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独学で積み重ねてきた「テクニック」と「光の表現」で、一瞬の表情を切り抜く ー イラストレーター・急行2号

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引き付けられる瞳、繊細な光の暖かさ、まるで目の前にいるような “存在感” で多くのファンをもつイラストレーター・急行2号氏。

 「class101」でのオンラインイラスト講座や展示会への参加、MV用イラスト、ポスターイラスト制作を担当するなど幅広く活動している。

イラストに対する弛まぬ努力、ファンや関わる人々との繋がりを大切にする急行2号氏の姿勢から、イラストレーターという仕事もやはり「人対人」なのだと改めて考えさせられる貴重なインタビューとなった。

繊細な光の表現力が持つ魅力

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ーーご自身の代表作品をご紹介いただいてもよろしいでしょうか?

急行2号:タイトルはないのですが、今年の2月中旬ぐらいに描いたものです。色の変化で光を表現しているところにこだわりました。光と影を表現するために髪の毛を一本一本色を変えて描いたり、洋服の影の色を濃くしたり。斜め左上から光が差し込んでる様子をうまく表現できたかな、と感じています。

 

ーー髪の部分が凄く光ってるように見えます!何のペイントソフトで描かれているんですか?

急行2号:これは iPad のProcreate(プロクリエイト)というアプリで描いています。その中のブラシに光るような感じで描けるブラシがあるのでそれを髪の毛に描くときに使っています。Procreateは画面がスッキリしていて描きやすいですし、iPadは場所を選ばないっていうのと 好きな体勢でかけるのですごく助かってます。

 

ーーこのイラストはどれくらいのお時間で描かれたんですか?

急行2号:これは10時間ぐらいでしょうか。2月中旬頃は個人的にインスタグラムへの投稿を強化していて、なるべく1日1枚完成させるために描き方を効率化して速く描けるようになることを目標にしていました。

 

ーーInstagramもそれでフォロワーが増えてきた感じなんですか?

急行2号:そうですね、始める前は1万人だったのですが、1万7000人まで増えました!

 

ーー3ヶ月で7000人増えたということですか、凄いですね!増えるタイミングは一気にですか?それとも少しずつですか?

急行2号:イラストを投稿した日が特に増えましたね。あとは、韓国語と中国語のタグをつけたりしていたので、海外の方からコメントをいただいたりもしました。

 

ーー国内外の色んな方が見てくださっていたんですね。Instagramと同じくTwitterのフォロワー数も6万人以上いらっしゃいますが、フォロワーが増えたきっかけは何かありますか?

急行2号:コロナ禍になった時に外出の機会が減り、何かできないかなと思っていました。それで、すっぴんの女の子を描いたイラストに「自由に色塗りしてメイクしてください」っていうツイートをしたところ、色んな方がチャレンジしてくださって…この時は一気に1万人くらい増えました。拡散してくださった方々のおかげです。

自分の強みを知ることができた瞬間

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ーー描き始めたきっかけから現在に至るまで、どのようにイラストと関わってきたのでしょうか?

急行2号:子供の頃から絵を描くことが大好きでファンアートやオリジナルの絵を描いていました。それが現在まで続いている、という感じです。

 

ーー絵の勉強はどのようにされてきたのですか?

急行2号: ほとんど独学です。以前は親戚が絵画教室を開いていて、そこでデッサンを教えてもらったり、後は本やインターネットで色んな人のメイキングを見ながら覚えましたね。どうにかして自分の絵に取り込めないかなーと考えていました。

 

ーー自分の作風について意識していることやこだわりポイントはございますでしょうか。

急行2号光と影、あと空気感と髪の毛の描写をいつも意識しながら制作しています。この作風を意識しだしたのは、インスタなどで「光と影が凄いです!」「空気感が感じられます!」「髪の毛細いです!」というコメントを頂いてからです。客観的に自分の強みはそこなのか!と気付かされました。自分では意識してなかったところに注目してくださったり、新しい発見が得られて本当にありがたいです。

 

 ーー自分の視点ではわからないところを客観的に発見してもらえたのですね。イラストが上達したタイミングや転機だなと感じたことはありますか?

急行2号:結構明確に変化があったな、っていうタイミングが2つあります。

1つ目のタイミングは、もともとアナログの透明水彩で絵を描いていたのですが、それが iPad に移ったときです。アナログだと後戻りが出来ないので…今だとうまく描ける自信がないですね(笑)

2つ目のタイミングは、絵に大きく影を落とすようになったときだと思います。影をしっかり描くとファッション誌やInstagramの写真みたいな「切り抜き感」というか「空気感」が出せるようになったんです。この時から、髪の毛も描き込むようになりました。

デジタルに慣れてきた頃で、髪の毛を描き込むようになって画面に奥行き感を出せるようになったので自分でも絵が変わったなぁと分かるタイミングでした。 

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ーー影響を受けたり好きなイラストレーターさんや漫画家さんはいらっしゃいますか?

急行2号:画家のアルフォンス・マリア・ミュシャさんは永遠の憧れです!あと十二国記の山田章博さん。たまたま画集を手に取る機会があってそこからファンです。こんな凄い絵描く人いるんだっていう。漫画タッチでも重厚なタッチでも何でも描けるので、本当に尊敬してます。

あとテイルズオブシリーズのキャラデザを担当していらっしゃるいのまたむつみさんも好きです。髪の毛が細かく描かれてるところや、キラキラして引き込まれる瞳の描き方などは影響を受けているなと感じます。

自分の「好き」が原動力

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ーーイラストを描く際の情報収集はどのようにされていますか?

急行2号:気になったツイートを自分のサブアカウントで共有したり、Instagram では保存したり、メイキングとか制作過程とか Web 記事のリンクは Google Keep にメモしていたりします。色の組み合わせや全体のドローイングの方法とかは本を参考にしていますね。

後はpixivやArtStationのトレンドやランキングを見ることも多いです。

Twitterだとどうしても日本国内のものばかりになってしまうので、他の国の方の絵も見たい時にpixivやArtStationを見に行っています。

 

ーー色々なところから情報収集されているのですね。今までに手がけてきた作品の中で一番思い出に残ってる作品やお仕事はありますか?

急行2号:いろいろあるのですが、何回も打ち合わせをしたり長期間クライアントさんと一緒になって進めた仕事は絵も含め担当の方とのやり取りが思い出に残ってます。

個人でやってるとどうしても一人ぼっちの作業になり、人とのコミュニケーションをとる機会が少なくなってしまうので余計に関係者との対話が印象に残りますね。

「頑張りましょうね!」と言っていただいたりすると元気がでますし、いろんな人に助けてもらっているなと感じます。

 

ーー「一緒に頑張りましょう!」という言葉は心強いですね!アイデアに詰まった時のリフレッシュ方法はありますか?

急行2号:まず食べて寝る!思考が鈍っていると何も出来ないですし眠気に勝てない(笑)

他には好きなものを思い出すようにしています。例えば「この漫画の何巻のこのコマがすごい好き」とか、「このゲームのこのキャラクターがこう動いた時好きなんだよな」「雑誌のこういうシチュエーションのこういう切り取り方が好きだな」とか、そういう「自分の好き」を思い出すようにしたら自分が描きたいものが見えてくる感じです。

 

ーーお仕事は普段どのようにして依頼されることが多いですか?仕事が増えたきっかけがあればお伺いしたいです。

急行2号:増えたきっかけはSNSや展示会だったと思います。何かの仕事で描いたものを見てくださり、そこから新しいご依頼に繋がることもあります。Twitterのプロフィールにメールアドレスを載せているので、直接メールでくることが多いですね。ご依頼メールでは 「pixivを見ました」っていうのが一番多いかな、という印象があります。

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ーー「class101」のオンラインクラスを開講していらっしゃいますが、どのような経緯で携わることになったのでしょうか?準備などは大変だったのではないでしょうか。

急行2号:確か「Twitterを見ました」というメールが来た気がします。動画での喋り方がすごく難しくて、いつも無意識でやってることをどんな風に伝えたらいいのかな…というところに悩みました。開講までの準備はやることが多く時間もかかったのですが、スタッフの皆さんがサポートして下さいました。

 

ーーイラストレーターをしていて幸せを感じる瞬間はどんな時ですか?

急行2号:絵を描いていて幸せだなと思うのは、お友達や知り合いに「絵を描いています」って言えることですね。「あなたのことを知ってる人がすごく身近にいるよ」って教えてもらえた時は「嬉しい!」って思います。

福岡で参加した展示会では「山口県から来ました」って言ってくれた方がいて、語彙力を失うほど嬉しかったです(笑)

 

ーー遠方から足を運んでもらえるのは嬉しいですね!逆に、辛いなと感じることはありますか?

急行2号「これは自分には描けないやつだ」と気付かされる時ですね。私は人工物を描くのが苦手なんですが、仕事で描く必要がある時に「どうしよう」となる時が悔しいですね。なんとか調べて描きますが…うまく描けない自分に凄く腹が立つ!という感じです。

 

ーーとても難しいですね。そういう葛藤もありながら今までSNSや展示会を通じて色んなお仕事をされてこられたと思うのですが、今後やってみたい仕事や挑戦したい仕事はございますか?

急行2号:あまり人に言ったことがないのですが、「Webtoonを描きたい」「ラノベの表紙を描いてみたい」と思っています。Webtoonは自分が好きで読んでいるというのもあり、韓国の方の作品の色使いがすごく綺麗なので自分もそんな風に描いてみたいなと思っています。ラノベについては、いつかキャラクターデサインもやってみたいなというのもあって描いてみたいなと思ってます。

 

ーー最後に、GENSEKIのサービスについての印象をお伺いできれば幸いです!

急行2号:最初はクリエイターと企業のマッチングサービスなのかなと思っていたのですが、クリエイター向けにコンテストも開催されたりサービスの幅が広くてすごいなという印象があります。美大や専門学校に行っていない私のような人ってどうしても自分の実力を客観視しづらいということがあると思います。

コンテストだと審査員の目が入りますし、他の方がどんな作品を出しているのか見ることができていいなと思います。

周りの人と比べちゃいけないっていうのもありますが、いい意味で比べる環境があるっていうのは凄くありがたいですね。

 

 

SNSでの反響によって自分の強みを発見したり、仕事では担当者とのやり取りが印象に残ったというお話からも、『人とのコミュニケーションを大切してきた』ということが、今の急行2号氏を作る “原点” になっているのではないかと感じられるインタビューとなった。

今後もWebtoonやキャラクターデザインなど、新たな分野での急行2号氏の活躍が楽しみだ。

急行2号(@kyuko2go)

2017年末からイラストレーターとして活動開始。創作活動のテーマは「笑わなくても可愛い女の子」。展示活動のほか、PR用、アーティスト・VTuberのMV用、ポスター用などのイラストや装画も担当。