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キャラの迫力を出すにはコントラストが重要! クリエイター全力応援コンテスト第3回「獣人」タカヤマトシアキ先生講評会レポート

 

こんにちは! GENSEKIマガジン編集部です。

タカヤマトシアキ先生が審査員の「ワコム×パルミー×GENSEKIクリエイター全力応援コンテスト」。第3回のテーマは「獣人」で、274作品ものご応募をいただきました。


▼結果発表と受賞者コメントはこちら

今回もイラコン応募者とGENSEKIユーザー限定配信で「オンライン講評会」を行いました。今回もその配信と先生から事前にいただいた選考コメントを再編集し、講評会Q&A連載の記事に分けてレポートします!

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「獣人」イラコン講評会レポート(この記事)
・今までの記事にない回答や、具体的な話が満載!「Q&A」第三弾連載(近日公開)

 
審査員

タカヤマトシアキ(X:@tata_takayamaWebGENSEKI
デュエル・マスターズ、ヴァンガードなどさまざまなトレーディングカードゲーム(以下TCG)でメイン・パッケージイラストを手掛けるイラストレーター。クリーチャーやメカニック、リアル系まで幅広い画風を持つ。

インタビューした人
齋藤佳輝
GENSEKIコンテストの企画設計やBtoB営業を担当。


【大賞】メインに目が行く構成力、表情の豊かさなど細部までレベルの高い作品

初詣/@ aruurara

タカヤマ
大賞は@ aruuraraさんの『初詣』です。

たくさんのキャラが入っている難しい構図ですが、中央のメインキャラにうまくフォーカスできており、その他のキャラも破綻なく配置できています。

また、明るいパステル調によって、にぎやかな表現ができていますね。遠近感や立体感もよくまとまっています。こうした明るい色で構成するのは難しいんです。

メインキャラ以外にもきちんと表情をつけるなど、細部の描画も含めてプロフェッショナルな作品だと感じました。

@ aruuraraさんにはもう1点投稿いただきましたが、自分はこちらの方が好みでしたので選ばせていただきました。世界観が完成されているうえ実力も備わっていて、文句なしの大賞です。おめでとうございます!

 

【ワコム賞】安定感のある確かなクオリティで、よくできた獣人デザイン

スーパーJAWS君!!!/マエコ

タカヤマ
ワコム賞はマエコさんの『スーパーJAWS君!!!』です。おめでとうございます!

TCG的な、かっこよくて強そうな獣人ですね。マエコさんは以前も僕が審査員のコンテストで上位入賞されたことがありますが、今回もさすがの安定感のあるクオリティです。大賞でもおかしくありませんでした。

サメの頭と人間の体型を無理なく融合させてデザインしています。高い描画力で、細部までしっかりキャラが描き込まれているのもすばらしいです。色調もきれいにまとめられています。青は使うのが難しい色かと思いますが、うまく使えています。


【パルミー賞】獣人らしい迫力があり、未来を感じる1作

流浪武士/アキナガレ

タカヤマ
パルミー賞はアキナガレさんの『流浪武士』です。おめでとうございます。

筋骨隆々で、いかにも強そうな虎の獣人です。戦う強い「獣人」らしさが非常によいですね。
不敵な笑みと鋭い眼光も、キャラをより強調していてすばらしいです。

さらに欲を言えば、素材感の描き分けや、拡大すると見えてしまう粗さなどを修正していけば、より高いレベルで表現できると思います。

将来性も期待したいというところで、パルミー賞に選ばせていただきました!


【佳作】選考は難航! 接戦の中で選ばれた多種多様な9作品

襲来/芽花(ツバナ)

タカヤマ
芽花さんも前回のコンテストで上位受賞されていましたが、今回も高いクオリティの作品でした! わかりやすいオークの造形で、よくできています。

ただ、3Ⅾっぽさが強く出てしまっているのが少しもったいないですね。より強い個性や、イラストならではのけれん味(はったりを含んだ演出)をデザインや描画に加えてもらえたら、より作品としての味わいが出てくると思います。

3Dを使うこと自体は全く問題ないと思いますので、3Dにプラスアルファすることを意識してみてください。芽花さんらしさがより出た作品を期待しております!

