GENSEKIマガジン

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秀逸なデザインでファッショナブルなイラストを描く ー イラストレーター・グランピーちゃん

デザイン性の高いファッションやヘアースタイル、ファンタジーを感じるイラストを得意とする、グランピーちゃん氏。
 
どこか懐かしさを感じるポップなカラーリングやモチーフ、独特のタッチで描くイラストが人気を集めているイラストレーターだ。

今回は2月のテーマコンテスト「おに」に受賞した作品についてのお話から、イラストレーター・中村佑介氏の言葉をきっかけに生まれたイラストタッチの秘密まで、グランピーちゃん氏のイラストの魅力について詳しく伺った。

GENSEKI 2月コンテストイラスト「おに」について

『GENSEKI1月コンテスト「おに」優秀賞』

『GENSEKI1月コンテスト「おに」優秀賞』

ーー2月のコンテスト特賞おめでとうございます!豆をジェリービーンズに変える発想も、とても素敵でした。

グランピーちゃん:ありがとうございます。節分は鬼にとって辛いイベントなので、楽しいイメージにしようとジェリービーンズにしました。

ーー左右にいるウサギのキャラクターは、他のイラストにもよく使われていますね。

グランピーちゃん:もともと動物のウサギが好きで、このキャラクターをよく描いています。今回は赤鬼と青鬼に変身させて登場させました。

ーー今回の鬼のイラストの制作時間はどれくらいかかりましたか?

グランピーちゃん:日中は仕事があるので、平日帰宅してから2時間、多い時は4時間くらい作業しています。このイラストは3、4日くらいかかったので、時間でいうと10時間前後かかりました。

ーー「兼業イラストレーター」さんなんですね。受賞作品もですが、他の作品も一貫してファッションが可愛らしいですよね。何か参考にしているものがあるのでしょうか。

グランピーちゃん:小さい時からアイドル、特にハロー!プロジェクト(以下ハロプロ)のアイドルが好きだったので、モーニング娘。さんの衣装に影響を受けました。
最近だと、K-POPアイドルの衣装も可愛いのでよく見ています。
海外のハイブランドのファッションショーやコレクションを見るのも好きですね。

ーーファッション感度が高いですね!

グランピーちゃん:特に、ランウェイやパーティで見かけるようなドレスアップした衣装を見るのが好きなんです。
自分の日常着としては着ないので、髪型や髪色も含めて自分の代わりにイラストの中の女の子に着せています。イラスト用に自分で衣装のデザインを考えるのも好きです。

細部の描き込みに込められたこだわり

『平成ギャル コンテストイラスト 「ギャルと機関銃」』

『平成ギャル コンテストイラスト 「ギャルと機関銃」』

ーー今までの作品の中で、代表作といえる作品を教えてください。

グランピーちゃん:以前、他のメディアさんで開催していた「平成ギャル」をテーマにしたコンテスト用に描いたイラストがお気に入りです

ーーこれまでの作品以上に描き込みが緻密ですね!

グランピーちゃん:そうですね。入賞すると商業施設での展示権がもらえると言うのと、自分も平成ギャル世代なので、気合が入っています(笑)
それまでは人物が立った状態のスタイル画が中心で、こういった一枚絵のようなものは描いてこなかったので、いい機会になりました。

ーーかなり描き込みされていますが、このイラストはどれくらいのお時間がかかっていますか。

グランピーちゃん:これも仕事終わりに数時間ずつ地道に描いていて、半月くらいはかかったと思います。初めて描いた銃は資料を見ながらでしたが、難しかったですね。
銃についているデコパーツの部分が特に細かくて、ずっと描き続けていたら気がおかしくなりそうでした(笑)なので合間合間に、少しずつ進めて完成にもっていきました。

ーー他のモチーフもかなり細部まで書き込んでいますよね。ハート型の香水瓶、ポスカなども懐かしいです!

グランピーちゃん:金髪の子が持っている折りたたみの鏡に貼ってあるプリクラや、ハートの形の香水瓶、ポスカとか、小物は当時を思い出して描いたら止まらなくって。懐かしい小物は、描いていて楽しかったです。

ーー普段から、よくイラストコンテストに応募しているんでしょうか。

グランピーちゃん:応募している方だと思います。受賞したい気持ちももちろんあるのですが、そもそも同じテーマでいろんな作風のイラストレーターさんが、それぞれの解釈で描いたイラストを見るのが好きなんですよね。
自分も参加することで、普段描かないようなモチーフを描くきっかけになるのが楽しくて、他にもアパレルブランド主催のコンテストなどにも参加しています。

ーーGENSEKIのコンテストは何をきっかけに応募してくださいましたか。

グランピーちゃん:中村佑介先生が発信しているTwitterのスペースをよく聞いていて、そこでGENSEKIさんのことを紹介されていたのがきっかけですね。そのまま登録して、コンテストに参加しました。

尊敬するイラストレーターのアドバイスが絵の機転に

『春を纏う』

『春を纏う』

ーー本格的に絵を描き始めたのはいつ頃からですか?

グランピーちゃん:「絵を描き始めた」となると、子どもの頃から絵を描くのが好きだったのですが、今のようにデジタルで描き始めたのは、去年(2021年)にiPadを購入してからですね。高校生くらいからしばらく絵を描くことから離れていたんですが、iPadとApple Pencilの購入をきっかけに、また描き始めました。

ーーiPadで描かれているんですね。ツールは何を使用していますか?

