売れるグラフィックTシャツってどんなもの? アパレルブランドのデザイナーに聞いてみた

【この記事はBYWEARの提供を受けています】
こんにちは。ライターの斎藤充博です。
最近、Tシャツを作って売れるオンラインサービス(SUZURI)で自分のキャラクターのTシャツを作ってみました。

どう見てもイケてる。これは売れるぞ~! と思って販売しているのですが、現在のところ、一枚も売れていません……! いったい、なぜなのか……?
そこで今回はファッションデザイナーの水津正嗣(すいずまさし)さんに「『かっこいいグラフィックTシャツ』『売れるグラフィックTシャツ』とはどんなものなのか」を聞いてみました。

僕のデザインしたTシャツがなぜ売れていないのかも、論理的に教えてくれましたよ。読者のみなさんは読み進める前に、なぜこのTシャツが売れないのかをぜひ考えてみてください。
お話を聞いた人
水津正嗣(すいずまさし)
服飾専門学校卒業後、株式会社ワールドにデザイナーとして入社。2014年に独立し、2023年にアパレルブランドBYWEARに参加。
インタビューした人
斎藤充博
ライターのかたわら、イラストや漫画の仕事をする。服のこともオシャレのことも、なんにもわからん。

斎藤
水津さんはアパレルの仕事を20年以上されているそうですね。
水津
高校卒業してから服飾の専門学校に入って、そこからずっとアパレルの仕事をしています。
斎藤
服の達人だ……。これまでにいろいろな服をデザインされてきたと思うのですが、得意なテイストやアイテムはなんでしょうか?
水津
ジャケットもパンツもなんでもできるのですが、一番得意としてるのはT シャツですね。特にストリート系のグラフィックTシャツはよくデザインしています。イラストレーターさんとコラボしてTシャツを作ることもよくあります。まさに斎藤さんが作ったようなTシャツのデザインは専門といえると思います。
斎藤
こんなちゃんとした人に僕の作ったTシャツ見てもらっていいのか……。いや、むしろド素人だからこそドーンと見せられるのかもしれない。今日はよろしくお願いします。
グラフィックTシャツのデザインとは

斎藤
それではお聞きしたいのですが、なぜ僕のTシャツは売れないんでしょう? このTシャツってどこがダメですか? ダサいですか?
水津
その前に、Tシャツをデザインするときに、デザイナーがどんなところを気にするかをお話できればと思います。
まず、意識するのはトレンドです。ちょっと以前だったら、Tシャツの前面にブランドのロゴをどんと大きくプリントするようなデザインがよく売れていました。いまだったら胸にワンポイントだけだったり、無地に近いようなデザインが好まれています。
また、こうしたシンプルなものとは真逆ですが、ビンテージっぽい雰囲気を持ったTシャツも流行っていますね。僕も作っているのですが、こうしたTシャツはプリントの仕方や加工にも気を配ります。
それからブランドのテイストも意識します。ストリート系だったり、カジュアル系、モード系といったテイストは重要ですね。
斎藤
そういうこと、ぜんぜん考えてなかったです……。

水津
斎藤さんのTシャツのキャラクターはいいんですよ。ただ、イラストをドンと載せるだけだと、ファッションアイテムというよりは、「ファンのためのアイテム」になってしまうと思うんです。
斎藤
そうか~! このTシャツは僕のファンしか買わない……。そして買ったのは自分だけ……。僕のファンは自分だけ……。
水津
落ち込まないでください(笑)。ただ、お気づきの通りで、世の中から認知されていて、ものすごく人気のあるキャラクターだったら、キャラクターのイラストを思い切ってドンと載せるだけでも売れるでしょう。実際に「ちいかわ」などのTシャツがそうした形で非常に人気があるとも聞いていますし、「ファンのためのアイテム」として販売するのならそういた形もアリだと思います。
斎藤
なるほど……。「ファッションアイテム」にするか「ファンのためのアイテム」にするか。それでは、僕のTシャツを「ファッションアイテム」に近づけるには、どうすればいいでしょうか?
水津
ロゴを入れると、ぐっとファッションアイテムぽくなるかと思います。
斎藤
ロゴ! 考えてもみなかったです。確かにお店で販売されているTシャツってだいたいがロゴが入っている……。そうでないものもあるけど、ちょっと珍しいかも……。
水津
斎藤さんに限らず、イラストレーターの方が、自分のキャラクターをTシャツにすることってあると思うんです。そのときもまずはロゴを入れてみるのがいいんじゃないでしょうか。

イラストをどのようにTシャツのデザインに落とし込むか
斎藤
ここで、グラフィックTシャツのデザインついて具体的な例をまじえておうかがいしたいです。
先日「世界一かわいい猫キャラ」を決めるイラストコンテストがGENSEKIで行われました(大賞作品はグッズ化!日本一可愛い子はどの子?猫キャラコンテスト)。水津さんが参加されているアパレルブランドBYWEARさんも協賛されています。

斎藤
5作品が大賞として選ばれ、水津さんがデザインされたTシャツがBYWEARで実際に販売されるとうかがっています。それぞれのデザインについてポイントを教えていただけますでしょうか。


水津
まず、先ほどの「文字を入れてデザインする」については、こちらがわかりやすいと思います。
斎藤
なるほど~! こういうことなんですね。デザイン画像を見たら一発でわかりました。
水津
アウトドア好きの猫というイラストコンセプトに沿って「CAMP OUT」(キャンプしよう)という文字を入れています。ちょっと太めの書体をアーチさせて、アウトドアっぽい雰囲気を作ってみました。
斎藤
こうすると「アウトドア好きのかわいい猫のイラスト」が「アウトドアに着ていきたいTシャツ」になるわけですね。


