こんにちは、GENSEKIマガジン編集部です。
GENSEKIではイラストレーターのREO先生を審査員にお招きして、シルバーアクセサリー男子イラストコンテストを開催しました。
この記事ではキャラクターイラストのアクセサリーやファッションを描くコツを、選考作品をお手本に詳しく教えていただきます。
お話を聞いた人REO(X:@SRiokorr/Instagram)
イラストレーター、デザイン専門学校卒。ファッションやキャラクターの個性を考えながらイラスト制作をすることを好む。キャラクターデザイン、グッズイラスト、キービジュアル制作など企業イラストを中心に幅広く活動中。
インタビューした人サイトウ
GENSEKIマガジンの運営サポートスタッフ。
輪郭線とコントラストで魅せるアクセサリー
サイトウ
今回のコンテストでは、最も引き込まれて、最もグッと来た作品を大賞に選んでいただいた、ということでした。「絵に引き込む」というのはどう描いたらできるのでしょうか?
REO
大賞に選ばせていただいた道雲みるく餅さんの作品は、視線誘導が上手です。最初にキャラの瞳に引き込まれ、次に耳元の落書き、矢印の先、と見てほしい部分がわかりやすくバチっとはまっていますよね。
また、タイトルの通りキャラと道雲みるく餅さんの「見て見て!」が伝わってくるイラストになっています。コンテストテーマにとてもあっていますし、シルバーアクセサリーとキャラのキラキラ感にとても引き込まれました。
テーマの「シルバーアクセサリー」自体も、光と影のコントラストがとてもきれいです。拡大して見ても、しっかり縁取りされているのに浮いて見えません。ていねいに描かれていますね。
サイトウ
シルバー素材のアクセサリーの描き方のコツをもう少し教えて下さい。
REO
このようにはっきりと光と影を入れるのはもちろん、反射光を入れるとよりリアルになります。近くの肌や服の色などを入れるとイラストに馴染みやすくなりますし、キャラが身に着けている感じも出しやすいので、私も気をつけて描いています。ただ、光を強く描きすぎるとぼやけた印象になってしまうので注意が必要です。
サイトウ
光っていれば目立って手前に出てくるわけではないんですね。
REO
そうです。また、あんばいが難しいのですが輪郭がしっかりかたどれていると存在感が出せると思います。
手元を使った演出でバストアップ構図の魅力をアップ
サイトウ
アカツさんの作品も、アクセサリーの細かい輪郭までしっかり描かれています。
REO
アクセサリーの描き込みがていねいですね。黒い服とアクセサリーのコントラストで、とても映えるように描けています。全体的にきらびやかでたくさん装飾を身に着けていますが、耳元の4連ぐらいあるピアスでバランスが取れているので、印象よくまとめられています。
サイトウ
キャプションに「顔周りや首元のアクセサリーをメインにしたかった為、バストアップの描写にしました」とあります。今回は「シルバーアクセサリー男子」というテーマ上、バストアップ構図のイラストが多かったのですが、バストアップのイラストを描く上で気を付けたほうがいいことはありますか?
REO
やはり手は入れたいですね。アカツさんのイラストのように、指にもアクセサリーが配置できます。
バストアップの構図はどうしても描けるものやポーズが制限されてしまいます。手元を写した方がいろいろなポーズをさせることができますし、棒立ち感もなくなっていいと思います。
コンセプトとデザインの調和で絵の強みを作る
REO
9さんの作品はコンセプトがとてもよかったです。ヤモリとイモリがモチーフのキャラで、暗闇に潜んでいる2人(2匹)をアクセサリーのきらめきとあわせることで映えさせることができています。
サイトウ
「シルバーアクセサリー」というテーマで手錠をモチーフに取り入れているのも独特です。
REO
常識に囚われてない感じがあっていいですね。アクセサリーのデザイン自体やファッションもイモリとヤモリを表しているようで、こだわりを感じます。世界観がよくまとまっています。
サイトウ
HUNGRYさんの作品も見れば見るほど独特なデザインです。
REO
ヘッドホンのところなど、アクセサリーのアレンジが個性的ですてきです。全体的に艶消しのスモーキーな質感で描かれているのが応募作品の中でも珍しく、絵ともマッチしておしゃれな感じを出せています。
艶消しの質感はボヤッとしてしまい描くのが難しいのですが、装飾の細かい部分までとてもていねいに描かれています。私自身、ハイライトに頼るところがあるので、この質感が出せているのはすごいと思いました。
サイトウ
キャプションに「シルバーのアクセサリーが目立つように服や小物などを暗めの色にしました」とありますが、アクセサリーを目立たせるためには、周りの色も大事なのでしょうか?
