こんにちは、 GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいているgreen322先生の添削シリーズの第8回をお送りします!
今回も『green322先生に イラストの添削をしてほしい人募集!』でご応募いただいた作品を、実際に先生に添削していただきました。
green322先生プロフィール
X(@green322green)で13万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。
美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。
その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。
四鈴あざなさんのお悩み
今回の添削対象は、四鈴あざなさんのこちらのイラストです。
ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点や、特に気になっていてフィードバックが欲しい点を教えてください。
『不思議の国のアリス』モチーフの「衛兵のアリスが、城の防衛をしている場面」を描きました。
イラストをパッと見たときに、キャラクターに目が行くライティングや演出について、フィードバックいただきたいです。キャラクターが背景に沈まないよう、人物の後ろを少し明るくするなど工夫はしたのですが、うまくいきませんでした。
また、アプリゲームなどのスチルをイメージして描いたのですが、スチルとしては少し華がないように感じます。ゲーム内イラストを想定した場合、どのような見せ方や要素があるといいかなども、教えていただけますとうれしいです!
ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?
背景のあるキャラクターイラストで、キャラクターに目を引く塗りをしたいのですが、背景に埋もれてしまいがちです。メインを目立たせるためにキャラクターと背景に差をつける方法や、先生がどう描いていらっしゃるのかを知りたいです。
ー目指している絵柄や作家さんはいますか?
ゲームの『アークナイツ』や『グリムライト』のような、きれいめなイラストを目指しています。
【添削ポイント】画面の要素が多いイラストは、仕上げの演出で整理しよう
四鈴あざなさん、この度はご応募いただきありがとうございます! 今回のイラストですが、ひと目見たときの感想は「うまい!!!」でした。イラストを構成する要素が多いにもかかわらず、全体にまんべんなく手が入っており、キャラクターデザインもいい意味でシンプルにまとまっています。非常に魅力的なイラストになっていると感じました。
その上で、さらに良くできる点をあげるならば、ご自身も悩んでいらっしゃる「キャラクターをいかに目立たせるか」、つまり「演出」だと思います。
キャラクターへと自然に視線誘導するための演出は、いくつも方法があります。順に見ていきましょう。
モチーフの「前後感」と絵の「迫力」に焦点をあて、演出方法を考える
このイラストは、キャラクターの後ろに大きな窓があります。ここから差し込む光を使って、キャラクターと背景の「前後感」を出してみましょう。突撃しようとしている勢いのある場面なので、同時に「迫力」を出す演出も加えます。
まず、暗い室内に差し込む光をさらに描き込み、空気遠近の効果を強めます。白い光を重ねることで、奥の背景の彩度が自然に下がります。背景の彩度を下げつつ明度を上げ、メインのキャラクターを引き立てています。描き加えるときに光の筋を少し強めに描いて、効果線として使うこともできます。こういった光の使い方も、演出方法のひとつです。
次に、キャラクターがさらに目立つよう、服のシワなど、全体的に描き込みを増やします。描き込みの密度でも、背景と差をつけることができます。また、形を整えるため、服の金ラインの線を調整しました。
広げた手にもっと力が入っているように見えるよう、指の形を調整し、さらにポーズに迫力を加えます。
背景の光を強めたことを考慮して、キャラクターに当たる光の表現も白く強めます。これによって、キャラクターの輪郭も強調できます。
武器のハイライトを強め、より硬く強く見せます。手前にある剣の柄を拡大してピントをぼかし、キャラクターの手前にも前後感と迫力を出しました。
差し色として赤がかなり効果的になっていますので、色でも視線誘導を強めましょう。
キャラクターの上半身にかかっている帯の赤にハイライトを入れ、盛り上がるように目立たせました。これにより、帯のある画面中央に見る人の視線を引きつけます。
▼上記を添削したものがこちら!▼
【さらにひと手間】光を使った色調整とピントぼかしで、もっとメインを引き立てよう
キャラクターの帯の赤色に視線誘導する上で、背景の旗の赤色にも目が行ってしまうのは避けたいところです。画面左奥の旗の上に青みがかった光を足し、赤色の彩度と存在感を下げました。画面右にピンクの光、画面下からの光も加えることで、中央のキャラクターと帯の赤色をより目立たせながら視線が分散するのを防ぎます。
全体の明度・彩度の調整と描き込みがすんだら、背景部分のピントをぼかして背景とキャラの見え方にもう一段階差を出します。光にところどころ粒子を描き込み、演出を加えつつ、ぼかした部分とのメリハリをつけます。(光と粒子の描き方はこちらのメイキングも参考になります)
迫力を出しキャラクターを目立たせる手段として、最後に構図を整えます。全体を少し拡大し、キャラクターが画面の中央に来るように少しだけ左に寄せました。
添削完了!
添削を加えたイラスト
【総評】演出方法をたくさん見つけて、魅力ある絵作りを目指そう
いろいろな演出の描き方をお見せしましたが、知らなかった方法や役立つものはあったでしょうか?
繰り返しになりますが、ここまできちんとキャラクターと背景を描けるのは、本当にすばらしいです。
四鈴あざなさんの基礎力は十分だと思いますので、今後は魅せ方や演出にもっとこだわることができれば、すぐにでもレベルアップされていくと思います。
ぜひ楽しんでがんばってみてください。私も負けないようがんばります!
添削イラスト募集中!
この連載では、green322先生にイラストの添削をしてほしい人をまだまだ募集しています!
元のイラストの良さはそのまま活かして、さらにクオリティを上げるポイントが満載の、学びの多い添削です!
皆さまからのご応募お待ちしております✨
添削担当
green322(X:@green322green)
添削イラスト応募者
四鈴あざな (X:@az_119233)
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執筆kao(Twitter:@kaosketch/Web)
編集斎藤充博(Twitter:@3216)