グラフィックデザインってなんだか難しそう。誰か親切な人が教えてくれないだろうか。できれば優しいギャルだといいんだけど……。そんなことを考えていた初郎(ういろう)君のもとに、どこからともなくグラフィックデザインに詳しいギャルが現れました! グラフィックデザインの初歩を学ぶ連載です。
- RGBとCMYKの原理
- 初心者向けの補正のやり方
登場人物
ぎゃるの
グラフィックデザインに詳しい謎のギャル。その時の気分で優しくしたり詰めたりする。
初郎(ういろう)
グラフィックデザインについては右も左もわからない。できれば優しいギャルに教えてもらいたい。
ぎゃるのさん〜〜〜〜! 僕のイラスト入りのチラシを作ったら色が変になっちゃったよぉ〜〜〜〜! なんとかしてよぉ〜〜〜!
ぅちがたまたまドラ焼き食べてっからって、某えもん的に絡むなし。もぐもぐ。
う〜んやっぱり来たか〜CMYKとRGB問題……。
印刷するときにRGBをCMYKにすることは知っていましたが……急いでいたのもありよく確認せず入稿してしまい……。こんなに色が変わるなんて、自分のイラストだからなおさらショックです……(涙)。
あーね。自分のイラストだと特にわかるよね〜。もぐもぐ。
これって、どうしてこうなるんですか? 対策とかあるんですか……?
あるよ〜。そもそもグラフィックって主に「印刷物」のことだし、色は絶対抑えておくべきとこだから、今のうちに履修しとこ〜か。
一番大事なのは正しく理解すること!
あ(印刷物のことなんだ……知らなかった)はい。
(こいつ……ぜってー今知ったな)
んじゃ今回は、見た目じゃなくて知識盛ってこウェイ!!!!!
そもそもCMYKとRGBってなんぞ?
んじゃまずは、CMYKとRGBの違いからね。
ではクイズ! ジャジャン!
RGBは光の三原色。CMYKは……?
ピンポン! 闇……ですか(片目を隠しながら)?
んなわけねーだろ! と、言いたいところだけど大体正解。
えっ? マジですか?
RGBは全部の色をあわせると白、CMYKは全部の色をあわせると黒になる。
RGBは白ギャル、CMYKは黒ギャルで覚えるとわかりやすいかな。
おお……!光と闇!! FANTASY……!
白ギャルと黒ギャルの例えはちょっと無理矢理感ありますが、僕的には覚えやすいです!
あそ。んで、RGBってのはテレビとかパソコンとかスマホとかのモニタで再現する「光源色」。CMYKは光源を受けた物体が発色する「物体色」。
印刷は物体色だから、基本的にC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)の組み合わせでしか表現できない。それぞれに表現できる色の領域が異なることを〈カラースペース〉の違いと言って、だからこそ〈カラープロファイル〉を設定してICCを……
すみません! すみませぇん !!!!! なんか難しい言葉多くてぇ……一度に言われても覚えられなくてぇ……。
んじゃ、白ギャルRGB子と黒ギャルCMYK美が同じネイルサロンで働いてるとするじゃん?
ほほう? がぜん興味が湧きますね?
でさ、2人が使うネイルカラーの色が微妙に違うから、同じ色の注文を受けても微妙に違ったカラーになるの。
ふむふむ……。
RGB子はちょっとだけパイセンでいろんなカラー使えてバキバキのネオンカラーが得意。CMYK子はちょっと大人なくすみカラーが得意って感じ?
色の差はこの2人がシフトとかで入れ替わることで起きてぇ……てかごめん。自分で言ってて「は?」って感じなんだけど、わかる?
はい、完全に理解しました。だからPCのモニタ上ではバキバキだった僕のイラストが印刷されてくすんだ色になってしまったわけですね(メガネくいっ)。
なんだこいつ。ギャルに例えたらスッと理解できるのこわ。 引く。(そーそー。伝わってよかった〜。やはり天才か)
今、完全に脳内とセリフ入れ替わってましたよね??
◆point
あまり難しく考えず、PCモニタ・スマホ・テレビなどはRGB、印刷物はCMYKくらいで覚えておけばOK。また、それぞれ色の領域(色域)が異なること、RGBで表現できるカラーがCMYKでは再現できずにくすんだり暗くなって見えちゃうことも、覚えておいて損はないぞい。
まずはしっかり見比べて補正前の下準備
そんなわけで。モニタで見ていた色味が、印刷して変わっちゃうのはそーゆーこと。まー最近はくすみカラーも流行ってるしワンチャンありっちゃありじゃね?
いやいやいや!! ないです! ワンチャンないです!!!
そうならないための対策教えてくださいよぉ!
冗談だし〜。てかういろうのくすみカラーイラストはどうやったの〜?
こんな感じでPhotoshop(以下フォトショ)の【イメージ>モード>CMYKカラー】かな?
う〜ん、見事なくすみカラー。
はい、まさしくこんな感じです。なんか急に「どよん」としちゃって。でも何をどう直せばいいのかもわからず……時間も無かったのでそのまま入稿しちゃいました……トホホのホ。
わかる〜最初はビビるし、補正とかイミフよな。
でもモニタで見て「どよん」としてたなら、印刷したらマシマシで「どよん」ってなるんだよね〜。
あ、はい…… くすんだ上に暗くなって……僕の気分がどよんどよんです。うぅっ……!
泣くなし〜。涙でモニタにじんだら補正できねーから。んじゃ、さっきのCMYKとRGB並べた画像を寄りで見てみよっか。
まずハッキリわかる違いが目の色。もうさ、カラコンの品番変わっちゃってるし。
あと髪のブルーや紫も、鮮やかさがなくなって、暗くなってるよね。
あ! でもトップスの黄色とか、ほっぺたのピンクとかは少し暗くなってるけどそれほど大きくは違わないですね。
そうそう! さっきのネイルサロンの話を思い出してみ〜。それぞれ出せるカラーが微妙に違うってやつ。
黄色やピンクとかの暖色系はRGB・CMYKともほぼほぼ同じく再現できるのに対して、緑や青系の寒色系はRGBにしか再現できない色が多いんだよね〜。
んで、再現できない色をオーダーされたらどうするかっていうと、同じじゃないけど近い色を使うしかねー! ってなるじゃん。
それは、そうする他ないですね。
そこで「補正」が必要になってくるわけ〜。目のグリーンみたいな蛍光色は出せないけど、せめてもう少し明るくしたいとか、服の黄色は再現したいとか。
一度、ノー補正でCMYKに変換して、補正したい場所を決めておくといいね。
ああ〜それでか…… 確かにイラストは青とか緑が多めだったんですよぉ…… 。
CMYKで出せない色の範囲が多いとイラスト全体がくすんだ印象になって、紙面全体も暗く見えちゃうからね〜。
どんなにがんばっても叶わない夢があるみたいに、がんばっても再現できない色があるんだょね…。それでもぅちらがんばる! 負けない! ってのが補正の考え方。そのへんを頭に置きつつ、実際にやってみようぜウェーイ☆
なんかちょっと無駄に切なくなりましたけど、僕も負けないんだから!
◆point
CMYKに変換すると全体がどよんとくすんだ印象を受けるけど、RGB画像と並べてしっかり「どこがどれくらい違うか」を比較しよう。色域が違う以上100%同じにはできないから、ここの色だけは再現したい! という自分の中でのキーカラー探しをしておくと補正に入りやすいよん。
微妙に差がつく。初心者向き補正テク
まずは超基本。補正はRGBのうちにやるべし! 何度も言ってる通りCMYKにすると使える色の範囲が狭まるから、色の範囲が広いRGBでやっちゃった方がいいよ。
CMYKの特性上グレーの色味が変わるとかの問題もあるし「これ以上盛れないっス〜!」ってくらいまでRGBで補正して、CMYKにした後は微調整に止めるのがベストかな。
なるほど、補正はRGBでっと。
あと、今回はういろうが描いたイラストだからガンガン補正しちゃってもいいんだけど、他の人が作ったデータを補正するときは、元データの色味に寄せる程度でね。イラストレーターさんやカメラマンさんからの納品データの色味が大きく変わったら良くないからね。
あの〜思ったんですけど、外注する場合はCMYKに変換してから納品してもらえば良いのでは?
それな〜。いろんな意見あるし、印刷物に慣れてるイラストレーターさんでCMYK納品してくれる神な人もいるみたいだけど……。
ぅちは色補正はグラフィックデザイナーの仕事だと思う勢だから、とにかくやるしかねーって感じ!
あと、ここからの解説は、基本フォトショ使うからよろ〜。
お……押忍! お手やわらかに!!
ただ補正ってよくわからないんですよね…めちゃくちゃ赤くなったり、緑になったり。これであってるのかな〜って。
初心者向けだから大丈夫! 3つほど簡単なやり方を紹介するから、その中でできそうなやつからやっていこ〜。
ありがてぇ……! ありがてぇ……!!
すべてに共通してることなんだけど、さっきういろうがやったみたいに【イメージ>モード】でCMYK変換はしませ〜ん。
【編集>プロファイル変換】を使うから覚えといてね。その1はこのダイアログ上で完結するからとってもイージーだよん。
その1
【編集>プロファイル変換】「プロファイル」を「作業用CMYK(Japan color 2001Coated」に。
プレビューにチェックを入れて、マッチング方法の「知覚的」または「相対的な色域を維持」の2つから、再現性が高い方を選ぶ。
その2
【編集>プロファイル変換】「プロファイル」を「Lab(※)」に。
調整レイヤー「トーンカーブ」や「色彩・彩度」で補正→以降はその1と同じ。
※Labとは……RGBよりもさらに広い範囲のカラーを再現できるカラーモデル。どのデバイスで見ても同じ色で発色されることから「デバイスインディペンデントカラー」とも呼ばれている。
その3
RGBのままで調整レイヤーを作って「トーンカーブ」や「色彩・彩度」で補正。→以降はその1と同じ。
おお!!! ……うん、あの、微妙な差ですね。
それな。もうまじ微妙。同じじゃね? って言われたら、それは、そう。みたいな。
でもホラ! 寄りだとちょっと違いわからん?
あっあっあっ! ……確かに!微妙だけど、その3がRGBに近い気がします!
まじずっと見てるとわかんなくなるんだけど〜。注意したいのは「一箇所だけを見過ぎないこと」!!!
補整中に、自分の中で「ここの色がちゃんと出たらおけ!」って思えたら、いったん全体を見てみ。ノーマークだった部分がありえん色になってたりするからね。
なるほど、これはある程度余裕を持って進めたいところですね…! でも思ったより簡単で安心しました!
まあ最初はこれくらいかなとにかく数こなして慣れていくしかないし。色について理解ができてきたら十二色相環の補色を調整したりする方法もあるし。
じゅ??ジューニシキソーカンの捕食??? ぎゃるのさん急にどうしたんですか?落ち着いてください!
ういろうがおちつけし。
◆point
たまに印刷物作る程度ならCLIP STUDIO PAINTとかのペイントソフトでもCMYK変換はできるし、フォトショを購入するかはいったん様子見でもいいかも。
でも雑誌とか広告とかグラフィックデザインをゴッリゴリにやるプロ目指すならマスト。補正もグラフィックデザイナーに必要なスキルだから、レイアウトとかと同じくガンガン数こなしてマスターしてこ!
RGB印刷、特色、箔押し。意外と広いぞ印刷表現
ところで、最近よく「RGB入稿OK!」っていう印刷会社ありますよね?
ああいうところを利用すれば補正は必要ないってことですかね?
あるね〜。増えたよね〜。
ういろうみたいな初心者さんが「CMYK変換お願い致す!」って補正を印刷のプロに投げちゃうパターンと、ガチでモニタで見てるようなRGBの発色ができちゃうパターンと2種類あるけど、最近は後者が多いよね。
え?それってバキバキのネオンカラーもプリントできるって、こと……?
そうそう。通常のCMYKインクに加えて蛍光グリーンと蛍光ピンクが使えるプリンタとか、RGB色域をフォローした CMYKインクとか。
CMYKで表現できない色を出したい時は「特色」を指定しなきゃできなかったけど、すごい時代だよね〜。
あの〜……特色? とは?
スポットカラーとも言うんだけど、印刷会社に入稿するときに「この部分にこの色使ってくれし」ってオネガイすると全く同じ色を出してもらえるんだよ〜。
世界的なのはPANTONE、日本はDIC。
あとはインクじゃないんだけど、「箔押し」も金銀メタリックやプリズムで文字通りデザインに箔をつけられる加工。特色とともに書籍やパッケージに使われることが多いよ。
わあ〜やってみたい!
でもね〜お高いんですよぉ〜。だからそう気軽にはできないのぉ〜(涙)。
なるほど……気軽にはできない、と。
でも、CMYKっていう限られた色域で色んな表現をしていくのも楽しいよ〜。
色の組み合わせでビビッドに見せたり、擬似ゴールドとかテクスチャで光沢感出したり……。予算的に特色とか箔押しとか使えない案件でも、工夫次第で無限に盛れるからグラフィックデザインって最高なんだよね〜。
印刷×デザインの最強コンビ。グラフィックを遊ぼう!
ほうほう。工夫次第で無限盛り…!
印刷物はCMYKのインク濃度だけじゃなく、使う紙や印刷方法(オンデマンド、オフセット、インクジェット)によって発色が変わるから、どうせならいろいろ試して楽しんだ方がいいよ〜。
え? それってまったく同じ色でも使う用紙によって変わるって、こと……?
うん。白って200種類あんねん。
それ言いたいだけ……ではなさそうですね。確かに用紙によって白さが違いますもんね。
そうそう、青みがかった白ならクールな印象になったり、黄色みがかった白なら暖かい印象になったり。大体どのネット印刷会社も色見本(カラーチャート)用意してるから、取り寄せて見たらいいよ〜。
色見本! なんかオシャレなデザイナーさんの机に置いてますね。CMYKの発色がよくわかりそうなので、取り寄せてみます〜!
ういろうの潔いほどミーハーなとこ、デザイナー向きだわ〜。
お褒めいただきありがとうございます! なんか今回はかなり「印刷」に寄った内容でしたね〜。またもや勉強になりました。
最初に言った通り、グラフィックデザインだから。印刷物とは切っても切れない関係なんだよね〜。某えもんとメガネの少年みたいにね。
スタンドバイミーですね……。
あ! やば! ネイルサロン予約してたんだった!! いつもはRGB子ぴにお願いしてるけど、今日はCMYK美さんの気分〜。
実在の人物????
執筆・イラストきびのあやとら(X:@kibinoayatra/GENSEKI)
グラフィックデザイナー歴16年目。小難しく考えすぎてしまう拗らせ期を経て、一旦デザインと距離を置くため廃業を決意。イラストや広告漫画をメインに方向転換するも、デザインはあらゆるクリエイティブの根底にあるズッ友のような存在だと気付きやっぱ好きだわ〜と思う。基本的なことやコツさえ抑えたらデザインはとても自由で楽しいからマジでみんなやろ〜?ということをギャルのノリで伝えていきたいと思っています。