ライターだから仕事で絵を役立てる 記事にイラストを効果的に入れて「シェーキーズ」をレポート【iPadお絵かき修行 最終回】

こんにちは、ライターの神田(こうだ)です。絵を描いたことがない素人がiPadを使ってうまい絵を描こうと奔走する企画第6回目。

とうとう6回目になりました。なんとこれで最終回。名残惜しいですが何にでも終わりは来るものです。キャラクターの作り方、漫画の描き方、絵を描くうえで必要な観察の仕方などイラストを描くうえで大切なことを教わりました。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。神田はおかげさまで立派になりましたよ。

これまでの連載はこちら▶

書いた人

神田
かわいいものが好きなライター・編集者。オモコロなどで活動中。普段は絵を描かないが、自分のたましいに絵が描ける自分のことを見せつけてやりたくて企画に挑戦する。

これまで私は「絵が描けるようになりたい」というぼんやりとした気持ちを核に「キャラクターを作ってみたい」「漫画を描いてみたい」とさまざまなことに挑戦してきました。第5回では子供向け絵画教室の先生をしていたミュージシャン・漫画家の増田薫さんに手取り足取り教わって、なんと、それっぽい絵が描けるようになったのです。

このプードルのイラスト、教わりながらとはいえよくできたと思います。満足のいく絵が描けた思い出を宝物のように、カビが生えないようにたまに見返しています。形だけとはいえ、私はいちおう基礎的なノウハウを学び、ハイクオリティな絵を難なく量産できるとはいかないまでも、描ける実感を得ました。

通常、こうして手応えを得たらあとは反復学習で絵を描き続けることで勝手に上達していくもの。しかし私はたくさんの人から教わっておきながらまったく何もやっていないんですよね。私は描きたいものもないし、絵で生活をしているわけでもないから切実さがない。

「まずは描き続けること」。絵を教わったなか憲人さん、斎藤充博さん、増田薫さんにも言われましたがやっぱりやらなかった。だから最終回となる第6回はどうケリをつけようか非常に悩んでいました。

ということで、GENSEKI編集部の斎藤充博さんと共に、今まで行ったことがなく、ずっと気になっていたお店「シェーキーズ」にやって来ました。なぜろくに絵も描かず関東を中心に展開するアメリカ・西海岸生まれのピザチェーン店に来たかって? それには深い理由があるんです。


斎藤充博
フリーランスとして「イラスト入りの取材レポート」を描き続けて15年。GENSEKIマガジンの編集スタッフでもある。

イラストを入れた記事を書くともっと良くなるかも

神田
「シェーキーズ」にやってきました。うまそうなピザのにおいがします。

斎藤
僕も名前は知ってたけど来るのは初めてです。でも今回はどうして?

神田
私はフリーライターとして、お店を取材したり誰かにインタビューをしたりして記事を書いています。今までのお絵かき修行の成果を、職業ライターとしての活動にフィードバックするのにシェーキーズがうってつけだと思ったからです。

斎藤
う〜ん?

神田
ライターっていわば取材して、内容をクライアントが望む形で、また読者が読みやすい形で記事にまとめるのが仕事なわけじゃないですか。

斎藤
それはそうですね。

神田
内容はまとまっていても、それだけじゃ「この人の記事いいな」と印象に残らないと思うんです。読者がライターに個性を感じてくれるようなプラス要素が「イラスト」なのかなと。

斎藤
たしかに記事に絵があるとその場の情景や追加情報をすっきり伝えることができますし、アクセントになって読みやすくなります。

よく記事にイラストを盛り込んでいる斎藤さんの記事
https://magazine.genseki.me/entry/sp_saito20250612)より

神田
斎藤さんのように記事にイラストを盛り込むとより内容も充実しますし、絵でこの人の記事だってわかりますよね。だから今回は「イラストを組み合わせて行ったことないチェーン店を紹介する記事」を書こうと思います。

斎藤
たしかにこれまで培ったイラストのノウハウは活きそうです。とりあえずやってみましょうか。

神田
では最終回を祝って乾杯しましょう。シェーキーズにはドリンクバーのほかに、なんと800円で生ビール・ハイボール・レモンサワー・翠ジンが飲み放題になるセルフアルコールバーがあります。

斎藤
ちょっと安すぎません!? なんでこんないい店を今まで知らなかったんだろう。

GENSEKI編集部の斎藤充博さん

神田
これがやりたかったんだよな〜。

斎藤
なんのかんの言っていたけど、酒飲みたかっただけ?

どんどん出てくるシェーキーズのいいところ

神田
シェーキーズはオーソドックスなピザからデザートピザまでバラエティ豊かなピザがたくさん並んでいて、好きなだけ食べられるのがうれしいポイントです。

斎藤
大人になって食べ放題って行かなくなったけど、こんなにピザが並んでるのってうれしいかも。

神田
あとフライドポテトやフライドチキン、パスタからサラダバー、カレーやスープなどサイドメニューもめちゃくちゃ充実しています。

神田
シェーキーズのフライドポテトは、特製スパイスをかけて圧力フライヤーで揚げた、ここでしか味わえないシェーキーズオリジナルらしいです。

斎藤
これはうまそう。

記載内容はシェーキーズ新宿店・2025年8月時点のもの

神田
これでなんと、平日は1750円から、土日は2600円から食べ放題! アルコールバーをつけても平日なら3000円ちょい! ひとりで来ても大満喫できる料金体系ですね。

斎藤
シェーキーズの良さは存分に理解できましたが、果たしてイラストはどこに活きるのか……?

お店の創業者、シャーウッド・ジョンソンさんを見つけました

ピザがクリスピー生地でスナック感覚で何枚でもいけて最高!

神田
ピザを選んできました。左からとうもろこしたっぷりの「コーンピザ」、某ハンバーガーショップの某バーガーの味がする「バーガーピザ」、苦みが特徴の「ケールのサラダピザ」です。

斎藤
ケールのインパクトすごい。

神田
ではオーソドックスなコーンピザからいただきます。

神田
めっちゃうまい! 生地が薄くてクリスピーで、スナック感覚で何枚でもいけちゃいますね。「バーガーピザ」はなぜか某ビッグなバーガーの幻を感じましたし、「ケールのサラダピザ」は苦みが口の中をさっぱりとさせてくれます。

斎藤
思ったよりかなり本格的で驚きました。これは名物のフライドポテトも気になりますね。

神田
シェーキーズに行く前に知人やネットの情報で「シェーキーズのポテトヤバい」と聞いていて完全に「大袈裟すぎだろ」とナメていたのですが……

行く前

神田
シェーキーズのフライドポテト、うますぎました。

斎藤
外がカリカリで中がホクホクでたしかにめっちゃうまい。ビールとの相性もバツグンですね。あとフライドチキンも皮がガリガリのタイプでかなり好みでした。

チョコブラウニーなどがたっぷり乗せられた「クワトロチョコのデザートピザ」

神田
あとシェーキーズにはデザートピザもあるのですが、これが「とりあえず甘いもの置いとくか」のやつじゃなくて本気の容赦ないアメリカンの甘さで最高でした。友達も言ってたけどこんなにいいことあるとは……。

神田
デザートピザを食べる前はこうだったのに。

斎藤
これは友達のことをナメてますね。

シェーキーズは食べたいピザをリクエストできて、焼き上がると放送で教えてくれるのもすごい

シェーキーズのホスピタリティのすごさ

いももちのピザ、うますぎる

神田
いや〜、シェーキーズを満喫しました。好きなだけ飲んで食べて、こんなに楽しい体験は久しぶりでした。

斎藤
お店も広々としていますし、少人数でも大勢の飲み会でも気兼ねなく楽しめそうですね。もちろん家族連れにもよさそう。

神田
私も大人になっていろんなお店に行きましたが、やっぱり食べ放題のわくわくって尋常じゃないと思うんです。同じものを何回頼んでもいいし、誰かのペースに合わせる必要もないし、店のものを全部食べ尽くせる可能性にあふれている……。

斎藤
限度はあるとはいえ、居酒屋などに比べるとかなり自由ですよね。

神田
それに食べ物の中でもかなり愉快な部類にあるピザやフライドポテト、カレーなどが食べ放題。シェーキーズだと暗い話をする気にもならないはず。

斎藤
たしかにそうかもしれない。

神田
シェーキーズの創業者、シャーウッド・ジョンソンさんに感謝ですね。心からありがとうを伝えたい……。そして絶対また来ます!

「シェーキーズ」の名前の由来は握手(Shake hands)に由来するそう

記事の振り返り 〜イラストを入れるにはどういうことに気をつけたらいい?〜

神田
……という感じでイラストを交えて飲食店レポートの記事を書いてみたんですがどうでしょうか。

斎藤
イラストを入れて記事を書くと冒頭で言ったわりにはあんまり描いてないですね。

神田
最低限入れたい箇所にはイラストを差し込んでみましたが、「情報をどうわかりやすく伝えるか」と「できるだけ手を抜くには」の気持ちがせめぎ合っていました。

斎藤
気持ちはわかります。それではイラスト入り取材記事を書いてきて15年の私から、「情報をわかりやすく伝える」という視点でレビューさせていただきます。

神田
ドキドキ……。

斎藤
まずはシェーキーズのフライドポテトについて触れたこちらの絵ですね。神田さんはどういう意図でこちらのイラストを入れましたか?

神田
「友達がシェーキーズのポテトがヤバいと言っていたので、芋は揚げるとだいたいうまいし大袈裟だろ」という意図でした。

斎藤
なるほど。ですが、この絵からは誰が主体なのか一目でわかりにくいですし、芋が「うまいよ」としゃべっている意図も謎です。そして「ポテトのことをナメていた」という前の文脈とイラストの意味が重複しています。

神田
理詰めで言われると私が空白を埋めるために描いたポテトくんが気の毒になってくる……。

斎藤さんによる添削

斎藤
私だったら、情報を伝えてくれた人を描いて、それに対して筆者(神田さん)がリアクションしている構図にします。

神田
めちゃくちゃわかりやすい!

斎藤
あと、神田さんは白い無個性のキャラクターで自分を描いているので、多少なりとも自分自身に寄せたキャラクターにするといいかもしれませんね。今回はとりあえず薄い青色を付けるのみにしましたが……。

神田
オリジナルキャラって自分をどう美化するかという自意識の表出だと思ってるフシがあるのでまずはその殻を打ち破らなければ……。

斎藤
そして次は「デザートピザを食べて驚いている」という漫画ですね。こちらはどういう意図なのでしょうか。

神田
お絵かき連載の第4回で漫画の描き方を習ったので、漫画を取り入れてみました。「友達がデザートピザを食べたら大好きになると言っていたので、そんなわけないだろとナメていたら実際うまくて大好きになった」というニュアンスですね。

斎藤
神田さんはお友達のことを信じてないんですか?

神田
はい……。

斎藤
まあそれはともかく、縦書き漫画だと画面の幅をすごくとるんですよね。記事の展開のリズムも途切れてしまいますし、スクロールする手間が読者の集中を削ぎかねません。だから今回は1コマに収めた方がいいんじゃないですかね。

神田
確かに縦長の画像はスクロールでインパクトは出せるんですが、読み進めるテンポが狂ってさっきまで読んでた文章のことを忘れてしまうことがあります。

斎藤さんによる添削2

斎藤
というわけで1枚の絵に整理してみました。画像の情報を補足し、それを見た筆者(神田さん)がピザを食べて「本当だ」と驚いている構図です。「本当だ」という言葉で、暗にウソだと思っているニュアンスも伝わるかと思います。

神田
わかりやすい……。3コマが1コマで済むならそっちのほうがいいですよね。

斎藤
こうした情報の整理は画力がなくてもできるので、自分の実力でできる範囲でとにかくわかりやすく整理することを心がけてみましょう。

神田
絵を描くのをサボろうとして情報整理がおろそかになっていました。反省……。

斎藤
こちらは「普通の居酒屋とシェーキーズの体験を比べたイラスト」ですね。意図もわかりますし、表情や文章から違いが伝わってきます。
 
神田
よっしゃっ!

斎藤
もう少し手を加えてあげるとさらによくなりますよ。こうした比較のイラストは、両者のコントラストをはっきりさせたほうがわかりやすくなります。

斎藤さんによる添削3

斎藤
テンションの高低を示すために、低いほうはどんよりした色、高いほうは明るい色にするとより対比がわかりやすいです。オノマトペなどを駆使するとより余白が充実します。「タテ線でがっかり」みたいなありきたりな表現も恥ずかしがらずに使っちゃったほうがいいかもしれません。
 
神田
こうして見ると、人物は腕があったほうが気持ちなども表現しやすいですね。一目でわかるようなインパクトが大事だな〜。

斎藤
たとえ絵がうまくなくても、2つのものごとの対比を視覚化したイラストがあることでより記事の内容を理解しやすくなります。だから、下手だから描かないのではなく、情報をわかりやすくするためにはどうしたらいいかをまず考えてみましょう。
 
神田
情報の整理の仕方がめちゃくちゃ理解できました。

斎藤
そして最後がシェーキーズの創業者のシャーウッド・ジョンソンを描いたイラストですね。

神田
会ったことはないですが、ジョンソンさんの優しそうな人柄が伝わるといいなと思いました。あと私は余計な情報をプラスするのが好きなので握手の情報も盛り込んでみました。文字もカントリー調なテイストにしています。

斎藤
細かい部分はさておき、このイラストに関しては特に言うことはありません。デフォルメもされているし、連載で教わったノウハウが生きていていいですね。

神田
よかった……。

斎藤
まだまだテコ入れが必要な部分はあるとはいえ、ライターがイラストを描けるようになると、記事のクオリティが上がるだけではなく、イラスト単体での仕事につながる可能性もあります。武器を増やしておくことは職業戦略としても重要です。

神田
確かに今の時代なんでもできたほうがいいですからね。ライターは絵を本業にしているわけではないので、いくらか気楽でもありますし。

斎藤
というわけでレビューはここまでになります。絵が下手でも工夫できることはいっぱいあります。だから「自分は絵が下手だから……」などと諦めるのではなく、工夫をすることから逃げないようにしましょう。僕だってぜんぜん絵がうまいわけではないです。そうやって絵を描くことを続けていけば、きっと他の人とは違う強みを持ったライターになれるはずです!

これまで描いてきた絵

絵を描くことは特別なことではない

最終回の第6回目は、これまで連載で培ったイラストのノウハウをライターの仕事に活かすという目的で、イラストを交えてシェーキーズをレポートしました。確かに絵があると、情報もぐっと詰め込めますし、絵で書き手のことを覚えてもらえるのでとても効果的な方法だと思います。シェーキーズさん、楽しい時間をありがとうございました。

これまでの連載ではさまざまなゲストにノウハウを教えてもらいましたが、自分のキャラクターを作るのでもなく、漫画を描くのでもなく、絵を書き続けるのでもなく、私はまったく何もしませんでした。こういう連載って、最後めちゃくちゃ絵がうまくなって終わるのが理想だと思うのですがすみません。そういうことはなかったんです。

では何を得たか。私はそもそも絵に苦手意識があり自分にはできないと思っていたのですが、「絵を描くこと、描けることは特別なことではない」と肌で感じることができたのはとてもよかったです。うまくなければ絵を描いてはいけないのかもと気後れもありましたが、これまでの連載で教わったゲストに話を聞くと絵や漫画を描くことは恐ろしいことではないと思いました。

お絵かき修行の連載は終わりましたが、漫画ではないので私の人生は続き、これからもめんどくさがりながら絵を描くことがあるでしょう。連載で得たほろ甘い達成感を胸に、これからもライターの仕事をがんばっていこうと思います。協賛いただいたCLIP STUDIOさん、協力いただいたゲストのみなさん、連載を読んでいただいた読者の方々、どうもありがとうございました。

編集者より

僭越ながら神田さんの絵のレビューをさせていただきました。神田さんは全6回を通して劇的に絵がうまくなったというわけではないですが「これからもめんどくさがりながら絵を描くことがあるでしょう」という感想はグッとくるものがありました。けっこうみんなそういうものだと思います。僕もそうです。

さて、連載は終わりましたが、神田さんにはもう一つGENSEKIからお願いしていることがあります。それは「イラストコンテストの審査員」です!

絵の素人である神田さんに審査してもらうことにより、応募していただく人に普段とは違う「気づき」を得てもらうことができるかもしれない。そして、神田さんの絵のレベルアップにつながるかもしれない……。そんな思いで企画をしました。絵が上手な人も、自信がない人も、ぜひぜひご応募ください~!

イラコン開催!!

本連載「iPadお絵かき修行」のWebライター・神田さんが審査員! テーマは「街に落ちていたもの」
何を見つけてどう描写するか。対象を観察し、どういう背景があったのかを想像する行為はきっとイラストづくりにも活きるはず。
皆さまからのたくさんのご応募をお待ちしています!

挿絵の描き方記事

協賛

CLIP STUDIO PAINT

CLIP STUDIO PAINTは、3,500万人以上が利用したイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリです。 タブレット、スマートフォン、パソコンといったあらゆるデバイスに対応し、気持ちの良い描き味と豊富な機能を備えており、世界各国のエントリーユーザーからマンガ家、イラストレーター、アニメーターなどのプロのクリエイターまで幅広く愛用されています。

取材協力
シェーキーズ新宿セノビル店
東京都新宿区新宿3丁目18−4 セノビル 4階
WEB:シェーキーズ
※ 価格、提供商品は店舗によって異なります。

執筆・イラスト

神田匠(X:@gogonocoda

編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI

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