2023年1月に行われた「和装男子イラストコンテスト」。早い段階からたくさんのご応募をいただき、和風人気がうかがえました!
さまざまな和のデザイン、艶やかなイケメン達の魅力あふれる作品の中から、大賞1名、佳作10名をべっこ先生に選んでいただきました。
入賞のポイントも教えていただきましたので、イラストを描く人は必見です!
審査員
べっこ(Twitter)
イラストレーター。ゲームのキャラクターデザイン、書籍、Vtuberのイラストなど幅広いジャンルで活躍。代表作に刀剣乱舞(にっかり青江、南海太郎朝尊)、剣が刻(胤舜)、Vtuber 七瀬タク、弦月藤士郎(にじさんじ)、黒矣ねこ、飾守マトイなど。
インタビューした人
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。
「和装」は着るのも見るのも大好き!
クオリティが高く、サムネイルでも目を惹き、ストーリーを感じさせるイラスト
べっこ
大賞は秋らさんの「般若の面」です。全体的に怪しい雰囲気と美しさがあり、目を惹きつけられました。キャラクターの作り込みもしっかりできていて、ストーリー性も感じられます。
坂本
べっこさんには、どういったストーリーに見えるでしょうか?
べっこ
まず「鬼」が存在する世界観だと思いました。このキャラクターは男性だと思うのですが、狩衣(かりぎぬ)のような服を着ているので、巫女のような雰囲気も出ていますね。非常に中性的です。この子が主人公だったら、どんな活躍をしてくれるのかな? という期待値が上がるデザインだと思います。
坂本
大賞に選んだポイントは何だったのでしょうか? すぐ決まりましたか?
べっこ
迷いました。応募ページを何度も見て、2往復くらいで決めました。その中でこちらは
サムネイルでも情報量が詰まっていて、きれいだなと思いました。
顔もかっこいいです。ライティングも完璧で、直すところも見当たりません。
坂本
背景をよく見ると、紙の質感まで表現されていますね。クオリティが高いと感じました。
べっこ
その通りで、背景もすごくきれいですね。緻密に描かれているので、もっと大きい解像度で細部までしっかり見たくなります。
デザインもしっかりできていて、センスがいい方なので、お仕事もどんどんできると思います。
受賞者コメント:秋らさん
この度は大賞にご選出いただき、誠にありがとうございました。べっこ先生の作品は以前から拝見していて、繊細でオリジナリティに溢れ、いつも惹きつけられます。尊敬しているべっこ先生からお褒めの言葉を頂き、大変嬉しく思います…! また、素晴らしい作品をたくさん見ることができ、多くのことを学ばせていただいたコンテスト開催に、心より感謝申し上げます。
今回のイラストの世界観は、予想していただいた通り「鬼」が存在する世界です。鬼は人間に偽装し、偽装できない仲間を守るために社会に溶け込んでいます。このイラストはそんな鬼達が人に迫害され、人への信頼を失い、偽装をやめて反撃を決意するというシーンです。「笑っているけれど、本当は必死」という感情を伝えたいと描きました。
改めて、GENSEKI様とべっこ先生に心より感謝いたします。この賞を励みに、今後も楽しんで創作し続けたいと思います。
画風もデザインも十人十色! 佳作の良さ・クオリティUPのポイント
ここからは、べっこ先生が全ての応募から選んだ佳作10作品をご紹介します!
べっこ
赤がきれいに使えていて、華やかな部分がすごく良いですね。よく見ると、赤をベースにいろいろな色やグラデーションも使われているので、デザイン的にもすごくきれいです。
坂本
お顔やキャラクター性など、イケメンですよね……。
べっこ
そうですね、イケメンをバッチリ描けていると思います! あと、線画にすごく力を入れている方だと思うので、そこも和風テイストとマッチしていていいですね。
坂本
あと一歩、大賞に選ばれるにはこうしたらよかったという点はあるでしょうか?
べっこ
背景とキャラクターが同じ明るさ・鮮やかさになっているので、背景色を少し暗くして、キャラに目線が行くようになるといいですね。
線の密度はこのままでも、色で変化をつければ充分な差がつけられると思います。
べっこ
こちらは全体的にすごく色気を感じて、とても好きな1枚です。構図もおもしろいですね。
坂本
なぜこんなに色気を感じるんでしょうか。目線ですか?
