1995年生まれ、四国在住のイラストレーター・ならの氏。
大阪での保育士勤務を経て、2019年9月よりイラストレーターとして活動開始。
“青色” をベースに描かれる、暖かくも切ない繊細な世界観は見るものを魅了する美しさだ。
楽曲MVのイラスト制作や、自身が子供を描くことが好きであることから雑誌の間違い探しイラスト制作まで幅広く手がけている。
今回は、注目のイラストレーター・ならの氏のイラスト制作への想いや、知られざる素顔までインタビューにてたっぷりと語っていただいた。
イラストの解釈は見てくれる人に委ねたい
ーーさっそくですが、ならのさんが選ぶ渾身の1作品はありますか?
ならの:「海を夢見続ける子」というタイトルの作品です。これだなーって。
ーー私もこの作品大好きです!なぜこの作品を選んだんですか?
ならの:これは自分の好きな解釈をいっぱい詰め込めたっていうところですごいお気に入りです。タイトルには「実際夢を見る」っていうのと「こうなりたい」っていう憧れ、「将来の夢」っていう二つの意味があって、見る人見る人が違う解釈できるようにしたいなと思って。
目の前に海はあるし、海はあるけどこの子の閉じてる目の中にはまた別の海が広がっているかもしれないっていう、そういう意味で描ききれてない分の海もすごい描けて楽しかったなと思いました。
ーーこの作品を描こうと思ったきっかけはありますか?
ならの:この時「部屋の中」を描くのにハマっていて、そういう空間を描きたいなと思って紙に落書きしたのがきっかけですね。描いたら案外いい感じだったので、パソコンに取り込んで描き始めました。
ーー普段もアナログからなんですか?
ならの:普段は最初からパソコンでラフを描いていくんですけど、この作品はちょっと特殊で。紙で形を決めました。
ーー制作期間はどのくらいかかりましたか?
ならの:全然描いてない時期とか間をあけている時とかも含めて、トータルで2週間くらいです。基本的には5日から1週間くらいなんですけど、色々試行錯誤してたら2週間かかったって感じです。
ーーSNSでの反応もたくさんあったと思うのですが、その中で面白かった解釈などありましたか?
ならの:「窓を開けるとすぐそこに広がる海の風景から、海が大好きな女の子が寝ている間に見ている夢のような感じが伝わってきて、幻想的だと思いました」っていうコメントですね。どのコメントも最高ってなりましたけど笑
“空” は一番身近に感じられる綺麗なもの
ーーならのさんといえば「青色」ですが、青色を使い始めたきっかけはありますか?
ならの:最初の方は色々描いてたんですけど、ふと水没した世界が描きたくなって青をすごく使うようになりました。
その時Twitterのタグで青系のイラスト限定のタグがあったんですよね。ちょうど青増えたしと思ってやってみたら、前の絵よりも色んな人に見てもらえて…じゃあ次また青いの描くかって笑
そうしてるうちに「空が好きだな」っていうのを自覚しました。空ってこんなに綺麗なのに、見るためにお金を払う必要もないし、なんなら毎日見れるし、ちょっと外に出たらすぐ見れる誰もが一番身近に感じられる綺麗な物なんだなっていうのを思って。
それってすごい人の共感を呼べるし、自分は空見るのが好きだしみたいな。そういうのをどんどん絵描いていこうって思ったら必然的に青が増えていったって感じです。
ーーイラストの中に「ジンベエザメ」がよく出てきますよね。
ならの:これは完全に作者の好みです笑
ーージンベエザメが好きな理由は?
ならの:ジンベエザメって見た目に反して、とても優しい生き物なんです。
こんなに大きいのに、心は通じ合わせやすいというか…だから異種族、違う種類の生き物同士の交流っていうのを描く場合にジンベエザメは楽しいですよね。見た目以上の中身の良さとか、見た感じでは示しきれないような、そういう心を通わせるイラストを描きたいなってなった時に出てきたりします。
ーー影響を受けた人物や作品はありますか?
ならの:ペルソナ5の設定画集や宝石の国の作者さんの画集とか…いっぱいあります。
宝石の国の方の短編集とかもすごい好きで、結構影響を受けてますね。
保育士から専業イラストレーターへ転身
ーーイラストレーターになる時のきっかけをお話いただいてもいいですか?
ならの:保育の勉強をしてたので元々保育士だったんです。日本の保育所じゃなくて台湾の保育所で働いてて。
台湾の保育所で働けるのは一年だけだったんですけど、台湾で過ごすのがすごく楽しかったので…就労ビザを更新し続ければずっと台湾に居られるっていう保育所に転園したんです。けど、その保育所にビザの手続きとか時間が掛かってずっと待機で収入がなかったんです。
で、稼がないと滞在費がないぞー!笑ってなって、その時にちょっとずつイラストの副業みたいなのをやり始めたんです。
やっていたら、絵を専業で案外いけるかもしれない!ってなって、日本に帰って開業届を出し、イラストレーターになりました。
ーーイラストレーターを始める上で、しんどかったことはありますか?
ならの:最初は思い描いてたどこかの企業とする仕事じゃなくて「副業」という形だったので、一応イラストで生きていけてはいるからイラストレーターなんだろうけど思い描いてたイラストレーターとはちょっと違うな?とはなりました。そんなところから絵を専業にする道を歩み始めた感じです。
ーー今基本的にはHPとかTwitterで仕事を受注されてると思うんですけど、仕事が増えるきっかけってフォロワーが増えてきたことが理由にありますか?
ならの:本当にそうですね。「SNSを見て」とか、Twitterで作品を見た人が大多数です。
HPを作る前とかはそれこそTwitterのDMとかで、HPを作ってからはHP経由でっていう風になりました。
ーーTwitterのフォロワーが伸びたきっかけっていうのは、タグでとか特定の作品がバズったとかがあったりしたんですか?
ならの:それこそ、空の絵を描くようになってからですね。みんな空好きなんだなぁってなりました。
シンプルなツールで、唯一無二の描き方を
ーーイラストを制作する際、どういう機器やソフトを使ってらっしゃるんですか?
ならの:Wacom Oneという液タブを使用しております。
ペンは三菱鉛筆のuniのデジタルペンなんです。もう握り心地というか手触りが完全にuniの鉛筆で、それがそのままデジタルのペンになったっていう物なんですけど、それがWacom Oneでしか使えないので、それで今も描き続けてます。
ソフトはCLIP STUDIO PAINTです。でもなんだろう、機能はあんまり使いこなせてない気がします。
ーー多機能すぎてってことですか?
ならの:そうです。基本的に、最初から備わってるペンとツールだけで描いてます。私の描き方は線画を描いて色を置いていくっていうだけなので基本的にペンツールとバケツツールしか使わないです。
クリスタは色んな人が使っているので、「これが使えなくなった!」ってトラブルの時にネットで調べて解決方法を探しやすいのがいいですね。
自分の世界観も合わせつつ仕事をしていきたい
ーーどういうお仕事の依頼をいただくことが多いですか?
ならの:特定の分野が多いってことはなくて色々ですね。ジャケットのイラスト描いたり、あとキャンペーンイラスト描いたりとか、あとはミュージックビデオのループのアニメーションを描いたりとか色々です。
ーー将来やってみたい仕事はありますか?
ならの:今すごくやりたいのは児童書の仕事ですね、装丁とか表紙とか。
あとはキービジュアルやイベントとか…どこかの商業施設とか、そういう所を自分の世界観も合わせつつパッと華やかに見せられるようなイラストの仕事をすごくしてみたいです。
ならの(Twitter)
フリーランスで活動しております。
やさしい青と、子どもが好き。主な取引先