ミニキャラに作家性をプラス! デフォルメ術をくるみつさんに聞く

GENSEKIで、イラストレーターのくるみつさんを審査員として「リアル頭身&ミニキャラ」イラストコンテストを開催しました。同じキャラクターの「リアル頭身(頭身が高めの姿)」と「ミニキャラ」を、一枚のイラストの中に表現することがルールです。

審査員のくるみつさんは、ミニキャラの描き方を解説した書籍『カラフルポップな「ミニキャラ」のデザイン&描き方』も出版されています。

今回は、コンテストの受賞作品を例に、デフォルメのコツ絵柄の統一感の出し方についてお話を伺いました!

目次

お話を聞いた人

くるみつ(X:@krkrkr32Web
イラストレーター。ソーシャルゲームのキャラクターデザインやポケモンカードイラスト、CDジャケットからグッズイラストまで幅広く活動。ポップでとにかく明るいキャラクターイラストを多く手掛ける。
メイキングやスキル講座などのYouTube「くるみつちゃんねる」を運営中。

インタビューした人

サイトウメンバーブログ
GENSEKIマガジンの運営スタッフ。インタビューや記事、バナー制作などを担当。イラストは見るのも描くのも好き。

作者の一貫した考え方が、統一感のある絵柄につながる

【大賞】ファンシーうさぎの宇宙飛行士/moai(もあい)

くるみつ
moaiさんの作品は、絵柄の一貫性がしっかり出せています。
キャラクターデザイン自体も、ミニキャラありきで考えているのかもしれませんね。一つひとつのパーツが大きくシンプルにまとめられていて、ミニキャラ化しやすいキャラデザだと思います。

サイトウ
どうすれば統一感のある絵柄でミニキャラ化ができるのでしょうか?

くるみつ
元々デフォルメが効いている、ミニキャラとの相性がいい絵柄というのはあります。それでも、単純に頭を大きくして体を小さくするだけでは、不気味に見えやすいです。
描き込まないところ決めて、省略・統合をしっかり行うことは、デフォルメの基本的な部分になります。鼻は描くのか、線は描くのか色を変えるのか……といった感じに。

サイトウ
一つひとつ自分の中でルールを決めて行くんですね。

くるみつ
そういった取捨選択をした中でも、作家の個性や考え方がミニキャラにも一貫してあることが統一感のポイントだと思います。

こちらの作品だと、目の描き方を見るとわかりやすいでしょうか。元の頭身では、瞳にハイライトがたくさん描かれています。ミニキャラではそれを統合して雪だるまのような形になっています。この表現、かわいいですよね。

サイトウ
元のキラキラした印象がミニキャラにも落とし込まれています。

くるみつ
一貫した絵柄の作品からは、線の引き方や譲れない部分など、絵を描くときの考え方や表現したいことがよく伝わってきます。

【佳作】SUPER♡UCHINOKO♡KAWAII/闇然かみそり

くるみつ
こちらの作品も描き方に統一感があって、ミニキャラにも絵柄の個性がそのまま表れています。
スカートのプリーツが一直線になっていたり、迷いのないデフォルメの仕方が気持ちいいです。

サイトウ
もちっとした感じが共通していてかわいいですね。

くるみつ
そうですね。元の頭身の方を見ると、膝小僧やお肉の重なりまで描かれていて、ここを描きたいんだという意図が伝わってきました。
でも、ミニキャラも同じように描き込んでしまうと違和感が出てしまうんですよね。そのこだわりをミニキャラではうまく描き分けて、「太さ」でかわいくもちっと感を表現しています。

サイトウ
確かに脚が細くなるだけでも、かなり印象が異なりそうです。違う描き方でも、こだわりは再現できるんですね。

【佳作】どんぐりダイナー ドリンク/^ω^

くるみつ
こちらは、省略・統合の表現に特徴を感じた作品です。ミニキャラの方には膝当てが描かれていないんですよね。

サイトウ
本当だ! 今言われて気付きました。

くるみつ
膝当てまで描くと、ルーズソックスとリスの飾りがかわいく描けないと判断したんだと思います。この取捨選択の考え方が、ぼくは好きですね。

カートゥーン風な末端を大きく描くデフォルメの仕方もかわいいです。ダイナーというアメリカンなテーマとも合っています。

ミニキャラもいろんな頭身で描けると強みになる

サイトウ
一枚の中にミニキャラが2パターン描かれていますね。

くるみつ
ミニキャラの中でもデフォルメの度合いにしっかり差がつけられています。右側のミニキャラのように、主線を太くするとよりデフォルメ感が強くなります。

ミニキャラにもさまざまな頭身があるので、表現の幅を見せられるとポテンシャルの高さをアピールできて良いと思います。

サイトウ
とくに依頼されるミニキャラの頭身はありますか?

くるみつ
2.5頭身が多いです。ミニキャラは缶バッジなどのグッズに使われることが多いので、正方形にはまるくらいの比率がちょうどいいんですよね。3頭身だとちょっと縦長、2頭身だとポーズに幅を持たせにくい。

サイトウ
ミニキャラのポーズに迷ったという応募者の方もいらっしゃいました。

くるみつ
そもそもミニキャラはポーズのバリエーションが少ないんです。パーツが重なると構造がわからなくなってしまうので、前後感のある複雑なポーズがとれません。腕はなるべく画面に向かって伸ばさず、平面的に見せるのがコツだと思います。

左:【佳作】スペースうさぎとペケ/つくもきょー子
右:【佳作】バニーポリス/つくもきょー子

くるみつ
つくもきょー子さんの作品も、2パターンのミニキャラを描いてくれています。
立ち絵、一枚絵もセットでまとめられていて、仕事を依頼したい企業さんに見せたら喜ばれそうです。

サイトウ
こちらはミニキャラの中でもかなり小さいですね。口のばってんや耳など、こんな描き方もありなんだな、と思いました。

くるみつ
デフォルメのレベルを上げると省略・統合の表現がより見えやすいですよね。
1.5頭身くらいまでいくと、何を残すべきか決めるのも難しくなってきます。線が増えるほどごちゃついて見栄えが悪くなるので、最低限の線で描くのが大事になります。

くるみつ
透明なモチーフというのも、透けて見える部分の描き方も考えないといけないので、省略・統合のルールが増えて大変です。作者の中で明確な指針がないと、なかなか描けません。
このヘルメットでは、線を途切れさせたり色を一段薄くしたりして、うまく透明感を出しています。テクいですね。

リアルな描写のデフォルメ方法

孤独な宝箱/雨のちはる

くるみつ
こちらの作品は元の頭身やアイテムの描き込みがかなり細かいですよね。
先ほどミニキャラとの相性がいい絵柄の話をしましたが、元イラストの描写がリアルなほどミニキャラ化するのは難しいです。その中で、脚や王冠など、うまく省略・統合して落とし込んでいます。

サイトウ
細かい描写をミニキャラに落とし込む方法はありますか?

くるみつ
そうですね……思い切って強調してみるのも一つの手だと思います。
例えば、金属の少し錆びれている感じを出すために、いっそ一部を壊しちゃうとか。インパクトのある表現を試してもいいかもしれません。やってみないとわからない部分ではあるので、やはり難易度が高いですね。

四情の大剣/カラスコ

くるみつ
こちらもリアル調よりのイラストなんですが、あまり見ないタイプのアプローチがされていておもしろいです。
リアルな空間表現の中で、ミニキャラを違和感なく同じ空間に存在させています。空気遠近的な表現で描かれているミニキャラも新鮮です。

サイトウ
目元や塗りなど、元の頭身に近い描き方をされているように見えますが、ミニキャラらしいかわいさを感じます。

くるみつ
ミニキャラのツボをしっかり押さえられているからだと思います。
例えば、顔のライン。横長にしつつほっぺたの形を出しています。あとは口も小動物っぽく描かれていてミニキャラっぽいです。

作家性で見せる新しい表現

lion/kita

くるみつ
こちらは作風が特徴的で、ミニキャラのセオリーだけでは語れない魅力がある作品です。
リアル頭身、ミニキャラ、主線なしの3パターン描かれていますが、いずれもかなり違った描き方をされています。それでいて一体感があるんですよね。

サイトウ
違う描き方なのに、どうして同じ雰囲気を感じるのでしょうか。

くるみつ
kitaさんの強烈な作家性と言いますか、芯の部分が変わらないんだと思います。ゆるくてほんわかしたテイスト、こういう線や色使いが好き、という考え方が絵に表れています。

一目見てその人の作品だとわかる個性を持っているというのは、本当にすごいことですね。

デフォルメ、キャラデザ、クオリティ……総合的な力が必要なテーマ

サイトウ
くるみつさんにも今回のコンテストのためにイラストを描き下ろしていただきました。
こちらのキャラクターは以前開催した「ファンタジービネットイラストコンテスト」のためにデザインされたキャラクターですね。リアル頭身とミニキャラ、どちらも同じポーズを決めていてかわいいです。

くるみつ
はい。今回設定したルールで描いてみて思いましたが、頭身キャラとミニキャラを一枚の中に収めるのは難しいです。「頭身キャラ」「ミニキャラ」「背景」の3点を、どういう見せ方をしたいのか、意図を持ってまとめないといけません。テーマの方向性やシルエットなど、演出の部分を決めるのが大変でした。

サイトウ
お仕事でたくさんミニキャラを描いていらっしゃる、くるみつさんでも難しいルールのコンテストだったんですね。

くるみつ
僕自身苦労したので、応募作品からは可能性の広さを見せてもらいました。受賞作品はデフォルメのうまさに加えて、キャラクターデザインや一枚絵としての魅力、どれをとってもクオリティの高い作品だと思います!

サイトウ
学びの多いコンテストをありがとうございました!

▼結果発表ページ


くるみつさん著『カラフルポップな「ミニキャラ」のデザイン&描き方』

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執筆
GENSEKIマガジン編集部

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