GENSEKIマガジン

モノづくりを広げる・支えるメディア

想像が広がる物語を1枚の絵とキャラクターに描くー イラストレーター・つもい

魅力的なキャラクター、独自の世界観を大切にしたイラストで、キャラクターデザインなど多岐にわたって活躍中のイラストレーター・つもい氏。

たくさんの人を魅了するキャラクター、考察せずにはいられないイラストの物語性はどこから来るのか、過去から現在、未来の展望まで、様々な角度から語っていただいた。

ひとつひとつのイラストに物語を込めて

『Taboo』

『Taboo』

ーーまず最初に、ご自身の代表作品を一つご紹介頂きたいと思います。

つもい:こちらの『Taboo』というイラストです。先に物語を考えてから描いたイラストなのですが、思った以上に皆さんに見て頂けて、「このスタイルで行こう」と思うきっかけになりました。

ーーこの絵はTwitterでの反響もすごいですね!

つもい:当初は、「治安が悪めの男の子」を描いていて、評判も良かったのですがあまり他と差別化できなかったというか、私独自の世界観がまだ表現できていないなと感じていて。それで、絵に物語をつけようとか、考察意欲がわくような絵が描きたいと、こういった形になりました。

ーー物語のワンシーンという感じを受けたのですが、どういうイメージで描かれたのでしょうか?

つもい:これは、この少年がどうなったかという、その後のイラストがあります。
私なりの物語としては、1枚目の『Taboo』がマリア像の前で銃を撃ってしまったイラストで、「では何故そこで撃ってしまったか?」というのが2枚目の『磔』です。磔されてはいるんですが、両手を上げているようにして「降参」という意味を持っている構図にしました。『Taboo』で撃った相手というのが未来の自分で、ずっとループしてる感じの物語を想定して描いています。

『磔』

『磔』

ーーぜひ漫画化してほしいです!(笑)見た方のコメントには、その物語とは違う考察もあったのでしょうか?

つもい:ありました。『磔』の子の、チラッと見えてる拘束ハーネスに気づいて下さる方も結構いらっしゃって。「1枚目でタブーを犯してしまったから、天国にも地獄にも行けず、神様に使われている?」という鋭いものもありましたね。それもいいな!と思いました(笑)

ーー面白いですね。1枚目の時に、2枚目も描こうと決めていたのでしょうか?それとも反響を見て続きを描こうと思ったのでしょうか?

つもい:物語は元々こうしようと決めていたので、そこに皆さんの反響も参考に取り入れつつ、続きを描きました。

ーー最初に治安の悪い男の子を描いていたのは、元々ご自身の好みや、描くのが好きだったのでしょうか?

つもい:そうですね。最初はずっとこういうニヤニヤしてる様な絵が好きで、描いていました。

『Wyd??』

『Wyd??』

ーーもう顔が悪そう(笑)個人的にも好みです。

つもい:この絵がきっかけになり、パイ インターナショナルさんの『Bad Boys Illustration』という、治安悪めのイラストを描いているイラストレーターさんがたくさん掲載されているイラスト本に、私も載せて頂きました。

ーー素敵な本ですね。イラスト掲載のお話はどこから頂いたのでしょうか?突然DMでご依頼が来たのでしょうか?

つもい:そうです。多分このイラストがパイ インターナショナルさんの目に留まったのがきっかけかなと思います。それから本に載って、本屋さんに並んで。夢が叶ったと思って驚きました。去年の冬頃だったと思います。(2021.11.22 発売)

ーー最近ですね。イラストを描かれたのは2021年の6月で、その後物語テイストに行ったのが、絵がUPされた9月頃でしょうか?

つもい:はい。次のイラストも結構反響があって、それでお仕事が貰えたというのもあります。展示会にも招いていただきました。

ーー展示会まで!このイラストから色々と発展して行ったのですね。

フィーリングと天性の才能、意外な環境

『Mood』

『Mood』

ーー絵を描き始めたきっかけや、今までどうやって勉強してきたのかをお伺いできればと思います。

つもい:絵に関しては全く誰にも教わってなくて、それこそ中学・高校の美術の授業でかじった程度です。それを集中してやってた程度で、絵に関する知識は全く無いので、教えて下さいと言われても逆に私が教えてほしいぐらいです(笑)

ーー感覚的にずっと描いてきたら、いい感じになってきたのでしょうか?

つもい:そうです、フィーリングで全部やってきて。

ーー独学では行き詰る時が来ると思うのですが、それでここまで絵がうまくなるというのは天性のものだと思います。何歳ぐらいから描いていらしたのでしょうか?

つもい:絵を描くのはほんとに小さいころからやっていました。中学生の時に誕生日プレゼントで板タブを買って貰ってちょこちょこ描いていて、本格的に絵を描こうと思い始めたのは高校2年生位です。そこからTwitter等で皆さんに見てもらえるよう発信するようになりました。

ーー投稿は最初からTwitterでされているのでしょうか?フォロワーが増えたと実感した時はありましたか?

