東京藝術大学デザイン科在学中のKamin氏。(2022年5月時点)
大胆なフレームワークやビビットな配色、どこかレトロなイラストレーションは観る者の心を鷲掴みにする。
国内外を問わず、企業やアパレルとのコラボレーション、CDジャケットなど、幅広く手がけている今最も旬のイラストレーターの1人、Kamin氏の制作背景や仕事への向き合い方についてたっぷりとお話しを伺った。
イラストをきっかけに、世界が広がる喜び
ーー様々なお仕事に携わっていらっしゃるKaminさんですが、まずは最近のアートワークについてお聞かせください。
Kamin:本当にありがたいことに幅広い分野でお仕事をいただいています。この『sakura chill』は、MILK TALKさんのジャケットです。Q.iさんからご依頼を頂き、2作目もお手伝いさせて頂きました。
ーー今回が2作目なんですね!
Kamin:1作目は『SUN SHOWER』という楽曲のジャケットを描かせて頂き、今回の「Sakura Chill」は2周年の作品として携わらせて頂きました。普段はフレームで切り取るような、かなり間があいたシンプルな表現で描くんですが、この「Sakura Chill」では普段とテイストを変え、細密描写のように女性と花を細かいところまで出来る限り表現してみました。素敵な楽曲なので、携われたことが本当に光栄です。
ーーどの作品も本当に素敵です。Kizuna AIさんの楽曲イラストも担当されているんですよね?
Kamin:ありがとうございます!moe shopさんというフランスの音楽プロデューサーさんと、Kizuna AIさんとのコラボ楽曲に携わらせて頂きました。普段はアニメやVチューバ―の方のお仕事はお引き受けしていなかったので、Kizuna AIさんのお話を頂いた時は「え?私でいいんですか!?」という気持ちでした(笑)自分が関わることがないと思っていた分野でお仕事を頂き、知らない世界を知れるというのがイラストレーターとして光栄なことだなと思います。
ーー目を惹く魅力的なイラストばかりですが、どんな機器やソフトを使って描かれているんですか?
Kamin:CLIP STUDIO PAINTを使い、iPadで描いてます。漫画制作、アニメーション、イラストにも、かなり複雑で高度な機能が使えるソフトです。イラストをデザインに組み込む際にはAdobeを使います。Photoshopで少し色をいじったり、ロゴを組んだりする時はIllustratorを使っています。
新しいことにはどんどん挑戦したい
ーー今までで一番印象深かったお仕事は何ですか?
Kamin:悩ましいですね(笑)やっぱりどの作品も感慨深くて、全て楽しみながら描かせて頂いたのですが…。初めて挿画のお仕事を頂いたのが『我が友、スミス』という作品で、納品した後に「芥川賞の候補作に選ばれた」という連絡を頂き、とても驚いたことが印象に残っています。
ーーkaminさんは本当にどこまでいかれるんでしょう(笑)今後のご活躍が楽しみです!
ーーこちらのauのキャンペーンイラストはいつものkaminさんのテイストと違いますね。
Kamin:山手線の駅ごとにイラストレーターがイメージキャラクターを描き、それが駅に掲示されるというキャンペーンに参加させて頂き、私は田町駅をイメージしたキャラクターを描かせて頂きました。こういうキャラクターデザインにも挑戦したいという思いがあって、色々と試行錯誤して描いてみました。
ーーなるほど、擬人化とは面白いですね!
Kamin:実際にその地域に行って写真を撮り、そのリサーチをもとにその地域らしさを落としこんでデザインしました。思い出深い作品ですが、背景や全身を描く機会があまり無いので慣れなくて、色々苦戦しながら手掛けた作品です。
ーーGENSEKIのペットボトルのラベルデザインもご担当いただき、ありがとうございました。
Kamin:はい。ラベルデザインのイラストレーションは今回が初めてで、ずっとやってみたい気持ちはあったのでとても楽しんで制作させて頂きました!
ーー素敵に仕上げて頂き感謝しかありません!もう一つの案も良すぎて選定に悩みました。
Kamin:パターンを多く出してしまうと選びにくいかなと思い、ラフ案は依頼によって2〜3パターンに絞るようにしています。ただ、今回の2つのパターンで意識したのが、曲線・直線・点線の3つの要素を入れたことです。どれも絵の元になる要素で、曲線と直線と点線をつかって絵を描くというのはどのクリエイターさんにも共通していると思ったので、この3つの要素でクリエイターさんの多様性を表現したいと考えて制作しました。
ーーそんなコンセプトが隠されているんですね!
Kamin:そうなんです。さらに、GENSEKIカラーのオレンジの色面の配分をどう増やそうか、元のロゴとイメージカラーを崩さずにデザインできるかを考えて進めました。本当に良い経験になりました!
ーーお仕事のやりとりもとてもスムーズでした。ラフの段階で実際にペットボトルに巻きつけて頂き、完成品のイメージも付きやすかったです。
Kamin:良かったです。ラベルを巻いたときの印象って大事だと思い、私自身が印象を確かめたくて勝手にやらせて頂いたことですので、ご丁寧に対応頂けて本当にありがたい気持ちです。
海外での活動もターゲットに
ーーお仕事を受け始めたのはいつ頃からですか?
