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【イラスト添削#12】ポイントは明度と彩度! キャラと背景をなじませつつメインを引き立てるテクニック

 

こんにちは、 GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいているgreen322先生の添削シリーズ、第12回をお送りします!

今回も『green322先生にイラストを添削してほしい人募集!』でご応募いただいた作品を、実際に先生に添削していただきました。

この記事で学べること
  • キャラと背景を自然になじませる描き方
  • メインキャラクターを引き立てる調整
  • 前後感の整理のしかた
  • イラストに統一感を出す方法

添削担当green322(X:@green322green
Xで14万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。

添削イラスト応募者もり さゆう(X:@mori_sayuuGENSEKI
かわいい女の子からイケオジまで、幅広く手掛けるイラストレーター。

もり さゆうさんのお悩み

今回の添削対象は、もり さゆうさんのこちらのイラストです。

ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点や、特に気になっていてフィードバックが欲しい点を教えてください。

背景とキャラクターがあまりなじまなかったことと、和室の背景もうまく描けませんでした。服の色塗りが汚く見えるのも気になっています。

 

ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?

色塗りに苦手意識があり、背景とキャラクターがなじまないのも悩みです。

 

ー目指している絵柄や作家さんはいますか?

女性キャラは裕さん(X:@youcapriccio)、男性キャラはえびもさん(X:@ebimoji3)です。

 

【添削ポイント】絵のメインをはっきりさせて背景と差をつける

もり さゆうさん、このたびは作品を添削させていただきありがとうございます!

今回のイラストですが、絵を描き慣れている印象があり、今までかなりイラストを描いてこられたのかとお見受けしました。「描き込み」はできそうでなかなかできないので、できているのはすばらしいです! フェチ感やこだわりを感じる部分も多く、そういった面もとても好きです。

今回の添削では、ご自身が感じていらっしゃる「背景とキャラのなじみ感」「服の色塗り」を解決しつつ、なるべくイラストの特徴を活かして調整したいと思います。詳しく見ていきましょう。

 

明度・彩度・質感表現に着目しよう

<キャラと背景のなじませ方>

これはなじませるというより、要素を整理することを考えた方がいいかもしれません。「キャラを引き立てて背景は少し控える」のがキャラクターイラストの鉄則です。具体的には、背景よりキャラの方が明度と彩度が高い状態を作るのがいいでしょう。

現状はふすまのほうが明度・彩度ともに高く見えているため、キャラに目が行きづらくなってしまっています。ふすまの明度をキャラより抑えましょう。また、柄を入れてより状況をわかりやすくします。これにより画面全体の情報量も増やせます。

同様に夜空の明度と彩度もキャラより落としましょう。空が暗い方が画面にメリハリも出ると思います。空を暗くすると髪の色と明度が近くなりますので、髪を少し明るくしてシルエットを出します。

 

<色塗りについて>

服の塗りが気になるということですが、塗り自体は十分ていねいです! 問題なのは「スーツの質感」をうまく出せているか? だと感じました。

スーツはシャツのようなシワはできにくく、ツルっとしているのが特徴です。現状だと少しシワが多すぎるかもしれません。シワを間引きつつ大きく作ることで、スーツ感を出しましょう。

また、スーツをしっかり描こうとするあまり、シワに負けて体の形が見えてこない部分も改善できそうな点です。

キャラクターイラストはキャラのシルエットがかっこよく見えるのが一番大事なので、キャラのボディーラインを強調しつつスーツらしさが出るように、腰から足周りを調整します。奥の腕も見えたほうが自然なポーズだと思いますので、描き足します。

こういった雰囲気の男性キャラは、肌の影が少し彩度低めの方が「らしさ」が出るかもしれません。影色の彩度を少々落としました。

全体的に塗りの仕上げが似ている印象があるので、加筆の際に光源に近い明るい部分ははっきり、離れていくにつれてボカシを増やし、差をつけています。月のボケ感も少し減らして形をはっきりさせています。


▼上記を添削したものがこちら!▼

 

ビフォーアフター

 

【さらにひと手間】光の演出で距離感と立体感を強める

描きあがったら全体のバランスを見ます。暗くしたコートの内側はもう少し明るくできそうでしたので、60%ぐらいのオーバーレイレイヤーを重ねます。キャラと背景の考え方と同じように、前後感があるもの同士は可能な限り明度や彩度で差をつけると、よりシルエットが見やすくなります。

重ねたオーバーレイレイヤー

仕上げに、光のニュアンス質感を足して演出を強めましょう。スクリーンレイヤーを使って光が当たる部分の輝度を少し上げ、月も同様に明るくします。胸や肩のあたりなどの光が強く当たる部分がより手前に出てくるようになり、形の立体感を強めることができます。

また、イラストの下から上に乗算で紫の影を加えて、光源の説得力とメリハリをさらに強めます。

仕上げのレイヤー構成/テクスチャ画像

全体に統一感を加える意味で、質感テクスチャのレイヤーを13%のオーバーレイで上から重ねます。全体に同じ質感が加わるとイラスト全体にまとまりが出るのでおすすめです。

ビフォーアフター

 

添削完了!

添削を加えたイラスト

 

元のイラスト → 添削経過 → 添削完了の変化

【総評】基礎力があるので、次はモチーフを整理する意識を身に付けよう

もり さゆうさんのイラストは描き込みは十分にできていますし、スーツなどの描写を見る限り資料も参照して描かれていると感じました。基本はしっかりおさえられていると思います。

今後はキャラと背景のバランスや、魅せたいものをしっかり前面に出す意識さえあれば、もっとブラッシュアップできると思います。

応援しております。お互いがんばりましょう!

 

添削イラスト募集中!

この連載では、green322先生にイラストの添削をしてほしい人をまだまだ募集しています!

元のイラストの良さはそのまま活かして、さらにクオリティを上げるポイントが満載の、学びの多い添削です! 皆さまからのご応募お待ちしております✨


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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI