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静と動の交差する世界に佇む ーイラストレーター/漫画家・田村結衣

イラストレーター/漫画家として活動する田村結衣氏。

イラストでは小説の装画や、漫画家としては講談社・コミックDAYSにて『矢野くんの普通の日々』を連載中(隔週日曜更新)と、各方面で活躍中だ。

描くイラストは、質感、色合い、空気感、そのどれもが絶妙のバランスで合わさり、1枚1枚が “美術絵画” のような完成された佇まいを持つ。

今回はそんな田村結衣氏の現在に至るまでの軌跡、イラストの原点についてじっくりとお伺いした。

生きている、を感じられるように

『夏日』

『夏日』

ー田村さんの代表作品のタイトル・テーマなどをお伺いさせてください。

田村結衣:タイトルは「夏日」。全体の色味、女の子の表情、描きこみ具合含め、自分が描いたイラストの中で一番お気に入りのイラストです。また、ちょうど本格的にイラストレーターとしての活動を意識し始めた頃(2020年)に制作した作品だったので、そういった意味でもとても印象深い作品です。

ー静けさを感じさせる色合いなのに、不思議と夏を感じさせる雰囲気がとても素敵です...!制作時間はどのくらいかかっているのでしょうか?

田村結衣:「夏日」の制作当時は会社員だったので、平日帰宅後の夜や休日に少しずつ進めていき、2週間程で完成しました。

ー画材・機器はどのようなものをお使いですか?

田村結衣:ノートパソコンにWacom Cintiq 16という液晶タブレットを繋げて作業しています。ソフトについて、カラーイラストの制作時は『SAI 2』、漫画原稿制作時は『CLIP STUDIO PAINT EX』を使用しています。

ーいつ頃から絵を描き始めて、どのように絵を勉強してきたのでしょうか?

田村結衣:小さい時から絵を描くことが何よりも大好きで、それが今でも続いている感じです。もともと「絵を描くお仕事がしたい」という夢があったので、イラストやデザインを学べる専門学校に通っていました。結果的に更にやる気が出て絵を描くことがもっと好きになれたので、それが今に繋がっているのだと思います。

ー昔からの夢を叶えて、ご活躍されているのですね。ご自身の作風で、意識していることやこだわりポイントを教えてください。

田村結衣:肌の柔らかさ、髪の毛の動き、また漫画では喜怒哀楽の表情なども含め「(絵の中の人物・キャラが)生きている!」と感じてもらえるような絵を目指して描いています。

夢が現実になったとき

(c)田村結衣「矢野くんの普通の日々」/講談社

(c)田村結衣「矢野くんの普通の日々」/講談社

ー趣味から仕事に変わった時、イラストレーターとして活動し始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

田村結衣:2018年から趣味で描いたオリジナルイラスト作品をSNSに投稿し始めたのですが、2019年あたりからPR投稿のご依頼や個人様からのご依頼を頂く機会が少しずつ増えたことをきっかけに、2020年から本格的にイラストレーターとして活動し始めました。
その傍らで初めて挑戦した漫画で佳作賞を頂き、2021年には漫画家として連載デビューさせていただいて今に至ります。

ー現在はどのようなお仕事を受けていらっしゃいますか?

田村結衣:現在隔週で連載させていただいている漫画『矢野くんの普通の日々』の原稿作業や、それ関連のお仕事が大半を占めています。もし今後余裕ができたらイラストのお仕事もどんどん募集したい…と考えています。

ー今まで手がけた中で、一番思い出に残っているお仕事や作品はございますか?

田村結衣:初めて描かせて頂いた小説の装画イラストのお仕事が特に思い出に残っています。(2020年8月発売発売・辻堂ゆめさん著『悪女の品格』文庫版)
「装画イラストを描く」お仕事が一つの夢だったので、ご依頼いただいた当時は本当に嬉しかったです。

『辻堂ゆめさん著『悪女の品格』(創元推理文庫)装画イラスト』

『辻堂ゆめさん著『悪女の品格』(創元推理文庫)装画イラスト』

ーTwitterでもInstagramでもフォロワーが数万人を超えていますが、SNSでフォロワーが増えたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

田村結衣:今も使用しているTwitterアカウントの初投稿は、当時の自信作4枚と当時流行っていたイラストタグを付けて投稿したものでした。
それがいきなり2万いいねを超えて…嬉しいと同時にとても驚きました。Instagramはその前から投稿していましたが、こちらはじわじわとイラストを見てくれる人が増えていったような印象があります。

苦しみを乗り越えた先にある喜び

ー尊敬しているイラストレーターさんはいらっしゃいますか?

田村結衣:通っていた専門学校の先輩でもあるイラストレーターの松浦シオリさんの作品が大好きで、学生時代からずっと尊敬しています。また、最近ではLittle Thunderさんの作品が大好きで画集も集めています。

ー絵が上達したと感じたタイミングや、転機となった出来事はありましたか?

田村結衣:タイミングというわけではないのですが、これをやったら人物絵がすごく上達した!と感じた練習方法は、好きな芸人さんやアーティストのライブ映像の好きなシーンを一時停止してクロッキーする、という練習方法です。それを週3くらいのペースで続けていたら、以前より人体をスラスラ描けるようになりました。何よりすごく楽しいので一つの練習方法として個人的におすすめです。

ーアイデアに詰まった時はどうしていらっしゃいますか?リフレッシュ方法などがあれば教えてください。

田村結衣:イラストの場合は丸や四角をキャンバスに適当に配置したりして、無理にでも絞り出すことが多いです。漫画の場合は、好きな映画やライブDVDを見たり、散歩に行ったり、関係ない絵を描いたり、全く関係ないことをして自然とアイデアが出るのを待つことが多いです。また深夜など追い詰められた時の方がアイデアが出やすい…ということがよくある気がします…。

ー絵を描くこと以外での趣味はございますか?

田村結衣:暇さえあればお笑い鑑賞をしています。最近は特にシソンヌとジェラードンが大好きです。

『残暑』

『残暑』

ーイラストレーターをやっていて、一番幸せを感じる瞬間を教えてください。

田村結衣:イラストでも漫画でも、SNSのコメントやDMで嬉しい感想をもらえた瞬間です。さらに漫画連載が始まってからは実物のファンレターやプレゼントをいただく機会も増えて、本当に幸せです。ありがとうございます。

ー逆に、今までイラストレーターとして活動をしている上で辛かった時は?

田村結衣:アイデアが出ない時、締め切り間近の時は毎回必ず辛くなります。が、完成した時の達成感、描くことの楽しさが圧倒的に上回るので続けられています。

ー今後やってみたい仕事はございますか?

田村結衣:書籍の表紙、広告、CDジャケット、雑誌のカットなど、媒体問わず様々な場所で活躍できたら嬉しいです。

ー最後に、GENSEKIのサービスについての印象を教えてください。

田村結衣:開催されているコンテストの種類が豊富で、イラストレーターを目指す方々のモチベーションの向上に繋げてくれそうなサービスだという印象を受けました。

 

田村結衣(TwitterInstagram

イラストや漫画を描いています。現在コミックDAYSにて「矢野くんの普通の日々」隔週(日)連載中。

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