2023年2月に開催したカエルDX先生漫画コンテスト、テーマは『私のオタ活事情』!
楽しいものから意外なものまで、共感できる漫画をたくさんご応募いただきました!
カエルDX先生が全応募作品を読み、特に心動かされたのはどんなところだったのか?
漫画に役立つヒントが満載の、選考会レポートです!
審査員
漫画家。ブログやSNSで毎日漫画を投稿し、Twitterフォロワー30.6万(2023年3月現在)の人気を博す。そのほか代表作にまんがタイムきららフォワード『観音寺睡蓮の苦悩』(全4巻)、グッドスマイルカンパニー『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』ぬいぐるみデザインなど。
インタビューした人
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。
大人になって一番良かったことはたくさん漫画を買っても怒られないこと。
【大賞】漫画として読みやすく、オチもしっかりしていて、オタ活のおもしろさがしっかり伝わってくる作品


勤め人の推し事inライブビューイング / モっぷ
カエルDX
大賞はモっぷさんの「勤め人の推し事inライブビューイング」です。
この作品はかなり好きで、僕の感覚ですがオタクのノリもちょうど良かったです。ギャグセンスが好みだったのが決め手ですね。
仕事の息抜きじゃなくて、このために働いているというのがよくわかる漫画です。
坂本
共感性が高いお話ですね。漫画としてはどんな所が良かったですか?
カエルDX
1コマ目に説明を入れているところが親切です。「ライビュ」を漫画の中で自然に解説しているところがテクニカルだと思いました。
その上でオタクの激しさも出せていて、オチもしっかりしているので完成度が高い。
あと、これは深読みかもしれないのですが、表紙で歯車の上を走っているのが、社会の歯車として働いてることを表現したとしたら、深い!
坂本
よく見ると「会社のデスク・自分・推し活」の3つの歯車になっていますね!
カエルDX
しかもそれが全部かみあっている(笑)
坂本
一番笑ったコマはどれでしょうか?
カエルDX
やっぱりオチですね。課長っぽい人の顔もいちいちシュールでセンスがあります。アオリ文もうまい!
坂本
全体的に文句なしの大賞といった感じですが、もう一歩上を目指してできることはあるでしょうか?
カエルDX
そうですね……まず表紙です。アイデアは面白いので、サムネイルとしてキャラクターやタイトルをもっとドーンと見せてあげるといいと思います。
あとはフォントです。「推し事最&高~!」など激しいところは太いフォント、シュールなところは明朝体にするなどの工夫があると、漫画としてのクオリティがもっと上がると思います。
ただ、商業漫画では文字のフォントは編集さんが担当するので、必要なスキルかどうかは目指す媒体によります。
坂本
カエルDX先生のようなWeb漫画の活動には必要でしょうか?
カエルDX
そうですね。発表まで全部自分でやる媒体なら必要なテクニックです。ただ、これはプラスアルファの世界だと思ってもらえれば大丈夫ですよ。
受賞者コメント:モっぷさん
この度は大賞に選出いただき誠にありがとうございます。毎日カエルDX先生のブログを見て笑いと元気をいただいているので、コメントをいただけて夢のようです……!
まさに表紙は、働いたお金で推し活ができ、推しからもらったパワーでまた頑張れてと、連動して社会を回しているなぁと感じて描いたものです。また、本編は実体験を基にしたものですが、イヤな汗をかいた経験がこんな形で昇華できてよかったです。
コンテストを通じて、さまざまな推し活事情を垣間見て楽しませていただくとともに、それを表現する方法について大変学ばせていただきました。今回いただいたお言葉を今後の創作に活かし、より伝えられる漫画が描けるよう励みたいと思います。改めてこのような場を設けていただいたカエルDX先生、坂本様、関係者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました!
激しいものから切ないものまで、バラエティ豊かな作品群
続いて、佳作に選ばれた10作品です! 表紙のみのご紹介ですが、タイトルが作品リンクになっていますので、ぜひ漫画も読んでみてくださいね。
表紙・内容・テクニックすべて印象的。全体的にクオリティの高い作品
カエルDX
この作品は絵柄や表現方法が一番とがっていて、単純に自分の好みにもマッチしました。内容も性癖が強く応募作品の中でも一番異色で、表紙も一番気になりましたね。
坂本
サムネイルの並びでも目をひいたのですね。応募時期も早かったのにクオリティが高く、印象的でした。
カエルDX
すべてが高水準で、最初から入賞するなと感じました。
坂本
漫画としてはどんな所が良かったですか?
カエルDX
テクニック面でも印象に残りました。基本モノクロなのに瞳や頬、手先だけピンクの色を入れているのがすごい。新しいというか……熱を帯びているところがピンク色だと思うのですが、少ない手数で効果が出せて、すごいなと思いました。
ただ、これは画力がないと成立しないテクニックなので、レベルが高かったです。
読みやすい画面と共感性が高い内容で、エッセイとして面白い
カエルDX
こちらの作品は漫画の作風やデフォルメタッチな絵柄、文字のフォント、漫画の進み方などが好きです。
坂本
フォントは読みやすいということですか?
カエルDX
読みやすいです。話の展開も、大きな緩急や起承転結があるわけじゃないのですが、ザ・エッセイという感じで好みです。
坂本
共感性が高いから、ということでしょうか?
カエルDX
そうですね。ただ、表紙は誰だったんだろう?という点や、僕は好きだけど淡々としているので好みが分かれるかもしれないという点で、佳作になりました。
表紙で惹きつけて、オチでも惹きつけるインパクトの強い作品
カエルDX
この作品はひとつポイントがあって、1コマ目の実写の表現が、ぶっ飛んでいて好きですね(笑)怖いものがない感じがして。個人的にも共感性が高かったですね。
坂本
パイロットになるのはすごく大変なのに……1ページ目では写真も使っていますが、こちらはどうでしょうか?
カエルDX
そうですね。自分的には結構好みです。展開も、「パイロットやってたんだ、すごい!」というところから、急に暴挙に出てやめた結果、オチだけどオチじゃないところ。「ここからがこの人の物語なんだ!」と、漫画にしたうえでこれからに繋がるのがおもしろく、気になりました。
坂本
クリックしたくなるタイトルで十分惹きこんだのに! という。
カエルDX
タイトルで惹きを作っているのに、オチでも惹きを作ったというのには一本取られました!
日常が想像でき、もっとも読みやすく安心感がある作品
カエルDX
絵はこの作品が一番好きですね。可愛くて、オチも好きだし、読んでいて安心感がある。読みやすさの点でも一番強かったです。
坂本
背景に豆苗を育てる様子が描いてあったり、リアルに想像できました。
カエルDX
しかも豆苗食べてて(笑)細かいところまで描けているのはポイントが高いですね。
10万円が15万円になっていたのというのもあるあるで、共感性が高い。オタクとしての解像度が高かったです。
ネタの「あるある感」が強く、オチが笑えるギャグセンスの高い作品
カエルDX
これはオチがとても好きです。読んだとき笑ったんですよね。自分の経験でもこういうネタはあるあるだなと感じました。クオリティはあと一歩の点もありますが、ギャグセンスが高い!
坂本
確かにこういうことあります! わかりやすく、伝わりやすくて良いですね。
カエルDX
読んでて単純に笑ったかどうかは、かなり大事ですね。
絵のうまさでクオリティが一気に上がり、勢いの出た作品
カエルDX
絵が一番うまかったなと思います。漫画として特別にすごいことをしているわけではないのですが、絵がうまい人が描くといっきにクオリティが上がりますね。あと、なんといっても勢いがすごい。
坂本
勢いは大事でしょうか?
カエルDX
大事です。なおかつ絵もとてもうまいという点が、強みになっていて良いと思います。
最後の流れが美しい、オチが一番よかった作品
カエルDX
漫画の描き方や絵のクオリティ、画像解像度の設定などの面は正直あと一歩なのですが、とにかくラストのリセールから武道館の流れがあまりに美しい!オチで言えば一番おもしろく、好きです。
絵がもう少し鍛えられ、作品の画質もきれいに見えるようになっていれば大賞も狙えた作品だと思います。
坂本
この作品はハッピーエンドですね。
カエルDX
ハッピーエンドだけど震えていて(笑)オチが一番面白かったです。最後2コマに言葉がないところも良いですね。
オタ活のための行動力がすごいところが面白い作品
カエルDX
この作品は、オタ活にかける行動力を評価したいというのもあり選びました。作中に出ている聖地巡礼が僕が好きなアニメで共感しやすかったのもありますが、それを抜きにしても評価したい。
坂本
行動力がすごいですね!
カエルDX
聖地に行くために引っ越したっていうエピソードが、かなりぶっ飛んでいて面白いです! オチもオタ活のために退職するというぶっ飛び具合で、オタ活としてすごかったですね。
セリフ回しが面白く、「あるある」に共感できる作品
カエルDX
セリフ回しにセンスがありますね。言っていることもわかるなあという。
坂本
1コマ目、早口そうなのが伝わってきます(笑)
カエルDX
自分が作品の一部になっているような感覚や、オチも結構面白い。家族の純粋な質問がささるという(笑)あるあるですね。
他とは角度が違ったオタ活の表現で、胸がキュッとした作品
カエルDX
これは他の作品と毛色が違い、オタ活を友達としていたのに、友達が別ジャンルに移動してしまってさみしい思いとか、自分も情熱がなくなってしまうという、悲しい漫画なんですよね。こういう気持ちになるのは他になく、大賞になりにくいかもしれませんが佳作には入れたかったです。
坂本
最後の方の応募画面も、今回のコンテストとリンクしているようでリアルですね。
カエルDX
後半からモノクロになるところも、伝わる表現です。胸がキュッとしました。心が動いた気がして好きですね。
【総評】漫画はコミュニケーション。テーマを考えて自分なりにどう伝えるか、というところから始まる
坂本
応募作品をすべて読んで頂きましたが、全体を見ていかがでしたか?