つもい:そうですね、投稿スタンスは変えずにやってます。『Taboo』や、治安悪い系の男の子を描いたのがきっかけで、沢山の方に見て頂けたかと思います。
2年位活動をやってきて、1年目は8000人ぐらいだったのが、去年の11月に8万人になり、1年間で10倍になったので驚きました。

ーーまだ数年でこの人気は驚きです!構想を始めてから描き終わるまでは、どのぐらいお時間がかかるのでしょうか?物語を考えるのが大変なのかと感じますが。

つもい:1週間に1作品は投稿したいなという感じなので、金曜日の夜から描きはじめて、土曜か日曜の夜にUPするのがルーティンです。
描き始める前にも、いろんな資料を探して、こんな物語にしようかな、というのはしてますね。結構そこがキーになってくるので、金曜日に描くとしたら、月曜日から木曜日までずっと資料は探しています。

ーー考察したくなる物語はそこから生まれるのですね。

『Bye』

『Bye』

ーー絵に関して、尊敬している方や作品はありますでしょうか?

つもい:オリジナルで投稿する前は、結構ファンアートを描いていて、最近だと「東京リベンジャーズ」や「時光代理人」、あと「ジョジョの奇妙な冒険(以下JOJO)」が大好きです。荒木飛呂彦先生の絵柄の、特徴的な唇、まつ毛が多め、というような所が、今の絵柄にも影響しているのかなと思います。

ーー「絵がすごく上達したな」と感じたタイミングがあれば教えて下さい。

つもい:元々はアナログで紙に描いてたんですが、デジタルに変えてからです。紙に描いたら上達するっていうのを良く聞きますが、私は逆ですね。デジタルのほうが色々融通がきくというか、紙ではできない所もデジタルの機能でできたりするので。今できる知識を最大限利用して「なんとかなる!」と(笑)

ーーなんとかなる!(笑)先ほど板タブとお話がありましたが、今はどういうツールをお使いでしょうか?

つもい:今は液タブのXP‐PENを使っています。ただ、PCが小学4年生の頃に買ってもらった物で、古いのでガタが来てて、WindowsのOSもずっと古いまま(苦笑)
廃版で修理も出せなくて、何とか描いていますが、保存する前にデータが飛んでしまったりするので、早く買い換えたいところです。

ーーえっ!まさかの環境で驚きました。ソフトは何をお使いですか?

つもい:ClipStudioのPROです。インストールは出来ましたが動作が重いのと、あとあまり使いこなせてないですね。ひとつひとつ調べてやらないと、本当に何も分からなくて。

ーー機能がとても多くて、全部は使いこなせないとおっしゃる方も多いですね。…PCは動いてらっしゃいますか?

つもい:ギリギリですが…(笑)怖いです。いつもひやひやしながらやってます。
実は、以前一番力を込めて描いた刺繍のついたお洋服の絵があって、1本1本がんばって刺繍を描いたんですが、「終わった!」と思ったらプチって切れて…

ーー残ってなかったんですか?!

つもい:残ってなかったですね。描きなおしました。そこからこまめに保存しようって今は心がけてます。

ーー集中してて忘れる事もありますし、こまめに保存しようという癖づけは…いいかもしれませんが…でも悲しすぎます。

つもい:すごくショックでした(苦笑)

ーーちょっと衝撃的な環境でした(二人で笑)

好きなものを発信する覚悟と「見てもらえる幸せ」

©︎STUDIO koemee /KADOKAWA2022  『彼岸のオルカ キャラクターデザイン』

©︎STUDIO koemee /KADOKAWA2022

『彼岸のオルカ』

ーー今はどのくらいの頻度でお仕事の依頼があるのでしょうか?

つもい:大きな仕事がある時は、あまり他のお仕事を受けずにそれに集中して、多く請ける時は5、6件一気にという時もあります。

ーー今まで手がけてきて、一番思い出に残っている作品があれば、教えてください。

つもい:今受け持ってるお仕事が今までで一番大きくて、KADOKAWAさんの新企画「聴くanime」のオリジナル作品『彼岸のオルカ』のキャラクターデザインを担当しました。声優さんがすごく豪華で、感動しました。

©︎STUDIO koemee /KADOKAWA2022  『彼岸のオルカ キャラクターデザイン』

©︎STUDIO koemee /KADOKAWA2022
『彼岸のオルカ キャラクターデザイン』

ーーどのキャラクターも個性があって素敵ですね!

つもい:キャラクターデザインのお仕事は初めて頂いたので、至らない点もあると思いますが、個人的にはよくできたかなと思っています。
Spotifyと、YouTubeの「STUDIO koemee」チャンネルで2022年4月30日から配信スタートしています。面白いのでぜひ見に来てください。

ーー事前に内容は分かっていらっしゃったのでしょうか?

つもい:現場にお邪魔させていただいたのですが、私のデザインしたキャラクターに声がつき、夢なのか?!と。「頑張ればこんなスゴイことも起こるんだ!」と思いました。

ーースケールも大きく感動しました。夢があって本当に思い出に残るお仕事ですね。
他に、イラストレーターをやってて一番幸せだなって感じる時や、逆に辛いなと思う時はあるでしょうか?

つもい:自分が見て欲しい物を、ちゃんと隅々まで見てくださる方がいらっしゃるのが、すごく嬉しいことだと思います。逆に、私の世界観とは違うようなイメージのイラストを描いてとご依頼がある時は、ちょっと辛いですね。

ーー例えば、悪め男子を描いている時に、それとはかなり違う作風のご依頼が来るなどでしょうか?作風や世界観と合わないご依頼だと、ちょっと難しいな、となることもありそうですね。

つもい:本当に私の絵柄でいいのかな?と思う内容だと、ご依頼の作風と期待に添えられるか?というプレッシャーもあり、そういう時は絵を仕事にすること自体が重荷になることがあります。「つもいさんの絵が大好きでお願いしたい」と言うのを見ると、じゃあ頑張ります!とは思うのですが。

ーー特別に作風を持たず「要望にいかに合わせて描くか」というスタイルの方もいらっしゃいますが、つもいさんは逆に、世界観が強いイラストレーターさんという印象です。

つもい:万人受けしようと思っていないので、私の絵は好き嫌いが分かれると思います。でも「好きなら好き、嫌いなら嫌いでもいい」というスタンスで、自分の好きなものを発信していけたらと思って描いています。

ーーそのスタンスだからこそできる作風やスタイルというのも、素敵だと思います。

ハードな日々から経験を経て、未来へ

『月が綺麗でした』

『月が綺麗でした』

ーー現在は士業関係の学生さんとのことですが、一日のタイムスケジュールはどのような感じでしょうか?絵を描くのは週末のみですか?

つもい:学校が忙しく、9時半に学校に行き、夜の8時位までほぼ休憩なしでずっと勉強してます。9時過ぎに帰宅してご飯を食べ、その後ジムに1時間ぐらい行き、それから絵を描いてます。平日はお仕事の絵を描いて、週末に自分の好きな絵を描いてという感じです。

ーーえっ?!寝る時間は何時になりますか?日中眠くならないでしょうか。

つもい:ほぼ寝てないと思います。今やっと就活で落ち着きましたが、1年生の時は殆ど寝てなかったです。眠気は勿論ありましたが、学校が厳しくて…。なので、だんだんこの状況に対応できる体になってきました(苦笑)

ーー思った以上にハードで、驚きのタイムスケジュールでした。お忙しい中、アイデアに詰まった時はどうやってリフレッシュされますか?

つもい:詰まった時も、絵を描いてます。ちょっと違う落書きをして気持ちをリフレッシュさせたり、新しいインスピレーションを得たりして、戻ってさあ頑張ろう、という感じです。とにかく手を止めないことをモットーにやってます。

ーーすごいですね。創作活動の情報収集は、例えばPinterestやYouTubeなど、どこから得ているのでしょうか。

つもい:Pinterestは見ます。あと、買い物がてらデパートや街をブラブラして、そこで見た人の服装をちょっと参考に覚えておいて、などですね。

ーー絵を描く以外で、ご趣味はおありですか?

つもい:元々体を動かすのが好きで、特にサーフィンとスキーをやってますね。父が講師免許を持ってるので。小さいころから夏は海に、冬は山に、と行っています。

ーーかなりのアウトドアで、アクティブなご趣味は絵を描いている方としては意外です。

つもい:意外と体を動かしています!(笑)でも、絵の方が後というか本当に趣味だったので、という感じです。

ーーでも趣味から仕事へと。将来的にはイラストの道に行こうというのはありますか?

つもい:今のところはまだ、学校の分野で働いて社会経験を積んで、その後どうしようか考えたいと思っています。

ーー学校の分野は元々ご興味があったのでしょうか?

つもい:そうですね、元々は商業高校での勉強が楽しくて「こういう仕事がしたいな」というのがきっかけで。今の学校で大変さを痛感して、より頑張ろうと思いました。それに経験を積んでおけば、フリーになっても活かせそうなので。

ーー楽しいというのは良いですね、お仕事に向いてそうです。
次の質問ですが、GENSEKIのサービスについては、どういう印象をお持ちでしょうか?

つもい:私のことを見つけて下さったのがすごく嬉しいことですし、GENSEKIという名前の通り「これから活躍していく方」を見つけられて、深堀りできるのが、クリエイターや見ている皆の為になるというか。私もありがたいです。

ーーそう言って頂けると感無量です。このインタビュー記事からも是非お仕事などに繋がって欲しいですね。イラストのお仕事は色々されていると思いますが、「これはやってみたい」というものはあるでしょうか?

つもい:一番やりたいのはやっぱりキャラクターデザインですね。お仕事させていただいた時に、もっとやりたい、上手になりたいと思いました。

ーー自分のデザインしたキャラクターに命が吹き込まれてファンができていくのは、夢がありますね。ぜひ今後もつもいさんが生み出す素敵なキャラクターを見ていきたいです。

つもい:ありがとうございます。私のデザインしたキャラクターで活躍してくださる声優さんなども見たいですし、キャラクターデザインは頑張ってやっていきたいです。

 

つもい(TwitterInstagram

少年をよく描きます。
自分の世界観を大事にして活動しています。

genseki.me