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絵を描くには対象への愛着があったほうがいい。レイヤーを駆使してブタちゃんを描いてみる【iPadお絵かき修行 #2】

 

どうも、ライターの神田(こうだ)です。絵を描いたことない素人がiPadを使ってうまい絵を描こうと奔走する企画第2回目。

前回はゴチャゴチャ言いながらiPadとApple Pencilを買い、フリー素材のかわいい犬を描き上げました。

書いた人神田
かわいいものが好きなライター・編集者。オモコロなどで活動中。普段は絵を描かないが、自分のたましいに絵が描ける自分のことを見せつけてやりたくて企画に挑戦する。

前回描いたトイプードル

まあ、初めてにしてはよくできたんじゃないでしょうか。既に天狗になったわけではありませんが、「意外と描けてんじゃん」と思い込むことが継続と上達に必要なことのような気がします。

モデルになった写真との比較画像

とはいえ、自分ひとりで絵を描いていても上達の実感を得ることは難しい。誰かからフィードバックをもらって、自分の現状と何をどうすればいいかアドバイスをもらうのが絵がうまくなる近道だと思うのです。

 

そこで、この記事を編集してくれているGENSEKI編集部の斎藤充博さんに助言を乞うことにしました。

 

「ギャラの相場は2~3倍。海外案件を多数手掛けるイラストレーターに聞いた海外案件の実際のところ」より斎藤さんのイラスト

斎藤さんはライター・編集者として活動されていて、イラストやマンガも描いている方なので、「文章も書けて絵も描ける」という私が目指すライターのモデルケースだなと勝手に感じています。まずは前回描いた絵を見せて忌憚なきご意見をいただくことに。

 

愛着があるものを描くことが上達のコツ

初めてにしてはとてもよくできていると思います! 言いようのない「味」にあふれている……。ですが、全体的に粗さが目立ちますね。体も描こうとして途中で飽きたように見えますし。

ギクッ! 途中で飽きたことを見透かされている! なんか体の細かいところを描くのって面倒くさくて……。私は飽き性なので「もうこんなもんでいいだろ」というナメた態度になっていたのは正直あります。普段から絵を描いている人には、やはり手を抜いたところはバレるのか……。

 

絵をひと目見て感じたのは、「絵を描いた人は対象に愛着がなさそう」ということです。もし飼い犬や大切な存在だったりしたら、自然とていねいに描くんじゃないかなと。神田さん、このトイプードルに愛着ってありましたか?

フリー素材のトイプードル

う〜ん……

正直まったくと言っていいほどありませんでしたね、愛着。「犬 かわいい フリー素材」で検索して出てきたワンちゃんですし。彼の名前も知りません。

やっぱり、そうですよね。自分が好きなものや気になるものをモチーフにした方が気持ちが入りやすいから、良い絵になりやすいと思うんですよ。今度は神田さんの好きなものを描いてみましょう。

やはり対象にちゃんと好ましい気持ちを持って、対象を自分の手で上手く表現しようとする気持ちが大事ということでしょうか。

じゃあ、この世の絵を描く人のほとんどは対象に何らかの形で思い入れを持っているということ? 記事とかで必要なちょっとした図版や地図でさえも? それってなんかすごいことだな(全部がそうではないにせよ)。

そうした一球入魂の絵も大事ですが、私はもっとカジュアルなアウトプット方法として絵を描きたい気持ちがあります。なんなら描いたらすぐに忘れてしまってもいい。

 

あとやっぱり好きな対象を絵にするのって緊張するんですよね。自分では対象の魅力を伝えきれない、と勝手に限界を感じてしまって。クオリティはともかく、「自分じゃなくて他の人が描いたほうがうまくできるんだろうな」と思ってしまいます。

そのジレンマを踏ん張って、自分の絵でどう表現するかを突き詰めるのが個性の発露や上達に必要なことだと思いますが、まだ難しいなと感じます。

 

それに、文字が走り書きで雑な印象を与えてしまうので、手を抜かずちゃんと書いたほうがいいです。「わ」のところがくっついちゃってますし。描き手の味になることもあるので、絶対きれいに書かなければいけないわけではないですが、少なくともすんなり読めるくらいにはした方がいいです。

文字も雑だったな〜。「よし!!!! 描き終えた!!!!」と思ってパパパっと走り描きしちゃったんですよね。私は最終仕上げが雑になる傾向がある。物事と向き合うスタンスがそうなってるのはよくないですね。

読みやすく描けるように、下描きをしてみたらどうでしょうか? CLIP STUDIO PAINTには「レイヤー機能」というものがあります。これを使って下描きすると絵も文字もきれいに描くことができますよ。

レイヤー機能はまったく使ったことがありませんでした。今までの美術の授業とかもだいたい一発描きでやってきたので、下描きの概念があんまりなかったです。記事も特にプロットを準備せず、いきなり書き始めることがほとんどなので……。

今度はレイヤーをちゃんと使って描いてみようと思います!