 

古代蛮族ドン・ティラーノ/流線型トリケラトプス

タカヤマ
恐竜タイプの獣人で、蛮族らしい骨装備のデザインがおもしろいです。背景を含めて、細部までしっかり描くという気概もうかがえていいですね。

欲を言えば、全体的に色調が似通ってしまい、せっかくのキャラの濃さを少々損ねてしまっているかもしれません。ライティングや色調でメインに立体感を出して、背景と差をつけたり、蛮族らしいポージングなどでキャラを強調すると、よりよくなるでしょう。

独自性があってとてもいいので、このままの路線でより高いレベルを目指してください。

 

大鹿蝦夷左衛門 決戦之図/こぶとりらゐど

タカヤマ
珍しい和風テイストでおもしろいです。細部までしっかり描かれた甲冑や、ていねいな仕上げが印象的。構造などをしっかり調べてていねいに描かれていて、高い完成度です。

だからこそ、インパクトがあと少し欲しい、という印象も持ってしまいました。色調も構図も「こぶとりらゐどさんらしさ」が出せると、もっとよくなりそうです。

より大胆な構図やポーズ、メインに派手な色をわざと使うなどして、インパクト重視の作品に挑戦してみるのはいかがでしょうか? 既に持っている高い完成度にフックとなる要素がプラスされて、さらにいいイラストが描けるようになるのでは!? と思います!

 

見習い魔法使いのどたばた劇/①

タカヤマ
獣人らしいキャラデザインや場面のバタバタした雰囲気が、よく表現されていて良いイラストです。

画面全体を見ると、カメラアングルを広く取っているのがおもしろいです。こうした絵を描くには高い描写力と構成力が必要だと思います。

ただ、今回はたまたまなのかもしれませんが、パッと見たとき、何が描かれているのか、どんな表情なのかわかりにくいのが惜しい。せっかくのかわいいキャラや画力、構成力がもったいなく感じます。ライティングか色調を工夫すれば解決しそうな気もしますね。

確かな実力をお持ちだと思いますので、目立たせたいところを明確にしてみてください。サムネイルの状態で見ても、何が描いてあるかわかりやすくなるといいでしょう。

 

New Year of The Dragon 2024./OWLAND

タカヤマ
恐竜タイプの獣人が、力強く疾走するさまがとてもよく描けています。

キャラの顔立ちや、人の足と恐竜のような足を、違和感なく融合させたデザインがうまい! 人間ぽさに無理がないのがいいですね。例えば足首部分など、人間と全く構造が違う恐竜タイプの造形ですが、無理なく二足歩行ができる形に処理されています。こういうふうに描くんだ、と僕も勉強になりました。

欲を言えばもうひと声、色調などにメリハリがあると画面が締まると思います。

 

龍の背中/ふあこし

タカヤマ
静かに闘志をたぎらせるかのような竜人の構成で、雰囲気があっていいですね。正面ではなく背中を見せた構図は描くのに少し勇気が必要だったはずです。でも、これが正解でコンセプトがわかりやすく表現できています。

体の構造理解や描画力を上げて、盛り上がった上腕の張りつめた筋肉の感じや、振り向く顔の角度などが表現できるようになると、迫力が増すと思います。さらにいい作品が描けるようになりますので、がんばってみてください。