グランピーちゃん:Procreateを使っています。機能がシンプルで使いやすいです。
仕事をしながら時間を作って少しずつ描いているので、手軽さや使いやすさのおかげで描き続けられますね。子どもの頃はもちろん、こんなに手軽にデジタルイラストが描ける時代ではなかったので、もっぱらアナログで描いていました。
漫画を読むのが好きで、当時はよく好きなシーンを模写していました。好きな登場人物を描くというよりも、印象的なシーンやかっこいい構図のシーンやセリフを描き写すことが多かったです。

ーー漫画のシーンの模写は、なかなか珍しいですね。

グランピーちゃん:好きなキャラクターを描こうとすると可愛い表情ばっかり描き込んでしまうんですが、ワンシーンごとを模写することで後ろ姿や横顔、自然と色んなポーズや構図を描くので、今思えば、それが良い絵の練習になっていたと思います。

ーー大人になってまた絵を描き始めて、実際に自分の絵が「上達したな」と感じたことはありますか?

グランピーちゃん:上達した、というわけではないですが、納得できる絵が描けるようになったのは、今の作風で描いていこうと決めてからですね。
それまでは色んなタッチで、それこそ少女漫画のようなイラストも描いていたので、絵柄が定まっていなかったんです。

『grumpy rabbits』

『grumpy rabbits』

ーー今の作風に変化したきっかけなどはありますか?

グランピーちゃん:実はこれも、きっかけは中村佑介先生のスペースなんです。
昔から1番尊敬しているイラストレーターが中村先生なのでよくスペースを聞いているのですが、中村佑介先生のスペースで合評のようなことをされていて…一年ほど前は合評会に名乗り出るほどイラストを描いていなかったので、参加せずにスペースを聞いたり、コメントしたりして楽しんでいました。
ある時、私のコメントをきっかけに中村佑介先生が私のTwitterのプロフィールを見て、ツイートしていたイラストにちょっとした合評をしてくださったんです。

ーーすごい!貴重な機会ですね。

グランピーちゃん:そうなんです。当時、特に絵柄に悩んでいた時期だったのですが、それをズバリ当てられてしまいました(笑)
「この頭身の絵は向いていない」といった率直なアドバイスもありました。私はそれをはっきり言ってくださるのに感激しましたし、嬉しかったです。
尊敬している方に言われたからこそ、自分の中でストンと胸に落ちたのかもしれません。
そして、その時に今の作風に近かったイラストを「この絵が一番合っている」と中村先生が褒めてくださったんです。
それが決め手となって、今のデフォルメされた頭身の女の子のイラストを描いて行くことにしました。

ーーそれは素晴らしい…人生の宝のようなアドバイスですね。

グランピーちゃん:本当にそう思います!
絵を描くのも、見るのも好きなので、他のイラストレーターさんの作品を見て「素敵だな」と思うと色々な描き方を試したくなっていたんです。
でもそんな時に中村先生が具体的な方向性を示してくださって、頭身の見直しをして、タッチを定めて、この方向で描いていこう。と決めてからは絵を描くのがもっと楽しくなっていました。あの時コメントして本当に良かった!
そして中村佑介先生のスペースでのトークが面白くて好きなので、今でもヘビーリスナーです(笑)


寝る時間を惜しんでまで描き続ける理由

『dreamy lingerie collection』

『dreamy lingerie collection』

ーー今は日中お仕事をしていて、兼業で絵を描かれているとのことですが、将来的にイラストレーターを本業にしていく予定はありますか?

グランピーちゃん:本業でお仕事していきたい気持ちはあります。でも今はアイコン作成などの個人の方向けのお仕事が多くて、商業用の仕事はほとんどできていません。
なので、まずはたくさん描いてたくさん発表して、私の作品をいろんな人に知ってもらうことからだと思っています。

ーー個人向けのお仕事をする中で、印象に残っていることはありますか?

グランピーちゃん:コンテストのイラストにも言えることですが、やっぱり自分が普段描かないモチーフや希望の時はたくさん資料を探してスケッチして、研究しながら描いていくのは楽しいです。依頼の中でどんどん自分が成長しているのも感じます。
その反面、描かない分野は制作時間がかかるので、兼業でやっていると描く時間が少ないのが辛いですね。
今は睡眠時間を削って描いてることもあります。

ーー確かに、仕事しながらだと時間の確保が難しいですよね。兼業イラストレーターさんの共通の悩みだと思います。

グランピーちゃん:そうですね。でも元々趣味が多くて、ハロプロが好きでアイドルの追っかけもしていたし、ハンドメイドでアクセサリーやお人形の洋服作ったり、自分の趣味に時間を割くことも多かったんです。
そんな中、コロナのパンデミックがあって、いろんなストレスや制約も増えましたよね。
コロナ禍、日々仕事をこなしている中で、今まで以上に自分がやりたかったことや、もっと頑張りたいことをやらないままで後悔したくないと感じて、やっぱり絵を頑張っていきたいなと考えたんです。
絵を描くことが好きだし、今回のコンテストで受賞できたように、イラストを認めてもらえることも嬉しい。これからも寝る間を惜しんで頑張っていきたいです(笑)

ーー今後あったら参加してみたいテーマやコンテストはありますか?

グランピーちゃん:実は、雑誌の星座占いの挿絵を描くのにずっと憧れています。なのでそういうタイアップのコンテストがあったら嬉しいです!
これは結構イラストレーター友達ともよく話題に上がるので、思っているのは私だけじゃないはず…(笑)
GENSEKIさんで12星座のコンテストがあったら参加したいですし、いつかお仕事でもチャレンジできる機会があればいいなと思います。

 

グランピーちゃん

キャッチーでポップでkawaiiをテーマに活動中。
女の子とうさぎの絵を描きます。