思う日もありました。それでも描いていれば何とかなるだろうと、未来の自分に丸投げプランでやってこれています(笑)。
毎日更新の目標は「1万日」。プロとしてやっていても、いつか食べられなくなるのでは? という不安はいつもあります。でも、もしダメになっても「1万日描いたらこうなった」という本は出せる、と楽しみにして続けています。
サイトウ
それは楽しみです! 食べ物イラコンの総評以上に、深いお話、ありがとうございました。
もみじ
今回、僕が審査員でいろいろ言わせてもらっていいのだろうか? と思いましたが、その積み重ねで多少の説得力が出せたのではと思います。続けてやっていてよかったです(笑)。
審査させていただき光栄でした。聞いてくれて、ありがとうございました!
▼開催中のコンテスト
執筆
kao(X:@kaosketch/Web/GENSEKI)
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