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ミニキャラの描き方を学ぶ: かわいさを引き立てるテクニック

 

かわいくて抱きしめたくなるようなフォルムが特徴的な「ミニキャラ・ちびキャラ」。自分で描こうとすると、なんかかわいくない、バランスが悪い、周りのアイテムと調和していない……。そんな課題を感じている方はいませんか?

今回はミニキャラの描き方を解説した書籍『ミニキャラの描き方「ちまっとかわいい」を描く基本&表現テクニック』の著者である夢ノ内先生に、ミニキャラを描くコツをお尋ねしました!

教えてくれた人

夢ノ内千春先生(X:@yume335
イラストレーター。
3年のソーシャルゲーム会社勤務を経て2016年2月よりフリーランスイラストレーターとして独立。
現在は商業グッズイラストを中心としたイラストレーターとして活躍中。
代表書籍『ミニキャラの描き方 「ちまっとかわいい」を描く基本&表現テクニック』

この記事では、夢ノ内先生に以下の内容を伺っております。

そして、記事の最後には夢ノ内先生が審査員を務めるイラストコンテストのご案内もあります。ぜひぜひ、こちらのコツを読んでご参加してください!

 

【基本】頭身を決めアタリを描く

  1. 頭身を決める(1.5頭身 or 2頭身)
  2. 頭と体のアタリを描く
  3. 頭身のバランスに気をつけながら描き進める
<ポイント> 顔と体のバランスを調整しながら描き進めていこう!

ぽってりとかわいいフォルムのミニキャラは、頭と体のバランスが非常に重要です。

頭がまるっとしているのに体だけ妙にシャープになっているなら、体だけを選択して横に伸ばして調整します。顔が幼くなりすぎてしまったら、顔だけを選択して縦に伸ばして調整します。アタリは一度に決めずに、描き進めながら、調整を重ねていきましょう!

 

【パーツ別】愛らしさを意識したパーツの描き方と躍動感ある動きの出し方

◆顔

まず、アオリなのか・俯瞰なのかを決め基準のアタリをとります。そしてアタリに沿って顔の角度を意識しながら描くことが大事です。

かっこいい系とかわいい系を描き分けるには、目尻の折り返しがポイントになります。私は、かっこいい系は目尻の折り返しをつける、かわいい系は折り返しをつけないという描き分けを行っています。

 

◆手足

ミニキャラはかわいいフォルムが重要なので、腕が長すぎないかは注意しましょう。描き方のポイントは、手のひら→腕→肩と手前から奥に描いていくことです。

 

◆胴体
基本的にミニキャラはぽっちゃりとした赤ちゃんフォルムにして、むちっと感を出すように意識しましょう。男の子はちょっとかっこよく、頭身高めの2頭身で描くことが多いです。女の子はぽっちゃりとした中にも腰や関節に少しだけくびれを入れるようにしています。

 

◆動きの出し方

奥行きを意識すると躍動感がでます。手を前に出すときは画面に対して左右に平面的に出すのではなく手前の方に突き出すようにします。また、髪の毛は体の動きにあわせてたなびかせたり、スカートを履いているキャラなら、フリルが風で揺れている動きを入れたりしましょう。

 

【色塗り】色味の決定と、情報量の調整に気をつける

◆全体の色味を決める

色に統一感を出すために、最初に全体をどんな色味にするのか決めておきましょう。赤系青系セピア系……くらいの決め方で大丈夫です。

こうしたことを決めておくと、例えば白い布に落ちるグレーの影が「赤系のグレー」なのか「青系のグレー」なのかがはっきりさせることができます。その結果、絵にまとまりが出てくるんです。

<ポイント> 配色に困ったら……

そうはいっても、どんな色にしたらいいか迷うときもありますよね。そんなときは、自分の大好きなものや、ときめくものの写真をたくさん見てください。きっと色のインスピレーションがもらえるはずです。私はスイーツブッフェや、アフタヌーンティーの写真を見ることが多いです。

◆情報量が多い箇所は、線画を描かずに塗りだけで表現する

頭身が高いキャラクターをミニキャラにする際に、そのままの情報量ですべて描くとごちゃこちゃしてしまいます。例えば、アクセサリーやウォレットチェーン・スカートのフリルなどです。そういう場合は線画を薄くしたり、あえて線画を描かずに塗りだけで描き、全体的な情報量を調整します。

またデフォルメする場合は、誇張表現として、あえてパーツを大きくしながら数を減らすといったことも行います。

 

【アイテム・動物】

◆アイテムの大きさと塗りの情報量を意識する

アイテムは大きさによって描き込みの量を変え、情報量を調整します。家具のような大きいものは、装飾や木目などの細かいところまで描き込みます。お皿の上に乗ったドーナツのような小さいものは、塗りのパートでお話した通り、線画を描かずに塗りだけで仕上げたりします。

また、家具の大きさはミニキャラの頭よりは下になるくらいの大きさで調整し、ミニキャラの世界観とあわせます。タンスなど実際はキャラより大きい家具も存在すると思うのですが、等身の低いミニキャラより家具が目立ってしまうことを避けるため、こうした調整を行っています。

 

◆動物をミニキャラに並べる場合はぎゅっと凝縮

動物を描くときは、等身の7割位の高さに凝縮させるとかわいくなります。もしバランスが取りづらい場合には、頭を大きくしてみるとバランスがとりやすくなると思います。

特に犬系の動物を描くときはマズルを太くしたり、耳や尻尾を大きく誇張したり、目をかわいく簡略化したりします。

 

【仕事】ミニキャラのお仕事で重要なのは「原作キャラのチャームポイント」をしっかり理解すること

◆IPキャラクターの特徴をミニキャラにうまく落とし込むコツ

既存IPのミニキャラを描く上で大事なことは、キャラクターのチャームポイントをしっかりと理解することです。

まずは、ミニキャラにするキャラクターがかわいい系なのかかっこいい系なのかを判断し、特徴となるポイントがどこかを考えます。

その後、情報量を調整し、どこまでデフォルメするかを考えて企業に提案します。ただし、甲冑や武器など情報量が多いものの、それ自体に意味のあるものは、それぞれのデザイン意図を聞いた上で、どこまで情報量を省きデフォルメするかを判断します。

リテイクがあるときは、具体的にどういった点に修正が必要なのか細かく聞くようにしています。

 

◆依頼に素早く答えるコツは独自のカラーパレットと自分自身の情報のストック

継続的にたくさんの絵を納品するため、共通パーツには自分専用のカラーパレットを作っています。肌色のパレットだけでも複数種類用意していて、作品の雰囲気や世界観に応じて使い分けています!

実際に夢ノ内先生が使用しているパレット

それ以外に、自分のアイディアが枯渇しないよう日頃からかっこいいものや気になるものを見つけたときは、風景、人物に限らず写真に撮っておくなどして、ストックするように心がけています。

 

ミニキャラを活用した同人活動がきっかけでフリーランスに

ここからは夢ノ内先生がミニキャラのお仕事をするようになった経緯や、ミニキャラを描いての自分自身の変化についてお伺いしました。

 

――夢ノ内先生がミニキャラを描くようになったきっかけを教えてください。

 

夢ノ内先生
現在、ミニキャラを描くようになって歴5年くらいです。それ以前はゲーム会社に勤めていて、頭身が高いキャラクターのイラストを描きつつ、趣味で一次創作も行っていました。

ある日、自分のキャラクターをかわいくデフォルメしたアクリルフィギュアを作りたいと思ったことがきっかけです。ミニキャラも時代によって絵柄が違うので、自分がどういうキャラを描きたいのかを1年ほど研究しました。

 

――1年も研究していたんですね……!

 

夢ノ内先生
はい。研究といってもずっと籠もって一人で描きまくっていたわけではなく、同人活動の中に取り入れて描いていました。そして、そのミニキャラを活用した同人活動がきっかけで企業からお仕事の依頼をいただくようになり、会社を辞めてフリーランスになったんです。

 

――ミニキャラがきっかけでフリーランスになったんですね。企業は意外と同人の会場に見に来ているものなのでしょうか?

 

夢ノ内先生
そうですね。特定の人材を求めている企業さんは、類似したジャンルの同人作家さんを調査しに来ているのかもしれません。

 

ミニキャラのノウハウを伝えることで、自分自身の仕事の幅も広がった

――でも、そう考えるとミニキャラって夢ノ内先生にとって最大の武器でもあると思うんです。本日の記事もそうですし書籍も出されていると思いますが、ここまでノウハウを世に伝えてしまって良いのでしょうか……?

 

夢ノ内先生
その話は同業の方にも言われました(笑)。
書籍については、実は出そうと思ったきっかけがあるんです。私が20代半ばくらいの時、東京コミュニケーションアート専門学校さんでトークショーのゲストとして登壇したことがありました。

みんなすごく真剣に私の話を聞いてくれて、終わった後も待合室に質問に来てくれたんです。そのときに自分も教える側の人間として自信を持っても良いんだなと思うと同時に、若い子たちを応援したいと思ったんです。

 

――学生の真剣な眼差しに心打たれたんですね。

 

夢ノ内先生
はい。それがきっかけでTwitter(現X)で「デフォルメのすゝめ」というミニキャラの描き方を解説するコンテンツの配信を始めました。

「デフォルメのすゝめ」の発信を続けていたら、ある日MdNさんからお声がけいただき、『ミニキャラの描き方 「ちまっとかわいい」を描く基本&表現テクニック 』の刊行に至りました。

 

――ミニキャラをきっかけとして起こした行動が新しいキャリアを切り開くきっかけになっているんですね。書籍を出して仕事の内容に変化はあったのでしょうか?

 

夢ノ内先生
書籍を出してから、海外から講師の依頼がきたり、今回のように審査員に選んでいただいたり、仕事の幅が広がりました。

 

――先ほど、ノウハウを出しすぎて競合が増えるのでは……? というお話がありましたが、むしろ仕事は増えたんですね。

 

夢ノ内先生
そうですね。もちろんミニキャラを制作する依頼も減っていません。なので、私としてはかわいいミニキャラを描く人がこれからどんどん増えていってほしいと思っています。

 

――今回の記事を読んで、ぜひたくさんの人にミニキャラにチャレンジしてほしいです!

 


 

今回の記事は部分的なポイント解説となりましたが、夢ノ内先生の書籍では、ミニキャラの描き方を余すことなくご紹介しておりますので、もっと細かい描き方を知りたい方はぜひ書籍を手にとってご覧ください。

▼ 夢ノ内先生著『ミニキャラの描き方 「ちまっとかわいい」を描く基本&表現テクニック』

▼夢ノ内先生が審査員を務めるミニキャラのイラストコンテストはこちら!

 


執筆https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/g/genseki_msaito/20230725/20230725162318.png坂本彬

イラストsorami(X:@sorami_yuru

編集斎藤充博(X:@3216Web