子どもの夜泣きで仕事が進まないとき、どうすればいい? 子育てイラストレーターのお悩み相談

こんにちは。フリーランスでイラストを描いたり、マンガを描いたり、記事を書いたりしている斎藤充博です。
3年前に子どもが産まれて以来、「子育て」と「フリーランス」の両立にずっと悩んでいます。いや、単に悩んでいるだけじゃない。苦しんでいる、と言っても過言ではありません。
そんなときに、同じようにフリーランスでマンガを描いたりイラストを描いたりしている川口真目(かわぐちまさみ)さんを知りました。川口さんは自分自身の経験から『子育てしながらフリーランス』という本を出版したり、Discordで「子育てフリーランスコミュニティ」を運営しています。
川口さんに話を聞いてみたら、なにか解決の糸口が見つかるのではないか……? いや解決までしなくても、この苦しみが少しでもやわらぐのではないか……? そんな思いで僕の悩みをぶつけさせてもらいました。
子育てしながらのフリーランス活動に悩んでいる人へ。同じように悩んでいる人がここにいますよ。全3回の連載です。
第1回 子どもの夜泣きで仕事が進まないとき、どうすればいい?
第2回 在宅でイラストを描いていると家事をやることになってしまう……
第3回 子育てをしながら「営業活動」ってできるの?
お話を聞いた人
川口真目(カワグチマサミ)さん
13歳の子どもが一人。育児をしながらフリーランスで絵や漫画を描いている。子育てフリーランスに関する講演や、「川口真目の【子育てフリーランス】コミュニティ」の運営なども行っている。
インタビューした人
斎藤充博
3歳の子どもが一人。育児をしながらフリーランスで絵や漫画を描いたりしている。それだけで毎日いっぱいいっぱい。
子どもの夜泣きで仕事が進まない……

斎藤
うちの子って、3歳にしていまだに夜泣きをしているんです。日中眠すぎて、仕事がロクに進みません。フリーランスであることをいいことに、昼寝をしているんですが、それでも眠くて……。実は昨晩も盛大に夜泣きをしていまして……。今日のインタビューも頭が回るかどうか不安です。
川口
それは、もう本当に大変だと思います。斎藤さんの睡眠時間どのくらいなんでしょうか?
斎藤
5時間あるかないかくらいだと思います。夜中に起こされて朦朧としているので、正確なところはわかりませんが……。
我が家では「夫婦で1日おきに子どもと寝る」ということにしているんです。片方は子どもと寝て、もう片方は一人で寝られる。だから「1日おきに睡眠時間が5時間未満になってしまう」というのが悩みです。川口さんの場合はどうでしたか?
川口
夫が会社員でかなりの激務だったこともあり、夫婦で寝室は別にしていて、基本的に私が子どもの面倒を見ていました。睡眠時間が足りない分は昼寝しておぎなう。私が疲れ果てて気絶してるみたいになったときに、夫が手伝ってくれる、みたいな感じでした。
斎藤
なるほど……。それも大変ですね。
川口
ただ、うちの場合は夜泣きがあった期間がそこまで長くなかったんです。生まれて半年くらいだったかな。声もすごく小さくて、夜泣きですごく苦しんだという思い出もありませんでした。
斎藤
それはうらやましいです! やっぱり子育ての状況って人それぞれですね。
川口
ただ、夜泣きが少なかったのも、善し悪しではあると思うんですよね。うちの子は、小さい頃に自分で排便ができなくて、座薬を使っていたんです。
医師に相談してみたら「泣かないから腹筋が付いていなくて、排便ができないのでは」って言われました。だから、むしろ泣かせてほしいと。このあたりの対応は医師によっていろいろあると思いますが。うちの場合はむしろ泣くようにしてもらったら、だんだんと自分で排便できるようになってきました。
斎藤
僕はいま夜泣きで苦しんでいますが、それによって何か別の課題が解決しているかもしれない、ってわけですね。……いま思い出したんですが、うちの子は2歳半くらいには腹筋運動ができていたんです。うちの子、おれたち夫婦の睡眠時間を腹筋に変えていたのかもしれない……(笑)。
川口
私の子育てフリーランスコミュニティにも、夜泣きで苦しんでいるって声はよく寄せられています。6時間くらいは寝られないと、人間って本当につらいじゃないですか。6時間寝られない間は、仕事をある程度セーブする必要があるのかな、という話をよくしています。そんなに焦らない方がいい。
斎藤
やはり、そうなるんですね。がんばらなくちゃいけない、という気がしていましたが、仕事が進まないのも仕方がないですよね。ある程度の割り切りも必要なもかもしれません。

ネットの情報は目安と考えよう
斎藤
うちの子の夜泣きが始まったのは、生後8か月くらいのときです。つらいからネットで「夜泣き いつ 終わる」みたいに検索するんです。すると「1歳くらいで終わります」って書いてあるんですね。
じゃあ、「あと4か月くらいで終わるのかな、がんばろう」って夫婦で言っていたら、1歳になっても全然終わらない。
もうちょっと調べてみると1歳半くらいまで続いたって人も多いみたいなので、またそれまでがんばろうと思っていたら……。それでも全然終わらない。うちの場合は夜泣きのピークは2歳くらいでした。
川口
ネットは私も見るんですけど、あくまでも「目安」と思った方がいいと思うようになりました。こういうのは迷ったら専門家に直接聞くのがいいと思っています。うちの子はなかなか歩かなくて。1歳半になってもずっとハイハイをしていたんです。
斎藤
心配にはなりますよね。
川口
心配で専門家に相談に行ったら「いいじゃん、足腰強くなるし。歩くときもあるんでしょ?」くらいの感じだったんです。
そっか、って思いましたね。ネットを見るとハイハイしすぎはダメみたいな情報ばっかりが目に付いていましたけど、専門家から見るとそんなもんなんだって。
子育てしている人の話を聞くと、家の中でお母さんだけで悩んで行き詰まっちゃっている人って多いみたいなんです。
斎藤さんの場合は、夫婦で一緒に悩まれていますが、それでもやっぱり行き詰まることもあると思います。だから可能な限り、専門家だったり、経験豊富な人のところに行くといいですね。