 

他にも、CLIP STUDIO PAINTの機能や、絵の技法っていろいろあるんですが、絵の初心者にとって最初に重要なことってまず絵を描くパッションだと思うんです。今はまずどんどん好きなものを好きなように描いてみてはどうでしょうか。

めちゃくちゃそうだな……。禿同(激しく同意)です。

ともかく、今度は自分が愛着を持っている対象を描くのがよさそうです。好ましい対象を自分なりにどう表現するか、そこのトライエンドエラーの積み重ねがカギになりそう。

 

それでは第2回は、

  • レイヤーを駆使する
  • 自分の好きなものを描く

を念頭に入れてイラストを描いていきます!!!!

 

好きなものってなんだろう……

「好きなものを描く」と言われても、まず好きなものってなんだろう。生半可な気持ちで挑むと、好きなものを自分で汚してしまうようでなかなか踏ん切りがつきません。

う〜ん。人間よりも動物のほうがモチーフとして好きだから何か動物を描きたいな。

 

というわけで、マイクロブタカフェにやってきました。ミニブタよりもさらに小さいのがマイクロブタ。

私は奔放でパワフルでわがままなマイクロブタが好きで、何度かマイクロブタとふれあいに訪れたことがあります。

もしブタを描くとしたらどんな絵になるのか、自分でも気になります。いざ入店です。

 

あら〜♡

席に座るなりどんどんブタちゃんたちが寄ってくる! 好奇心旺盛でパワフル!

こんなに屈託なく私に近づいてきてくれるのはブタちゃんくらいではなかろうか。なんか受け入れられた! という感じがします。

 

iPadでブタちゃんをスケッチしようとしたら、膝の上に3匹くらい乗っかってきてムチムチだったので断念しました。これは仕方ありません。カフェだとブタちゃんが王様ですからね。

膝の上で押し合いへし合いしてくつろいでいるブタちゃん、かわいすぎる!

すげ〜うれしそうだし。ブタにも表情があるな〜。

 

ブタの毛はごわごわしていて、イヌやネコなどに比べるとかなり固いです。皮膚はぷにっと柔らかいけど、毛はハリがあってピンと伸びているので、絵を描くときにそのあたりのディテールを意識するといいかもしれません。あと皮膚が透けてる感じもうまく描きたいな。

 

おっ、他のブタに比べてかなり小さい子がやってきました。

名前はドキンちゃんで、生まれてまだ数ヶ月とのこと。小さいので周りに馴染めなくて、ずっとフロアをウロウロしていました。ブタの社会にはちゃんと厳しい序列があるんです。そういう少し残酷な社会性があるところも好感が持てます(ブタにとっちゃ死活問題だけど)。

かわいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡♡♡

むちっとして、ずっとフゴフゴ鼻を鳴らして、もちゃもちゃと口を動かしている。鼻先はうっすら濡れてすべすべしています。

でも大きいブタちゃんが来たらビビってどこかに行ってしまいました。後ろ姿がせつなすぎるね。私はこういうワイルドなのに情けない動物が好き。

ドキンちゃんまだこっち見てるな。

 

べちっと倒れる音がしたのでそっちのほうを見ると、別のブタちゃんがお腹を見せて寝転んでいました。

店員さんによるとブタはお腹を撫でられるのが大好きなんだそうです。あと首や耳の後ろも好きとのこと。

確かに首と耳の後ろを撫でるとすごく気持ちよさそうにしています。うとうとして白目むいちゃってるし。は〜〜〜〜ブタちゃんかわいい〜〜〜〜〜〜〜。

こんなかわいいやつらを私の力で表現できるのだろうか。なんだか不安になってきます。

 

スペースを後にするときに、先ほど膝の上に乗っていたブタちゃんがお見送りに来てくれました。

ずっと「ピギーーーッ!!!!」と鳴いてました。そんなにさみしいか……おれもだよ……。

 

よし、私の不器用なお筆先でかわいいブタちゃんを表現できるかわかりませんが、レイヤーを駆使してがんばります!

 

がんばって描くぞ!!!!!!

よし。こちらのかわいくて健気なドキンちゃんを描くことにします。小さくてかわいくて、不安げで情けなくて……。

そんなドキンちゃんを私が描くことで主に私が救われると思うんです。それではCLIP STUDIO PAINTを起動します。

まずはレイヤーに画像を挿入して、鉛筆でなぞっていきます。

レイヤーの使い方はよくわかりませんが、要するに「下描きしろ」ということなので、鉛筆でなぞって、そのあと別のペンで形を整えて、彩色していく感じにします。

いわゆるトレースというやつですが、まずは対象を観察して輪郭を掴み、描ける実感を得ることが駆け出しの私にとって大事だと思う。もっと効率のいいやり方があったら教えてください。

 

よし、できた。絵をなぞるだけでこんなに達成感があるとは。もうこれで満足な気すらします。なんか描いてよって言われて、何も見ずに線画でこれ描いたらかっこいいだろうな。

 

鉛筆の上から下描き。肌色のペンでなんとなく色の雰囲気を掴みます。

いや、黒で描いたほうが輪郭を掴みやすいか。黒にしました。なんだか迫力が出た気がする。

レイヤーで分けてると、ガイドラインができるので絵の輪郭を取りやすいです。元の骨格がしっかりしてないと、ちょっと不格好になりますからね。

 

色はなんとなくフィーリングで、色が濃いところ、薄いところを塗り分けていきます。スポイトで元画像から色を取っちゃえば楽なんだけど、それってただの再現になっちゃって絵を描く意味がなくなるような気もしたので……。

こう見ると肌色でもくすんだ色や明るい色などたくさんある。ここに光の加減などを考慮すると色決めって大変だな。私は勘でカラースライダーをいじってそれっぽい色にしました。

 

おっ!! だんだんとそれっぽくなってきた。自分の絵が対象に肉薄する瞬間、絵に体温が宿ったような気持ちになりますね。

上手下手はどうあれ、絵を描く人はみんな、こんな絵がせり出してくるような感覚を味わっているのか?

 

腕は肌色だと飽きるので、いろんな色を混ぜました。最近紫色が好きだからテキトーに重ねて塗ってみました。見た通りに描かなくてもいいのでね。単色のほうがビビッドで好きなんですが、ザザザと細かく雑に描き込むのも好きなのでいっぱい線を重ねています。

 

一箇所に色塗りや描画を集中して続けるとなんかだるくなるので、あっちこっち作業場所を変えながら進めました。絵を描くのって集中力がいるな。肩もこるし。

作業の進め方も人によって違いそう。みんなどうやってるのか教えてほしい。

 

よし、細かい余白を消し込んでいきます。拡大してペンでちまちまつぶしていきます。完璧につぶすのはしんどいので、どうにか余白が味になってくれないかと祈るばかりです。

輪郭とベースの色はだいたいできたかな。

 

背景色をつけて、次はブタちゃんの体毛を描いていきます。白の筆ペンで塗った色を消す形でやっていくと毛っぽくなりました。

ブタの毛は固く、直毛なのでそのあたりが表現できるといいな。直線で細かく引いていきます。

 

よし、至るところに描き込みました。線の書き方も下から上にシュッと払うように意識しました。毛は下から上に生えているからね。かなりそれっぽくなったのでは?

細かいところを整えて完成です。果たして……?

 


できた!!!!!!!

輪郭線や消し方など甘いところもあるけど、レイヤーで下描きしたから骨格はしっかりしている気がします。やはり元の土台をしっかり作っておくと仕上がりが違いますね。

 

今回は文字を入れませんでしたが、さすがにブタだとわかるはず。なんか自分でもホッとしました。最後の細かい描き込み入れるのが楽しかったな。クオリティを上げるためにパンチを叩き込むような感じで。

 

元の写真と比べても、雰囲気が出ている気がします。

私はブタのことを「かわいいけどわがまま」だと思っているので、目でなんか獰猛な感じを出したくて工夫しました。ドキンちゃんの不安な感じも表現できたかも?

 

いや〜、レイヤーで下描きするのって大事だな。影とか光は、感覚で色の濃い薄いで塗り分けただけなので、「実際光源がどこだから〜」みたいな話になってくるとわけわかんなくなりそうだと思いました。もう少し勉強が必要か……。

 

よし! 1回目に比べるとだいぶそれっぽくなってきた気がします!

全6回で私の絵がどうなるか、自分でもわかりません。絵柄がわからないのでいろんなものに挑戦してみたいな。

 

次回はどうしよう。まず絵のフィードバックをもらって、プロに具体的な作り方などを教えてもらいたいかも。次回もお楽しみに!!!!

編集者より

僭越ながら記事の前半で私から神田さんへのフィードバックをさせていただきました。

「下描きにレイヤー機能を使うといい」とアドバイスしたら、その後に写真トレスをしていてビックリしました。お絵かき修行で写真トレスがアリかナシか? という問題はあるのですが、自ら技をあみ出していっているのがすごいです!

自分の好きなものを描くことで、表現の意欲が出てきているのもいいですね。仕上げが楽しいのもすごくわかる。次回が楽しみです。

 

協賛

CLIP STUDIO PAINT

CLIP STUDIO PAINTは、3,500万人以上が利用したイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリです。 タブレット、スマートフォン、パソコンといったあらゆるデバイスに対応し、気持ちの良い描き味と豊富な機能を備えており、世界各国のエントリーユーザーからマンガ家、イラストレーター、アニメーターなどのプロのクリエイターまで幅広く愛用されています。

取材協力
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執筆・イラスト
神田匠(X:@gogonocoda

編集
斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI