「やりたいこと」✕「強み」を活かして、理想のクリエイターになるための冒険に出よう！【教えて！ぬこー様ちゃん先生！】#9 海山らな

＜登場人物＞

岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。

現在は個人向けイラスト制作を中心に活動中。1年以内に100万円の収入を目指しているというが、本当はもっと稼ぎたそう……？

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海山らなさんは、今はどんな活動をしているんだろう？

Skebで依頼を受けて、個人向けのイラスト制作を行っています。1年間で100万円くらいの収入が欲しいです。

1年間で100万円くらい。……本当にそれでいいのかな？

うっ……。本当は、1年で300万円くらい欲しいです。自分と同年代の人と同じくらいの金額をイラストで稼ぎたくて……！

なるほど、なるほど。それでは、どのくらいの頻度でイラストをX（旧Twitter）にあげているのかな？

基本的には、スケブで依頼を受けたものをそのままXで上げています。なので、まちまちです。週1のときもあれば、週2～3のときもあります。

自分のプロモーション方法について方針はある？

それが決められていなくて……。一次創作を伸ばしたいと思っているのですが、一次創作って伸びにくいですよね。エッセイ漫画も考えたんですが、ネタが全然思いつかないので向いていないのかなと思っています。完全にプロモーション迷子です。

らなさんのXを見た限り、何が好きな人なのかわかりにくいと思った。イラストのキャラクターは生き生きとしていて、すごく良いなと思ったんだけど……極端にいうとそれしかないという印象だな。まずは、この迷走状態を切り抜けていこう……！

はい！

最初の町でスライムを倒している状態から抜け出し、冒険に出よう！

現状を考えてみよう。らなさんが熱心に取り組んでいるSkebは、確かにお金を稼ぐことはできる。だけど、まだ人気がそれほどでない段階だと単価はどうしても安くなってしまうよね。ずっと続けるのはしんどいと思う。

有名になれば、Skebの単価を上げることもできるけど、それには自分自身のプロモーションが必要だよね。でも、無計画にSNSの更新をしたり、人気ジャンルのイラストを上げているというだけでは、プロモーションにつながりにくいと思うんだ。

やっぱりそうですよね。どうしたら……。

この状況をRPGでいうと、らなさんは最初の村の近くでスライムをずっと倒している状態なんだ。スライムを倒せば経験値はもらえるけど、微々たるものだよね。まず最初の村を出て冒険しよう！ そのためには、「私はこういうクリエイターになる」という目標を立てよう！

冒険に……！ どういうことでしょうか？

らなさんは、何が得意かな？

今は、ちびキャラをメインで描いています。知り合いにも私の絵は表情豊かで良いと褒められたことがあるのですが……。これだけでは得意にはならないですよね？

そうだね。例えば、ディズニーのキャラクターも表情豊かだけど、それを使ってエンタメをするからあそこまでの人気があると思うんだ。

じゃあ少し質問を変えてみよう。実力や人気の有無関係なく、らなさんがやりたいことはあるかな？

私が本当にやりたいことは、冒頭でお話した通り一次創作の漫画を描いていくことです。実は一次創作は趣味のXアカウントでずっとやっています。

きっと、本当にやりたいことをイラストレーター用のアカウントで展開しない理由があるんだよね？

私がやりたい作風は人を選ぶ内容かな、と思っていて。

ちなみに、どんなジャンル？

人間の関わりを描いた現代ファンタジーです。

www.pixiv.net

これは、ある女の子が失恋してライバルの女の子を呪って殺す話です。ただ最終的には呪いの神様に対価として呪った女の子の魂を食べられてしまいます。「人を呪わば穴二つ」をテーマにした漫画です。私が描きたいのはこういう暗い話なんです。

なるほど。それであれば、暗い話をらなさんの強みであるかわいくて表情豊かなミニキャラで描くのはどうだろう？ 暗い話を暗く描くのは、あまりにそのままで、他の人と差別化が図れないからね。

『ちいかわ』がまさにそれだと思うんだ。ちいかわってかわいいけど、彼らが生きている世界は生死に関わることが多いんだよね。

たしかに……。ちいかわの世界には武器もありますよね。

そう！ らなさんも「自分の好きなテーマ」を「好きじゃない人でも読みたくなるようにする」にはどうしたら良いかを考える必要がある。

漫画描きあるあるだと思うんだけど、描きたいものって絶対他の人より詳しいはずなんだ。だからこそ人に伝わりづらい。つい熱が入って、周りを置いてけぼりにしてしまう。
だからこそ今一度客観的に、を考えるんだ。その時にらなさんが得意な生き生きとした表情豊かなミニキャラという強みが活かせる。

なるほど。

この強みは、らなさんならではのエンタメなので、次第に「人から選ばれる」ようになって、ファンやフォロワーが増えていく。そうすればSkebの単価も上がったり、他のオファーが発生する可能性も上がるよ！ らなさんの冒険の物語が始まりそうだね。

でも、描いてみて反応がなかったら、どうしようかな……と不安にも思うんです。

最初の2、3作品は評価されないのは当たり前だと思うこと！ それよりも漫画で大事なのはフィードバックの回数なんだ。

読者の反応を見ることで自分が描いたものが良かったのか悪かったのかを理解して、どうしたら人から評価されるのかを研究しよう！ そこのパターンさえわかれば勝ち筋が見えるよ。

競合が少ないKindleインディーズ  Fliptoonを活用してみる

プロモーションの方向性は決まったから、どうやって年間300万円を稼ぐかを考えよう。年間300万円ということは月々少なくとも25万円は稼ぐ必要があるよね。一番手っ取り早いのはKindleインディーズだと思うよ。

Kindleインディーズですか。

この連載でたびたび話していることだけど、お金を稼ごうと思うと意外と商業は厳しいんだ。

なぜなら、オリジナル漫画で月25万円稼ごうと思うと連載をもつ必要がある。月25ページくらい描けば25万円は稼げるんだけど、連載をもつためには1～2年の準備期間が必要になるんだ。もちろん準備期間は無給ということになる。

その点、個人出版は始めるのも終わらせるのも自分で決められる。Kindleインディーズの漫画が人気になればSNSのフォロワーも増える。

聞いたことはありますが、改めて考えると商業漫画を目指すのはリスクが高いんですね……。その点、Kindleインディーズは入りやすいですね。

さっき、らなさんが描きたいといっていた一次創作の現代ファンタジー漫画を描くのであれば、無料で読める媒体で発表するのが一番スムーズだと思う。Kindleインディーズだけでなく、Xにも載せていこう！

わかりました！

そして、らなさんにオススメしたいのが「Kindleインディーズ  Fliptoon」なんだ。

ふりっぷとぅーん……？

聞き慣れない言葉かもしれないけど、「Kindleインディーズ  Fliptoon」は要するに縦読み漫画のことだよ！ 縦読み漫画はWebtoon（うぇぶとぅーん）って呼ばれることもあるね。つまり、縦読み漫画をKindleインディーズ漫画で配信できる。

普通のKindleインディーズより、Fliptoonのほうが良いのでしょうか？

これは最近Kindleで始まったサービスで、やっている作家さんがまだ少ないんだ。そして、通常のKindleインディーズとはランキングが別になっている。僕も一瞬出してすぐにランキング2位になれたよ！

すぐに2位ってすごい。

まだ出している人が少ないからランキングの入れ替わりも少ない。Kindleインディーズでは1時間くらいでランキングが入れ替わることが多いんだけど、Kindleインディーズ  Fliptoonはなかなか順位が落ちないので今が狙い時だよ！

そうなんですね！ いいこと聞きました。

実は、Kindleインディーズは最近人気が出てきてある程度、SNSのフォロワーがいないと厳しくなってきたんだよね。らなさんの場合は、まずはSNSのフォロワーを増やさないといけないからFliptoonから始めることがオススメだよ！ それにKindleのランキングからXに流入してもらえれば、Xのフォロワーも増えていく。こうしていい循環を作ることを目指そう。

はい！

あと、注意してほしいのが1話あたりのサイズ感！ 1話描くのに20ページ必要となると読まれづらくなってしまうよ。せめて最初の第1話は4ページくらいで完結して、読者が続きが気になるようにすることが大事！

最近は、エンタメがスナック感覚になっているから、内容は短い方がいいって聞いたことがあります。

そう！ こうして漫画を100話以上掲載して、それが読まれれば月に25万円、年収300万円というのは現実的な金額になってくるはずだよ。 

わかりました。勇気を出して冒険に出てみようと思います……！

うん！ みんな最初は自信がないものなんだよ。でも、成功する人はそこから勇気をだして一歩を踏み出すんだ。今日をきっかけに勇気を振り絞って、らなさんだけの冒険にでてみよう！

もちろんうまくいかないときもあると思う。でも、そうしたことが自分の経験値になってその分成長するからがんばってね。
疲れたときはおいしいものを食べたり、運動したり、気分転換も忘れずに！

はい！ わかりました！！

執筆者と被験者

漫画
ぬこー様ちゃん（X：@nukosama）
岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
代表作は「専門学校JK」「人見知り専門家庭教師坂もっちゃん」「ぬこー様ちゃん絵日記集」など。

被験者
海山らな（X：@prunus_lana）

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インタビュー記事

執筆

坂本彬

編集

斎藤充博（X：＠3216／Web）