三番目の闘士/イツキ

タカヤマ
雄々しいポーズがかっこいいです。肉弾戦を得意とするタイプの獣人であることがわかりやすいですね。

しかしながらせっかくの雄々しいキャラやポーズも、色調が少し単調に見え、メリハリ感の少ない画面になってしまっているのが惜しいかな、と感じます。

よりメリハリのあるライティングを試してみる、雷のエフェクトの色やサイズをもっと大胆に入れてみる、筋肉の盛り上がりやカタマリ感をより意識する……というようなことをすると、さらに良くなると思います。ていねいに描かれていて、とてもいいので、そこに迫力がプラスできると、よりかっこよくなるでしょう。

 

鳥獣剣闘士/はいすいのじん

タカヤマ
応募作品の中でも珍しい鳥型獣人です。鳥型のかっこよさの秘訣である「翼」をしっかり描画できていて、いいですね。

翼というのは誰もが想像できる「こんな感じ」でなんとなく描きがちなのですが、そこで止まらず、かっこいい形をしっかり調べて描けています。

現状もはいすいのじんさんの持てる力の限りで描かれていると思いますが、人体の構造理解や素材感の描き分けをより高めると、さらにかっこよくなります。雰囲気があり、このままの方向でいいので、がんばってください!

高校三年の夏/綱敷うろび

タカヤマ
ここまで多かった戦う獣人とは違った作品です。投球するキャラの躍動感がよく描けていますね。

ポーズにリアリティと躍動感が共存していて、表情も含め『高校三年の夏』というコンセプトの狙い通りにしっかり表現できています。他にもご応募いただきましたが、このイラストが一番よかったですね。


【総評】佳作は接戦で、惜しかった作品も入賞圏内。そのまま研鑽を続けて

齋藤
全体を振り返って、いかがでしたか?

タカヤマ
「獣人」というテーマは、一般的に題材になりにくく応募も少ないジャンルかもしれない、と思っていました。ところが自分がこれまで審査したコンテストで最多の、274作品もお寄せいただき驚いています。ご応募くださったみなさん、ありがとうございました! 

上位入賞の3作品は頭ひとつ抜けていましたが、佳作についてはまだまだ候補が30作品ぐらいありました。受賞した作品と惜しかった作品の差も、そこまでなかったように思います。

賞に入らなかった方も、テーマの選択や気合の入れようで十分入賞を狙えると思います。ぜひ今後もがんばってください!

ドラゴマキア」オリジナルキャラクター

齋藤
今回は先生も、コンテストの期間中に個人の創作活動で「獣人」を描いてくださったそうですね。

タカヤマ
「獣人」テーマのイラストは自分もあまり描いた経験がなかったため「きちんと審査ができるのか?」と思ってしまいました。それで、2023年の冬に自分の同人誌を制作するときに、キャラの一つを獣人に置き換えて描くことにしたんです。

僕はもともとエンタメでも、多種多様な異星人や種族が出てくるような世界観の作品が好きです。それに、獣人というのはいわゆる「ケモ」ジャンルとして一定の層に強力なアピール力があると思うので、自分のキャラデザインの方向性の一つにできるように、描けるようになりたいと思い、がんばってみました。

「カッコいい」「強そう」な獣人は描いたことがあるのですが女性タイプは初めてで、チョッと苦労しました。ですがまあまあの出来になったのではないかと思います。今後も研鑽を重ねて、自分の物にしていければと思います!

齋藤
獣とメカのかっこいい掛けあわせ、十分にグッとくるものがありました!
ご自身も描かれた上で選考に臨んでいただき、誠にありがとうございました。


>>>今までの記事にない回答や、具体的な話が満載!「Q&A」第三弾連載へつづく(近日公開)


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▼協賛

・株式会社ワコム

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株式会社ワコムは、ペンタブレットや液晶ペンタブレットなどの機器などの分野で、国内トップシェアのリーディングカンパニー。
全世界150以上の国と地域で、映画制作や工業デザインのスタジオ、デザイナー、マンガ家などのプロクリエイターから、趣味でイラストや写真加工を楽しまれる方まで幅広くご愛用いただいています。


・株式会社パルミー

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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI