GENSEKIマガジン

モノづくりを広げる・支えるメディア

【イラスト添削#13】物足りないイラストを豪華に見せるコツは「情報量の調節」と「前後感の描き込み」

 

こんにちは、 GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいているgreen322先生の添削シリーズ、第13回をお送りします!

今回も『green322先生にイラストを添削してほしい人募集!』でご応募いただいた作品を、実際に先生に添削していただきました。

この記事で学べること
  • イラストを豪華に見せる方法
  • 質感を描く力を身につけるには?
  • 情報量を調節する描き方
  • キャラクターを魅力的に演出するポージングや考え方

添削担当

green322(X:@green322green
Xで14万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。

添削イラスト応募者
カラク(X:@karac_blueGENSEKI
少年少女を中心に絵を描いています。

カラクさんのお悩み

今回の添削対象は、カラクさんのこちらのイラストです。

ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点や、特に気になっていてフィードバックが欲しい点を教えてください。

濡れた髪の表現が難しく、びしょ濡れとまでいかなくとも、「濡れている感じ」を出せなかったのが気になっています。

 

ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?

目を引く魅力的な構図やポージングがなかなか思いつかず、ありきたりな表現に収まってしまうのが悩みです。

 

ー目指している絵柄や作家さんはいますか?

LAMさん(X:@ramdayo1122)、米山 舞さん(X:@yoneyamai)、さいとうなおきさん(X:@_NaokiSaito)、くるみつさん(X:@krkrkr32)など、色使いがはっきりした、きれいでかわいい絵柄を目指しています。

 

【添削ポイント】情報量のバランスを調節してメインを引き立てよう

カラクさん、このたびは添削をご依頼いただき、ありがとうございます!

今回のイラストですが、色味やポージング、髪の揺れ具合など、「情景を表現しよう」という意識が随所に見られて、とてもいいと思いました! 色あいも全体的にきれいですし、背景込みの一枚絵としてまとまっている印象です。

添削では、お悩みの「髪の濡れ具合の質感表現」「ポージングや構図」の2点を中心に見させていただきました。ありきたりな表現に見えるということですが、構図やポージング自体は問題ないと思います。逆に言えば、非常に収まりのいい構図になっているとも言えます。

実は、ありきたりで物足りなく見える原因は構図ではなく、描き込みや画面の情報量にあります。そのため構図やポーズはそのまま、描写量のバランスを取ることで全体の見栄えをレベルアップさせていきます。

ひとつずつご説明しましょう。

 

資料をしっかり集めて、質感を描く力を身に付けよう

1.キャラのデッサン調整

まず、メインであるキャラに違和感がある部分や、デッサン的にもっといい形にできる部分を整えましょう。うつむき加減のポーズですが、頭が反り気味でやや面長に見えるため、目や頭のパーツを手前に引き寄せます。顔の奥、右耳のヒレも描いてあったほうが自然に感じるでしょう。魅力的な胸やお腹がもっとはっきりとわかるよう、形や髪を調整します。


2.濡れた髪の質感表現

濡れた髪の質感を表現するときに効果的なのは、ハイライトを工夫することです。

髪はつやつやしていますから、ハイライトはかなり強めに入れても問題ありません。濡れている面は光がやや複雑にきらきらと反射しますので、意識して観察し、塗りに反映させましょう。細かめにハイライトを入れつつ光の強さを少し弱くするなど、強弱をつけながら全体的に立体感を考えながら塗るといいかと思います。想像だけではかなり難しいので、資料を用意するなど「創作のクオリティを上げる工夫」がとても大切です。


3.ポージング

キャラクターイラストにおけるポージングは「顔や魅力的な部分に視線誘導するための手段」と考えると、わかりやすいかもしれません。今回のポーズは魅せどころの胸が手で隠れ気味ではありますが、この右手が顔への導線になっているので、問題ないと思います。


4.ライティングと情報量の調節

イラストが物足りなく感じるときは描き込み不足の場合が多いので、情報量を補うことに意識を向けると「ありきたり」感の問題解決に近づくでしょう。

キャラの情報量を調節するために、側面にハイライトを多めに描き込みます。逆光を強調し、尾びれの裏側にはしっかり影を落とすなど、メリハリをつけると見栄えもよくなります。下半身のウロコの形に沿って光を入れると、質感も豪華さもアップできます。

逆光のライティングでは影の中での変化は少なくなるため、肌の影の塗りはシンプルにして、立体感はハイライトでさらっと出すやり方がお勧めです。肌がきれいに柔らかく見せられます。


▼上記を添削したものがこちら!▼

ビフォーアフター

 

【さらにひと手間】「前後感」を意識した描き込みで、絵を豪華にレベルアップ

キャラが描き込めたら、背景やエフェクトも見直してみましょう。空に星や雲を加えて情報量を上げたり、キャラより手前の最前面に水滴を加えて「前(水滴)、中間(キャラ)、後ろ(背景)」で奥行きを感じる画面にしました。

イラストに前後感を加えて描き込むことでさらに豪華な印象になり、情報量も増やすことができます。また、ここまでのライティングや情報の描き込みでかなり「ありきたり」感も解消できると思います。

背景と水滴を描き込み、ぼかす前

「キャラクターイラスト」で焦点を当てたいのは、やはり顔や胸です。背景が目立ちすぎるとよくないので、人物より後ろの尾びれと背景はぼかして、メインにピントをあわせます。

 

ハイライト調整用/肌色調整用のレイヤーとレイヤー構成

描き込み終わったイラストを統合コピーし、調節した画像を54%のスクリーンで重ね、ハイライトを強調します。肌の色にオーバーレイでピンク色を重ね、肌の血色をさらによくしましょう。

ビフォーアフター

添削完了!

添削を加えたイラスト

 

元のイラスト → 添削経過 → 添削完了の変化

【総評】メインを魅せる演出を覚えて、見る人の目を引きつけよう!

ぱっと見でキャラに目が行くよう調整すると、鑑賞者にとってもわかりやすい画面になります。キャラを際立たせる演出をするのが、鑑賞者を引き付けるコツの一つです。

カラクさんは今、基礎ができはじめて「描き込みや演出」が加わるだけでさらに見栄えがする段階だと思います。人体デッサンや構図などの基礎はもちろん大切ですが、今後は「どう演出してキャラを魅せるか?」に、より時間を割いてみるのはいかがでしょうか?

応援しております。お互いがんばりましょう!

 

添削イラスト募集中!

この連載では、green322先生にイラストの添削をしてほしい人をまだまだ募集しています!

元のイラストの良さはそのまま活かして、さらにクオリティを上げるポイントが満載の、学びの多い添削です! 皆さまからのご応募お待ちしております✨


△△応募はこちらから△△

 

▼プロの技を学べる! green322先生のメイキング記事とPSD無料配布

【動画あり】炎のエフェクトがひと通り描ける! green322「炎の描き方」《GENSEKIイラストメイキング》
炎の描き方PSD【解説記事あり】

green322先生の記事一覧

 


執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI