こんにちは、GENSEKIの坂本です。
本日は、代々木アニメーション学院と開催させていただいた、GENSEKI学生応援プロジェクトイラストコンテストで最優秀賞に選ばれた方の、出水ぽすか先生との1on1レッスンに模様をお伝えします!
GENSEKI専門学校プロジェクトとは
専門学校で切磋琢磨する学生クリエイターの皆様を応援させていただくべく、GENSEKIでは2022年夏〜秋にかけて複数の専門学校と、各校の生徒さん向けにイラストコンクールを開催させて頂きました。
優秀賞に選ばれた方は、出水ぽすか先生とオンラインでの1on1レッスンをプレゼント。
今回ご紹介するのは、アニメ・エンタメの専門校「代々木アニメーション学院」と開催したコンクールです。
テーマは「異世界」でした。
出水ぽすか先生の1on1レッスン参加者
出水ぽすか 先生
週刊少年ジャンプ「約束のネバーランド」の作画、他にもコロコロコミック、ポケモンカードゲーム等のイラストを手掛ける。
今回のコンクールでは審査員を務めて頂いた。
齋藤佳輝
GENSEKIにてイラストコンテストの運営や新規営業を担当。
1on1レッスンでは全体の進行を務める。
こーすけ さん
イラスト科に通う学生。将来はイラストレーターを目指す。好きなゲームはポケモン。
高い画力と想像力を掻き立てる仕掛けがたくさんあるイラスト
齋藤
こーすけさん、この度は最優秀賞の受賞おめでとうございます。改めて作品のコンセプトについて教えてください。
こーすけ
コロナ禍になり、夏祭りが開催されず悲しかったので、妖怪の世界の夏祭りを描きました。昔懐かしい風景のはずなのに、よく見るとどこかおかしい、異世界感に迷い込んでしまった様な不安感を意識して描きました。
自分は魚のモチーフが好きで大きな鯉のぼりを真ん中に描きました。この鯉のぼりの水風船の数は年齢になっているという裏設定もあります。
齋藤
ありがとうございます!それでは出水先生の講評をお願いします。
出水ぽすか先生
素晴らしい作品をありがとうございます。この絵はすごく私の好みです!こーすけさんの絵の良い点をまとめると下記があげられます。
- モチーフをたくさん使いながら1枚の絵としてまとめられている
- 想像を掻き立てるストーリー性とちょっとしたリアリティ
モチーフをたくさん使いながら1枚の絵としてまとめられている
出水ぽすか先生
このモチーフの詰まり具合をみて、こーすけさんには描きたいものが色々あったのだろうなと思いました。こんなにたくさんのモチーフが詰まっているのに、1枚の絵としてまとめられている点から、高い技術力を感じます。
齋藤
例えば、どういった点がよいでしょうか?
出水ぽすか先生
手前にモチーフがたくさん詰まっていて、かつ少し薄暗いのですが、背景の空では「明るさ」をだしていますよね。さらに空は描き込まずに、質感で描き分けています。これにより1枚の絵として良いバランスがとれていると思いました。
こーすけさん自身の描きたいという気持ち・アイディア・感性が伝わってきます。
齋藤
なるほど。
出水ぽすか先生
はい。さらに、細かいモチーフも本当によく描けているんです。
出水ぽすか先生
鯉を掬おうとしている2人の後ろにある自転車も、青い鯉のぼりも本当によく描けています。悪いところがないくらいなんですが、強いて言えば…左の扇風機が気になります。
出水ぽすか先生
ここは 「伸びしろポイント」なのですが、手前のモチーフはしっかりと描き込んだほうが良いです。自転車がすごく細かく描けていたので、扇風機もそれくらい描けると良いと思います!
想像を掻き立てるストーリー性とちょっとしたリアリティ
出水ぽすか先生
個人的な好きポイントでもあるんですけど、奥にラムネ持っている子がいいですよね。
出水ぽすか先生
こーすけさんは戦隊モノが好きなんですか?
こーすけ
いえ、小さい時に弟が好きだったのを思い出して描きました。
出水ぽすか先生
じゃあ、実際に一緒に見ていたんですね。そういうしっかりとした思い出が基盤になっているところが、このリアリティにつながっているのだと思います。手に持っているラムネ・ひざの表現や子どものふっくらとした感じも愛を感じます。
齋藤
冒頭で説明してもらった裏設定等、キャラクターの設定もいいですよね。
出水ぽすか先生
はい。キャラクターに設定をつけるのもリアリティを出せるポイントです。
ここで2つ目の 「伸びしろポイント」です!
真ん中の大きい鯉のぼりは、水風船の数が年齢ということだったので、「何歳にするのか」を考えておくと、何個の水風船を描けば良いのか等、ディティールを詰めることができます。
出水ぽすか先生
そしてさらに3つ目の 「伸びしろポイント」なのですが、水風船にもリアリティを足すとより一層よくなります。この水風船は実際に見て描きましたか?
こーすけ
いえ、参考画像をインターネットで調べました。
出水ぽすか先生
やはり、モチーフを実物で見ないと表現に限界が出てくると思います。細かい点ですが、この水風船も風船と風船の間の表現などが気になりました。水風船なら、百均でも売っていると思うので是非2つ買って重なりがどうなっているか、よく観察してみましょう。もっとリアリティが出せるはずです。
こーすけ
水風船、買いに行ってみます。
齋藤
ちなみに、出水先生が描くときも基本はリアルなモチーフを見て描かれると思いますが、空想上のものを描くときはどうしますか?
出水ぽすか先生
現実にあるものを組み合わせて描きます。例えば、家にあるアンティークなフォークを見て、剣のデザインを考えたりしますね。
齋藤
出水先生の家には素敵な食器がたくさんありそうです。
出水ぽすか先生
さきほど、頭の中でモチーフを組み合わせると言いましたが、例えば「コップの中にいる子ども」を描きたいと思ったら家にあるコップに人形を入れたりします。
齋藤
空想上のものも、人形や小物で再現して描くんですね。
出水ぽすか先生
はい。あとオシャレなものを描きたいときはオシャレなお店に行ってワインを飲んで、そのグラスを観察します。
齋藤
日頃から様々なモチーフを観察しているんですね。
無理して苦手なことをするより自分の得意なことを
こーすけ
自分はパースを取るのが苦手なので、どうしても一点透視になってしまい、構図が単調になります。今回ももう少しひねった構図にすればよかったと反省しています。
出水ぽすか先生
この絵に関して言えば、この構図で完成しているし十分素晴らしいです。あと、私は無理して苦手なことをやるより自分の得意なことを生かしたほうがいいと思います。
齋藤
出水先生でも描くことが苦手だなと思うものはあるのでしょうか?
出水ぽすか先生
例えばセクシーな女の子とかはあんまり描かないです。学術的なものや専門的な知識が必要なものは、苦手とはいいませんが、あまり得意ではないですね。
齋藤
もしそういった依頼がきたらどうするのでしょうか?
出水ぽすか先生
最近はそういう依頼自体、めったに来ませんが、駆け出しの頃はなんでも全力で取り組みました。
実際に昔、線をきれいに描いてくださいという要件の案件があって何度も修正が発生しました。ただ、その案件でいうと最終的には私の絵柄を担当者が理解してくれて、線についての指摘・修正はなくなりました。
信頼と実績を積み重ねて、自分を曲げるより要件が自分に合うようにしていくことも一つの手です。
齋藤
なるほど。でもやはり何度も修正がきたりすると落ち込みますよね。そういうときはどのように気持ちを切り替えるんですか?
出水ぽすか先生
全く別の絵を描きます(笑)
齋藤
仕事の辛さも絵で癒やすんですね。
加筆の沼には要注意!新しい作品の制作は自分が楽しくやれるバランスを大事にしよう
こーすけ
今回受賞した作品を加筆したいのですが、出水先生から見てよりよくするにはどうしたらよいでしょうか?
出水ぽすか先生
先程お伝えした通り、扇風機と水風船のモチーフをもう少し研究してみてほしいです。
ただ、熱意があるうちに加筆することもすごく良いのですが、新しい作品を作ることにも挑戦してみてほしいと思っています。
齋藤
加筆はあまりしないほうが良いのでしょうか…?
出水ぽすか先生
私も経験あるんですが、受賞するとその作品に固執してしまうんです。時にはそれが心の負担になることもあります。
また、プロを目指すなら新しい作品を作り続けることが大事です。
こーすけ
ありがとうございます。新しい作品を作るべきか、今までの作品を加筆した方がいいか迷っていたので、参考になりました。
出水ぽすか先生
もちろん、どんどん加筆して作品が出来上がっていく瞬間に喜びを覚えるなら、それを無理に辞める必要はありません。自分が一番楽しんで描けるバランスを意識してみてください。
こーすけ
わかりました。
ちなみに自分の絵の良し悪しを判断したい時、先生はどうしていますか?
出水ぽすか先生
自分で自分の絵の良し悪しは判断できないと思うので、客観的に意見をくれる人を探します。その時、注意しているのは「他人の意見に振り回されすぎないようにする」という点です。自分の意見も同じくらい大切にするようにしています。
生活と絵を両立させるために規則正しい生活を心がける
こーすけ
絵以外で先生が大切にしていることは、ありますか?
出水ぽすか先生
「納期を守る」と「生活と絵を両立させること」です。
齋藤
納期を守ることは大事ですよね。
出水ぽすか先生
はい。絵の仕事をする上では、上手さも大事なんですけど、納期を守るという当たり前のことが非常に重要になります。もし、今も学校で期限付きの課題が出たら、それもプロになるための練習だと思って、必ず期限を守るように心がけてみてほしいです。
齋藤
「生活と絵の両立」はどういったことなんでしょうか?
出水ぽすか先生
朝型の生活を続けるということです。私は実家にいたときも朝型の生活だったので、それを続けるようにしています。
齋藤
フリーランスで朝型の生活をするのは大変じゃないですか?
出水ぽすか先生
ごはんの時間や朝のルーティーンを変えないようにして、維持しています。
齋藤
朝型の生活をしていると、一般的な企業が活動している時間と同じになるのでメールのやりとり等、コミュニケーションとりやすそうですね。
出水ぽすか先生
はい。あと、漫画家の仕事の場合は、担当編集さんと打ち合わせが発生するので、時間を揃えたり意識している人は少なくないと思います。
あとは健康診断は年1回必ず受けるようにしていたり、自分が快適に生きることを大事にしています。
齋藤
「自分が快適に生きる」ためにどうすべきか考えて実践できていることがすごいですね。
出水ぽすか先生
これも学生のうちから習慣づけられると良いと思います。
こーすけ
ありがとうございます。
出水ぽすか先生
ちなみに、週刊連載をやっていても週4~5日働いて、それ以外の日は休んでいる先生もいます。公私のバランスがしっかりしていて、すごいですよね。
齋藤
週刊連載は常に期限に追われているイメージがありました。
ジャンプの作家さん同士で交流もあるんですね。
出水ぽすか先生
はい。ジャンプの作家さん達は本当にすごい人ばかりです。
齋藤
漫画を描いている人は知識量もすごそうです。
出水ぽすか先生
はい。みなさん漫画も面白いのに、さらにお話しててもすごく面白くてすごいんですよ。
私はどちらかというと引きこもり気質で、誰かに何かをアドバイスするということが実は苦手なんです。
そんな私が、今回この仕事を受けようと思ったのは、新人の時にすごく有名なジャンプの作家さんにとても優しく接していただいて、すごく嬉しかった経験があるからなんです。私もあの作家さんと同じように、若い作家・クリエイターさんを勇気づけられればと思ってこの場にいます!
齋藤
そんなエピソードがあったんですね。ありがとうございます。
こーすけ
出水先生は既にたくさんの有名な作家さんと会っていると思いますが、尊敬しているクリエイターはいますか?
出水ぽすか先生
尊敬している作家さんはたくさんいるので、挙げきれませんが…。
最近、仕事で尊敬する作家さんの1人である、JNTHEDさんと少しだけ仕事で関わることができたことがとても嬉しかったことの一つです!
齋藤
尊敬する人と関われるのは嬉しいですよね!
【全体講評】個性ある異世界の捉え方が面白い
齋藤
それでは今回のコンクール全体の講評をお願いします。
出水ぽすか先生
みなさん、それぞれの異世界があって面白かったです。「異世界」は現実にはないモチーフを描くので、皆さん大変だったと思います。
異世界等、知らないものを描くことは大変なので、まずは自分の興味あるものや知っているものを変化・アレンジして描いてみましょう!
齋藤
本日はありがとうございました!
編集
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。
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