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コンテストがきっかけで生まれた、熱量の高いMVー『だんだんだん』作詞・作編曲 三矢禅晃 × イラスト・動画 彩田花道 スペシャル対談


そらる氏やまふまふ氏との楽曲制作をはじめ、ゲームBGMからアニメソングまで様々な作品を制作、作詞・作編曲家、ギタリストとして音楽業界で大活躍中の
三矢禅晃氏。

光や温度が伝わる作品を得意とし、イラストレーター・映像クリエイターとして意欲的に活動する彩田花道氏。


今回はGENSEKI「
三矢禅晃新曲ミュージックビデオイラストコンテスト」をきっかけに、2人のクリエイターが出会い『だんだんだんという新たなミュージックビデオ(以下MV)が生まれるまでになった経緯を、対談でじっくり振り返っていただいた。

 

『だんだんだん』
三矢禅晃新曲ミュージックビデオイラストコンテスト特賞

ーー今回は、三矢さんに書き下ろし曲をご提供いただき「新曲ミュージックビデオイラストコンテスト」開催となりました。誠にありがとうございます!

三矢禅晃(以下三矢):こちらこそ、ありがとうございます。

 

ーー特賞を受賞された彩田さんには、MV制作のお仕事まで受けて頂きましたコンテストが本当に素敵な形で発展し、感謝しております。

彩田花道(以下彩田):ありがとうございます。

 

ーー今回はコンテストと、そこから生まれたMV『だんだんだん』について、お二人にお話いただきたいと思います。応募数も多く、どの作品も熱量がすごく高かったですね。

三矢:コンテスト終了までは「全然来なかったらどうしよう」とSNSや応募ページを見ないようにしていたので、沢山ご応募いただいていて思わず「おおっ!」となりました(笑)
1枚描くのに何時間もかかる中、沢山の方が時間を費やしてくれた事が伝わり、しっかり歌詞を見て下さっていて、ありがたかったです。

 

ーー彩田さんはコンテストという選ばれるかも分からない場で、イラストだけでなくMV映像もご応募下さいました。その熱意はどこから来るのかずっと不思議でしたが、何か背景があったのでしょうか?

彩田自分は楽曲や物語に沿った制作をする時、元になる作品から受ける第一印象を大事にしています。今回は「物語の時の流れ」がとても印象的でした。
コンテストは一枚絵の応募となっていましたが、一枚絵で物語の一瞬を切り取るだけではこの曲らしいイラストにはならないし、かといって全部を1枚のイラストにしたら曲を聴く前に先がわかってしまう。
この曲を表現するなら映像がいいのに…とコンテストページを眺めていたら、三矢さんが「一枚絵に歌詞を流し込む想定ですが、別の形式でもいい」と書いていて下さっていたので、応募しよう!となりました

三矢:えぇ!あの一文、追加してよかった!(笑)

彩田:本当に、あれがなかったら応募していません(笑)「この曲なら映像の方が似合うと思いますが、どうですか?」と提案したかったので、好意的に受けとめていただいてとても嬉しかったです。

 

ーー彩田さんの問い合わせの熱いメールは、すごく心に響きました。三矢さんもその熱量を感じ取ったからこそ、コンテストのあとMVを依頼したいと思ったのでしょうか?

三矢:それが一番大きいです。自分もコンペに出すことがあるので、気持ちと熱を込めてメールや作品を送る気持ちがよくわかりました。そうして熱を込めて作った作品は、伝わるし、先に繋がるんです

 

ーー受賞作品は、どれぐらいの時間がかかったんでしょうか?

彩田:イラストを描いて映像を作って…1週間以内だったと思います。熱量が上がっている時に作ったので、すごく早くできました

三矢:それは私も経験があるので分かります。その熱量、気持ちが応募作品にも表れていたので、ぐっと心を掴まれました。

 

ーー熱量が上がっていると制作スピードが早いのは、音楽分野の三矢さんも同じでしょうか?

三矢:はい、制作していて気がついたら夜、また気がついたら朝、というような集中力で、自分のやる気がみなぎってる時にやった方が、圧倒的に早いです。逆に乗ってない時だと、一週間かけても全然進みません。

彩田:自分の中で納得がいかないまま始めた時は、長くかかってしまいますね。勢いに乗っている時は「もうこれしかない」と前を見据えて進んでいるので早いのでは、と思います。

三矢迷いがないですよね、やっぱり。

『2021 TRPG background』

ーー彩田さんはイラストレーター・映像クリエイターとしてどれくらい活動されていらっしゃるのでしょうか?

彩田:SNSに自分のイラストを上げ始めたのが2018年3月で、以来4年間、趣味で活動していました。大学や前職は絵と関係ない分野でしたが、2021年の秋からフリーランスに転向しました。

三矢:いきなりフリーランスは大変じゃなかったでしょうか?

彩田:今のところは、家族や周囲の人が優しくて、お仕事を下さったり今回のような機会にも恵まれ、ご縁をいただきありがたいなと思いながら日々を生きています。

三矢:いいですね。周りの人に恵まれているのはとても大事だと思います。

 

ーー三矢さんの音楽活動も、周りに助けられたものだったのでしょうか?

三矢:その通りです。今の仕事ができるようになったのも、ニコニコ動画に演奏動画を投稿していて、ニコニコ動画内の有志のイベントにお声がけいただいて出たのがきっかけです。一気に交流の輪が広がり、そらるまふまふといった頑張って活躍している人たちと出会い、一緒に色々やっていくうち、音楽で生活できるようになりました。
自分一人の力ではどうあがいてもできなかったので、人生において人との縁が一番大事というのはとても感じています。

 

© 2020 ZENKO MITSUYA

ーー三矢さんの中で、そうして人に助けられ付き合っていく中で、心がけていることはありますか?

三矢誠実であろうと常に思っています。自分の利益のために、誰かを動かしたり嘘をついたりはしない。どんな状況、お相手でも、その方針は変えないよう意識しています。「情は人のためならず」というか、返ってくるような気がしているので。

 

ーー私も三矢さんのお人柄の良さには驚き、人に助けられるのはそこからだと感じます。彩田さんは一緒にお仕事をされて、どのように感じましたか?

彩田:とても優しい方だなというのと、クリエイターに対してのリスペクトがあると感じます。メールでも常に良い言葉をかけていただいたり褒めて下さって、気持ち良くお仕事をさせていただきました。

 

ーーMVの長い制作期間でモチベーションを保てたのは、そういったことからでしょうか?

彩田:はい。なかなか進まない時も、良いところを見つけて褒めてくださる姿勢など、とても尊敬しています。自分もこういうやり取りができる人になりたいと思います。

三矢:ありがとうございます。自分もクリエイターなので、焦るとモチベーションが下がるだろうと思い、一番いいコンディションでやってもらった方が良いものになると感じていたので「決して急かしたりはしない」と決めていました。

『Amid』MVイラスト

ーー彩田さんは、もともとMVの制作をしたいと思われていたのでしょうか?映像のお仕事は、今までもされていましたか?

彩田:今までもYouTubeの「歌ってみた」で活動する友人から依頼をいただき、いくつか制作していました。イラストと映像のスキルを合わせたお仕事となると、MVの存在は大きいので、この方向で実績を増やしていきたいと思っています。

三矢:ポートフォリオにもある、森のMV、とても綺麗で好きです。

彩田:ありがとうございます。『Amid』はピアノやフルート演奏する友人達と作りました。この時初めてイラストを動かす映像編集をし、自信が持てたので、それから色々な方のご依頼で作るようになりました。

 

ーーきっかけになった作品なんですね。

彩田:はい。その後、色々な方からご依頼いただく中で、初めて「好きに作っていいよ」と言ってもらい、信頼してすべてを任せてもらう、という経験をしました。

三矢好きに作っていいって、一番いいですね。その信頼感。

彩田:なげやりにではなく「あなたなら大丈夫だと思うから」と任されたのは一番嬉しいですね。出来た作品は友人もリスナーさんにも喜んでいただけて、印象に残っています。
三矢さんも同じようにご依頼下さって、とても嬉しかったです。

