『このマンガがすごい!』ランキングはどのように作られている? 次に来そうな漫画は? 編集部に聞いてみた

2025.12.25

数多く刊行されるマンガの中から、よりすぐりの作品を教えてくれるガイドブックとして注目を集める書籍『このマンガがすごい!』(宝島社)。

『このマンガがすごい! 2026』(宝島社)

一年内に単行本が発売された作品を対象に、マンガ好きたちから多くの票を獲得した作品を「オトコ編」「オンナ編」に分けて1位から50位までランキング形式で発表する本で、上位作品は重版やメディアミックスの機運がぐんと高まるなど、漫画家の活動を後押しする存在として毎年話題を呼んでいます。

これはどのような形で作られているのでしょうか? 20年近くの歴史の中で、近年上位に入る作品の傾向とは? 『このマンガがすごい!』編集者の土岐光沙子さんにたっぷり伺ってきました。

お話を聞いた人


土岐光沙子
2019年より『このマンガがすごい!』編集に参加。以降、同書の制作に携わり続けている。好きな漫画は『じみへん』(中崎タツヤ)、『有閑俱楽部』(一条ゆかり)、『VRおじさんの初恋』(暴力とも子)。最近追いかけている漫画は『座頭市物語ノワール』(那波 歩才)。

インタビューした人


黒木貴啓
ライター/編集者。漫画を介したコミュニティユニット「マンガナイト」の一員としてレビューやレポート記事を多数執筆。小学館『藤田和日郎本』『皆川亮二本』『河合克敏本』に作評寄稿、『BRUTUS 特集:マンガが好きで好きで好きでたまらない!』(2021年)でバンド漫画の表現を紹介など。最近好きな漫画は『はにま通信』(大山海)、『ねずみの初恋』(大瀬戸陸)、点滅社『ザジ』。

編集部は5人、「ボルダルール」で公平性を担保している

黒木
『このマンガがすごい!』では毎年どのようにランキングを作っているのでしょう?


土岐
『このマンガがすごい!』の発売は毎年12月10日前後と決まっていて、8月頃から動き出します。

最初に決めるのが、漫画に票を入れていただく選者の方々です。過去の参加者に今年もできないかご連絡しつつ、新規の方にもお声がけしていき、9月頭までに選者リストを決定します。

そこから前年10月1日から今年の9月30日までに単行本が発売された作品を対象に、どのマンガがすごかったかアンケートを取ります。期間いっぱいまで網羅してほしいので、大体10月頭を締め切りにしていますね。


黒木
ランキングの付け方についても教えていただけますか?


土岐
選者には「オトコ編」「オンナ編」どちらのマンガを選ぶか事前に決めていただき、5作品を順位付けして挙げていただきます。

1位=10点、2位=9点、3位=8点、4位=7点、5位=6点としてポイントを集計し、10月半ばぐらいには、その年のランキングが決定する流れです。

●2025年12月時点のこのマンガがすごい!集計方法
■1年で単行本が発売された作品が対象(宝島社刊行作品は除外)
■各業界の著名人10人前後による「あの人が選ぶ」、全国の書店員20人近くによる「書店員が選ぶ」、マンガの学校・専門学校3校前後による「漫画家のタマゴが選ぶ」、著名な雑誌編集部5誌前後による「雑誌編集部が選ぶ」、各業界のマンガ通100人前後による「各界のマンガ好きが選ぶ」、それぞれが「オトコ編」「オンナ編」どちらで参加するかを選んだ上で、「すごい!」と思った5作品を順位付けしてアンケート回答
■1位=10点、2位=9点、3位=8点、4位=7点、5位=6点として集計し、ポイントを多く獲得した順に発表。
■「あの人が選ぶ」「雑誌編集部が選ぶ」「各界のマンガ好きが選ぶ」については自分の選んだオトコ編/オンナ編とは逆の作品も1作品のみ選出できる。作品は5点として集計
■「漫画家のタマゴが選ぶ」は1票=1得点として集計
■同作品に対してオトコ編とオンナ編の選者それぞれから得票があった場合、選出人数の多い方へ合算。人数も同じだった場合は得点の多い方へ合算してランキングする

黒木
ボルダルール(※)を採用しているのがすごく民主的だと思いました……! 編集部の体制はどうなっているのでしょう?

※ボルダルール:18世紀後半にフランス海軍の科学者ジャン=シャルル・ド・ボルダによって考案された、候補者に順位を付けて投票する多数決の形式。一人一票ずつ投票する単純な多数決とは異なり、投票者が2番目以降にいいと思っている候補者への期待も反映されるため票割れが起こりづらく、公平な選出手法として多くのスポーツ大会やアワードで採用されている。


土岐
基本的にはこの雑誌を作るために毎年一時的にチームを組んでいて、現在は私含め5人です。


黒木
選者の数も百数十人いますし、作者へのインタビューや、特集記事もいっぱい載っているじゃないですか。5人って相当少ないですよね。


土岐
そうですね。スポット的にお願いしているフリーの編集者さんや原稿作成を依頼しているライターさんなど、外部の方のみなさんに支えられて作っております。

ランキングではなく、ガイドブックとして始まった

黒木
そもそも『このマンガがすごい!』はどういった経緯で始まったのでしょうか。


土岐
1996年、弊社が刊行しているムック『別冊宝島』のイチ企画として始まりました。このときはまだランキング形式ではなく、過去の名作をカテゴリごとに紹介していく、ガイドブックみたいなものでしたね。

『別冊宝島257 このマンガがすごい!』(宝島社)

黒木
読んだのですが、とにかく濃いですね。オタクがひたすら鼻息荒くして「この漫画は読むべし」と語っている感じです。

土岐
そうなんです。私は当時の別冊宝島編集部のことは入社前でわからないのですが、「別冊宝島」は間違いなく、サブカルチャー文化を先導していたと思います。また、文字は多ければ多いほどいい、という風潮もあった気がします。私はそれが大好きで、「別冊宝島」シリーズを愛読していました。

黒木
導入のあらすじとかも熱い……「マンガの海を渡り切るためのガイドブック」。約1,000作品を83ジャンルに分類……!?

土岐
これは一冊限りの企画でした。

ここから時が流れまして、2006年に別冊宝島の「このミステリーがすごい!」シリーズや「このライトノベルがすごい!」シリーズが支持されるようになっていたので、同じ様に漫画をランキング形式で紹介していく『このマンガがすごい!2006』を刊行しました。

最初は「オトコ編」と「オンナ編」が別々の冊子で出ていたのですが、2008年から合本して今の形になりました。

「オトコ編」「オンナ編」の区切りと、ボルダールールで決めるランキング形式は創刊当初から変わらずあって、選者のみなさんと集計方法を変更しながら続いてきた、という感じです。

「オトコ編」「オンナ編」の決め方の変遷

黒木
いつも気になっていたのが、作品の「オトコ編」「オンナ編」はどうやって決めているのか、です。男性にも女性にも刺さる中性的な作品の場合、選者によって判断がバラバラになるのでは……?


土岐
そこが近年で一番大きく変更した点でして。

2022年以前は、基本的に「オトコ編」「オンナ編」は編集部が作品の掲載媒体で判断していました。『週刊少年ジャンプ』に『モーニング』『アフタヌーン』など少年誌・青年誌に掲載されている作品は「オトコ編」。『りぼん』『なかよし』『花とゆめ』や『フィール・ヤング』など少女誌・女性誌に載っているのは「オンナ編」といった具合に。

ですので、選者さんからランキングをいただくと、まずは選んで頂いた作品が「オトコ編」「オンナ編」の媒体基準に沿っているかをチェックしていたんです。

そして事前に「オトコ編」で参加すると決めていた選者さんから編集判断で「オンナ編」に該当する作品が挙がってきた場合、それは投票不可というルールだったんです。


黒木
かなり大変そうですね。


土岐
そうなんです……。それに、特に2020年以降から、複数媒体での連載もメジャーになってきました。

例えば女性誌『BE・LOVE』や青年誌『ヤングマガジン』『モーニング』など複数媒体の作品も載っている『コミックDAYS』のような漫画アプリでのオリジナル連載が増えたんです。

さらに、KADOKAWAの『ハルタ』のように、旧来の「オトコ編」「オンナ編」と呼べるような作品が両方載るような雑誌もあります。


黒木
そうですよね。『アフタヌーン』も青年漫画誌の看板を掲げつつ、男女関係なく愛される作品が大半を締めている印象です(『宝石の国』『ブルーピリオド』『メダリスト』『青野くんに触りたいから死にたい』『来世は他人がいい』など)。


土岐
選者さんからも「明確な基準を示してほしい」という不満の声もあったのも事実です。なのでそれを踏まえて、2022年からは旧来通り選者に「オトコ編」「オンナ編」どちらで参加するか選んでいただいた上で、そこで回答してもらった作品はすべて「オトコ編」「オンナ編」として集計する、という選者に委ねる形に変わりました。

もし同じ作品に対して「オトコ編」「オンナ編」の選者からそれぞれ得票があった場合は、選出人数の多い方へ合算。人数も同じだった場合は、得点の多い方へ合算して、オトコ編・オンナ編を決定しています。

一応、例外として『週刊少年ジャンプ』『花とゆめ』のように明確に少年誌・少女誌と呼べるものは、まだ媒体で判断するという基準を残しています。それ以外の作品については選ぶ側の自由となっています。

「アナザー枠」「双方からの得票」 ジェンダーレスな作品が拾えるように

黒木
その上で、「オトコ編」「オンナ編」を選んだ人が5作品とは別に、自分の選んでいない編(オトコ・オンナ)から1作品選べる枠があるじゃないですか。


土岐
ありますね。編集部では「アナザー枠」と呼んでいます。


黒木
あれがまた、1位も含め上位決定する上でとても大事な票になっていると思ったんですが。


土岐
そうなんですよ。アナザーは5点入るんですけど、あれは人によって入れる入れないが決められるんです。

かつて編集部が「オトコ編」「オンナ編」を判断していた時代に「でもどうしても入れたい」という声に応える形で導入され、それが今なお引き継がれている形ですね。


黒木
そういうことだったんですね。あと、現在は「オトコ編」「オンナ編」の選者“双方から選ばれた作品”もランキングの注釈に載っていますね。

これを読むと、「オトコ編」ではこの作品が1位だったけれども、実は「オンナ編」の選者から投票されていなかったら2位と順位が入れ替わっていた、という年がけっこうあって。例えば2025年度の『君と宇宙を歩くために』(オトコ編1位)とか、2024年度の『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』(オンナ編1位)とか。

これら作品はジェンダーレスに支持されていて、この作品は片側から厚く支持されているんだな、というのがわかって興味深かったです。これが始まったことによってまたランキングの傾向がだいぶ変わったのではないでしょうか。


土岐
すごく変わったと思います。

かつては「オトコ編」「オンナ編」のあわいに来るような作品は順位が低かったことが多かったんです。というのも2022年より前は、「オトコ編orオンナ編」として選びたいけど、自分が選んだ側ではない作品は「アナザー」枠じゃないと投票できなかったんです。

作品としてもすごくおもしろいし、いろいろな層からまんべんなく得票はあるのに、「オトコ編」「オンナ編」に振り分けることで票が減ってしまう、という問題がありました。

今は「オトコ編」「オンナ編」どっちを選んだ人でも自由に入れられ、同じ作品に対し双方からの票が合算されるシステムになったので、明確に少年マンガ、少女マンガだとジャンル分けできないような作品が上位に行きやすくなったかなとは思います。


黒木
2024年「オンナ編」1位の『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』は、細かく見ると「オトコ編」の選者から45点も入っているんですよね。一方で2位の作品は「オンナ編」の選者からのみの得票になっていて、これはこれで興味深く。1位から20位までをちゃんとまんべんなく見た方がおもしろいなーと思いました。

オトコ編・オンナ編は「漫画の文脈」

黒木
印象に残っている、ランキング集計方法のマイナーチェンジはありますか。


土岐
やっぱりいまお話した、2022年のランキング形式の変更ですかね。

一緒に迷ったのが「オトコ編」「オンナ編」という区切りをそもそもどうするか。やはりいまだに編集部内では話に出ます。投票を依頼した方から「オトコ編」「オンナ編」って言いたくないので投票したくないです、と言われてしまうこともあります。


黒木
やはりそうなんですね……。


土岐
なので、「オトコ編」「オンナ編」の区分をどうするかは編集部内でも議論して、こんな結果になりました。

ここで言う「オトコ」「オンナ」とは、性別ではなく、あくまで少年漫画には少年漫画の、少女漫画には少女漫画の“文脈”があり、漫画はその流れを汲んで発展してきた文化でもある。

なので「漫画としてのジャンル」で「オトコ編」「オンナ編」と言っているのであって、決してそれぞれのランキングが男性だけに向けたもの、女性だけに向けたものではない、というものです。


黒木
確かに文脈といいますか、作者が読者層を意識し、クローズドに相互的に築き上げてきた媒体の力もありますもんね。2024年度オンナ編ではよしながふみ先生の『環と周』が、オトコ編の選者からの得票がゼロでも、2位と大きく差をつけて1位になっているのを見ると、女性マンガ誌の強さを感じます。

土岐
両方から投票可能にしても、やっぱりこれだけの差が出てくる。選者の性別というわけではなく「少女マンガ」や「女性マンガ」というジャンルを好きな人が投票しているからこうしたランキング結果になっているのです。

映画だとアクションやホラーがあるように、漫画には、少女マンガ、少年マンガというジャンルは明確に存在していると思います。

この区切りをなくしてしまうと、コアなジャンル、読者層の性別が偏っている作品が今度は上がりにくくなってしまう問題が出てきます。それも含めて「オトコ編」「オンナ編」の基準もあった方がいいのかなと。もちろん、これが100%ベストというわけではないので、今後も常に必要性を考え、必要であれば変更していくべきことだと思っています。

上位作品の傾向 「ジェンダーレス」と「社会問題の提起」

黒木
ここ数年の傾向としては、男女双方から支持されるようなジェンダーレスな作品が上がりやすくなってきているというお話がありましたが、ほかにもありますか?


土岐
社会問題を取り上げたようなもの、読者に問いを投げかけるような作品が増えてきているなとは思います。

特にオンナ編にランクインする作品に多いのですが、今年のオンナ編1位となった『半分姉弟』などはまさにそうで。これはハーフと呼ばれる人々の日常を描いた作品ですが、「わかりあえないものにどう対するか」という問いがテーマでもあるので、いまの社会で広く読まれてほしいなと思います。

黒木
自分としても、いまの社会で広く読まれてほしい作品だったのでうれしかったです。

土岐
あとは上位に入った『隙間』も、著者の高妍(ガオ・イェン)さんが台湾の方で、台湾と沖縄を題材に歴史的な問題が描かれています。また、昨年度の『ボールアンドチェイン』、今年の『多聞さんのおかしなともだち』と、性、ジェンダーをテーマとした作品は、毎年のように上位にランクインしています。

これらのように、いま社会で私たちが抱えている問題をエンターテインメントに落とし込んでいくような作品が近年増えている印象です。


黒木
ただ問題を取り上げればいいわけではなく、「エンターテイメントへいかに落とし込めるか」というのも鍵ですね。


土岐
そうですね、そこがかなり大きいかなと。それだけ漫画表現というものの幅の広さや懐の深さを感じています。


黒木
昔はおもしろいマンガを知るための手段も限られていましたが、ここ10年ぐらいは、次に来そうなマンガはSNSでバズったりして、かなり早い段階で目にできるようになりましたよね。「次に来るマンガ賞」のような新しいアワードも登場しましたし、漫画好きな芸人さんが作品を紹介する番組や動画なども増えてきました。


土岐
もういろいろとありますね(笑)。


黒木
当初に比べるとかなりマンガが発掘されやすくなっている時代になったと思うのですが、そのうえで見えてくる傾向はありますか。


土岐
例えば一昨年の『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』は、なかなかSNSでは拾えない作品だったんじゃないでしょうか。書店さんですごく推されていた作品で、自分の足で書店に行って、漫画を選ぶような人が多く票を入れていました。インターネットを見ているだけでは拾えないような名作をカバーできているのが弊誌なのかなと思っています。

また、SNSではもともとネームバリューのある作家さんの新作が見つかりやすいですし、刺激の強い作品がネットミームになりやすい。『このマンガがすごい!』はバズらない――わかりやすい刺激がなくとも、読めば名作と思えるような作品を取り上げられているのかな、と。


黒木
よさがわかるのに時間がかかる作品もありますもんね。


土岐
そうですね。あくまでも「すごい!」と思った漫画を推してもらうものなんです。「売れている」でも「話題になっている」でもありません。なんなら「おもしろい」でもありません。だって、おもしろさを超えて「すごい!」と言えるような作品っていっぱいありますから。そんな思いを込めてこの名前を冠しているのだと思います。

次に来るのは「王道モノ」と「海外作品」?

