イラストの背景を調整し、メインキャラを目立たせる方法【イラスト添削】

こんにちは、 GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいているgreen322先生の添削シリーズです。
今回は「可能性を秘めた作品を見せてください! GENSEKI添削応募企画」で、添削してほしいイラストを広くご応募いただきました。
大賞は1名の予定でしたが、審査員であるgreen322先生の意向により2作品が大賞となりました。
- 厚塗りイラストでメインを目立たせる方法
- 描き込みを活かしたまま絵をまとめる方法
- 距離感の出し方
添削担当
green322(X:@green322green)
Xで14万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。
添削応募企画 大賞

みずいえ(GENSEKI)
みずいえさんのお悩み
今回の添削対象は、 みずいえさんのこちらのイラストです。
ーこのイラストで伸びしろを感じているポイントを教えてください。

暗さ重さといった絵的な質感はそれほど悪くない気がしているのですが、混乱状態のおもしろさというより「散らかった絵」という印象が強いところが気になっています。
ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?

筆致感と説明的な描き込みの折り合いが難しく、「どっちつかずの半端もの」という感覚があります。
本来欲しいのは「油彩画のマチエール」的な筆致です。
ー目指している絵柄や作家さんはいますか?

数パターンあるのですが、この絵については生頼範義さん(公式Webサイト)です。
【添削ポイント】描写に差をつけてイラストを見やすく
みずいえさん、大賞おめでとうございます! このたびはご応募いただきありがとうございます。
今回のイラストですが、イラスト全体の描き込みや内容が充実しており、とても見栄えするイラストになっていると感じました! ひとつひとつの描写力も高く、描いてきた時間と量を感じさせる厚みがありますね。
一方で、主要モチーフ(人物や馬)と背景の描写の差が少なく、メリハリに欠けるのが非常にもったいないと感じました。お悩みの描き込みのバランスやどっちつかずな感覚は「内容のわかりにくさ」が主な原因かもしれません。
メリハリをつけるだけで、イラストがもっとわかりやすくなります。少しの調整でクオリティアップが可能ですので、詳しく見ていきましょう。
モチーフのシルエットをわかりやすくしよう

<メインモチーフの調整>
この絵で一番に目が行くのは巨人ですが、顔回りのコントラストが低く、印象が弱くなってしまっています。まずはこの巨人を引き立たせましょう。
巨人のシルエットを強調するために、巨人そのものではなく背景を調整します。やりかたの一例としては、「色相・彩度・明度」(CLIP STUDIO PAINTの場合)で全体を暗くする調整レイヤーを作り、レイヤーマスクの機能で背景だけに暗くする効果をかけます。





効果を残した部分が暗くなる
さらにその上から、背景に青色・赤色をオーバーレイで重ね、巨人や手前のモチーフと背景に色でも差をつけます。背景が整ったら、巨人の脇や腕のなどの背景と同化して見えている輪郭を描き込み、さらにシルエットをはっきりさせます。






<サブモチーフの調整>
次は巨人以外のサブモチーフです。こちらもよく描き込まれているのにシルエットが見えづらく、背景と同化しがちです。前後の距離感や絵の構成がもっとわかりやすくなるよう、調整しましょう。
巨人の手前に落ちる人物を調整レイヤーで明るくし、その後ろの巨人下部を暗くして、シルエットをわかりやすくします。



他の人物や馬は、背景をスクリーンレイヤーで青く明るく塗ってコントラストを抑え、シルエットを目立たせます。また、赤くした上部に合わせ、地面に近いところにも赤色を加えます。
こうして遠景のコントラストを抑えつつ、色のバランスも取ります。
サブモチーフの大きさが似通っているので、左手前の馬を大きくし、ピントをぼかします。こうするとメインより目立たないようにしつつ、前後感を出すことができます。

▼上記を添削したものがこちら!▼


【さらにひと手間】演出をさらに加えて、絵を鮮やかに

爆発やエフェクトを利用して、さらに絵の印象を強めましょう。
上から差し込む光があるので、もう少し明るさを強めます。巨人とサブモチーフの身体に当たる光も強く描き込み、立体感をより引き立てます。
粉塵がはじけるような白い粒状のエフェクトを追加し、エフェクトの強さと画面の情報量を増やします。地面の爆発のエフェクトにはさらに赤色を加えて爆発を描き込み、勢いや全体の鮮やかさを整えます。
全体のバランスをとって絵をまとめるために、画面全体に彩度の低い青色を21%のオーバーレイで重ねます。「トーンカーブ」と「色相・彩度・明度」の調整レイヤーで画面をさらに引き締めます。


添削完了!


【総評】「何が描かれているか」わかることが大切。優先度で絵を整理しよう
イラストをパッと見たときに「何がどこにあるかわかる」というのは重要です。カードイラストのように絵の内容で状況を伝える必要がある場合は、特に大切です。
今後は、描写内容をさらに充実させつつ、「物と物との距離感」やシルエットを「目立たせる工夫」をしていくと、さらに良いイラストが描けるようになると思います。描写力はかなり高いので、長所をさらに活かせるよう願っております。
応援しております。お互いがんばりましょう!
添削イラスト募集中!
この連載では、green322先生にイラストの添削をしてほしい人を継続募集しています!
元のイラストの良さはそのまま活かして、さらにクオリティを上げるポイントが満載。学びの多い添削です! green322先生がそのとき「もっと引き上げられる」と感じたイラストを採用させていただきます。
今回のコンテストに応募いただいた方や、今まで添削にご応募いただいた方の再応募も歓迎です。
皆さまからのご応募、お待ちしております✨
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執筆
kao(X:@kaosketch/Web/GENSEKI)
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