Kamin:商業を意識したイラストを描き始めたのはコロナ禍を経てからなので、だいたい2年前からです。
ステイホームの時期に差し掛かった時、大学にも行けず、iPpadを購入して家でコツコツ描き進めてはSNSで発信していました。すると、有難いことにそれを見つけて下さった方からお仕事を頂いて、それからこういう風にイラストレーターとして活動を始めました。
ーーでは狙ったというより、SNSがきっかけだったんですね!
Kamin:毎日描いて発表しているうちに、いつの間にか自分の作風を見つけたという感じです。目をトリミングする『eyeシリーズ』がSNSでかなり反響があったので、以降はずっとこのテイストになりました(笑)ここから少しずつお仕事も舞い込むようになり、SNS用アイコンや、アパレルのTシャツイラストなど個人様のお仕事の実績を重ねていくうちに、企業様のご依頼も頂けるようになりました。現在は商業イラストだけを描かせて頂いています。
ーーいまや引っ張りだこのKaminさんですが、まだ学生さんなんですよね。
Kamin:はい。東京藝術大学デザイン科に在学してます。
ーーデザイン科ではどんなことを学ばれているんですか?
Kamin::藝大のデザイン科はちょっと変わっていて、まずは広範囲のデザインの授業を受けて、そこから自分の興味のあるものを選んで課題に落とし込んでいく流れなので、科の中には詩を書いている人もいれば、漫画描く人もいれば、グラフィックデザインをしている人もいるという、かなり自由な空気感です。私も授業で自由にイラストを描いて発表して、という感じでした。
ーーでは、大学芸大では色々と自由に専攻されていらっしゃるんですね。
Kamin:そうですね。だからこそ今の作風になったというか、グラフィックに落とし込みやすいようにというのを意識しているので、そういった大学の勉強も今に活きているのかなって思いますね。
ーーすでに色んな経験をされているKaminさんですが、今後イラストレーターとして、挑戦してみたいことはありますか?
Kamin:海外アーティストの音楽ジャケットをやってみたいですね。落ち着いたら国内外で個展を開催してみたいです。今後はアーティストとしての活動もしていきたいので、案件のお仕事以外に自主制作にも少し時間を割けるようにしたいです。
ーーKaminさんの絵は、色使いも含め海外の方からも支持されそうですよね。
Kamin:どちらかというと海外の方からのほうが反応頂けるタイプだと思っています。日本の方より、海外のファンの方のほうが多いのかなと。私自身、アメリカ等、海外のお菓子のパッケージや洗剤などのプロダクトの色合いがすごく好きで、洋画や洋楽にも影響を受けて、海外に対する憧れみたいなものが爆発してます(笑)
ーーでは、将来は海外で展示会や個展をやってみたい!という夢があったりするのでしょうか。
Kamin:はい。憧れの海外で展示ができたら本当に嬉しいですね!実はコロナ渦になる前に、友人とニューヨークに行く予定を立てていたんですけど、それからもう一切海外に行けなくなってしまったので、そのフラストレーションを絵にぶつけているというか(笑)でも、コロナ禍がなかったら今こういう風にイラストを描いていないので、個人的にはメリットもデメリットもありますね(笑)
ーーちなみに、海外のアーティストさんだと、どんな方がお好きなんですか?
Kamin:私は昔の洋楽が好きで、個人的に好きなバンドは『Eagles』です。哀愁を感じるような80年代スタイルの曲が好きです。海外ではないですが歌謡曲も聴きますね。特に松田聖子さんが好きです!松本隆さんの詩が好きなので、影響を受けていると思います。
ーー音楽からインスパイアされて描かれている部分もあるのでしょうか?
Kamin:そうですね。曲の雰囲気などを感じ取って、絵に起こすという事をよくしているかもしれません。最近流行っている「シティポップ」や「レトロポップ」に括られることも多いですが、これを意識してるわけではなく、私が好きなモノがレトロなものだから、そういう印象を受ける方が多いのかなと思います。
ーーでは最後に、イラストレーターとしての今後の意気込みをお願いします!
Kamin:今までもそうですが、意識していなかった分野の方からお仕事を頂き、お話を聞けることが、イラストレーターをやっていて大変刺激になり、嬉しいです。これからも様々な分野のお仕事をお引き受けしていきたいなと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します!
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多種多様なアートワークを手掛けながらも、「自分が関わることがないと思っていた分野の仕事で、新たな世界を知る機会が刺激になる」と、飽くなき好奇心・探究心を語ってくれたkamin氏。
今後はクライアントワークだけでなく「アーティスト」として、国内外問わず活動の幅を広げていきたいというkamin氏の今後の活躍にも期待だ。
kamin(Twitter:@minillustration/Instagram:@kamin_illust)
イラストレーター/デザイナー。
東京藝術大学デザイン科在学中。国内外を問わず、企業やアパレルとのコラボレーション、CDジャケットなど、幅広く手がける。