黒木
バズや話題性とかよりも「すごい!」マンガを選ぶランキングだ、という話をしておきながら恐縮なんですけど。「このマンガがすごい!」の上位に次に来そうな作品って、なんだと思いますか?

土岐
難しい質問ですね(笑)。

黒木
答えにくいですよね。ただ、個人の所感で大丈夫なので……!

土岐
いやでも、本当にわからないんですよね。過去に1位だった『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』も『環と周』も、今年のオトコ編上位の『壇蜜』も『サンキューピッチ』も、オンナ編上位の『隙間』も『起承転転』も「こういう作品です!」と枠でくくれないですし。何でしょう、このジャンルが来るみたいなのは本当に全くわからないんですけど。

個人的な話をすると、そうですね~……。そろそろ……王道少年モノ、とかがまた来るのかな? とは思っています。

今年ランクインしている『魔男のイチ』、少年サンデーで今年連載が始まった『パラショッパーズ』などは、明るさと冒険心のあるストレートな王道少年バトル漫画で、読んでいてワクワクします。

黒木
なるほど……! 確かにこれまでも『ワンピース』『七つの大罪』みたいな王道モノ、あまり上位で見かけませんでした。『鬼滅の刃』も特に「このマンガがすごい!」でも「マンガ大賞」でも話題になっていなかった気がします。

土岐
『鬼滅の刃』は毎年ランクインしてはいたんですけど、順位としては人気にそぐわない数字でしたね。

うちの傾向として基本的に巻数が少ないものが上に行きやすいのと、『鬼滅の刃』自体が5巻あたりから一気に世間で話題になっていった印象です。

なので、「このマンガがすごい!」の投票のシステムではなかなか上に行きづらかったのかなと。ただ、その中でもランクインする『鬼滅の刃』が、いかにすごい作品か、ということでもあります。

あとは今年でいうとオンナ編25位の『男の皮の物語』のように、最近は海外翻訳ものが増えているので、国籍を飛び越えた新しい作品がランキングに入ってくるんじゃないかな、と思っています。

市井のマンガ愛をありのまま伝える

黒木
読者が増えるだけじゃなくメディアミックスの可能性も大きく左右するような、業界でも注目の高いランキングになっていると思います。この世間の反響を編集部はどのように受けとめているのでしょうか。

土岐
本当にうれしい限りです。

我々としては、書籍は売っているんですけど、このランキング自体でお金をいただくようなことは全くありません。ランクインした作品帯とかに『このマンガがすごい!』と打っていただく際にもお金はいただくこともないですし。純粋に業界が盛り上がっていけばいい。弊誌をきっかけに重版いただいたり、すぐ続編の刊行が決まったりといったお声をいただくのが、もう本当に一番うれしいですね。

黒木
最後に。SNSやマンガアプリなど、話題のマンガを発掘できるサービスが増えてきてもなお、「このマンガがすごい!」が変わらずに大事にしてきた軸があればお聞かせ下さい。

土岐
やっぱり一番は「透明性」ですかね。他のアワードさんと比較しても、得票数と選んでいる人を全公開しているところはおそらくうちだけではないでしょうか。
よく間違われるんですけど、『このマンガがすごい!』は賞ではなく、あくまでランキングです。こちらが審査する権威ではなくて、全国の漫画好きがいま本当におもしろいと思ってるのはこのマンガなんだ、という市井の声が軸になっています。

全国のみなさんと作っている、生の情報が反映される磁場。この「透明性」と「鮮度」が売りかなと思います。

取材協力
宝島社
Web:宝島チャンネル
『このマンガがすごい! 2026』(宝島社)
発売日:2025年12月15日
価格:1,000円(税込)

取材・執筆
黒木貴啓
X:@abbey_road9696

企画・編集
斎藤充博GENSEKI/X:@3216Web

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