子どもの世話で仕事が進まないときの過ごし方
斎藤
夜泣きに限らず、子どもの世話が大変で仕事が進まないときってあると思います。そんなときに川口さんはどうされていました?
川口
締め切りが厳しくて報酬が発生するような仕事は少なめにしていました。前向きに諦めていたんです。そのかわりにやっていたのは、ポートフォリオを作ったり Web サイトを作ったり、名刺作ったりといった、フリーランスとしての土台作りです。
自己分析して、「子育てが忙しくなくなったらどの企業に営業に行こうかな」なんてことも考えていました。こういうのなら無理せずに自分のペースでできますよね。
斎藤
なるほど。そういったことは、仕事がいっぱい発生してるとむしろできませんからね。僕もポートフォリオはあるんですが、この機会に整理しておいた方がいいかもしれない……。

GENSEKIマガジン編集部より
ポートフォリオ作成にはぜひGENSEKIをご利用ください!
川口
それから、私は当時流行っていたアメーバブログで、漫画イラストと文章を書く練習をしていました。それが半年後ぐらいに編集者の目に止まって、出版の話を声かけてもらえました。もしも、声がかからなかったとしても、発信することはムダにならないと思うんです。
斎藤さんはもうやられていますが、育児コミックエッセイを描くのっていいですよね。育児ってネタがいっぱいあるので。子育てでつらいことがあっても、コミックエッセイで描いたらおもしろいじゃないですか。
※斎藤の育児コミックエッセイはこちら
斎藤
それは本当にそうですよね。絶対に描いてやろう、というのがあって。私の子どもは食べものをおもちゃにしていて。口の中で咀嚼したものを出して、床にたたきつける、ということがあったんですよ。気持ち悪いからすぐに拭いたら、今度は僕の後頭部に向かってそれを叩きつけるという……。
川口
完全な4コマ漫画じゃないですか(笑)。漫画にしないとやってられませんよ。
斎藤
そう、漫画にしないとやってられない。つらいことの中に、「客観的に見たらおもしろいな」って視点が一瞬だけでも出てくるの、救いになるかもしれません。
子育ては不確実なことばかり
川口
うちの子どもは小学校4年生になったときに、学校に行けなくなってしまったんです。いわゆる不登校ですね。その対応はすごく大変でした。
斎藤
小学校4年生というと、だんだん手がかからなくなってきて、子育てフリーランス的には仕事をがんばっていこうと思う時期ですよね。一般的には。
私の子はまだ 3 歳になったばっかで、まだ不登校がどうとかいうタイミングではないんですが……。今後そういう思い通りにいかないこともいっぱい出てくるかもしれないわけですよね。
川口
そうなんです。私は育児はどうにもならないことを学ぶことなんだなって思うようになりました。子どもの不登校については、本当に大変でした。カウンセリングに通ったり、学校とやりとりをしたり、フリースクールに行ったり。親子でメンタルも落ち込みましたが、2年くらいかけて回復しました。
斎藤
2年ですか。
川口
息子も、自分で学校とフリースクールに行くことを決めて、私も今度こそここから仕事をがんばろうと思っていたんですけど……。今度は40歳になったこともあってか、自分の体調がガクンと崩れてしまったんですよ。
斎藤
仕事が進まなくなる原因は、子育てだけではないという……。
川口
私もずっとフリーランスとして走り抜けてきた時期がずっとあったので、今度はいたわる時なのかなって思ったんです。夫は会社員だし、そこまで必死になって働く必要もないかもしれない。子育てとか、不登校とか。そういう時は逆にセーブできるのもフリーランスの醍醐味だから。
斎藤
そうかもしれないですよね。会社員だったら給料は定額ですから、給料に見合った仕事を続けなくちゃいけない。フリーランスだったら、もう収入減らしてもいいやって思えるときは減らせる。また増やそうとすれば増やすこともできるし。それはそれで大変ではありますが。
川口
稼いで休む。休んだらまた稼ぐとか、ね。自由だなあっていう。不安はありますけどね。

子育ての悩みってひとそれぞれです。川口さんが提示してくれたことが必ずしもベストな解決にならない人もいるでしょう。でも、僕はちょっとラクにはなりました。話してみてよかったです……!
子育てフリーランスの相談は続きます。次回のトピックは「在宅でイラストを描いていると、家事をやることになってしまう……」です。
第1回 子どもの夜泣きで仕事が進まないとき、どうすればいい?
第2回 在宅でイラストを描いていると家事をやることになってしまう……
第3回 子育てをしながら「営業活動」ってできるの?
お話を聞いた人
川口真目
X:@kawaguchi_game
note:川口真目(Masami Kawaguchi)
『子育てしながらフリーランス』(左右社)
子育てをしながらどうやってフリーランスとして活動しているかを、赤裸々な体験談を踏まえて書いた一冊。
『マンガでカンタン! デザインの基本は7日間でわかります。』(gakken)
デザインのコツを超簡単にサクッと抑えたい! という想いから作られたデザイン漫画本。
『みんなの自己肯定感を高める 子育て言い換え事典』(KADOKAWA)教育家の石田勝紀先生に聞いた子どもへの声掛けの本。息子が不登校のとき何度も読み返しました。
@kawaguchi_game
X(Twitter)で、子育てフリーランスや不登校について発信しています。
企画・取材・執筆:斎藤充博
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