『「神の名前に堕ちる者」を歌いました(cover)』MVイラスト

ーー次は三矢さんに、コンテスト企画を見た時どう思われたか、なぜお引き受けいただけたのかお伺いしたいと思います。

三矢:何年も個人楽曲を作っていなかったので、丁度自分のためだけに好きな曲を書いてみたいと思っていたタイミングでした。
それにGENSEKIさんからクリエイターやイラストレーターなど「ものを作る人」に対してのリスペクトを感じたので、自分の作った楽曲がきっかけで他のクリエイターさんの仕事の幅が広がればいい、後に自分にも縁が巡って来るといいな、という思いでお引き受けしました。

 

ーーGENSEKIにはMVやジャケット制作の夢を持つクリエイターも多く、そのために引き受けて下さり本当に嬉しいです。『だんだんだん』制作について、制作期間やエピソードなど、教えて下さい。

三矢:最初のオケ(曲)までは10日、着手~完成だと、通しで3週間くらいで、割と普通の制作期間でした。仕事だともっと早く作る時もありますが、今回は自分のための曲なので、作っている時に出てきたものも色々入れて好きにやろうと、少しずつ進めました。

 

ーー最初の案ではシェイクのような楽しい曲と聞いていましたが、完成した曲は楽しい中にせつない気持ちがすごく感じられる仕上がりでした。途中で変わるきっかけがあったのでしょうか?

三矢:確かに最初は、楽しいパーティのような感じにしたいと思っていました。それが、楽曲をループして歌詞を考えていたら、ぱっと最初に「例えだんだんだん忘れ去られても」というフレーズが出てきて、これは楽しくはならないぞ?と(笑)

そのまま自分から出てくるものを書きとめていったら、この物語になりました。

ーー彩田さんは受賞コメントで愛犬の話をされていましたが、愛犬が大変な時期にご応募下さったんですね。

彩田:曲の内容と同じような状況で、歌詞をいただき「すごいめぐり合わせだな…」と思いながら制作していました。
その時はもう本当にぎりぎりの状態の愛犬がそばにいて、これから自分が体験することも少しは役立てられたらいいな、という気持ちでした。

 

ーーMVを作る上でも飼われていた時の気持ちや思い出を込められたのでしょうか?

彩田:それだと自分の作品になってしまうので、自分から愛犬に対しての気持ちは極力入れないように心がけました
『だんだんだん』で伝えたいことを考えた時、自分のような経験をした飼い主側から、また別の飼い主さんへ「ペットがいなくなってしまった悲しみ」に寄り添えるようなものにしたいと思いました。「うちの子はこうだったな」というような思い出を、みんなで共有できるようにしています。そういう点では自分の愛犬との思い出からヒントをもらったかもしれません。

 

ーー最初の犬のアップなど、構成はお二人で相談しながら決めていったのでしょうか?

三矢:基本的にコンテは全て彩田さんにお任せしました。映像になる前、いくつか案をいただいた時点で「これは絶対いいものになる」と確信があったので。経過が送られてくるたび、とてもワクワクして見させていただいていました。

彩田:毎回そのことをメールで伝えて下さるので、自分もとてもやる気が出ました。

 

ーー歌詞やエフェクトもいいですね。MVの中にもやはり、物語を感じます。

彩田:最近は歌詞がインパクト強く画面いっぱいにドンドンと出てくるものが主流ですが、今回はあまりそれを気にせず、作品に沿ったつくりにしました。
「君のそばにいていいんだと~」の部分は、主人公が飼い主を好きになる場面なので、特に力を入れています。

三矢:うん、すごくいいです。あと、「忘れ去られても」の部分のカメラロールに、いっぱい写真の絵が描かれていますが、スマホにいっぱいペットの写真があるの、すごい分かるんです。「やる、やるよこれ」って(笑)

彩田:飼い主同士の共感ポイントですね(笑)

三矢:犬以外の動物も出そうとご提案いただいたのも良かったです。亀や鳥など、さまざまなペットがいるんですよね。

彩田:そうなんです、魚も入れました。ペットを飼ったことがある誰しもが、飼っていた時の姿を思い出せるように作りました。

ーー今回のコンテストは、熱量の高い素晴らしい作品が多数集まりました。改めて振り返っていただけますでしょうか?

(全員で各作品を丁寧に確認)※三矢氏の佳作コメントは結果発表ページ下部へ

 

ーー彩田さんには、今回受賞をお知らせした時の感想をお聞かせいただけたらと思います。

彩田:正直最初は、頭の中に全部イメージがあったのでフル尺を作ろうとしていました。でも応募締め切りまでにはやはり一部分しか作れず、「せめてここだけでも」と頑張って作った作品だったので、受賞の時にフルのMV作成もご依頼いただけて「頭の中にあるものを全部出していいんだ、やった!」と、本当に嬉しかったです。

 

ーー三矢さんは、審査していかがでしたか?

三矢:素敵な作品が多かったので、本当に接戦でした。どれも良くて選べないとなった時、最終的に決め手になったのがやはり「熱量」。作品に込められた想いの丈をどのくらい感じられるかを、一番感じたのが彩田さんでした。

 

ーー今回の企画の全体を通して感じたことを教えて下さい。

彩田:自分自身は、応募する段階から思い描いていたことは奇跡のように全部叶いましたが、その中でも「もう少し自分ができていたら」「これからはこうしたい」と思う部分があり、これからまだまだ成長できると感じた企画でした。
三矢さんの信頼できる立ち振る舞いは目標になりましたし、この対談を通して「熱量を見せる」のを恥ずかしがらずどんどんやった方がいいと実感でき、どれも本当に大きい経験です。関わらせていただき、ありがとうございました。

三矢:たまたまTwitterのDMを開いたことがきっかけで、今こうしていられるので、新たな縁を作るのにためらわず、何か新しいことができそうな所があれば飛び込んでいった方がいいと思いました。色々なものに対し自分から門戸を開いていくのが大事ですし、面白い企画に私を選んでいただき、本当に感謝してます。

 

ーー最後に、お二人の今後の展望をお聞かせ頂けたらと思います。

彩田:イラストレーターとして技術を磨くことも、表現者として色々なことを描いて行くのも、人に依頼してもらう以上「人間として成長するぞ」と強く思います。これから先も見守っていただけるクリエイターになれるよう、頑張ります。

三矢:今回がきっかけで、個人の楽曲作りが実現できたので、今後も2作目、3作目と作っていけたらと思います。これでGENSEKIさん彩田さんとも繋がりができたので、ご縁を大事に。もしかしたら20年後にこのメンバーですごく大きいことをしているかもしれませんね(笑)

 

ーーぜひその時を楽しみに、GENSEKIも成長を続けたいと思います!クリエイター同士の熱量が掛け合わさって作品が生まれる事を、大切にしていきます。

三矢:今後もこういったことは起こり得ると思うので、GENSEKIさんも今後イラストレーターのみならず他のクリエイター全般に広がったらいいなと思います。

 

ーーこれからも沢山のクリエイターさん達にご活躍いただけるよう、頑張ります!
作り手の思いを知った上で、MVを見るとまた違ったものがありますので、この対談をきっかけに『だんだんだん』を沢山見て頂きたいと思います。

三矢:『だんだんだん』は本当にすごくいい作品になったので、是非この機会にもっともっと沢山の方に見ていただきたいです。

彩田:そうですね、ぜひ何度も、見てください。

 

 

『だんだんだん』の楽しくも切ないメロディーとMVは、時に思い出を、時に癒しを見る人の心に与え、繰り返し聞いても飽きることがない。

GENSEKIコンテストをきっかけに、クリエイターの仕事に繋がったのはもちろんのこと、2人のクリエイターの化学反応で熱量の高いMV作品が生まれるまでになった。

クリエイター同士の縁が繋がって行く先が、これからも楽しみだ。

インタビューに答えてくれた人

三矢禅晃(Twitter:@Gibson_MitsuyaHP

作詞・作編曲家/ギタリスト。ゲームBGMからアニメソングまで作品への愛と熱量を込めた制作活動を精力的に続けている。G.O.D. / After the Rain(そらる・まふまふ)バンマス / バンドリ!ガルパBGMなど多岐にわたり活躍。

 

彩田花道(Twitter:@Hanamichi_picHP

イラストレーター /映像クリエイター。光の表現を得意とし、イラスト、映像制作のほか、コンセプトアート、装画、背景イラストなど多彩なジャンルで活動。自然であたたかい雰囲気や荘厳な雰囲気の映像・MVを制作している。

執筆者

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kao(twitter:@kaosketchHP
イラストレーター・GENSEKIインタビューライター。空気感や表情が伝わる表現を目指す。ファンタジーとSFが好き。名古屋在住。