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「自分の絵の需要を調べよう」サタケシュンスケが語る分析スキル【イラストレーター7つのスキル】第1回

 

イラストを仕事にしようとしていているけど、うまくいかない。そんなときには、自分のイラストがよくないからだろうか、と悩んでしまいますよね。しかし、イラスト以外のところに原因があるのかもしれません。

イラストレーターのサタケシュンスケさんは「イラストレーターにはイラストスキル以外に7つのスキルが必要」とおっしゃっています。

・分析スキル
・プロモーションスキル
・コミュニケーションスキル
・ヒアリングスキル
・提案スキル ☆有料記事
・交渉スキル
・リスク対応スキル ☆有料記事
・良いイラストレーターとは

この連載では、それぞれのスキルはどんなものなのか、どうやったら身につくのかをサタケシュンスケさんにおうかがいします。今回は「分析スキル」です。

お話を聞いた人サタケシュンスケ(X:@satakeshunsukeWeb
イラストレーター。広告制作会社勤務のグラフィックデザイナーを経て2007年に独立。よく同業者から相談を持ちかけられる。著書に『イラストレーターのためのお金の話』『配色アイデア手帖 色とイラスト かわいい世界観を作るヒントが詰まった本』など。

イラストレーターは市場調査をしよう

――イラストレーターの「分析スキル」とは、具体的にどんなものなのでしょうか?


サタケ

イラストの市場調査をした上で、自分の絵がどこに当てはまるかを想像する力です。自分が入れるスキマはあるのか、自分の絵が求められているのはどういう領域なのか。イラストの仕事が欲しいと思ったら、まずはクライアントや業界について少し詳しくなる必要があります。

絵がうまい方はたくさんいると思うんですけど、需要がない絵をずっと描いていても、残念ながら仕事にはつながりづらい。分析ができていないと、どっちを向いて絵を描いていけばいいのかがわからないですよね。


あとはレッドオーシャンといいますか、飽和している領域もあります。すでにたくさんの人が活躍しているところに新たに参入しても、チャンスはなかなか回ってきません。そこはすでに席が埋まっているのかもしれません。

その場合はちょっとだけ軸をずらして、他のジャンルを絡めて描く、流行を取り入れて描くことも考える必要があります。


――サタケさんがこういったこと意識し始めたのはいつだったんでしょうか。


サタケ

フリーランスとして独立するときです。会社員時代に副業でイラストレーターをやっていた頃は「好きな絵を描いて、買ってくれる人がいたらラッキー」ぐらいのスタンスでしたが、独立してからは絵で食べていかなければいけません。待ちの姿勢にならないように、かなり意識するようになりました。

 

身の回りのイラストについて考えることから市場調査が始まる

――先ほど「イラストの市場調査」というお話がありましたが、具体的にどんなことをすればいいでしょうか?


サタケ

最初は「世の中のどんな場所にイラストが使われているのか」に意識を向けてみましょう。イラストレーターの仕事といってもかなり多岐にわたるので、出版もあれば、広告パッケージもあるし、プロダクトもあります。


あとは世の中の広告を見てどんなイラストが使われているのか調べてみたり、本屋さんで平積みされている本を見て「こういう表紙の本が売れているんだな」など、自分なりに考えてみたりすることが大切だと思います。

本についてはクレジットを確認すると、イラストを発注した会社や、関わっているデザイナーがわかることもあります。こうした情報を参考に、自分がどっちに向いて作品をアピールしていくべきなのか考えてみましょう。

僕が駆け出しの頃によく見ていたのは、イラストレーター年鑑のようにイラストの仕事がたくさん載っている本です。具体的に言うと、玄光社の『イラストレーションファイル』などですね。そこで自分がやりたい仕事を見つけるのはもちろん、自分が知らないジャンルのイラストがどういうシーンで活躍しているのかも勉強しました。

 

SNSを活用して海外事情を把握する

サタケ
最近はSNSのおかげで海外のイラスト事情もわかるようになりましたよね。僕も日本語のアカウントとは別に英語のアカウントを作って、海外のクリエイターさんをフォローしています。


――英語のアカウント! 考えたこともなかったです。


サタケ

海外で流行ったものが日本に入ってくるケースもあるので、英語アカウントで見られる情報はなるべくキャッチするようにしていますよ。普段自分がいるコミュニティと違うところにアカウントを作って、新しい世界を覗きに行くのは、本よりもネットの方が手軽ですよね。

InstagramやPinterestも良いと思いますし、特にAdobeのSNSサービス「Behance」はクリエイターの作品が毎日のように上がってくるので、かなり影響や刺激をもらっています。

サタケシュンスケさんのBehanceより

 

イラストレーターが活躍している「意外な領域」はたくさんある

――市場調査をして、新たにわかったことや、意外だったことはありましたか?


サタケ

もともとは広告や出版のように誰もが目にするような華やかなお仕事しか知らなかったんですが、実はすごくニッチなジャンルで活躍するイラストレーターさんがいることを知りました。

たとえば医療業界に強いイラストレーターや、建築に強いイラストレーターのように、ひとつのジャンルに特化している人がいて、その業界ではすごくたくさんの仕事をしているんですね。

それまでの生活ではなかなか目にする機会がなかったんですが、ちょっと意識してまわりを見渡すことで、自分の場所を確保して仕事をしている人がこんなにいるんだってことに気付きました。

 

イラストのトレンドをつかんで、自分ができそうなことを考える

――分析スキルを伸ばしていくために、その後も続けていることはありますか?


サタケ
同業者の絵をたくさん見るようになりました。仕事用の絵だけではなく今流行っているのイラストのタッチを学んで、なぜそういう絵が流行っているのか、背景まで深掘っていく。

そうすると、「ここだったら自分も力が発揮できそうだな」と気付けることもあるんです。それをそのまま取り入れるわけではありませんが、情報としてトレンドをつかんでおくというのは、今でも意識的に続けています。


――第一線で活躍しているサタケさんでも、日々のインプットは欠かせないんですね。最近トレンドや流行を調査していて、何か発見はありましたか?


サタケ
90年代の世界観をイラストで表現するのが、ここ1~2年ほどかなり盛り上がっているなと感じています。ファッションもそうですし、人物の描き方も、30年ほど前のタッチをあえて今再現していたり。それがお隣の韓国でも流行っていて、「おもしろいな」と思っています。

トレンドも落ち着くと古く見られがちですが、こうやって1周回ってまた新しく受け取られたりすることもあるんですよね。ですから新しいものだけでなく、あえて古いものを掘り起こしてみることもあります。資料を見るときも、ちょっと前のトレンドから「これ、また流行りそうだな」と思うものを押さえておくと良いかもしれませんね。

 

サタケシュンスケインタビュー連載「イラストレーター7つのスキル」

・分析スキル(この記事)
・プロモーションスキル
・コミュニケーションスキル
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聞き手・編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI

構成ヒガキユウカ(X:@hi_ko1208

イラスト華緒はな/お花(X:@hanao_hanao_twiGENSEKI