べっこ
目線もありますし、和装をきちんと着こんでいるのに、横になって乱れているところでしょうか。
坂本
絵がより良くなるポイントはあるでしょうか?
べっこ
私だったら影を暗くします。障子の影をもっと暗くすると、バチッとキャラクターに目線がいくと思います。
あと、お顔がやつれているのが魅力的なのですが、手を見ると結構ぷっくりしています。お顔と同じようにやせてゴツゴツした感じがあると、色気が増すと思います。
坂本
手の表現は重要なのですね。
べっこ
そうですね、手は顔の次によく見られる部分です。この絵の中では、手がせっかく目立つ位置にあるので、しっかり描き込んだ方が、完成度が上がると思います。もう少し見せたい部分にピントを絞っていけば、もっと上まで行ける絵だと思います。
坂本
世界観があって惹きつけられる絵ですね。若いキラキラ男子が多い中で、中年の色気は目立ちますね。
べっこ
そうですね、枯れた感じもあっていいと思います。中年の色気も好きですね(笑)
べっこ
まず、キャラクターがかわいらしくて魅力的だと思いました。アイドル系でも通りそうですし、少し変わった和装のデザインも、水の雰囲気が出ていていいと思います。
坂本
背景が幾何学的なのが珍しいですね。こういった背景はいかがでしょうか?
べっこ
このようなデザイン背景にするなら、もう少しモチーフに意味を持たせたほうがいいと思います。なぜ提灯があるのかな?と思ってしまうので、湖などもう少し「水」を連想するものを入れると、全体的なまとまりが出ると思います。
手前の雲もデフォルメしすぎている印象を受けるので、なくしてもいいかもしれません。入れるとしたらもう少しリアルな雲や霞のようなものがいいと思います。
坂本
雲をリアルにした方がいいのは、キャラクターがしっかり描かれているからでしょうか?
べっこ
そうですね。キャラが緻密によく描かれているので、差が出すぎると浮いてしまいます。情報量を合わせるために、もう少し背景にも手を入れると、より良くなると思います。
べっこ
鮮やかな色合いがとても好きです。金魚がところどころに泳ぎ、水も浮遊していて、幻想的な雰囲気でいいですね。
坂本
水彩で描かれたイラストです。水彩特有の透明感がデジタルにスキャンしても出ていて、すごいです。
べっこ
そうですね、使い方が上手だと思います。水の描き方も水彩ならではの淡い感じと透明感がすごくきれいに出ていますね。よく見ると少年の帯が金魚になっているのもかわいいし、猫もかわいい。
坂本
実際に猫を飼っていらっしゃるのかな? と思う描写のバランスの良さです。金魚もいろいろな種類がいますね。
べっこ
猫に愛を感じますし、他の部分もモチーフをいろいろ調べて描かれたのかな、というのが伝わってきます。
坂本
大賞を取るためにもっと良くなる点はあるでしょうか?
べっこ
浮遊という動きのある絵なのですが、キャラクターのカメラの画角が平面になっています。
もう少しパース・角度をつけて、俯瞰やアオリなどカメラに動きがあるといいですね。
お顔が傘に隠れているのももったいないので、もう少し見えるといいなと思います。
べっこ
これはコピックで描かれていて、すごいですね! 甲冑がとても細かく描かれていて、しっかり資料を見て時間をかけて描いたのだろうと感じました。見ごたえのある1枚です。
坂本
タイトルが「寅大将」ということで、髪や模様に虎っぽい感じがちりばめられていますね。
べっこ
目もそうですね。顎の装飾も牙っぽくなっていて、すごく好きです。デザインがよく考えられていて、キャラクター自体もかっこよく描かれていて勇ましい感じが出ていて魅力的です。
坂本
こうした細かいデザインを見ていると、飽きませんね……。背景などはどうでしょうか?
べっこ
そうですね、キャラクターはすごく良いですが「兜の後ろの赤い布や、背景が何なのか? 手前の弓矢はなぜここにあるのか?」という疑問が湧いてしまいます。
パッと見たときに、何も説明しなくてもわかるようにするともっと良いと思います。たとえば、小物の位置などもよく考えるといいでしょう。
また、現状では顔周りに要素が集まっていて、圧迫感があります。キャラクターと背景の間の見通しをよくして、距離感を作ってあげてください。
べっこ
キャラクターに勢いがあり、火を消しに行ってる雰囲気をとても感じます。顔にしっかり力が入っていて、目がきれいです。炎で瞳がキラキラしていますね。
イケメン具合がみごとに描かれていて、推させていただきました。
坂本
イケメン、輝いていますね。こんな人が火を消していてくれたらファンになりますね。
犬もかわいいです。
べっこ
犬にも愛を感じます。いろいろとがんばって描かれているので、しっかり資料を用意したんだろうなと思いました。
坂本
背景もしっかり熱そうです! 人物とのバランスはどうでしょうか?
べっこ
背景に人物が少し溶けこんでしまっていて、キャラクターに目線がいきづらくなっていて惜しいです。火消しの纏(まとい)の白と背景の黒のコントラストが強く、少し顔周りの邪魔をしているのももったいないですね。
私が描くとしたら、背景の暗い部分~火の明るさのコントラストをもっとつけて、キャラクターの照り返しの光のコントラストを上げて描きます。
あと、せっかく背景小物で風を感じられるので、火の粉ももっと飛ばした方がかっこいいと思います。……いろいろ言ってしまいましたが、やっぱりお顔が本当にきれいです! それが印象に残る絵だと思いました。
べっこ
桜をがんばって描いていますね。背景にすごく力が入っていて、春ののどかな雰囲気が伝わってきて良いですね。
坂本
拡大しても、細部までしっかり描き込まれていますね! 背景も頼めそうな方です。
べっこ
春の花も何種類かありますし、背景も小物もすごくたくさん描かれています。散らばっているのは遊び道具かな? 猫とわちゃわちゃしている感じが好きです。
坂本
とても細かく描かれていますが、大賞に向けてもっとよくなる点はありますか?
べっこ
惜しいポイントはいくつかあるのですが、もっと見栄えをよくするために、「ねこ・人物・桜」のどれがメインなのか絞って、きれいに見せる方法を考えると良いと思います。
キャラクター真横の構図というのはあるのですが、キャラクターが棒立ちで動きがない状態なので、猫が目立ってしまったり、メインがあやふやになってしまっています。
坂本
具体的にはどうしたらいいでしょうか?
べっこ
このコンテストの場合はキャラクターがメインなので、もう少し顔をしっかり見せるなどするといいと思います。せっかく背景がきれいに描かれているので、キャラクターにパースやアングルをつける工夫をするといいですね。
べっこ
シンプルなのですが、キャラクターが魅力的だと感じました。お顔がかっこいいですし、白と赤のコントラストがかっこよく決まっていると思います。
坂本
浮世絵のような絵柄ですね。このタッチだとデザイン的な背景が合っているのでしょうか?
べっこ
そうですね、和風の雰囲気とマッチして、背景も合っていて良いと思います。タッチもとても魅力的で、完成度が高いと思います。
坂本
麻倉さんは、普段もこの画風で絵をたくさん描かれているようです。この素敵なイラストをさらにグレードアップさせるポイントはあるでしょうか?
べっこ
全体的に無地が多くシンプルで情報量が少ない点が完成度に影響しています。よく見るとウサギのモチーフのデザインが着物に入っていて、デザイン自体はかっこよいのですが……。
もう少し和テイストの模様を入れたり、白い服の方に模様や色を出すなど、情報量を足す工夫をすると、全体のバランスがもっと良くなると思います。
坂本
イケメンがそこにスッといる印象に、もう少し情報量が足されるといいのですね。
べっこ
怖いのに全部見たくなる、隅々までお面を見たくなるような絵です。魚眼風にしているのも上手です。雰囲気が出てて、アングルをつけなくても完成度が高くなっていると思います。
お面は一つ一つ描いているんでしょうか?全部お顔が違って、視線もそれぞれで、この不気味さが良いですね。
坂本
よく見ると、ひとつひとつ名前もついていますね!明治、昭和……ずっと見てしまう絵ですね。ちょっとゾワッとします……。下の方を見ると、引き出しが開いているものがありますね。
べっこ
真っ暗で何が入っているんでしょう。ひとつだけ髪が長いお面があって、下のお面が嫌そうにしているところが好きです。よく見ると障子の影もすごく怖い! 作り込みがすごいですね!
