GENSEKIマガジン

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絵を仕事にするなら信頼・実績を積み上げつつ 自分が選べる選択肢が常にあること 【出水ぽすか 1on1 レッスン by GENSEKI 学生応援 PJT】

 

こんにちは、GENSEKIの坂本です。
本日は、名古屋デザイナー学院と開催させていただいた、GENSEKI学生応援プロジェクトイラストコンテストで最優秀賞に選ばれた方の、出水ぽすか先生との1on1レッスンの模様をお伝えします!

 

GENSEKI専門学校プロジェクトとは

専門学校で切磋琢磨する学生クリエイターの皆様を応援させていただくべく、GENSEKIでは2022年夏〜秋にかけて複数の専門学校と、各校の生徒さん向けにイラストコンクールを開催させて頂きました。

優秀賞に選ばれた方は、出水ぽすか先生とオンラインでの1on1レッスンをプレゼント。

今回ご紹介するのは、「名古屋デザイナー学院」と開催したコンクールです。

テーマは「ご馳走」でした。

 

出水ぽすか先生の1on1レッスン参加者

 

出水ぽすか先生
週刊少年ジャンプ「約束のネバーランド」の作画、他にもコロコロコミック、ポケモンカードゲーム等のイラストを手掛ける。
今回のコンクールでは審査員を務めて頂いた。

 

齋藤佳輝
GENSEKIにてイラストコンテストの運営や新規営業を担当。
1on1レッスンでは全体の進行を務める。

 

いけた さん
マンガ学科にて漫画家を目指す19歳。好きな漫画は手塚治虫先生の『バンパイヤ』


自分の苦手を理解してデザイン力と独自性で魅せる、いけたさんの「ご馳走」

もうたべられないよ~zzz / いけた

齋藤
いけたさん、この度は最優秀賞の受賞おめでとうございます。改めて作品のコンセプトについて教えてください。

 

いけた
この絵は、宇宙空間にあるお菓子の塔です。この作品を描くにあたって自分の好きな食べ物をたくさん描きたいと思い、いろいろなスイーツをいれました。2人のキャラクターが口いっぱいにお菓子を頬張っていますが、これは私の欲望です(笑)

 

齋藤
大きいお菓子をたくさん食べるって夢がありますよね。では出水先生、講評をお願いします。

 

出水ぽすか先生
はい。今回のコンテストも良い作品が多くて本当に迷いに迷ったのですが、最終的には私の「好き」で決めたところがあります。
さて、いけたさんの絵で私が良いなと思ったところは下記の点です。

  • シンプルな中にもいろいろな技法を取り入れている独自性
  • お菓子を描くぞ!というモチベーションが伝わってくる
  • 苦手な表現を理解して、うまくデザインで補っている

 

シンプルな中にもいろいろな技法を取り入れている独自性

出水ぽすか先生
まず、いけたさんの絵ですがデフォルメ加減がすごい好きです。そして、デフォルメだけでなく絵画的に描かれている部分もあります。例えば、いちごです。

リアルに描かれたいちご

出水ぽすか先生
この、いちごの表現はすごくリアルですよね。絵画のスキルも専門学校で学んだんですか?

 

いけた
高校生の時に学びました。デザイン系の高校に通っていたんです。さらにその時、部活では美術部と漫画研究部を掛け持ちしていました。

 

齋藤
絵づくしだ…!

 

出水ぽすか先生
いちご以外に、構図もすごく面白いです。お菓子の塔ということなのですが、どっちが上でどっちが下なのか分からない。でも宇宙空間という場所なので、上も下もないんですよね。いけたさんの独自性がしっかり出ていると思います。

 

齋藤
この構図にたどり着くまで苦労したんですか?

 

いけた
はい。構図とモチーフの配置に一番悩んで、いろいろな構図を試しました。元々「人より大きいお菓子」というアイディアがあり、試行錯誤の末にこの絵にたどり着いたんです。
先生に褒めていただいた「宇宙空間」という設定は最後の方に出てきたアイディアでした。

 

齋藤
苦労されたんですね。さきほど、いけたさんは手塚治虫先生が好きと仰っていました。

 

出水ぽすか先生
私はそれを聞いてすごく納得しました(笑)

 

齋藤
今回のいけたさんの絵は、手塚治虫先生への「尊敬」も伝わってきながら「新しさ」も感じます。どういった点がそうさせているのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
反射光の入れ方など細かな表現で現代らしさを表現していると思います。この点も素晴らしいと思いました。

 

お菓子を描くぞ!というモチベーションが伝わってくる

出水ぽすか先生
さきほどのいけたさんがイラストについて説明してくれた際に「自分が好きな食べ物を」と仰っていましたよね。その「好き」の気持ちがお菓子を描くぞ、というモチベーションの高さに繋がったのではないでしょうか。絵を見ていても、それが伝わってきました。

 

齋藤
好きという気持ちは大事なんですね。

 

出水ぽすか先生
そうですね。なんでも好きなもの描いていいですよ、というときは自分の気持ちを乗せて描くことが大事だと思います。
私は今日まで、いけたさんの絵しか見たことなかったんですが、今日お顔を拝見したら絵の中で一番目を引く色だった「緑」といけたさんの髪の毛の色が同じで、なるほどと思いました。

 

齋藤
いけたさんの「好き・個性」が活きる1枚だったんですね!

 

出水ぽすか先生
いけたさん、ドーナツも好きなんですか?

 

いけた
はい、好きです!

 

出水ぽすか先生
やっぱり!私もドーナッツを描くんですけど、描くの難しいんですよね。特にチョコレートは難しい。この絵のドーナッツは実際に食べたドーナッツなんですか?

 

いけた
はい。おっしゃる通り、チョコを描くのは難しかったです。

 

出水ぽすか先生
ですよね(笑)難しいのに一番手前に描く、それだけ「好き」のエネルギーがあるんだと思いました。ドーナッツの影に紫を使っていますよね。

 


齋藤
左側のシンプルなドーナッツのところですね。

 

出水ぽすか先生
この表現を見て実際に食べた人なんだろうと思っていました。大好きなモチーフをしっかり見て描いたということが伝わってきます。

 

苦手なものを理解して、うまくデザインで補っている

出水ぽすか先生
いけたさんは自分の得意な表現を理解して、押し出しつつ自分が苦手な表現はうまくデザインで補っています。この点もすごく良いと思いました。

 

齋藤
例えばどういった点でしょうか?

 

出水ぽすか先生
例えば、いちごはとてもリアルに描けている一方で洋服や靴などの小物はちょっと苦手な印象を受けました。でも今回の構図をみると、その苦手なものって全面に描かれない構図になっていますよね。

 

キャラクターの足元

齋藤
たしかに、足元は隠れていますね!

 

出水ぽすか先生
デザインとして隠しているので、ここがすごく上手だなと思いました。
もちろん、これはこれで、すごくいい絵なんですが、もっといろいろ描けるようになったほうが、いけたさんの可能性がさらに広がると思います。
いけたさんには伸びしろがたくさんあります!是非、いろいろなモチーフをたくさん研究してほしいです。

 

齋藤
どのようにモチーフを研究するとよいでしょうか?

 

出水ぽすか先生
まずは、自分の生活の中の一部を絵に取り入れましょう。自分のお気に入りのスニーカーを描いたり、新しい靴を買ったら、たくさん写真を撮ったりすると良いと思います。

 

齋藤
「お気に入り」という点がポイントですね!

 

いけた
やってみます!

 

齋藤
キャラクターの表情はどうでしょうか?

 

出水ぽすか先生
キャラクターの表情も、とても私好みです。2人共かぶりついているこの構図もすごく良いですよね。

 

いけた
ありがとうございます。

 

出水ぽすか先生
かぶりついている状態って描くのは簡単じゃないんです。それをデフォルメで可愛く笑顔で表現できている点が良いですね。非常に好感が持てます。

 

齋藤
キャラクター達の幸せな気持ちが伝わってくる表情ですよね。

 

出水ぽすか先生
ここ、いけたさんのすごく良い個性なんです。だから練習を重ねてリアルな絵を描けるようになっても、この個性・感性は消さないでほしいです。

 

齋藤
キャラクターの表情は力を入れて描いたんですか?

 

いけた
はい。一番力を入れました!特に眉毛の形には力を入れました。

 

出水ぽすか先生
目の周りは表情を表現しやすいですよね。特にこの絵は口が隠れているので目で表現することが重要になります。

 

いけた
出水先生は、どうやって表情の表現を学ばれたのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
恥を偲んで、自分のいろんな表情を自撮りします。自分がやれば資料を探す手間も省けますからね。スマホのカメラロールが自分の顔だらけになるところが試練です(笑)

 

いけた
いままで、ポーズは写真をとっていたのですが、表情はやったことありませんでした。

 

出水ぽすか先生
ぜひ、やってみてください!


漫画のコツはない、「完成」を積み重ねることが大事

齋藤
いけたさんは漫画家志望ということですが、出水先生に聞きたいことはありますか?

 

いけた
漫画を描くコツを教えてほしいです。日々、漫画の描き方・コマ割りなど勉強しているのですが、なかなかスラスラ描けません。

 

出水ぽすか先生
正直、コツは一生かかってもつかめないと思っています。私もコツをつかんだ!と思った瞬間は一度もありません。じゃあどうやって成長するのかというと、完成させて誰かに見せるしかないんです。誰かに見せると自分のだめなところに気づけます。そうして少しずつ良くしていくしかないと思います。

 

齋藤
出水先生は何歳のときに出版社に持ち込んだのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
投稿自体は高校生のときからしていましたが、持ち込みは19歳からやっていました。

 

齋藤
そこで先生も色々な気づきを得たのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
はい、自分のだめなところも(笑)
でも行って変わったことは、すごくたくさんあります。いけたさんは高校生の時にも絵をたくさん描かれているようなので、既にいろいろ活動しているかもしれませんが、是非完成を積み重ねてほしいですね。

 

いけた
ありがとうございます!

 

課題・仕事は少し手を付けておいて、「情報収集アンテナ」を張る


いけた
先生は仕事や課題の依頼がきたとき、どうやってモチベーションを上げていますか?私は自分の好きなものを描くときはモチベーションが高いのですが、課題だとモチベーションが上がらずやる気もでないんです。

 

出水ぽすか先生
気持ちすごくわかります。私は、仕事の依頼がきたら早めに進めるようにしています。

 

齋藤
アイディアはすぐに出てくるのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
でてきません(笑)なので、少しだけ進めておいて頭の片隅にいれておくんです。そうすると、「アンテナ」が張られて、出先等で知らず知らずのうちに情報が入ってくるようになります。

 

齋藤
情報がたまってきたら、描き出すんですね。

 

出水ぽすか先生
はい。なので私はギリギリの依頼は受けません。考える時間がとれる依頼を基本的には受けるようにしています。

 

齋藤
なるほど。

 

出水ぽすか先生
あとは、自分の引き出しを増やすためにも「イラストを描く以外の事」にたくさん挑戦することもおすすめです。

 

齋藤
先生が最近挑戦したことはありますか?

 

出水ぽすか先生
私の話でいうと、連載中できなかったことをたくさんしました。その一つが友達を作ることです。

 

齋藤
大人になると新しい友だちができる機会は減りますよね。

 

出水ぽすか先生
はい。なのでDiscordとかで友達作って、みんなでゲームしたり、ご飯にいったりそういうことをしました。

 

齋藤
学生さんの場合はどういったことをすることがおすすめでしょう?

 

出水ぽすか先生
運動したり、ライブに行ったり、心が動くようなことをたくさんすると良いと思います。なので、私は連載中でも「旅行」に行くようにしていました。

 

齋藤
国内ですか?

 

出水ぽすか先生
いえ、海外旅行です。旅行に行くときは絵を描く道具を持っていきません。自分の目で見て、たくさん写真撮って、途中でお金盗まれたりして…そういったリアルな体験が大事だと思いました。

 

齋藤
いけたさんは絵を描くこと以外に好きなことはありますか?

 

いけた
実は…絵を描くこと以上に好きなのが造形物を作ることなんです。

 

いけたさんの作ったきぐるみ

 

齋藤
すごい…!! これ作ったんですね。

 

いけた
中に入っているのは私です。

 

出水ぽすか先生
すごいですね!造形物をつくるとバランスなど、手で触るとよくわかるので絵に活きると思います!

 

絵で生きていくか迷った時は、身内だけでなくプロの意見を聞くこと

いけた
学生の頃にやっておいたほうがいいことありますか?

 

出水ぽすか先生
さきほど、お話した通り「絵を発表すること」は大事ですね。あと、学生さんだと「進路」とかも考えますよね?

 

齋藤
そうですね。専門学校は就活も早いのではないでしょうか。

 

出水ぽすか先生
やっておいたほうがいいこと、とは話が少しずれますが「家族からの ”無理だよ” は信じすぎないほうが良い」と思います。

 

齋藤
それは、なぜでしょうか?

 

出水ぽすか先生
やっぱり親からすると安定を望みますよね。絵で食べていくというと心配されると思います。なので、会社に就職するか否かはすごく悩みますよね。実は私も大学生の時に就活しました。

 

齋藤
19歳から出版社に持ち込んでいるのにですか !?

 

出水ぽすか先生
そうなんですよ。
いけたさんはイラストの学校に通われているので、相談できる相手がたくさんいると思います。迷ったら、先生や出版社の人など、プロに相談してみてほしいです。

 

齋藤
まとめると、たくさん絵を描いて世の中に出していきながら、進路はプロに相談する、ということですね。

 

出水ぽすか先生
あ、あと絵って必ずしも絵がすごく上手い人ばかりに仕事がいくわけじゃありません。締め切りを守る人に仕事の依頼はきます(笑)なので、学生のうちから課題の締切は守るとかそういう習慣を身に着けたほうが良いです。

 

齋藤
締め切りは大事ですね!


不安があるなら、自分の選択肢をたくさん用意しておく

 

齋藤
進路についてご両親が心配するというのもわかります。絵で食べていくというのは一朝一夕ではできません。先生はどのように収入を安定させたのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
さきほど、大学の時に就活したという話をしたんですが、私は学生時代から社会人と同じくらいの稼ぎがありました。

 

齋藤
じゃあ、そもそも就活する必要なかったんですね。

 

出水ぽすか先生
はい。その状況でも迷うんですよ。親は就職して欲しいと言っていたので、一応就活はしましたが第一志望の会社に受からなかったので、絵で食べていくことにしました。

 

齋藤
なるほど。でも学生時代から社会人くらい稼ぐってすごいですよね。どのように稼いでいたんでしょうか?

 

出水ぽすか先生
特別なことはしていないです。学生の時から小さな絵の依頼は受けていました。そうやって小さい実績から積み上げていくうちに、色々な依頼がくるようになったんです。あとは、学生時代から漫画家のアシスタントもやっていました。

 

齋藤
フリーランスということだと思うのですが、不安はなかったのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
ありました。なので、「もしも」のときのために、教員免許もとりました。
自分の中の優先度を

  1. 絵で食べていく
  2. 就職する
  3. 教師になる

として考えて、「もしも」のことを考えてだめだったときの選択肢をたくさん作っておきました

 

齋藤
なるほど、たしかに不安があると絵にも打ち込めないですもんね。メンタル安定のためにもいろいろな選択肢を用意することは重要ですね。

 

【全体講評】やる気と個性が絵から伝わってきた

齋藤
それでは全体講評をお願いします。

 

出水ぽすか先生
今回は200近い作品が集まりましたが、皆さん絵からやる気が伝わってきました。それぞれが自分の個性を伸ばすことを頑張っている印象です。
これからもぜひ今の描き方を続けていってほしいと思います。

 

齋藤
出水先生、いけたさん、本日はありがとうございました。

 

 

編集

坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。

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