斎藤
これは、イラストよりもロゴが大きくなっていますね。
水津
イラストがとてもかわいいんですね。イラスト単体で見るととても素敵なんですが、ファッションアイテムとして考えるとちょっとかわいすぎて着る人を選んでしまうかもしれないと思いました。
そこで、大きくロゴを入れて、イラストは中くらいの大きさにしました。ファッションとしていいバランスになったと思っています。
斎藤
デザインでかわいさの調節をする。そうするとかわいいモチーフを自然と着れるようになるわけですね。


斎藤
線も色も少ないシンプルなイラストですね。
水津
こういうイラストは、アパレルにしたときにかっこよくなりやすいです。
斎藤
確かに、セレクトショップとかに置いてありそうな雰囲気ですね。

水津
ロゴは筆記体で「Monster Cat」と入れています。おばけの猫ですからね。
斎藤
雰囲気にあってて、すごくおしゃれですね。


斎藤
ゲームのキャラクターにいそうですね!
水津
そうですね。もうイラストが高度に完成されてるので全面に出して見てもらえるようにしました。ロゴは下の方に小さめに入れています。招き猫がモチーフなので「BECKONING CAT」(英語で招き猫)、「FOR GOOD LUCK」と入れました。

斎藤
ロゴをよく見ると、イラストの色の一部を使っている……?
水津
その通りです。イラストとの統一感を持たせるためですね。また、ロゴは2段になっているのですが、それぞれに書体を変えています。


斎藤
なんだかすごく表情に「含み」がある猫ですね。見れば見るほどおもしろい表情です……。
水津
そうですね。実は、このイラストをデザインするのが一番悩みました。
斎藤
と、いうと?
水津
イラストはすごくいいんです。ただ「かわいい」と「かっこいい」の中間くらいというか、どちらの要素も持ちあわせていますよね。どちらか片方だけなら、それにあわせたデザインにするのですが、これは悩ましかったです。
ロゴは名前の「UMETA」と、「自分を最高に可愛い猫だと思って生きている」ということで、「I’m the cutest」と入れています。

斎藤
個人的にはイラストの印象そのまま「かわいい」と「かっこいい」の両方で着れるデザインになっているんじゃないかな……と思いました。デザインっておもしろいですね~。
アパレルブランドとコラボしてみたいイラストレーターに

斎藤
大賞作品とTシャツのデザインを見ていたら、僕もアパレルブランドからTシャツを出してもらえるようなイラストレーターになりたい……なんて思ってしまいました。
水津
ブランドもコラボできるイラストレーターさんを探しているものです。ただ、コラボ相手を探すのはブランドからしても難しいものなんです。SNSで一生懸命探して、やっと見つけてDMを送っても、返信がなかったりで。
斎藤
そういうものなんですね。意外です。
水津
だから、ブランドからDMが来たらぜひ返信してあげてください(笑)。
駆け出しのイラストレーターさんだったら、ブランドとコラボすることは認知度を上げるために大きなメリットになると思います。自分の描いているイラストとちょっとテイストが違うようなブランドが声をかけてくることがあるかもしれません。でも、それもイラストレーターさんの新たな可能性を引き出すことになるはずです。
それに、現在では多くの方がデジタル環境でイラストを描いていますよね。それが手に取れるアパレルになって、店頭に並ぶというのはいいものですよ。デジタルの画面とは全然違うので。機会があれば、そういったアパレル作りの楽しさをぜひ知ってもらいたいですね。
斎藤
もしも実際にブランドとコラボすることになったら、どうすればいいでしょうか? 注意点などはありますか?
水津
ブランドのテイストにあわせたイラストを描くことになると思うので、ブランドについて多少は下調べしておくといいと思います。たいていのブランドはECを持っているので、そこをザッと見ておくだけでもいいです。
それから、ブランドとコラボするときは僕のようなデザイナーが描く内容をお願いすることがほとんどだと思います。そのときに、言われたものを描くだけでなく、イラストレーターさん自身の提案を「+1」のような形でいただけると、すごくありがたいです。そのときは採用できなくとも、またどこかのタイミングでお願いしようかな、なんて思います。
斎藤
なるほど。ちゃんとブランドと協力していいものを作ろうという姿勢が重要そうですね。今日はありがとうございました。
–—-
というわけで、僕のTシャツが売れない理由から、Tシャツデザインの具体例、いざブランドから声がかかったときのことまで幅広く教えてもらいました。
水津さんのアドバイスを元に、僕のTシャツにも試しにロゴを入れてみました。さすがにプロのデザインには及ばないけど、ちょっとは着やすくなったような……?


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▼ここでお知らせです▼
今回の記事で紹介した猫キャラコンテスト受賞作品のTシャツを販売しております。下記のリンクからぜひぜひ見てください。
提供
BYWEARは、ジャパンメイドのクラフトマンシップなモノづくりで、最高品質な商品を適正価格、適正数量で展開するアパレルブランドです。
原材料調達から販売に至るまで自らコントロールすることで、ハイブランド以上のクオリティを実現しています。わたしたちのTシャツ&スウェットに一度袖を通してもらえれば、その品質に共感していただけると信じています。
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