この連載では、イラスト作成に関するお悩みを、田中くんがかのと先生と一緒に学んでいきます。今回のテーマは、「ポートフォリオの構成」です。
登場人物
イラストレーターになりたい学生。夢はゲーム会社に就職すること。
この連載の先生。イラスト・ゲーム・キャラクターデザインなどさまざまなデザイン、ディレクション等、多岐にわたって活動するマルチクリエイター。
この記事を読むと学べること
- 就職活動に役立つポートフォリオの構成の考え方
ポートフォリオは見る相手の立場になって考えよう
田中君も就職を考える時期になりました。そこで必要になってくるのがポートフォリオ。ところが田中君はポートフォリオをどうやって作ったらいいのか、わからないようです。そんな時にかのと先生がやってきました。
そろそろ就活を考えてポートフォリオ(作品集)を作らなきゃな〜。とりあえず授業で作った作品を入れてみるか。1年生の時から順番でいいよね……。
ぽいぽいぽ〜い
ちょっとちょっと! 田中くん! いくらなんでも、適当すぎるよ!
え。だめですか?
まずは、自分がどんな会社を受けるのか、どんな仕事をしたいのか、決めましょう。次に、自分が希望する会社や仕事に沿った作品を入れていかなきゃ!
応募する度に作り替えるんですか? なんか大変そう……。
就活で大事なのは、相手の立場になって考えてみることよ。
たとえば、「ファンタジーのゲームが得意な会社」を希望するのだったら、入社後もファンタジーなイラストを描くことになるわよね? それなら、相手はファンタジーの作品を見たいと思うはず。
「カードゲームを作っている会社」を希望するのだったら、入社後はきっとカードゲームのイラストを描くことになるわ。それなら、相手はカードゲームのイラストが描けるかどうかが気になるわよね?
なるほど。リアル系中心の会社に、かわいいデフォルメのイラストを見せても「うちの会社じゃないな…」ってなりますね。
そうなの。もちろん別のテイストを載せてもいいけど、それは最初に載せるものじゃないわね。
人気のある会社だと応募者も多いから最初の数ページしか見られない場合もあるのよ。
え! それじゃあ、1年生の頃から順番に載せていったら一番下手なので判断されちゃいますね!
そうなの。だから、最初のページは自分が自信を持てる作品、やりたい仕事につながる作品を載せてあげるのがいいと思うわ。
危なかったー。それなら最近の作品を中心にしておこう……。
「同じ系統でいろいろなものが描ける」ことを表現しよう
かのと先生! 受けたい会社がファンタジー系なので、ファンタジー作品でまとめてみました!
うーん。ファンタジー系でまとめたのはいいけど、似たようなキャラクターが多いわね……。イケメンと美少女だけになっちゃっているわ。
僕の中では、すごく自信があるイラストなんだけどなあ。ダメですか?
ゲームの中には老若男女が出てくるでしょう。他にも、モンスター、背景、乗り物、武器も大事な要素よ。そういったものが描ける人なのか、これだけだと判断つかないわね……。
このイラストと同じ世界観で、他のキャラや背景も描けるか見せてほしいわ!
わからないか……。うわ〜! たくさん描き足さないと…><
そこはがんばって!
また、実際にゲームっぽい画面を作って、「そこに自分のイラストを使ったらこんなふうになりますよ」と見せてみるのも相手がイメージできていいと思うわ。
たとえば、キャラクターと背景を使って会話画面を作ってみるとか、モンスターのイラストやアイテムのイラストにカードゲームのフレームをつけてみるとかね。
たしかにイメージしやすそう!
ちなみに、私のポートフォリオには、猫、鹿、猿、鳥などのイラストを載せているの。
ある日、クライアントさんから「犬はかけますか?」って確認が来たことがあったわ。「犬はポートフォリオに載ってなかったから描けないかもしれない」って思われてしまったのね。
なるほど。こちらとしては、犬は当然描けるつもりでいるけど、クライアントさんはそうは思わないんですね。
この例からも、できるだけいろいろなバリエーションを作って載せておいた方がいいと思うわ!
ポートフォリオの構成の考え方
ここまでを踏まえて、ポートフォリオの構成の一例を見てみましょう。
これはあくまでも一例なので、会社や業種によっても変わってくるけど、だいたいこの4項目くらいに分けて構成を考えると良いと思うわよ。
なるほど〜。前半を見てほしい! っていうのがわかりやすいですね!
まとめ方は受ける会社や業種によっても違うから、その辺はよく作戦を練るといいわよ。
作戦……就活攻略か……!
あと作品を並べる時もメリハリをつけて並べると見やすいと思うわ。自信があるものや、よく見てほしいものは大きくレイアウトするとか。
たしかに全部同じように並べていたら、ページ数が多過ぎたり画像が小さくなったりしますもんね。
ページ数については、20ポケットのクリアファイルがよく使われているわ。だいたい40ページ、見開きで20ページくらいかしらね。それくらいが多すぎず、少なすぎない目安と言われてるわ。
もっとも、ページ数については、いろいろな意見があるので、どれが正解というのはないんだけど……。
作品の他に付随情報も載せておく
作品の他に何か入れた方がいいものとかありますか?
作品の説明や、制作時間、使ったソフトなども簡単に記入すると良いわね。
とくに制作時間は重要よ。たとえば、会社が2日間の工数で見積もっていたのに、実際には2週間かかってしまったとする。そんな時に会社は、作業が長引いた分だけ、多く社員にお給料を支払わなくてはいけなくなるの。
会社としても予算があるのに、困っちゃうわよね。
それは重要ですね……。入れておこう~!
あと意外と制作過程のラフや、ボツラフなんかも少し載せてみるといいかも。
えっ。ボツラフを入れるんですか?
ここで見せたいのは「完成形に至るまでのプロセス」よ。これを見せることで仕事相手に自分の「アイデア力」や「思考力」をイメージしてもらうの。
完成品だけじゃ判断されにくいところが伝わるわけですね!
そうね。あとはまとめたものをいろんな人に見てもらって、客観的なアドバイスをもらうといいわ。
たしかに自分でまとめていると、客観性はなくなっちゃいますもんね。
次回はそれを踏まえて、ポートフォリオのレイアウトについてお話しするわよ。
やりがちな失敗や、注意点なんかを教えるからお楽しみに!
わ〜楽しみです! それじゃ、それまでにポートフォリオの作品選別や構成をやっておきまーす!
作者・編集・協力
華乃都(かのと)(twitter @rubanribbon)
ゲーム会社、IT 系会社で、イラストレーター&デザイナーとして勤務したのちに独立。
現在はフリーランスのイラストレーター&デザイナーとして活動中。
専門学校でも現役で講師をしている。
イラスト(ファッション画、水墨画、ゲーム系etc…)
デザイン(グラフィック、パッケージ、UIX、グッズ、etc…)
The Kitten Louis イラストレーター/ エグゼクティブプロデューサー
クリエイティブディレクター、プロデューサーなど多岐にわたる
編集
斎藤充博
企業オウンドメディアを中心に企画・制作・編集を行う。