GENSEKIマガジン

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光の繊細さと影の深淵をまとう ー イラストレーター・ゆいあい

京都在住、嵯峨美術大学デザイン科卒。フリーランスのイラストレーター・ゆいあい氏。

光と影の表現を得意とし、CDジャケットからMVイラストまで広く手がけている。
繊細な美しさの中にどこか心臓を握られるような儚い影を感じるゆいあい氏のイラスト。

今回はインタビューにて、「光と影の表現」に込められた想いや作品作り、ゆいあい氏の知られざる素顔までじっくりとお伺いした。

光と影で表現する世界

GENSEKI1月コンテスト「虎」優秀賞『虎影』

 

ーー1月のコンテスト大賞「虎」のイラストについて、どういうコンセプトで制作しましたか?

ゆいあい:年賀状として年明けに描いたイラストで、今年干支が寅年なので虎の絵を描こうと思って描きました。
上手な虎の絵を描くという事だと技術の勝負になってしまうので…自分なりに虎をどうやって表せるかなって考えた時に、光と影の表現が好きなので、それで虎を表そうと思ってこのイラストになりました。

ーーすごいですよね、影の部分が虎になっているっていう。このアイデアはどこから着想を得たんですか?

ゆいあい:割とスムーズに最初からこの形を思いついていました。黄色いオレンジの着物を着た人に、影で虎の縞模様を作ろうって考えていて。
最初は畳の上で寝転がってる女性の上に、障子の影を使って縞模様を落とそうかなと思ってたんですけれど、寝転がっている着物の服って難しくて。資料とか全然なくって変になってしまうなということでこの形になりました。

ーーTwitterで拝見したんですけど、こちらの絵ご自身が被写体になってるんですか?

ゆいあい:はい、成人式の前撮りの時の写真を元にして描いています。この角度で障子の前で写真を撮りました。

ーー制作時間を教えてください。

ゆいあい:けっこう早くて…6〜7時間で描きましたね。
建物などの人工物とは違って、葉っぱとか自然物って形があまり決まっていないので、自分の都合のいいように描けて描きやすいんです。

ーーGENSEKIのコンテストついてどういった印象をお持ちですか?

ゆいあい:すごく気軽に応募できますね。過去作品や既出作品でもOK というところと、著作権も作者に帰属するという点が一番決定的な違いかなと思います。 
毎月のコンテストも季節柄に沿ってるので、そのコンテスト用にわざわざ描かなくってもすでに描いてたりする方も多いと思うんです。
それで「じゃあコンテストに応募してみようかな」っていうのができるのはいいなと思いました 。毎月開催されていらっしゃるので、いつでも自分の腕試しができるのも良い点だと思います。

音楽から得るインスピレーション

『【MV】actor / 雨ト熱_イラスト』

 

ーー絵を描き始めたきっかけっていうのはどういうものだったんでしょうか?

ゆいあい:小さい頃から絵を描くのが好きでした。本当に物心ついた頃にはチラシの裏とかにクーピーとかで描いてましたね。親に褒めてもらうこととかも多くて、 それが嬉しくって描き続けてたことが今に繋がっていますね。

ーー絵の勉強はされてきたりとかは?

ゆいあい:一応美大を卒業しています 。でも、大学では絵の上達っていうよりかはロジック的な部分を勉強しました。例えば「人の目線は左から下に動く」とか、「モチーフの対象の見つけ方」とかそういう知識を学びました。

ーー今の作風について意識していることやこだわりなどはありますか?

ゆいあい:光の表現が好きで光をたくさん描くんですけれど、自分がそこまで明るい人間ではないので…(笑)
光を魅力的に描けば描くほど影の部分がくっきりはっきり浮かび上がりますよね。
結構そういう意味でも光が差してる絵をよく描いたりしてますね。

ーーイラストのモチーフは何かを参考にされているのか、それとも思いついたものを描いていますか?

ゆいあい:音楽が好きで、曲を聴きながら「この曲をモチーフにした絵描こう」とか、「この歌詞の部分を描こう」とかが多いです。

ーーなるほど。音楽からインスピレーションを得て描かれているという感じですね。

ゆいあい:そうですね。それこそご依頼でボカロPさんから曲の絵を描かせていただく時は、実際にその曲を聞いてそこから浮かんだものを描いてます。

ーー普段お使いになられている機材や画材はどういうものを使っていますか?

ゆいあい:iPadとCLIP STUDIOというソフトを使って描いてます。機能が多くて、逆に画面がごちゃついてて苦手って方もいらっしゃるんですけど私は色々使いたい派です。3Dモデルでポーズが結構入っているので、難しいポーズとか自分が出来ないポーズとかは頼っていますね。

ーー尊敬しているイラストレーターさんや画家さんなどいらっしゃいますか?

ゆいあい:イラストレーターさんでいえば、昔から好きで尊敬しているのは中村佑介さんです。あとはTwitterでよく活躍されてる凪さんと、tamimoonさんが大好きです。

ネガティブを昇華させる作品づくり

『卒業制作 したたかに生きるためのアクセサリー(後悔)』

 

ーー今まで色んな仕事をされてきたと思うんですけど、一番思い出に残っている物とかありますか?

ゆいあい:お仕事ではないんですけど、卒業制作で作った三枚のイラストが一番印象に残ってます。卒業制作のテーマで「したたかに生きるためのアクセサリー」っていうテーマだったんですけれど…すごいネガティブな絵なんですよ、実は。
タイトルが「後悔」「辛酸」「復讐心」なんです。 

ーーなかなかパンチのあるテーマですね…!

ゆいあい:そうですよね(笑)過去にあった嫌なこととか嫌な出来事とかばかり考えると感情に飲み込まれてしまいそうになる時もあるんですけど、消そうと思って消えるものでもないので。
じゃあいっそ形にして身にまとうことで昇華しよう、といったコンセプトで作った作品です。

『卒業制作 したたかに生きるためのアクセサリー(左;辛酸、右:復讐心)』

 

ーーイラストレーターに転身したのはどういう時だったんでしょうか?

ゆいあい:2020年の5月にTwitterに投稿したイラストに一万いいねいただいてからご依頼をいただくことが増えたんです。その時私もまだ学生でしたし、傍らという感じで少しずつご依頼を受けさせて頂いていて。会社に入ってからもお受けしてたんですけれども、ちょっとバランスが取れなくなってきてイラストレーター専業に転身しました。

ーー自分の絵がすごい上達したなと思うタイミングはありましたか?

ゆいあい:それこそ先ほど言った2020年の5月ぐらいに初めてイラストで一万超えのいいねを頂いてから、ガラッと変わりましたね。
ある曲を題材にした絵なんですけども…2014年の曲で、米津玄師さんの「メランコリーキッチン」ですね。米津玄師さんの曲がすごく好きで。ずっと聞いていました。

『メランコリーキッチン』

ーーアイデアが出てこなくて詰まってしまった時はどうされていますか?

ゆいあい:絵から離れてYouTubeで笑えるゲーム実況を見たりとかニコニコ動画を漁ったり、時間決めてスマホゲームしたりとか。あとTwitterとかで素敵な作品が目に入ったりしたらいいなと思って創作意欲につながったりもします。

ーー絵を描くこと以外の趣味はございますか?

ゆいあい:昔から絵描くのに並んでカメラで写真撮るのが好きで、それこそゆいあいのアカウントも初めは写真アカウントとして活動してたんです。カメラで撮る時にもいい感じに光が差してるところを探しながら撮ったりしたので、その点ではだいぶ絵に生かされてるなとは思います。カメラ持ってなかったら今の絵はないですね。ルーツかもしれないです。

誰かの心に差す光

『最後は会ってさよならをしよう』

 

ーーイラストレータをやっていて一番幸せだなと思うときはどういう時ですか?

ゆいあい:自分の絵が誰かの心にとまったり、影響を与えたり、何かしらのきっかけになった時が、見てくれている人に届いたんだなって気持ちになりますね。

ーーTwitterとかでのコメントが活力になっていますか?

ゆいあい:なりますね。直接言っていただける機会ってなかなかないので。卒業制作の時に頂いたコメントは、全部スクリーンショットして残してあります。
SNSで見る時って画面が小さくて1秒2秒で流し見してしまうことが多いと思うんです。その中でゆっくり見てくださった方がいるってだけで報われますね。

ーー逆に辛いなと思う時はありますか?

ゆいあい:シンプルに締め切りです(笑)
一応余裕を持って設定はしてるんですけど、修正があったりとか自分の中でもうちょっとよくできるなとか思うところがあるとだんだん追い詰められていきますね(笑)

ーーご依頼はTwitter経由ですか?

ゆいあい:そうですね。TwitterのDMが一番多いですね。

ーー個人よりも法人からのご依頼が多く来るようになりましたか?

ゆいあい:法人は最近で、ずっと個人の方が多い感じです。それこそ小さいものだとアイコンから、個人で作ってる曲のイラストを描いて欲しいとか、そういうものが多いですね。

ーー今後やっていきたいお仕事はありますか?

ゆいあい:まずどこでも言うんですけれども、私神木隆之介さんが大好きなので、神木さんに関する仕事ならなんでもします!

ーーGENSEKIでも神木さんに繋がるお仕事をご紹介できるように、頑張りますね!

ゆいあい:ぜひお願いします(笑)

 

ゆいあい

フリーランスイラストレーター|愛猫はニア|いつか神木隆之介さんとお仕事をする|