「イラストレーターとして仕事をしていくのは決して難しいことではない」サタケシュンスケが語る良いイラストレーター像【イラストレーター7つのスキル】第8回

イラストを仕事にしようとしていているけど、うまくいかない。そんなときには、自分のイラストがよくないからだろうか、と悩んでしまいますよね。しかし、イラスト以外のところに原因があるのかもしれません。
イラストレーターのサタケシュンスケさんは「イラストレーターにはイラストスキル以外に7つのスキルが必要」とおっしゃっています。
・ 分析スキル
・ プロモーションスキル
・ コミュニケーションスキル
・ ヒアリングスキル
・ 提案スキル ☆有料記事
・ 交渉スキル
・ リスク対応スキル ☆有料記事
・ 良いイラストレーターとは
この連載では、それぞれのスキルはどんなものなのか、どうやったら身につくのかをサタケシュンスケさんにおうかがいしてきました。今回はここまでのインタビューをふりかえった上で「よいイラストレーター像」を語ってもらいました。
お話を聞いた人
サタケシュンスケ(X:@satakeshunsuke/Web)
イラストレーター。広告制作会社勤務のグラフィックデザイナーを経て2007年に独立。よく同業者から相談を持ちかけられる。著書に『イラストレーターのためのお金の話』『配色アイデア手帖 色とイラスト かわいい世界観を作るヒントが詰まった本』など。
仕事をもらう前からできるのが市場分析
――これまでお話しいただいた7つのスキルの中で、駆け出しのイラストレーターが最初に身に着けた方が良いスキルはどれだと思いますか?
サタケ
やっぱり分析スキルが一番かなと思います。市場分析は唯一、仕事をいただく前から意識できることであり、仕事を得るために必要なことですから。僕自身もそうでしたが、世の中にどんな絵の仕事があるかを知らないことには、どう動いたらいいかもわからない。まずはちゃんとまわりを見るところからかなと思います。
「何でも描けます」だと、使い勝手のいいイラストレーターにはなれるかもしれませんが、「あなたじゃないとダメです」という存在にはなかなかなれません。自分のやりたい仕事、得意なことをどう見せられるかが大事かなと思っています。
――「いろいろ描けるがゆえに自分の売りがわからない」という人がいます。サタケさんはどのようにして、自分の売りを見つけましたか?
サタケ
僕は教育系、育児系のお仕事をいただくことが多いんですが、そこはイラストレーターとしては割と飽和状態なんですね。イラストの仕事も多いけど、参入してくる人も非常に多い。

その中で自分を選んでもらうために、お子さんにとっての「かわいい」だけじゃなく大人にも好まれるバランスを研究しました。子ども向けと言いながらも、実際に商品を見るのは親子一緒のことが多いですし、買う・買わないの判断は親御さんがするものです。
「わが子に買い与えたいかどうか」にプラスして、大人の感覚でも「この絵が家の中にあったらいいな」と思える。そんなふうに、媚びないかわいさを追求した結果、今の僕の絵があります。
欲しい仕事を呼び込む方法
――フリーランスが長くなってくると、今のスキルでできることの切り売りになっていって、成長が実感できなくなりがちです。サタケさんは、どんなときに成長を実感しますか?
サタケ
やりたいことが実行できたときに、「前に進めたな」と感じますね。僕はやりたい仕事をなるべく口に出すようにしていて、「水族館の仕事がしたい」「絵本を描きたい」と言っていたら、本当にかなったんです。
――素晴らしいですね! やりたい仕事を呼び込むには、やっぱり発信していくことが大事なのでしょうか?
サタケ
そうですね。頼む方もどうせなら「やりたい」と思っている人にお願いしたいはずですし、発信してあると、イラストレーターを探す段階で思い出してもらいやすくなります。やっぱり手を挙げている人に仕事は行くものだと思うので、SNSでもいろいろ言ってみると良いと思います。言うだけタダだし、ものすごく有効な営業方法だと思いますよ。
――つい、恥ずかしさを感じてしまうんですよね。「あいつあれやりたいって言ってたけど、やってないじゃん」などと思われるんじゃないかなと……。
サタケ
気持ちはわかります。でもまわりは自分が思うほど、「あの人はあんなことを言っていた」なんて覚えていないものです。あとは、Xでときどき「こういう仕事がしたい」というハッシュタグが流行りますよね。もし突然発信するのが恥ずかしければ、ああいう波に乗ってみるのも良いかもしれません。
良いイラストレーターは、独自の視点を持っている
――サタケさんが思う、「良いイラストレーター」の特徴は何でしょうか?
サタケ
深い質問ですね。その人ならではの視点を持っていることだと思います。たとえば「パンダの絵を描いてください」と言われたときに、白と黒を使ってパンダが座っている姿などを正面から描いて、それでも「うまい絵」にはなります。でも、良いイラストレーターは、パンダらしさを一番表現できるポーズや角度、表情、動きを考えて描く。
絵は伝達ツールです。どの部分に着目して、どういう描き方をするともっとも届くのかを考えて描ける。そういう方は仕事もしっかりされていますし、周りからも信頼されている方が多いです。僕もうまい方の絵を観察して、その絵の良さの正体はどこにあるのか、どういう視点で描かれたのか、今でも学ぶようにしています。
――ありがとうございます。最後に、駆け出しのイラストレーターに激励の言葉をお願いします。
サタケ
イラストレーターとして仕事をしていくのは、決して難しいことではありません。みなさんが思っているほど、才能や素質だけでやっている方は多くないからです。大事なのは需要と供給のバランス。みなさんの描く絵が必要とされている場所やジャンルが必ずあって、それさえ見極めれば、「仕事が何もない」という状況からはすぐに抜け出せると思います。

僕も最初は食べていけない状態でしたが、自分なりに分析をしたりして今に至ります。絵を描くのが好きなら、ぜひやめずに描き続けていただきたいです。一緒に頑張りましょう。
・分析スキル
・プロモーションスキル
・コミュニケーションスキル
・ヒアリングスキル
・提案スキル ☆有料記事
・交渉スキル
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・良いイラストレーターとは(この記事)
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聞き手・編集
斎藤充博(X:@3216/Web/GENSEKI)
構成
ヒガキユウカ(X:@hi_ko1208)
イラスト
華緒はな/お花(X:@hanao_hanao_twi/GENSEKI)
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