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「意味のあるロボデザインは実際に存在するメカから発想を得る」タカヤマ先生によるロボ・メカイラコン振り返りレポ!

タカヤマ先生を審査員にお招きして開催したイラストコンテスト第二弾! テーマは「ロボット・メカ」です。今回もたくさんの応募をいただきました。

本記事ではインタビュー形式で、受賞した作品へのコメントをいただいております。また、ロボット・メカをデザインするときのコツや、パースやライティングを考えるためのヒントもいただきました。

ロボット・メカを描きたいイラストレーターの方、必見の内容になっています!

 

審査員
タカヤマトシアキ

デュエル・マスターズ、ヴァンガードなど様々なカードゲームでメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風をもつ。

インタビューした人
坂本彬

アイコン

GENSEKIのマーケティング担当。好きなロボはロボコン。


論理的にメカを描き、単純な面の組み合わせではなく機能性まで考えられている

坂本:
今回のイラコンは、前回の「人外・クリーチャー」を上回る作品数が集まりました。

 

タカヤマ:
描きやすい題材だったと思います。全体的にクオリティが高かったのですが、既にプロとして活躍している人も多くご参加頂いたのではないでしょうか。

 

坂本:
そうですね! それでは、最優秀賞を教えてください。

 

タカヤマ:
実は、今回も下記2作品で迷いました。

左:絶望!地球防衛軍!! 右:VILLAIN


坂本:
どちらもかっこいい……!

 

タカヤマ:
お二人ともしっかり描かれていて、プロのクオリティです。正直、甲乙つけがたくて迷いました。そこで今回のテーマに立ち戻り「よりメカらしさを表現できているのはどちらか」と考え、最優秀賞は「絶望!地球防衛軍!!」に決定しました。

 

坂本:
マエコさん、おめでとうございます!!!

絶望!地球防衛軍!!

マエコさんコメント

今回メカイラストを完成させるにあたって実は物凄く苦労しました。なかなかデザインがカッコよく決まらず途中4回程描くのを辞めようと思いました。ホントです…。
ですが、大尊敬のタカヤマトシアキ先生に直接絵を見て貰える機会は今後もう来ないかも知れないという思いでなんとか完成に漕ぎ着けました。

当初はアーマードコアのような無機質な兵器の集合体をコンセプトにしていましたが何度描き直してもカッコ良くならず、心機一転ドラゴンモチーフへ変更したことで快方へ向かいました。
今後もデザインに困った時はドラゴンモチーフで乗り切りたいと思います^ ^

今回の結果を励みに更にメカデザインのスキルを磨きたいと思います。手癖でスラスラ描けるように練習します!!
そしてまた第2回、第3回とメカイラコン開催して欲しいです!メカやモンスターが不人気な世の中ですので希少なテーマでイラコンを開催して下さるGENSEKI様に感謝です!ありがとうございました!

 

タカヤマ:
マエコさんの作品のよかった点は以下のとおりです。

  • メカの要素がしっかりと入っている
  • オリジナリティがあるデザイン
  • 構図で視点誘導ができている

坂本:
まずは、1つ目の「メカの要素がしっかりと入っている」について詳細を教えてください。

 

タカヤマ:
マエコさんの作品は、メカのパーツを、単なる面として描くだけでなく、機能性まで考慮して描かれています。また、ガトリングガン・ミサイルポッドなど、現代的な武器が描かれてるのもいいですね。こうした配慮で「メカらしさ」をうまく表現できています。

 

坂本:
なるほど、今回であれば地球を侵略するだけの強い機能がしっかりと備わっているということですね!

2つ目の「オリジナリティがあるデザイン」についても教えてください。

 

タカヤマ:
マエコさんのロボは、既存のロボデザインとは異なり、有機的なものと無機的なものを融合させています。ご自身の個性やオリジナリティがきちんと出ていて素晴らしいと思いました。また、テクスチャに頼らず、細部まできちんと描かれています。

 

坂本:
配管の模様などでしょうか?

 

細部まで描かれたロボ

 

タカヤマ:
そうですね。排気パイプの金属部分と装甲部の金属部分など、質感の違いまで描き分けができています。そして、こんなに細部まで描けているにも関わらず、見づらさがない点からも、デザイン力の高さを感じます。

 

坂本:
なるほど、たしかにミサイルポッド・ガトリングガンなど、たくさんの武器を持っていたり、曲線的なデザインで独創性はありながらも、それがきちんと一つにまとまっていますね!

では最後に「構図で視点誘導ができている」について教えてください。

 

タカヤマ:
ロボの周りの飛行機や爆発など背景が細かく美しく描かれていますがメインのメカを中心に放射状に配置されておりパッと見たときにメインのロボがしっかりと目に入ってきますよね。

 

坂本:
マエコさんは差分でエフェクトがかかっているイラストも投稿いただいていました。こちらを見るとより躍動感が伝わってきますね。

 

エフェクト入りのイラスト

タカヤマ:
そうですね。マエコさんの画力は、カードゲームのレアカードを描いていてもおかしくないほどの、高い描写力を感じました。ひょっとすると、既にそういったお仕事をされているかもしれません。

1点、可能であれば「サムネ映え」も考慮できるとさらに良くなると思います。
今回の作品の様に情報量の多いイラストはどうしてもぱっと見の視認性が低くなってしまいがちです。
画面全体を通してのコントラストやライティングを「小さな画像でも印象に残る」「一目で鑑賞者の目を引く」という部分でより注力してみては如何でしょうか?

今回のようなイラストコンテストの場合、サムネイルがたくさん並びます。
選考者はざっくりと見て良さそうな物からピックアップしていくことになるので
その中で目を引くかどうかも重要です。
実際の仕事でもパッと見の良さ、一目で印象の残るデザイン、構図やポージングを重要視される事も多いかと思います。

 

坂本:
ちなみに投稿いただいていたイラストのうち、3枚目はどうでしょう? サムネ映えしそうに思いますが……。

 

背景なし機体全身像

タカヤマ:
そうですね、上下の黒いサイドバーがない分、機体が大きく表示されるので、また機体のみで情報がシンプルになりコントラストもでてサムネ映えした可能性はあります。とはいえ、やはりクオリティもメカ要素も全て含めて素晴らしい作品です。

 

坂本:
本当にかっこいいですね。動いている姿が見たくなるロボでした。

説得力のあるメカを描くには、ロボの基本的な構造を知った上で、車やバイクの構成を知ることが重要

VILLAIN

坂本:
今回は惜しくも最優秀賞を逃したガマゾウさんのVILLAINについてもコメントをいただければと思います。

 

タカヤマ:
こちらも非常に素晴らしい作品です。キャラクター、背景ともにダークトーンであわせていくと暗くなりがちで視認性が落ちたりするのですが、そこに頭部を中心に機体のシルエットわかりやすいようにライティングを入れ、どこを見せたいのかが明確にしています。

VILLAINの名の通り、正義の味方側のようなロボを足蹴にしている構図も良いですね。
トレーディングカードゲームであれば、マエコさんの作品同様レアカードやパッケージを任せられるくらいのクオリティだと思いました。

 

坂本:
今回は最優秀賞の方と比べてメカ要素が足りなかった、というお話でした。最優秀賞を狙うなら、どういった点を改善すると良いでしょうか?

 

 

左:オレンジの発光部分 右:ロボの肩~翼の部分

 

タカヤマ:
質感の描き分けにこだわるとさらに良くなると思います。VILLAINのロボの、オレンジ色の肩付近のパーツなどのデティールはメカらしさを出せているんですが、それ以外が全て同じような質感とディテールに感じてしまいます。

素材が金属なのか、それとも全体的にひび割れているから実は岩でできているのかなどこうした質感がひと目でわかると、さらに良くなると思います。肘、膝、腹部などの関節部分に質感や色の違う描写を入れたり、各部の機能設定(どの部分で攻撃するか、武器は何になるのか、エンジンやコクピットの位置、バーニア等の推進装置や放熱用のパーツなど)や意味まで考えると、よりメカっぽさが明確になってくるのではないでしょうか。

 

坂本:
質感の描き分けや意味は「機能」も重要なロボは特に考える必要があるんですね。
VILLAINのロボですが、個人的には魅力的な敵という雰囲気で、設定や嗜好もすごく好きです。

 

タカヤマ:
そうですね。自分も、VILLAINはキャラクターのデザインラインもイラストとしての完成度も高くとてもかっこいいと思いました。
ここまでハイレベルな戦いになると、選ぶ側もすごく大変です(笑)。

 

坂本:
本当に、今回のロボ・メカイラコンもハイクオリティな作品がたくさん集まりました。

ちなみに、質感の描き分けや機能面というお話が出ましたが、戦闘用のロボは現実世界にはいませんよね。リアリティあるロボを描く際に、タカヤマさんはどのような資料や情報を見ているのでしょうか?

 

タカヤマ:
クリーチャー・人外イラコンでも実際の生き物を調べ参考にするというお話をしましたが、メカを描くときも実際のメカを参考にデティールなど描いたりします。

具体的には車やバイク、兵器などが多いです。自分たちの世代はスーパーカー世代で、フェラーリやランボルギーニに憧れていました。
子供のころから図鑑などで何と無しに知識を得て車はどういうパーツがあって構成されているのかが、何となく頭の中にありました。エンジン、フレーム、コクピット、ラジエターや空力パーツなど一つの塊に見える車は様々な機能のパーツが組み合わさり形作られているという基礎知識が根本にあったりして、そういった感覚ので知識をアップデートしてロボの基本構想を意識しつつデザインを起こしています。

 

坂本:
車やバイク! なるほど、たしかに一番身近にあって、エンジンなど動力があって、ロボに近いですね。タカヤマさんが好きな車はどういった車なのでしょうか?

 

タカヤマ:
海外のハイパフォーマンスカーやGTRのようなパワーがある車が好きです。そしてパワーのある車の構造は「普通の人には制御できないパワー」「汎用性を捨てスピードのみを追求した攻撃的で美しいデザイン」など一点に特化されいてて戦闘用ロボの様な色々な機能を削ぎ落した中二病的なコンセプトがロボのデザインを起こす際ににとても役立つんです。

 

坂本:
確かに、ロボを動かすのは相当なパワーが必要そうです。

 

タカヤマ:
そして、車や実際の兵器を参考として見るのもいいのですが、まず基礎的なロボの構造を知りたい、ということであればガンプラなどを作ることをおすすめします。関節の曲がり方や、面の構成まで手軽に一般的なメカの基本を知ることができると思います。

より詳しくデティールの入り方など内部フレームなども知識として仕入れたいのであればガンプラのマスターグレードシリーズがおすすめです。マスターグレードは関節や隠れて見えにくい装甲の中や内部構造まで作るのでより詳しく構造を理解できます。

 

坂本:
基礎をガンプラのマスターグレードで学び、そこから意味あるデザインを考えるために、実際に存在する車・バイクの構造を知るということですね。

 

タカヤマ:
そうです。そうするとデザインやディティールに説得力が生まれます。

 

坂本:
実在しないからこそ、実在するものの構造を取り入れて説得力を出すのは、ロボ・メカを描く上ではより重要になりますね。

かっこいいデザイン! こだわりあふれる佳作を紹介!

ここからは佳作の作品とタカヤマ先生からのコメントを一挙にご紹介します!

機体7_装備無し

タカヤマ:
誰が見ても「メカ」を描いているとわかる作品ですね! 細部に至るまで構造が描かれていて、メカ愛が伝わってきます。

最優秀賞を狙うのであれば、情景までこだわると良いと思いました。たとえば、イラストとして魅せる場合ライティングやパース、質感表現などにも自分のこだわりを入れてみたり、機体の陰影・シルエットがよりわかりやすく表現できることを目指してみてはいかがでしょうか。

 

機壊式邪龍 ファフニール・オメガ

タカヤマ:
ケセルムさんは前回も佳作に選ばせていただきました。やはりこの方の作品は既に完成されていますね。いまのままでも十分にプロとしてやっていけると思います。

ここからプロの上位に食い込むには、もう一歩踏み出す必要があります。前回と同じようなフィードバックになってしまうのですが、構図などの表現をもう一捻りできるといいでしょう。

今回描いていただいたドラゴンはとんがった顔立ちなので、現在の構図が一番顔を描きやすいアングルだと思いますし、全体のシルエットもデザインもハッキリわかるのである意味正解の構図です。しかしながら自分の印象は躍動感が足らず図鑑の様な説明的な構図になってしまっていると感じてしまいます。

例えばですがこのドラゴンの強さをより強調するために、見せ方をあおり構図にして、ドラゴンの左足を一歩踏み出させてオーバーパース感を出し巨大感を少々過剰に演出してみるのはどうでしょうか。

そうすることで、画面を見ている人が、まさにこのドラゴンを見上げているような印象になります。あえて背景を真っ赤にして、はっきりとしたコントラストをつけたりして画面にメリハリをつけてみるとか…。

ここまで完成していると、今までの雰囲気から変えることが怖いし難しいのもよくわかります。実は自分もフリーになった初期の頃、図鑑的なポーズや構図になってしまうことが多くパースのかかった迫力のあるポーズが出来るようになるには結構時間が掛かりました。

完成したスタイルから短期間で極端に絵を変えることは難いと思いますが、今後ケセルムさんの進化する作品を見られることを楽しみにしています!

黒の守護神

タカヤマ:
情景も描かれていて、自分自身が描きたいものに対して一生懸命取り組んだ印象を受けます。すごく良いですね!

描きたい気持ちと方向性は非常に良いので、ライティング・パースの正しさ、質感表現までできると、さらに良い絵になります。

ロボに限らずパースを取ったりライティングを参考にしたりする時におすすめなのが、3Dソフトの導入です。3Dソフトと聞くと難しい印象を受けるかもしれませんが、完璧に使いこなす必要はありません。

自分はマジックポーザーとポーザーを使っています。今回の絵であればまず人間に剣を持たせて、後ろの建物を並べ、ライトの設定を決めるだけでも正しいライティング・パースの良い参考資料が出来ると思いますなります。試してみてください!

▼ おすすめの3Dソフト

マジックポーザー(iOS版)

マジックポーザー(Android版)

ポーザー

防衛

タカヤマ:

ポーズと画面構成が非常にかっこいいですね! 躍動感があり、ザ・ロボという印象を受けます。ここまでかっこいい雰囲気を表現できるなら、次回はメカの描写と構造のディティール描写までこだわってほしいです!

 

燃え立つは紅焔

タカヤマ:
スーパーロボ風のデザイン、そしてヒロイックなポーズが似合っていてかっこいいですね!

この絵をさらによくするには、ライティングと質感表現にこだわると良いと思います。
特にライティングは、左右の影がぱきっとしすぎてデザインが見づらくなっています。
かっこいいデザインがより映えるようなライティングができるようになると、さらに良い絵になると思いますよ!

 

強襲

タカヤマ:
描いてある題材、情景が非常にかっこいいですね! また2体のロボがいて、それぞれ異なる未来的デザイン&ミリタリーデザインで描いている点も素晴らしいと思いました。

躍動感もあり、かっこいいデザインも完成しているので、次回は質感表現までこだわって仕上げると、さらに作品のクオリティが上がると思います!


次回のイラコンはタカヤマ先生によるオンライン講評会付き!さらに豪華賞品も…!?

坂本:
今回も作品へのコメントだけでなく、メカやロボのデザインを考えるためのヒントや描くためのポイントまで教えていただきました。特に、車とバイクの構造理解は、なるほどなと思いました。

 

タカヤマ:
そうですね。個人的に思うのは、ロボ・メカが流行るときと、車が流行る時って、同じタイミングのような気がしています。

 

坂本:
たしかに、メカ・ロボが好きな人と、車、特にスーパーカーが好きな人は、共通するような気がしますね。どちらも、メカ好きな人の気持ちをくすぐる機能性というか……機能美があるような気がします。

 

タカヤマ:
最近は「若者の車離れ」という話もありますが、ロボ・メカも若者からの支持が減っているような気がしています。だから正直、今回もコンテストにどれくらい作品があつまるか不安でした。

 

坂本:
結果的に前回を上回りました。クオリティも非常に高く、このイラストコンテストページを、そのままポートフォリオとして企業にお見せしても良いくらいだなと思っています。

また、毎回取材をさせていただいている私としては、タカヤマさんのこの講評コメントを描いた人に直接届けたいなと思っています。

 

タカヤマ:
では、次回はイラコン参加者だけに限定して、この講評会をオンラインでやりましょう。

坂本:
はい、是非! さらに次回はスポンサーにWacomさん・パルミーさんをお呼びして、賞品も豪華になる予定です。

 

次回のタカヤマ先生のイラコン

テーマ「ドラゴン限定!国を滅ぼす暗黒ドラゴン」は近日中に開始予定…!

詳細は下記よりご確認ください…!

 

「ワコム」×「パルミー」×「GENSEKI」 クリエイター全力応援コンテスト第1回目開催!画像