「顔をあわせることがスムーズな進行につながる」サタケシュンスケが語るコミュニケーションスキル【イラストレーター7つのスキル】第3回

2025.1.24

イラストを仕事にしようとしていているけど、うまくいかない。そんなときには、自分のイラストがよくないからだろうか、と悩んでしまいますよね。しかし、イラスト以外のところに原因があるのかもしれません。

イラストレーターのサタケシュンスケさんは「イラストレーターにはイラストスキル以外に7つのスキルが必要」とおっしゃっています。

この連載では、それぞれのスキルはどんなものなのか、どうやったら身につくのかをサタケシュンスケさんにおうかがいします。今回は「コミュニケーションスキル」です。

お話を聞いた人

サタケシュンスケ(X:@satakeshunsukeWeb
イラストレーター。広告制作会社勤務のグラフィックデザイナーを経て2007年に独立。よく同業者から相談を持ちかけられる。著書に『イラストレーターのためのお金の話』『配色アイデア手帖 色とイラスト かわいい世界観を作るヒントが詰まった本』など。

オンラインでもカメラをつないで、なるべく顔をあわせる

――今回はコミュニケーションスキルです。イラストレーターの中には、コミュニケーションに自信がない人も多いのかなと思いますが……。


サタケ

そうかもしれませんね。でも仕事となるとクライアントという人間を相手にするので、いい仕事をするためにも互いにコミュニケーションを取ろうとする姿勢が必要です。それは必ずしも、しゃべりのうまさとか、クライアントにかわいがられるおもしろさとは限りません。


――なるほど。具体的にサタケさんはどんな工夫をされているのでしょうか?


サタケ

僕は、会いに行ける距離のクライアントはなるべく対面で会いに行きます。もちろん先方の都合が悪ければやめますが、最初はこちらから「ごあいさつにうかがいます」と申し出て、顔をあわせるようにする。それが難しければ、せめてリモート会議で顔を見せる。それだけでも、その後の仕事の進み方がかなり変わるんですよ。

――リモート会議はカメラをつけずにアイコンで参加するイラストレーターも多いと思います。顔を見せ合うことで、どんな違いがあるのでしょうか?


サタケ

相手がどんな人間か、お互いちゃんと知る機会になります。相手の温度感や熱量もそうですし、人柄も含めて、メール文面だけではわからないことがわかる。

メールだけだと、相手が何を考えているかわかりづらいですよね。別に怒っているわけでもないのに、わからないという不安から、防御本能で少しトゲトゲしてしまう。そうするとお互いに、「思っていたのと違うんですが」とか「いや、それは最初に言ってもらわないと困ります」とか言ってしまう。一回顔をあわせていれば、そんな言い方にはならないと思うんです。


――確かに、メールではドライな印象だったけど、後日話してみるたらめちゃくちゃ親しみやすい人だった、という経験はあります。


サタケ

僕自身、お客さんとのやりとりでギスギスしてしまったり、なかば喧嘩別れのような形で終わってしまった経験があります。原因をたどっていくと、きちんとコミュニケーションを取れていなかったからでした。

苦い経験ではありますが、良い勉強になったととらえて、それからは足りない情報はこちらから丁寧に聞き出すことを心がけています。イラストレーターは顔を見ずにできる仕事だからこそ、仕事相手の存在を意識しなければならないと思いますね。

無茶な依頼はチャンスととらえる

――ほかに気を付けていることはありますか?


サタケ

そうですね……僕、仕事の依頼にしても知り合いからの相談ごとにしても、問い合わせには絶対にノーと言わないようにしているんです。無茶な問い合わせであっても、「こういう形でならお引き受けできるかもしれません」と、ポジティブに可能性を探る。絶対に門前払いはしません。

そして基本的には、どれだけ急ぎの仕事であっても、嫌な顔せずに「わかりました、お任せください」と言うんです。

――サタケさんほどの方でも、急ぎの仕事を断らないようにしているんですね。無茶な依頼がくると、「失礼だなあ」と嫌な気持ちになってしまったりしませんか?


サタケ

もちろん突っぱねる人もいると思うんですが、そこは考え方次第だと思っていて、僕はむしろチャンスだと感じるんです。無茶な依頼がくる、つまり相手が困っているときに助けてあげると、すごく信頼してもらえますよね。その信頼が、後に別の大きな仕事につながったりしますから。


――素晴らしい考え方だと思います。だからこそ、たくさんの仕事が舞い込んでくるんでしょうね。


サタケ

フリーランスは、「頼みやすい」と思ってもらうことが第一ですからね。「この依頼は、ちょっとな……」と思っても、1回ちゃんと話を聞いてみることを徹底しています。クライアントとしては声をかけるハードルが低いのかもしれません。

「この人なら答えてくれそう」な雰囲気作りをしてみる

――そういえば、サタケさんは同業者からよく相談を受けるとおっしゃっていましたね。


サタケ

はい。会ったこともない同業者から、お金のことや仕事のことでよく質問のDMをいただくんです。なんで僕に聞いたのか聞いてみると、「答えてくれそうな雰囲気だったから」と。

僕はSNSでのコミュニケーションをすごく大切にしていて、いただいたコメントはなるべくすべてに、丁寧なお返事をするようにしています。そういうところを見ている人は見ていて、「この人は連絡して大丈夫」と思ってくれているのかもしれません。依頼が来て初めてお客さんとして接するのではなく、普段から人とちゃんとやりとりできているかどうかを、クライアントも見ているのかもしれませんね。


――ここまでうかがったようなコミュニケーションスキルを、サタケさんはどこで培ったのでしょうか?


サタケ

僕は就職という形で一度社会に出て、5年間くらい会社員をしていたので、そこで身につけた部分が大きいです。学校を卒業していきなりフリーランスのイラストレーターになると、ここで苦労する人も結構いるんですよ。人当たりがよかったり友達が多かったりする人でも、仕事特有のルールやマナーはまた別物ですからね。

個人的には、フリーのイラストレーターになるのは、会社やアルバイトなど人とのかかわり方を学べる場を経験してからが良いと思います。

サタケシュンスケインタビュー連載「イラストレーター7つのスキル」

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聞き手・編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI

構成

ヒガキユウカ(X:@hi_ko1208

イラスト

華緒はな/お花(X:@hanao_hanao_twiGENSEKI

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