「イラストを描くことを仕事にしたいけど、どうしたらいいかわからない……」そんな悩みを持っている人はいませんか。
この連載では、大人気イラストレーターのさいとうなおき先生に「イラストを仕事にするための質問」に答えていただきました。
今回のテーマはイラストを仕事にしたい人が「用意した方がいいもの」です。第一線で活躍するプロの知見、ぜひ参考にしてください!
第1回イラストを仕事にしたい人が「用意すべきモノ」(この記事)
第2回「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」
第3回「イラストで初めて仕事をもらったときにどうすればいいか」
第4回「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」
第5回「イラストの人気ジャンルって?」
第6回「イラスト全般についての疑問解消Q&A」
答えてくれた人
さいとうなおき(Twitter・YouTube)
イラストレーター/YouTuber。1982年生まれ、山形県出身。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。『ポケモンカードイラストレーター』。
YouTubeチャンネル登録者130万人以上を記録。『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。
Q.イラストを仕事にするために用意した方がいい機材はなんですか?
A.まずはiPadとApple Pencilを使ってみる。それで自分に必要なものを知ろう!
ーーイラストを仕事にしたい方が最初に用意したほうがいい機材はなんでしょうか?
さいとう先生
これから機材を買おうとするなら、やはりiPadとApple Pencilですかね。
最近の若い人はスマホで描いている人が多いです。たしかにスマホでも描けるとは思いますが、スマホでは画面が小さいですよね。イラストをめちゃくちゃに拡大して、少しずつ細部を調整して……というスタイルにならざるを得ません。これでは非効率ですし、イラスト全体で見たときにブレが生じることも多いです。
やはりプロを目指す場合は、イラスト全体が他人からどう見えるのかを気にすべきだと思います。そこで、イラスト全体が見えやすい機材を使うことが大事です。
ーーiPadでいいんですね。仕事にするのなら、もっと高価な機材が必要かと思っていました。
さいとう先生
僕の本音を言うとノートPCとタブレットを買うのがおすすめではあるんですよ。ソフトが多いので、選択の幅も広がります。
ただ、若い人だと最初から高いものを買うのも難しいと思うんです。だから自分に何が必要かを見定める上でも、まず手に取りやすいiPadを触ってみたらいいと思います。
ーーiPadを使ううちに、次の機材もわかってくるということですね。
さいとう先生
iPadに慣れたら、自分の求める環境もわかってくるはず。ここから先はいろいろな機材が考えられます。
たとえば、資料を見ながら描くことが多い人は、iPadをもう1台買い足して、デュアルディスプレイとして使ってみるのもおすすめです。片方に資料を表示して、もう片方を作業領域にするんです。
それ以外にも、自分がレイヤーをたくさん使うタイプのイラストレーターだとわかったら、iPadではスペック的に足りなくなるかもしれません。その場合はiPad Proなどの上位モデルを買い足すのもいいと思います。
もちろん、先ほど言ったようにこのタイミングでPCとタブレットにステップアップするのもおすすめです。
ーー初心者におすすめの描画ソフトを教えてください。
さいとう先生
iPadのアプリの「Procreate」は2,000円買い切りなので、まずそこから初めるのがいいのではないでしょうか。「CLIP STUDIO PAINT」は月額480円~なので、そちらも使いやすいんじゃないかと思います。
Q.作業環境で必要なものを教えてください
A.作業用の机と椅子を必ず用意しよう! 昇降デスクを使うのもおすすめ。
ーー作業環境でこれだけはそろえておいたほうがいいものはありますか?
さいとう先生
まず机と椅子は必須です。経験上、こたつやちゃぶ台など、低い台で描くのは、体を悪くするのでやめたほうがいいです!
僕は大学生の頃から24歳くらいまではこたつに座椅子スタイルで描いていたんですけど、腰も痛くなるし痔になるしで大変でした。そこで「作業環境に投資しよう」とアーロンチェア(ハーマンミラー社の人間工学に基づいた疲れにくいとされる椅子)を買ったんです。
とはいえ、アーロンチェアは10万円以上します。最初からこういったものをそろえるのはなかなか難しいですよね。インテリアショップに行って、自分にしっくりくる安価なものを探すといいでしょう。
ーー机に関してはどうでしょうか。
さいとう先生
最近すごく良いなと思って、実際使っているのは、天板を上げ下げできる昇降デスクです。ずっと座っていると下半身の血流が悪くなっちゃうらしいんですよね。
昇降デスクなら、天板を上げて立ったまま作業ができます。安いものだと2万円台のものもあるので、導入しやすいのも魅力です。
ずっと立っているのもよくないそうなので、最近は1時間おきに立ったり座ったりしてますね。
Q.名刺はどんなふうにすればいいですか?
A.凝った名刺にする必要なし! 自分のSNSに誘導することを考えよう!
ーーイラストレーターとしてお仕事をする上で、名刺も最初に準備しておいたほうがいいものだと思います。名刺にはどんなことを書けばいいでしょうか?
さいとう先生
SNSのアイコンと、IDですね。自分のSNSアカウントのリンクを入れたQRコードなども載せるといいと思います。
あくまで名刺は最初のコンタクトで、その次にどうつなげていくかが大事です。だから今後も関係を続ける意味でも、SNSに誘導するツールとして捉えておくのがいいんじゃないでしょうか。
ーー重要なのはSNSなんですね。イラストレーターなら、自分が自信のあるイラストを載せるのがいいのでは、と思っていました。
さいとう先生
きっと、そう考えるのが基本ですよね。ただ、イラストレーターが名刺交換をしたときに、社交辞令として「ステキですね〜」と言われているような光景をよく見るんです。ほめられてはいるんですが、なんか相手に引っかかってる感じがしないですよね(笑)。
自信の絵を載せるのも大事ですが、それよりSNSのアイコンを載せて印象付けて、SNSに誘導するほうが効果的だと感じますね。そこで、自分がどういう人間なのかを知ってもらったほうがいいでしょう。
ーーイラストレーターは凝った名刺に憧れる人も多いと思います。そのあたりはいかがですか?
さいとう先生
悩ましいですね。人それぞれなので正解はないんですが、最初から名刺にお金をかけすぎるのもよくないかもしれません。僕は「名刺はないよりはあったほうがいい」くらいに考えるほうがいいと思います。
ーー名刺以前の話になりますが、ペンネームを使わずに本名で活動することについてはどうでしょうか。いろいろな問題もつきまとってしまいそうです。
さいとう先生
そうですね。最近は本人と紐づくような形にすると特定されてしまうおそれもあるので、できれば本名は避けた方がいいでしょうね。僕自身は、本名をひらがな表記にしたものにしていますが……。
Q.生活習慣など、気を配っていることはありますか?
A.クリエイターも「普通の人間」! 運動をして、睡眠はしっかりとろう!寝る前にスマホも見ないほうが良い!
ーーイラストレーターは体を使う仕事だと思います。生活習慣などに気を配る必要もあるのかなと思いましたが、いかがでしょうか。
さいとう先生
月並みなことですが、やはり運動をしたほうがいいですね。いいクリエイティブを作るためには健康が一番大事だと思います。
どこか不調があると集中力もパフォーマンスも落ちますし、自分の健康をキープする努力はしておいたほうがいいですね。僕も週1でジムに通ったり、毎日20〜30分散歩したりと意識的に運動しています。
あとはしっかり睡眠をとることですかね。最低7時間は睡眠をとるように心がけています。それから、寝る前にスマホを見ると寝れなくなるし、夜は気持ちが落ち込みやすいので気をつけていますね。
僕含めてですけど、クリエーターってなんか自分が並外れた人間って思ってるフシがあると思うんですよ(笑)。だけど、不健康な生活をしていると当たり前に体は壊れます。どこかで「自分も普通の人間なんだぞ」と認識しておく必要があります。
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さいとうなおき先生のインタビュー、いかがだったでしょうか? 連載は続きますので、どうぞお楽しみに!
第1回イラストを仕事にしたい人が「用意すべきモノ」(この記事)
第2回「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」
第3回「イラストで初めて仕事をもらったときにどうすればいいか」
第4回「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」
第5回「イラストの人気ジャンルって?」
第6回「イラスト全般についての疑問解消Q&A」
執筆
神田匠(Twitter:@gogonocoda)
イラスト
きびのあやとら(Twitter:@kibinoayatra)
編集
斎藤充博(Twitter:@3216)