【イラスト添削#14】同系色でまとめるイラストの描き方。色幅と質感描写でメリハリをつけよう!

こんにちは、 GENSEKIマガジン編集部です。ご好評いただいているgreen322先生の添削シリーズ、第14回をお送りします!
今回も『green322先生にイラストを添削してほしい人募集!』でご応募いただいた作品を、実際に先生に添削していただきました。
- 同系色でイラストをまとめつつメリハリをつける方法
- メインを魅力的に見せる質感の描き分け
- 目的にあわせた仕上げの演出
- イラスト制作のインプットとアウトプットのコツ
添削担当
green322(X:@green322green)
Xで14万人以上のフォロワーを持つ人気イラストレーター。美術系大学卒業後中学校の美術教諭として勤務、退職後イラスト制作会社でアートディレクターとして作品の品質管理を担当。その後ゲーム開発会社でのイラストレーター勤務を経て、現在フリーのイラストレーターとして活動中。
添削イラスト応募者
ハルキ(X:@haruki_358/GENSEKI)
創作メインに活動しています。
ハルキさんのお悩み
今回の添削対象は、ハルキさんのこちらのイラストです。

ー今回のイラストで自分が思い通りにいかなかった点や、特に気になっていてフィードバックが欲しい点を教えてください。
イラストを同系色でまとめたいとき、イラストの印象がぼやけないようにするためにはどうしたらいいでしょうか。
個人的にビビッドな色を使うのが苦手で、くすんだ色を好んで使っています。明度や彩度の違いを意識して描くようにはしていますが、どうしたら目を引く作品になるでしょうか?
ー普段、イラストを作成する上で困っていることや、悩んでいることはありますか?
イラスト制作のインプットとアウトプットがうまくできていない気がします。インプットでは「自分の知っている範囲でしか資料検索ができない」「物の性質を理解できていない」、アウトプットでは「雰囲気だけなぞって満足してしまう」のが悩みです。
ー目指している絵柄や作家さんはいますか?
旧都なぎ先生(X:@QTONAGI)です。
【添削ポイント】質感の描き分けと色の変化でイラストに幅を出そう
ハルキさん、このたびは作品をご応募いただきありがとうございます!
今回のイラストですが、作家性やオリジナリティを感じて、すてきだと思いました……! 説明がなくても物語を感じることができるイラストは、私も大好きです。作家性をできる限り大事にしながら、私なりのクオリティの上げ方をお伝えできればと思います。
今回はお悩みも踏まえて、構図や身体バランスを整えながら「質感の出し方」「同系色でイラストをまとめるコツ」「イラストのインプットとアウトプット」「仕上げの効果のつけ方」の4点を中心に添削いたしました。
詳しく見ていきましょう。
色のずらしやコントラストを工夫して、色幅を増やすことで豪華に


<構図と身体バランス>
まず、基本的な構図と身体のバランスを整えましょう。左右対称に近い構図ですが、メインキャラが中心からややずれているのが気になりました。身体の軸が中心に来るようにキャラを右にずらし、少し拡大して高さのバランスも取りました。
首の傾きが少し強めに感じましたので、頭を起こし、身体も頭にあわせた自然なひねりを加えます。ポーズが自然かどうかは、どんなポーズを描くか決まったら自分で同じポーズをとったり写真に撮るなどして、確かめるくせをつけるといいと思います。
<質感の出し方>
「絵の印象がぼやけないようにしたい」ということですが、今回のイラストは質感表現が全体的に似ていることがぼやけた印象に繋がっています。「質感」はハイライトの入れ方と描き込みでおおむね解決できます。全体的に描き込みを増やして、解決を目指しましょう。
まず、リムライト(半逆行、被写体の斜め後ろからさす光)をさらに強く当てました。これは夕日を利用してキャラのシルエットにメリハリを出すためです。
服のような柔らかい素材はシワや凹みがたくさんできますので、資料を集めて質感をよく観察すれば描き込みが増やせます。ただし、布は光を反射する力が弱いので、強いハイライトはあまり入れないのがポイントです。

逆に、服以外の硬い部分は面の変わり目にギラっとハイライトを入れることで、硬質さや表面の光沢が表現できます。手すりの描き込みを意図的に増やし、キャラの持つ柔らかい質感との違いを強調しましょう。横の直線を強調し、太さも加えました。面の変わり目を意識してメリハリをつけることで、パキッとした印象にできます。
<同系色でイラストをまとめるコツ>
同系色でイラスト全体をまとめたい場合、同系色の中で色をもっとずらして「色幅」を作りましょう。黄色系でまとめられていますが、「髪とスカートの内側」「羽とスカート」「背景とシャツ」の色が似ているため、色数が少なく見えてしまっています。