カエルDX
どれも面白く、全体的にクオリティが高かったです。応募もたくさん来てビックリしました。「オタ活」というのは誰にでもわかりやすく入り口として広いので、コンテストテーマとして良かったかもしれません。
坂本
評価にあたって、こういうところを特に見た、というのはあるでしょうか?
カエルDX
まず募集ページの【審査するポイント】をしっかり意識しているか、です。
【作品規定】
・A4 サムネイル 1枚
・縦漫画 1枚5コマまで 2枚 (比率は自由)
【審査するポイント】
①読みやすい漫画になっているか
②画面がチープ過ぎないか
③オタ活を楽しんでいるか (③はかなり重要です!)
そのうえで、自分が読んでシンプルに笑ったかどうかや、「へちまさん〜」の悲しい展開で心臓がきゅっとしたように、良くも悪くも『心が動いた』作品は賞をあげたいと思いました。
笑わなかったら悪いというわけではないですし、コンテストは審査員の趣味嗜好もありますが、漫画は人に読まれて成り立つものなので、僕の心が動いたということはまた誰かにも届くんじゃないかなと思っています。
坂本
今回はみなさんが試行錯誤したタイトルが一同に介しました。SNS時代はクリックさせることも大事ですが、表紙やタイトルを気にして読んだりはしたでしょうか?
カエルDX
今回は自分が審査員で全部読む立場だったので、当初は表紙をそこまで気にしなかったのですが、いろいろと学びがありました。
やはり「推し」という単語が入っていると気になります。自分が好きなものだけでなく、ほかのジャンルの推し活の話を聞くのも好きなので、タイトルに「推し」という単語が入っているとキャッチーさがありました。
坂本
自分の知らない世界を知りたい気持ち、ありますよね。
カエルDX
実際にサムネイルで面白そうと思ったものは、内容も面白い率が高かったです。
ただ、大賞はサムネイル自体は強くないけれど面白かったので、漫画はそこだけでもないですね。
坂本
カエルDX先生が漫画を読ませるのにしている工夫は何でしょうか?
カエルDX
やはりタイトルは気にしています。僕は「オタクが〇〇した…」をよく使うんですが、
今回のコンテストの審査員を通して自分自身も変化していかないといけないなと思いました。
SNSは流れが激しいので、同じ芸風がいつまでも通用しないというのはありますね。
坂本
惜しくも選外だった作品が、入選を目指すにはどうしたらいいでしょうか?
カエルDX
まずこれは言っておきたいのですが、今回入選しなかった作品に共感性がなかったわけではなく、全部面白かったです。
あとは共感できるように伝える表現方法が、よりピンとくるかどうかだと思います。
表現がくどすぎたり、淡白すぎたりするのも、心が動きにくいというか…惜しい場合はそのさじ加減だけです。
内容があまりにピンと来ない場合は、募集要項に載せた審査のポイントをきちんと見ただろうか?というところですね。審査のポイントをよく読んで、自分なりの答えを出した作品かどうかはとても大切です。
坂本
今回のコンテストは応募規定に沿わない作品は少ない方だったのですが、規定に沿わず選考できなかった作品もありました。
カエルDX
漫画を描き上げるのは手間も時間もかかるのに、そもそもテーマや応募の意図が伝わってこない・レギュレーションに違反していたら、審査対象にもなれません。
そういった部分も含めて、漫画はコミュニケーションです。極論、言語の延長線だと思っているので、依頼やテーマの意図をくみ取って、自分なりに伝えることが第一。まずそこがスタートで、センスやテクニック、個性で見られるのはそれからだと思います。
坂本
コンテストのテーマについてはどうだったでしょうか?エッセイだから描きやすい、というのはあったでしょうか?
カエルDX
「オタ活」はその人の人生だと思うので、それはあるかもしれないですね。よく「人の人生は1冊の本になる」と言いますが、人のオタ活は漫画になります。
坂本
みなさんの人生が読めるいい漫画コンテストになりました。
カエルDX先生にはぜひまた別のテーマでもコンテスト開催をお願いできればと思います。本日はありがとうございました!
カエルDX
みなさんありがとうございました!
▼全応募作品はこちらから読めます!
編集
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。
執筆
kao(Twitter/HP)
イラストレーター&ライター。漫画を描くと必ずギャグになる。GENSEKIではインタビューやメイキング中心に担当。