イラストのメリハリを出す。「前後感・コントラスト・色味」に差をつける実践ステップ【イラスト添削】

こんにちは、GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいている、green322先生の添削シリーズをお送りします!
- 風景イラストで前後の距離感を出す方法
- 描き込みの多いイラストで、メインに視線誘導するコツ
- 全体の色味に変化をつける描き方
- 頭の中のイメージを具現化するために必要なこと
添削担当
green322(X:@green322green)
Xで14万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。
添削イラスト応募者

おくらさと(X:@okurasato/GENSEKI)
兼業絵描きとして2021年から活動しています。美しく目を引くようなイラストを目標に描いています。
おくらさとさんのお悩み
今回の添削対象は、 おくらさとさんのこちらのイラストです。

ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点や、特に気になっていてフィードバックが欲しい点を教えてください。

「背景もキャラクターも魅せられるようなイラスト」を目指し、描き込みやコントラストを意識して描写したつもりでしたが、全体的にぼんやりとした印象になってしまいました。どうすればもっと見やすい絵になるのか、アドバイスをいただけますとうれしいです。
ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?

「描きたい絵」と「実際に描ける絵」に乖離(かいり)があり、悩んでいます。頭の中のイメージをうまく形にできず、描き終わるたびに全然うまく描けなかった、と落ち込んでしまいます。
絵を分析して「次はこうしよう」と実践しても、なかなか思い通りにならないことが多いです。理想を具現化するためにはどのように考え、描いていけばいいのでしょうか。
ー目指している絵柄や作家さんはいますか?

有里さん(X:@tenkichi1212)、さすも次郎さん(X:@j_sasum)です。
【添削ポイント】メリハリを出すためには、絵を多角的に見て描こう
おくらさとさん、このたびは添削にご応募いただき、ありがとうございます!
今回のイラストですが、画面全体にまんべんなく手が入っており、とても見栄えがする作品だと感じました。一方、ややメリハリが不足しているために、お悩み通りの「ぼんやりとした印象」になっていて、もったいないと感じました……!
そこで今回は「メリハリのある見やすいイラスト」にすることをメインに、全体に手を入れさせていただきました。
メリハリを出すためのポイントは「前後感・コントラスト・色味」の3点です。詳しくお伝えしていきます。
風景の前後感とコントラストを整理し、距離感をはっきりさせる

今回のイラストは、手前の花から中央の家にかけて「描き込み」と「色味」が似ています。これがメリハリが弱くぼんやりした印象の原因になっています。
そのため、「前後感・コントラスト・色味」の3つの視点で、メリハリを強めていきます。
<1.前後感>
まず、「最前列(花)→中央(家)→遠景(森と空)」と前後感を3段階ではっきりさせましょう。
最前列の花を思い切ってぼかし、明度と彩度は上げます。ぼかすと視認性は下がりますが、鮮やかさは担保する、といった調整です。ぼかした花の奥にある植物や地面の影は、自然に見えるようにならし、地面はスクリーンで明るくします。
絵に奥行きが生まれて、かなりリッチな仕上がりに見えると思います。
次に、このイラストで目立たせたいメインは、家とその周りだと思います。そのため、森や奥の空はかすませて、家との距離感をはっきり出しましょう。
スクリーンやオーバーレイのレイヤーで、水色を画面の左右と空に淡く入れます。空気遠近法を少し大げさに感じるぐらい取り入れるといいと思います。


前後感の調整箇所
<2.コントラスト>
コントラストは「一番目立たせたい場所を意図的に強くし、他は弱くする」ことでメリハリを作れます。
前後感の調整で最前列の花をぼかしたことで、メインの家より存在感を弱めることができました。家の左右の森や奥の空も、かすませて薄く明るくしたことで、コントラストも落とせています。
さらに、メインのコントラストを強めます。一番目を向けさせたい家の周辺に、スクリーンレイヤーを使って以下の調整を入れます。
- 屋根の色を少し鮮やかにする
- 家やキャラクターに強めのハイライトを加える


▼上記を添削したものがこちら!▼


【さらにひと手間】全体の色味と影にも空気遠近法を取り入れよう

<3.色味>
最後に、色でもメリハリをつけてみましょう。
最前列の花から家にかけて、全体的に似てしまっている色味をずらします。とくに葉っぱの影色が似ているため、影の色を少しずつ変えながら描き込みます。最も手前の影はやや濃く・中央は鮮やかに・奥はかすみがかったイメージ……という空気遠近法を影色にも応用し、全体のメリハリを強めます。
全体的に緑の色がやや黄色に寄っていて、少し枯れた印象になっているため、青々とした緑色を取り入れます。手前の黄色い花とも差がつけられます。
家の周りは一番目が行くところなので、描き込みを細かくします。屋根の色は少し赤寄りに調整し、より目立たせます。
奥の空はさらに青みを足し、手前との色の差を強めます。
「カラーバランス」「レベル補正」「色相・明度・彩度」「明るさ・コントラスト」などのレイヤーを何枚も重ねて、手前→メイン→奥の差をよりはっきり調整していきましょう。

1〜3の調整で、画面中央の家に自然と目が行くようになります。画面全体にメリハリが出て、鑑賞者にとって「わかりやすいイラスト」にできます。

【お悩み解決】理想を具現化する方法
最後に、お悩みにあった「理想を具現化するための考え方や描き方」をお答えします。
まずは、自分がどのような情景を描きたいのか、イメージスケッチをしますよね。
そうしたら、「空はこんな感じ」「植物はこの種類」というように、ひとつひとつ理想に近い画像を探します。イメージに近い景色の場所まで実際に足を運んで、写真を撮るのもいいでしょう。とにかく資料をたくさん集めましょう。
そして、集めた資料や写真でコラージュしてみてください。
イメージをより具体的にするのが、完成度を上げるのに最も有効だと思います。手間はかかってしまうかもしれませんが、世界観をきっちり作るためには前準備の充実が欠かせません。
現段階でも資料を集めて制作されていると思いますが、さらにもう一段イメージを詰めてから制作に取りかかってみてください。クオリティがアップし、どんどん理想に近づけるようになりますよ。
添削完了!


【総評】イメージを具現化するために、コツコツと力を積み上げていこう
このように、「前後感・コントラスト・色味」の3つのポイントでメリハリを意識してみましょう。多角的にメリハリをつければ、目立たせたい部分をより強調できて、ぼんやりした印象から脱出できます。
また、イメージを頭で考えるだけでは、限界があります。普段から風景の写真集を集めたり、資料用の写真を撮って構図の勉強をしたり、日頃からコツコツとイメージ力の筋トレをするのも、とてもオススメです。
時間はかかるかもしれませんが、おくらさとさんの描写力をお持ちであれば、必ずイメージに近い絵を描けるようになります! ぜひ続けてみてください。
応援しております。お互いがんばりましょう!
編集部より
green322先生によるイラスト添削について、新たな企画を進めております!
今後についてはGENSEKI・GENSEKIマガジンの公式SNS等にて発信予定です。続報をぜひお待ちください。
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執筆
kao(X:@kaosketch/Web/GENSEKI)
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