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厳しくも楽しい世界で、大好きな漫画への想いを貫く ー 漫画家/イラストレーター・凛愛

ゲーム会社でアートディレクターとして勤務後、現在フリーランスの漫画家・イラストレーターとして活躍する凛愛氏。

ゲーム会社を舞台にした読み切り作品や、Vtuberを題材とした漫画連載などの多岐にわたる作品たちは、とにかくかわいらしい女の子の魅力で溢れている。

今回、代表作品を中心にお話しいただきながら、これまでの活動や漫画制作に対する想いを伺った。

飛び込んだのはシビアな商業漫画の世界

『BG:R』(ジャンプ+)

ーー早速ですが、ご自身の代表作品をご紹介いただけますでしょうか。

凛愛:ジャンプ+に掲載していただいた『BG:R』という読み切り漫画です。ゲーム会社でイラストレーターとして長く勤めていたので、その体験談をもとにフィクションを混ぜながら考案した作品です。特に主人公と上司・社長とのやりとりの部分は、私自身がディレクションやリーダー業務も多かったこともあり、そういった業務を担当している主人公への感情移入も強いです。

ーー私も作品を面白く読ませていただきました。ご自身でこちらが代表作品だと思う理由は何でしょうか?

凛愛:他にも原作のある作品の連載なども持っているのですが、自分でストーリーを考えて掲載された作品の中で一番反響が大きかったので、これが代表作品かなと思っています。

ーーなるほど、ゼロから自分で作った作品だと思い入れ深いですよね。こちらがジャンプ+に掲載となった経緯をお伺いできますでしょうか。

凛愛:ジャンプ+にて、ネームだけで募集が掛かっていたので、その時に描いていた『BG:R』とは別の読み切りのネームで応募したんです。そうしたら担当さんが付いてくださって「一緒に読み切りを描きましょう!」という流れになりました。
なので、『BG:R』は改めてジャンプ+さん用に描いたものになります。担当さんも元ゲーム会社出身の方だったのですごく話が合い、草案(プロット)から「ゲーム会社あるあるだよね」って意気投合しながら作りました。
草案というのは文字原稿のことなんですが、これが通ったらネームという漫画の下描きをして、担当さんのOKが出たら、ジャンプ+さんでの掲載会議に掛けられます。そこでOKが出たらようやく清書に入る、という流れです。

ーー掲載会議で通らなかった場合は、修正が入るんでしょうか?

凛愛:修正が入るか、ボツになるか、ですね。私も何回かボツをもらっているので…。 ネームを描くのにも1ヶ月くらい掛かったりするのですが、それがゼロに戻るみたいな時が結構ありますね。

ーーすごくシビアな世界ですね。ネームはどのように考えているのでしょうか?

凛愛:大体お風呂で漫画のネタを考えてます。『BG:R』もお風呂に2時間くらい浸かりながら考えました(笑)

ーー始めから終わりまで、最初の時点で考えるものなのでしょうか?

凛愛:考えたのは最初の草案だけで、その後は担当さんと相談しながらどんどん具体的に練っていきます。

「死ぬまでに何がしたい?」から辿り着いた漫画を描くという答え

『失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました』
二兎凛(原作)/凛愛(漫画) (どこでもヤングチャンピオン)

ーー漫画を描き始めたきっかけを教えていただけますでしょうか。

凛愛:ゲーム会社に勤めていた時に、アートディレクターやリーダーを担当していたのですが、それより上の目標が見つけられなくなってしまった時期があって…。
それで会社を1ヶ月ぐらいお休みして、「自分がやりたいことって何だっけ?」ということを考え直したんです。その時に、「死ぬまでにやらないと後悔することリスト」を作って、私そういえば漫画を描きたかったんだ、ということを思い出して、ようやく描き始めました。なので、実は本格的に描き始めてからは、まだ3年くらいです。
 
ーー会社をお休みして、人生を振り返る機会を作った行動力がすごいですね。まだ描き始めて3年というのも驚きなのですが、どんな風に漫画や絵の勉強をしてきたのかをお伺いしてもよろしいでしょうか。

凛愛:絵に関しては美術系の高校だったので、授業でデッサンをやっていました。ただ、ゲームに使えるようなイラストっていうのは独学ですね 。
仕事としては、アニメグッズを作っている会社に勤めていたことがあって、そこでフィギュア用の原画イラストを頼まれた事が最初です。そこから絵の仕事ができるかもと思って独学で勉強して、ソーシャルゲームのイラストのお仕事をもらって描いているうちに、少しずつ上達していった…という感じです。デッサンの基礎があったから何とかやってこれた感じがしますね。
漫画も最初は、勤めていたゲーム会社に漫画事業部があって、そこに持ち込みをしていたのですが、半年ぐらい描いても駄目だったので、心がめちゃくちゃ折れました(笑)
そこからようやくYouTubeで漫画の描き方の動画を見始めたり、勉強をスタートさせました。あとは「東京ネームタンク」さんと「コルクラボマンガ専科」さんという、オンラインで勉強できる漫画講座も受講しましたね。 

ーー漫画講座は、受講して良かったなと感じますか?
 凛愛:そうですね。基礎中の基礎を教えていただけたので、そこでようやく漫画の読み方が変わったというか。今まではただ読者として読んでるだけだったんですけど、コマ割りとかセリフの置き方とか、描き手として読めるようになってきたなと思います。

『「来年も一緒に見ようね」』

ーーすべてデジタルで制作されているとのことですが、普段お使いのツールをお伺いできますでしょうか。

凛愛:PCはiMacを使用していて、ソフトはCLIPSTUDIO EXです。液タブはWacomさんのもので、サイズは確か22インチくらいだと思います。会社で支給されたのが27インチの液タブだったんですが、それだと私にはちょっと大きかったので、一つ下げた22インチにしました。

ーー漫画の清書はどのぐらい製作時間が掛かるんでしょうか?

凛愛:1ページだいたい2時間ぐらいなので、50ページ書く場合だと大体1ヶ月かかるぐらいです。今はアシスタントさんもいなくて、全部自分で描いています。 

ーー『BG:R』を描いた時にはアシスタントさんがいたんですか?

凛愛:そうですね。『BG:R』とか、今連載している『失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました/二兎凛 (著), 凛愛 (絵)』も初めの頃はお手伝い頂いていたんですけど、効率化できるようになって、だんだん自分一人で描けるようになってきました。

ーーなるほど、ちなみに今連載されている漫画はどれくらいの間隔で掲載されているのでしょうか

凛愛:月間誌なので、月に一度26ページが掲載されています。

ーー漫画連載というのは、基本的に次月の分の漫画を描いておられるのか、それとも何本か先までストックがあるのでしょうか? 

凛愛:ストックはあると思います。私は今はストックがなくなっちゃったんですけど、連載前にはみなさん三話ぐらいまでは確実に描いておられると思います。大体どこでも三話まで描かないと連載会議に通らないはずなので。 週刊連載の作家さんの中には、一か月分以上ストックがあるっていう人もいらっしゃいますね。

『キスからはじまる魔女の戦争』 

 

ーー漫画やイラストを描く上で、制作のための情報収集はどのように行っていますか?
 凛愛:漫画に登場させたいものが描かれている本を買ったり、Pinterestなどで画像を探したりですね。あとはマンガアプリをすごくたくさん入れてるので、毎日いろんなアプリを見て、ランキング上位の作品は大体読んでます。面白い漫画はいっぱいあるのですが、最近の作品だと「トリリオンゲーム」や「タコピーの原罪」、「女の園の星」が面白いです。
 
ーー漫画を描くことだけでなく、読むこともライフワークになっているんですね。では逆に漫画以外の趣味などはありますでしょうか?

凛愛:趣味でも絵を描いたりアニメを見たりしていますね。pixivに載せている二次創作は、大体趣味で描いたイラストです。仕事の合間の息抜きみたいな。
 
ーー仕事でも絵を描き、 仕事の合間でも絵を描かれているんですね。でも趣味と仕事とはまた違いますよね。
 凛愛:違いますね。趣味の時は自由に描いてリフレッシュできる、みたいな感じです。

大好きな漫画を描けることの満足感

『Vライバー「只井マカロン」デザインイラスト』

 

ーー漫画家として一番幸せを感じる時と、逆に辛いと思う時があればお伺いできればと思います。

凛愛:反応をもらえた時がやっぱり一番嬉しいです。あとは、まだまだですけど、単行本が売れたら嬉しいと思いますね。いろんなストアさんでも電子書籍を販売いただいてるんで、ちょこちょこランキングを見たりなどはしています。
 
ーー客観的な評価があると嬉しいですよね。逆に辛いなと思う時はありますか?

凛愛:ネームが通らない時ですね。掲載が決まらない限り、原稿料も貰えないので。あとは、映画でいう監督から演出から全てを自分一人でやるのが漫画なので、求められるスキルが多すぎるな、と思っています。
でも本当に、単純に漫画が大好きすぎて、漫画が描けてるってだけで満たされてる感じがするんです。本当に漫画が好きだから、漫画を描いていて楽しい!みたいな。それに、本当に好きな作家さんが多すぎるので、その真似事を少しでもできてるっていうのがちょっと嬉しいなという感じです。自分が少しでも同じ業界にいられる、という、オタク心ですね(笑)
 
ーー本当に好きなことが出来ているという楽しさがあるんですね。最後に、今後やりたいと思うイラストの仕事や、漫画についてお伺いできればと思います。

凛愛:自分でストーリーを考えた漫画の連載を持ちたいなと思ってます。あとは、Vtuberのアバターデザインがやりたいですね。今連載している漫画『失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました/二兎凛 (著), 凛愛 (絵)(どこでもヤングチャンピオン)』もVtuberの話なのですが、実は Vtuber配信が大好きで原作を選んだところがあります。
 
ーーどちらの夢も、もうほぼ実現に差し掛かっていますね!

凛愛:ありがとうございます!1つ1つ夢を叶えていけるように、引き続きがんばります。

商業漫画の世界の厳しさを窺い知れると同時に、凛愛氏の漫画への大きな愛を感じられるインタビューとなった。

自分自身が本当にやりたいと思うことを貫くための苦労と、それすら楽しいと思う気持ちが、魅力ある作品を生み出す原動力になっているのだろう。

凛愛氏の今後の作品発表にもぜひ期待したい。


 凛愛(Twitter:@necocafe_lili)
ゲーム業界11年目/漫画業界3年目/元ゲーム会社勤務。
漫画▶連載中『失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました/二兎凛(原作)/凛愛(漫画)(どこでもヤングチャンピオン)/読切『BG:R』(ジャンプ+)/完結『キスからはじまる魔女の戦争』/娘:只井マカロン/漫画やイラスト、キャラクターデザインのお仕事募集中。猫とカフェオレが好き。