REO
そうですね、シルバーアクセサリーは暗い服の方が映えます。かといって黒い服だけだと地味になりますが、HUNGRYさんはそれをいい感じにまとめて映えさせる方法まで把握できていて、すばらしいです。
サイトウ
質感表現は難しいと思いますが、「これが描けたらかっこいい」といったモチーフはありますか?
REO
艶っぽい素材は差をつけるのが難しいです。サテンなのかテカリのあるナイロンなのかレザーなのか、レザーでも艶消しっぽいのか。質感の違いまで描けていると「この人はわかってるな」と思いますし、こだわりも伝わってきます。
また、このイラストは光源をあまり感じさせない描き方をされています。これはうまく描けるとおしゃれに見え、印刷物やグッズにも向いています。
サイトウ
グッズ用のイラストでは光源をはっきりさせないのもいいのですね。
REO
光源を作るとキャラデザ感が出すぎてしまうことがあります。あえてフラットな絵にして印刷物として映えさせよう、と描くときはありますね。
ギャップと技術力で絵にインパクトを持たせる
REO
VelnaAsinisさんの作品は「とにかくすごい」が第一印象。和とゴツめのシルバーアクセサリーがこんなに調和させられるんだ、と感動しました。
サイトウ
かんざしも独特ですね。こんなアクセサリーがあるのかと驚きました。
REO
そこも目が行きますよね。また、アナログで描かれていますが、デザインや反射光の描写が繊細で技法に驚きましたし、描き上げる集中力もすばらしいです。
私も昔はアナログをメインに描いていたのですが、透明水彩の影の部分は暗い色を「足す」ことしかできず、一度塗ってしまうと明るく戻せません。明るい部分は最初から塗らずに残しておかないと表現できないので、その中で思いきった暗い影やグラデーションを入れるのは勇気がいることだと思います。
センスを磨く方法
サイトウ
REO先生はイラスト全体からキャラのファッション、イベント参加のグッズやお品書きのデザインまで、すべてにセンスが行き届いていると感じます。
センスの磨き方はありますか? 同じようなジャンルのファッションを自分も試す、などした方がいいのでしょうか。
REO
おしゃれをするのは好きですが、私は男性をメインに描いているので、自分のファッションが絵に活かせているとは思いません。それよりは、モデルさんの写真を見るのが好きなので、そういうところから来ていると思います。
デザイン技術に関してはデザインの専門学校に通っていたので、ビジュアル的なデザインはそこで学びました。とにかくずっと「インプットとアウトプットが大事だよ」と言われていて、それが癖になるよう生活してきました。
サイトウ
どんどん好きなものを集めて、インプットとアウトプットを繰り返して身に付けたのですね。
REO
私の場合はそうだと思います。そう信じたいですね。
シルエットから考えるイラストのファッションデザイン
サイトウ
先生はキャラの性格を細部までしっかり作り込むそうですね。その後、キャラクターデザインはどう描き始めるのでしょうか?
REO
毎回キャラの内面を細部まで考えているわけではないですが、そのキャラを自分の創作のメインにしようというときには性格診断の結果まで考えるなど、しっかり決めますね。
描き始めはいきなり線で描くのではなく、まず太いブラシでシルエットを取るところから始めます。
サイトウ
シルエットを取るというのは、具体的にどうされるのでしょうか?
REO
どういう服かは考えず、丸や三角や四角といった大まかな記号で服の輪郭だけを作ります。それを見て、オーバーサイズの服を着せたいな、下はボリュームを少なくしよう、それならジャケットとスキニーの組み合わせかな……と順に決めていっています。
サイトウ
ファッションの調査はされますか?
REO
ファッションの調査は毎回しています。Pinterestでモデルさんの画像などを見て、ファッションのポイントになっている部分を見つけます。それを自分なりにアレンジして、オリジナルデザインに落とし込んでいます。
最初に描きたいテーマがあるので、例えば「アメカジ(アメリカンカジュアル)」など大きなくくりで調べます。それで出てきた資料の中で、服の細かい部分や気になるパーツがあればその名称をさらに調べて……と広げていきます。
サイトウ
ボリュームやシルエットを決めると、具体的な服を想像しやすくなるんですね。実際の服選びと似ています。
REO
「この服のデザインを描きたい」から詰めると、全部あわせたときにバランスが悪くなってしまうことがあるんです。最初から全体で気持ちのいいバランスを決めたほうがいいですね。
そうやって「他の何とも被らない」を目標に描いています。
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執筆kao(X:@kaosketch/Web/GENSEKI)