坂本
サムネイルの時はわかりませんでしたが、大きくして初めておもしろい絵だと気づく部分がいっぱいありますね。
べっこ
よく見ないとわからないのもおもしろいですが、サムネイルの時点で見ている人に通り過ぎてしまわれると、もったいないですね。サムネイルで目を惹く要素はコントラストです。
坂本
具体的には、どこを改善したらいいでしょうか?
べっこ
ライティングですね。今は全体に光が当たってしまっているので、右からの光源をもう少し強めて、左側に斜めに入っている全体の影を暗くします。お面も一緒に暗くした方が雰囲気が出ると思います。
障子はもう少し明るくして、障子に映る人影をはっきりさせるとより不気味さが増して、ぐっと良くなると思います。
べっこ
全体の色味がかわいらしくてきれいだなと思い選びました。水色とピンクの使い方がすごく上手だと思います。
顔周りの見せたい部分だけに光が当たっているので、完成度も高いです。
煙の先がウサギの形なのもおもしろく、アイデアが散りばめられていて良いですね。
坂本
手の中にも寝てるウサギがいてかわいいです。服のオリジナルデザインはどうでしょうか?
べっこ
かわいいと思います。男の子のデザインもすごく魅力的で好きですね。着物の柄も全部描いてあって、よく見るといろんなところにウサギの模様が入っています。
全体的にデザインセンスがある方なので、その良さを大事にしてもらえるといいなと思います。
坂本
大賞を見据えて、改善するといい点はあるでしょうか?
べっこ
ウサギかなと思います。肩のウサギはすごくかわいく描けているのですが、下はもう少し資料を見た方がいいかもしれません。せっかく描くなら何をやっているかわからないよりは、かわいいポーズ・まぬけなポーズを調べるともっといいと思います。右奥の着物から出てきている感じなどはかわいいですね。
形もリアル寄りで描かれているので、もう少しデッサンすると良いです。動物が好きな人は体つきなどもしっかり見るので、違和感なく描けた方がいいと思います。
描きたいテーマにピントを絞ることが大事
坂本
今回のイラストコンテスト、全体的に見ていかがでしたか?
べっこ
「和装男子」というテーマでいろんな作品を見るのが単純に楽しかったのと、いろいろと考えられていて、自分の中にはないデザインが新鮮で勉強になりました。
みなさんの情熱を感じました!
坂本
和装男子はイメージしやすいのか、人気が高いですね。早いうちから応募が多く、全体のクオリティも高い印象でした。べっこ先生が和装男子を描くときに、注意していることはあるでしょうか?
べっこ
和装を描くにあたって、着物の仕組みを理解しているとアレンジしやすく説得力がでるので、基本を知っておくことに重点をおいて描いています。
ネットで資料を集めたり、着物ならではのシワなどが大事なので、そういったこともわかるイラスト資料をたくさん集めて、しっかり頭に入れたうえで描いています。
坂本
選考の大きなポイントはどこだったでしょうか? 選ばれるためには、どんなことが大事ですか?
べっこ
一つ言えるのは「見せたい部分がはっきりしているかどうか」です。佳作の方たちも基本的には上手なのですが、ピントを絞りきれてないというのがありました。
一番最初にどこに目が行ってほしいのかをしっかり絵の中に入れると、大賞が狙えると思います。
坂本
具体的にどういった方法でピントを絞ればいいでしょうか?
べっこ
視線誘導を勉強して、構図やライティングを意識すると良いと思います。
それから、描きたい部分の情報量を多くすることですね。
見せたい部分の描きこみを多くして、他の部分との情報量に差をつけると、よりフォーカスできると思います。
それができればサムネイルでも目を惹きやすくなると思います。
坂本
今回は「和装男子」でしたのでイケメン男子が多く、どなたも甲乙つけがたいかっこよさでした。また、「文豪の憂鬱」の一味違った渋い魅力が印象的でしたので、次回は中年以上の縛りで開催するのもいいな、と感じています。
べっこ
選考が楽しかったです。中年以上、30代以上の脂の乗った世代縛りも良いですね。個人的にも好きなので、ぜひ見てみたいです!
坂本
企画が実った際には、ぜひまたよろしくお願いします。本日はありがとうございました!
編集
斎藤充博
企業オウンドメディアを中心に企画・制作・編集を行う。
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。