かわいいイラストは「顔の比率」が重要。イラストコンテスト「気になるあのコ」講評会

GENSEKI主催で「viviON社員が選ぶ!イラストコンテスト テーマ:気になるあのコ」を開催しました。
GENSEKIを運営する株式会社viviONは、各部署に二次元コンテンツへの知識と愛情を持ったメンバーが多数在籍しています。アニメ・マンガ・ゲーム業界出身者はもちろん、全く異なる経験を活かしているメンバーも多くいます。
今回はその中から、前職がイラストレーターのわかさんを審査員に、講評会を開催しました。キャラクターイラストをさらに魅力的に描く方法について詳しく伺います。

参加メンバー

わか
株式会社viviONスタッフ。前職はイラストレーターで、ライトノベルやVTuberキャラクターデザイン・メンバー限定イラスト、企業販促物、ロゴデザイン等を手掛けていた。日常、ラブコメ、恋愛を謳歌する女の子を描くのが好き。

サイトウ(メンバーブログ)
GENSEKIマガジンの運営スタッフ。インタビューや記事、バナー制作などを担当。イラストは見るのも描くのも好き。

わかさんは以前、イラストレーターとしてどんなお仕事をされていたのでしょうか?

美少女系のイラストでVTuberのキャラクターデザインやメンバー限定イラスト、雑誌のピンナップ、ライトノベルの挿絵など、いろいろやっていました!

かわいい女の子のイラストは好きな方が多く、かなり需要がありますよね。
描くために押さえておきたいことや、コツはあるでしょうか?

身も蓋もないようですが「顔がいいこと」です。
具体的には「かわいく見える顔の比率で描ける」こと。それさえ掴めていれば、たとえ他の部分に多少、不足があっても「かわいい」で勝てる絵になります。
美少女ゲーム系の絵はもともと「判子絵(はんこえ)」と揶揄(やゆ)されるほど、顔のパーツの配置バランスが似ていることが多かったんです。それは、誰もがかわいいと感じられる比率があるから。
最近はVTuberや3Dキャラが主流になり、バランスをいろいろな角度から立体的に捉える必要も出てきていますね。

かわいく見える、普遍的な顔のバランスがあるのですね。
コンテストテーマ「気になるあのコ」は、どういう基準で選考されたのでしょうか。

描きたいシチュエーションが伝わるか、そのうえで「このキャラかわいい!」と感じられるか、が基準です。
応募作品一覧で「イラスト + タイトル」を見ていく中で、「瞬間的な感情の動き」まで伝わってくる作品が目に飛び込んできました。受賞の土俵に上がるために必要なことですね。

シチュエーション表現も大事なんですね。詳しく解説お願いします!
【viviON賞】かわいい表情を魅せるために、絵の全てを工夫した一作



viviON賞はStariさんの『今日 寒いね~。』です。おめでとうございます!

応募作品一覧をざっと見たとき頭一つ抜けていて、迷いなく選びました。全体のクオリティが高いうえに、キャラがかわいくてぐっときます。非常にときめきました。ありがとうございます!
絵の鑑賞者=主人公で、こういうヒロインがいて、朝の学校の駐輪場で、誰もいないからかなり早い時間なんだろうな、とひと目で設定がわかります。キャラが自分に向ける表情や「今日 寒いね~。」から、関係性まで伝わります。

臨場感があり、自分にもこういう記憶があったかも、と思わせられます。
この絵とこの子に「ぐっとくる」のは、なぜでしょうか?

表情がすてきですよね。そして絵の主題である「表情」を魅せるために、ライティングや配色、構図までよく考えられています。
女の子の顔に左側から光が差し、絵の中で一番明るくなっています。背景に描かれた建物の線やパースは、顔に向かって視線誘導しています。
魚眼レンズ風の画角も、キャラを大きく近く見せるため。構図も女の子を絵の中央に置きたくなるところ、自然なシーンに見せるため少し左にずらしています。逆に、自転車などは描き込みながらも主張を抑え、目が行かないようになっています。
自然と顔に目が行く工夫がたくさんされていて、すばらしいです。


それから、絵を描く側として見たとき、このアイデアを思いついても実際に描くのは超大変。最近は3Dモデルなどで描きやすくなったとはいえ、自転車を7台も描くなんて、なかなかやらないと思うんです(苦笑)。自分なら「一緒に自転車をひいて歩く」など、1台描けばいいシーンに置き換えてしまいそう。
描く手間から逃げないで努力したことも、高い評価に繋がりました。

みごとviviON賞ですが、さらにイラストを良くできるポイントはあるでしょうか?

ないですね……光は現実の法則に忠実に描かれていますし、配色で絵としてのいい嘘もつけています。その中であえて言うなら、ですが、今は顔の左右が全部明るいので、背景をもう少し描きこんで暗くしてもよさそうです。

左側はこのくらいでいいのですが、右奥はもう少し背景や樹のシルエットを描き込むと、情報量を増やしつつ暗くできます。キャラの明るさが引き立つし、顔と背景の距離感がもっと明確になって、リアリティが増します。

情報量やライティングの調整をしつつ、絵の説得力までアップできるんですね。

背景はもっと凝れると思います。駐輪場は照明があると思うので、朝で点灯していない蛍光灯があったり。古いのか新しいのか、田舎なのか、といった学校の様子がわかるように描いたり。柱に落書きがあったり、自転車が整理されているかなども意識すると、学校の治安まで伝えられます。
自分とこの子がいる場所のリアリティを引き上げて、なお「かわいい!」が勝つ絵、とさらに強い作品にできると思います!
【佳作】絵のわかりやすさと「顔の比率」を掴んでかわいさをアップ

viviON賞の次にすぐ選びました。なんといっても「かわいい!」が強い。
シチュエーションもパッとわかる。萌え系寄りの絵柄で、ジャンルに求められる身体特徴などもよく描けています。

ぱっと見てかわいい! と感じられる絵ですね。

今回はそれが一番欲しいところです。コンテストテーマが「かわいい女の子」では範囲が広すぎるので「気になるあのコ」に絞ったのですが、まさにぴったりの作品でした。ごちそうさまです(笑)!
いいシチュエーションなので、ペットボトルを持つ手が見切れるぐらい手前まで来てほしいですね。絵を見ている自分の額にピタッとついてるんじゃないか、ぐらい迫ると、臨場感が増すと思います。


「顔のかわいさのバランス」はいかがでしょうか?

「目を閉じた顔」のかわいいバランスが、いいですね。
目を閉じた笑顔はほとんどの人がかわいいと感じるものなので、安全策でもあります。

目が開いた状態の方が、難しいのですか?

目のサイズや配置のバランスにどうしても個性が出てしまうので、万人に「かわいい」と思ってもらえるハードルは上がります。
でも、そこでみんなが「かわいい」と思う比率で描けたら、絵描きとしてもっと強くなれます。さらに上を目指すなら、そのバランスを掴むのは大事です。

どうしたら掴めるようになるでしょうか?

まず、自分が「かわいい!」と思っていないと描けないので、普段から「かわいい!」と感じるものをしっかりインプットすることです! 憧れのイラストの顔の比率を定規で測ったり、目と目の間がこれぐらい離れてるといいんだ……としっかり観察するのもいいですね。
リリーさんの投稿作品を見ると、正面顔のかわいさは掴めています。あとは角度が変わってもこのかわいさがキープできれば無敵です! もともと描ける方だと思うので、角度を変えて何枚か練習すればすぐ描けるようになると思います。


この作品も「かわいい!」で選びました。横に置いてある空のドリンクがまたいいですね。けっこう待ってたのに「い、いまきたトコ」からのこの表情……パッと手をあげて迎えてくれるところに、仲の良さまで感じられます。
広告でもよく使われる手法ですが、手を顔の近くに置くと顔がかわいく見えて、サイズの比較で小顔効果もあるんです。手を描くのは難しいので苦手な人も多いと思うんですが、いい効果がたくさん得られるので、ぜひみんな描きましょう!

キャプションを見ると「初デート」とあります。初々しいですね。
気になるあのコと待ちあわせをしている女の子です。今日が初めてのデートらしいです。
お互いが相手にとっての「気になるあのコ」になっているといいな…というコンセプトで描きました。

初デートでこの様子、「絶対俺のこと好きじゃん!」と思っちゃう(笑)。ごちそうさまです! これで一本ストーリーを書きましょう!
絵を見てキャラの好みが伝わってきますし、タイトルやキャプションで描きたかったことも伝わります。ただ、惜しいのは絵単体だけで見たときに若干伝わりづらいところです。

この女の子はメイドさんなのか、コスプレなのか、メイド服のような私服が好きな子なのか。上着のデザインはメイドっぽくないから、やっぱりメイドカフェの子で、休憩時間なのかな? でも初デートなら、入念な準備をしてこの服を選んだのかな……? と、キャラの魅力がぼやけてしまってもったいないんです。
「このキャラは何だろう?」がわかりやすく描けたら、もっと絵がよくなります。

パッと見て設定が伝わることが大事なんですね。

そう思います。ただ、設定を全部詰めこもうとすると、パンクしてしまいます。一枚の絵で何かを伝えようとするには、削る勇気も必要です。
この絵なら「メイド」か「初デート」のどちらかに絞るのもありですし、僕が今のシチュエーションを活かすなら、「メイド仕事の休憩中に1時間だけデートしてくれる」とわかるタイトルをつけると思います。

なるほど! タイトルの情報は重要なんですね。

「ひと目で伝わる」のは本当に大事です。かわいいイラストがたくさんある中で、いいタイトルは絵を目立たせる大きな武器になります。今回のようなコンテスト形式や、SNSで絵をアップするときにも使えるテクニックですね。

他に、絵の技術面などアドバイスできることはあるでしょうか?

あずまどろさんは塗りがうまいので絵が映えていますが、全体で見ると線画の不安定さが少し気になります。かわいさは十分ですし描きたいものも捉えられているので、あとは細部までていねいに描けるようになったら、もっと強いイラストレーターになれると思います!
僕の知人に塗りがうまいイラストレーターさんがいて、あるとき線画もうまくなったと思ったら、あっという間に画集を出したり個展を開いたりするほどの人気になりましたよ。
【佳作】キャラの個性を描くことが「もっと知りたい」魅力に繋がる


この作品は、キャラの個性がはっきり伝わってきて選びました。
ギャルっぽい子に見えるけど、目が赤くて髪が白く、普通の人間とは違いそう。アクセサリーも全部宇宙モチーフで、宇宙から来たのか、宇宙がめっちゃ好きな子とわかる。どっちだろう? と思ったら、影の形が人ではない。正体は宇宙生物なのかも……というところでタイトルが「君は誰?」。
わかりやすい。そのうえ、ちゃんとかわいい。よかったです。

「気になるあのコ」は好意だと思っていたので、このシチュエーションは意外でした。

「気になる」がキャラから発せられているのか、こちらの感情なのか? のバランスもいいし、テーマをおもしろく使っていますよね。ストレートな恋愛テーマではない別ベクトルの作品は他にもいくつかありましたが、僕も学びになりました。

不気味とまでいかず、ちゃんとかわいいと感じられるのは、俯瞰(ふかん)構図の効果もあるのでしょうか? ちょっとドキっとしますね。

引き気味の画面はキャラ全体を見せられるし、「自分より身長低いんだろうな」と感じさせてくれるのもかわいいですよね。下からこちらの目を覗き込んでくるのは、不思議系ヒロインの常套手段。ばっちり取り入れられてますね。

さらにできる工夫として、ポーズでもっとかわいく見せられます。
例えば、ほっぺに人差し指をつけたポーズにすれば、「自分のことかわいいと思ってそう」なキャラにできる。手をポケットに入れるポーズなら、肩から袖口までのシルエットが描けて身体の面積が増えるので、小顔に見せられます。小生意気なポーズで不思議ちゃんの要素も足せます。ヤバめな子に見せたかったら変な手のポーズにするのもアリです。

手のポーズで、キャラの解像度まで上げられるんですね。

そうですね。手は顔の次に重要なパーツです。今のままでも問題ないのですが、もう一段掘り下げられるとイラスト全体のクオリティもアップするので、おすすめです。


下駄箱のシチュエーションは何作品かあり迷った中、空間がしっかり描けていて選びました。時間帯にあった光の入り方や配色もリアリティがあり、空気感まで表現できていて、完成度高く魅せられています。
放課後、靴箱の前で気になっている女の子とふと目があってしまう。
その表情はヘッドホンで隠れていて、驚いたのか、笑ったのか、表情は分からない。
けれどその一瞬で、自分の気持ちだけは、はっきりしてしまった。
描きたかったシチュエーションがきちんと切り取れてますし、シーンの前後に期待感が持てるのも、シチュエーションイラストとして気に入ったポイントです。このあと何か、もっとかわいい展開が起きそう、それ見たい! と思いました。

背景までしっかり描き込まれていますね。下駄箱は描くのが大変そうです……。

少しでもパースがずれると違和感がすごいし、サイズをあわせたり、ちょうどいい密度で描くのも難しい。僕も以前描いたことがありますが、こういうパースが効いた空間に描こうと思うと、ウッとなるモチーフです(苦笑)。
この絵は木箱ですが、ステンレスなど金属系のものもあり、質感の描き分けもいる。ハイライトの表現も朝夕で変わります。


時間にあわせた質感表現まで必要なのですね。技術力の高い作品ですが、アドバイスできることはあるでしょうか?

絵一枚で見たときに、もうひと要素インパクトが欲しいですね。今はキャラの個性として猫耳ヘッドホンが描かれていますが、全体的に落ち着いた配色の中、このピンクの小物だけだと少し浮いてしまいます。
例えば、この猫耳ヘッドホンをつけたキャラが好きな子だとすると、そのキャラのキーホルダーもカバンにつけている……まで描けると、画面の中でバランスが取れて、設定も強化できます。

この子の好きなものが見えてくると、もっと知りたくなりますね。

見ている側まで「この子が気になる」気持ちになれますよね。
他の投稿作品を見ると、とくまろさんはうまくて、何でも描けそうな方です。「これだけは誰にも負けない!」というものが持てると、強い武器になると思います!
かわいいイラストは、自分なりの掘り下げで差をつける



今回は263作品もの作品をご応募をいただき、ありがとうございました!

テーマ「気になるあのコ」の意図が伝わるか不安も期待もありましたが、たくさんご応募いただいてびっくりしました。
いい意味で裏切られた作品があったり、「こういうテイストもいいな」といい作品がいっぱい見れて楽しかったです。自分の中で新たな発見もでき、たくさん学ばせていただきました。かわいい作品、ごちそうさまでした! しばらくこれで食っていけます(笑)。

佳作の選考で悩まれていましたが、入賞とあと一歩の作品は、どんな違いがあったのでしょうか?

かわいいキャラが描けているのに、背景がなくてどういう場面かわからない、どうしてそのポーズをしているのかがわからない、いくら見てもシチュエーションに疑問が残ったり、シーンの時間がわからず夢の中の映像みたいに見える……そういう惜しい作品は多かったです。

講評にもあった、シチュエーションを伝える背景や、時間がわかるライティングなどがあるといいのでしょうか?

そうですね。小物やモブ、立ち方や座り方など、演出できることはたくさんあります。

かわいいだけじゃダメですか?

ダメでしたね(笑)。かわいければ良いと言いつつ……選考では、シチュエーションがはっきりわかったうえでもう一声「ここがいい」まで感じられるものが強かったです。

絵に共感しやすくなるんですね。

絵を見る人に感じてほしい気持ち、自分が絵で伝えたかった感情を、雰囲気だけじゃなくもうひと工夫掘り下げてほしい。「かわいい絵」は多くの人が描ける中で、それが自分の強みになります。
シチュエーションイラストの前提として、「無個性なキャラ」は存在しません。人である以上、何かしらの経験や歩んできた人生がある。
「この子は過去にこういうことがあったから、今こういうものを身に付けているんだな」というところまで描けると、表現の幅が広がり、絵もステップアップできると思います!
▼応募作品一覧と結果発表
【定期開催】GENSEKIイラストコンテスト
執筆
kao(GENSEKI/X:@kaosketch/Web)
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