そのため「色相・彩度・明度」「明るさ・コントラスト」などの調整レイヤーも使いながら、背景やハイライトに赤みを足したり、コントラストや彩度の強弱をつけました。違和感の出ない範囲で色をずらして、全体のバランスを取っています。
こうすることで一番鮮やかな頭部にさらに視線を誘導し、イラスト全体も豪華に感じさせることができます。


また、「差し色」についても触れておきます。
色味が違うシャボン玉が差し色として機能していますが、単調な見え方になっていて色も目立ちにくいため、少し物足りなさを感じます。一番手前のシャボン玉を大きくして色を強め、もっと変化を出しましょう。

ただしシャボン玉はサブ要素のため、印象をはっきりさせた後でぼかして、メインより目が行きすぎないようにします。差し色は少しあればいいので、他のシャボン玉は小さくしたりぼかして存在感を弱めています。
同時に背景の波や鳥などもぼかしたり配置や大きさを変え、全体のバランスも調整します。

▼上記を添削したものがこちら!▼


【追加提案】メインに視線を集めるテクニック。使うかどうかは絵のコンセプトにあわせて考えよう


<イラストの仕上げ効果のつけ方>
仕上げの効果についてです。太陽光にレンズフレアを入れ、髪の間から漏れる光も加えて神々しさを足しました。下からの環境光も入れています。
反対に、写真の「ビネット効果」のように画面端の明度と彩度を下げて、メインへの注目度をさらに強めます。キラキラとした細かいパーティクルも散りばめて、光の拡散をさらに表現しました。

ただし、この演出はあくまで「キャラに視線を集中させる」「情報量を増やす」ことに重きを置いたものです。もともとのイラストの狙いがそれとは違った場合、目標から外れてしまう可能性もあります。
・効果ありの場合:神々しさやキャラにより目が行くように
それぞれにこういった機能がありますので、使うかどうかはあくまでお好みで。イラストのコンセプトにあう方を採用していただければと思います。

添削完了!


イラスト制作のインプットとアウトプットのコツ
冒頭にお話しいただいた、お悩みのインプットとアウトプットについてです。
インプットでは「自分の知っている範囲でしか資料検索ができない」「物の性質を理解できていない」、アウトプットでは「雰囲気だけなぞって満足してしまう」のが悩みです。
イラスト制作の場合、アウトプットから始めるのも手だと思います。シチュエーション重視のイラストを制作するとき、想像だけで場面を構築するのはかなり難易度が高いことです。
私の場合は、頭の中にあるイメージを最初に文章や簡単なラフスケッチでアウトプットしています。そこで必要な要素を洗い出し、それにあわせて資料を集めます。最初にある程度の目途をつけることで、描きたい絵に必要なインプットがかなり楽になります。
今はネット検索や電子書籍が充実していて、ある程度の資料はデータで用意できてしまいます。もしPCで作業されているのであれば、モニターを一つ増設して資料の表示用にしてしまうのも良いでしょう。私は常に資料を見ながら描いているので、どれだけあっても場所が足りず、結果的にモニター4枚になってしまいました(笑)。
紙媒体の資料も使いますが、データの方が圧倒的に便利です。資料を常に表示しておけば嫌でも目に入るので、インプットが苦手な方にはお勧めです。
【総評】あと一息! 描き込みに挑戦してクオリティアップを目指そう
完成したイラストが、雰囲気だけになってしまうとお悩みでしたが、それは「雰囲気を出すことができる長所」と、とらえてみてはいかがでしょうか。雰囲気を出せるのはイメージを具現化できつつあるからです。詰めが甘いという意味もありますが、細かいところを詰めていけば完成度は必ず上がります。添削前のイラストを「仕上げの第一段階」ととらえ、ここから描き込んでいこう! という気持ちで描いてみてください。
ハルキさんはすてきな世界観をお持ちだと思います。アイデア出しの段階からディテールにこだわっていくことが、今後さらなるイラストの質の向上に繋がるでしょう。
応援しております。お互いがんばりましょう!
添削イラスト募集中!
この連載では、green322先生にイラストの添削をしてほしい人をまだまだ募集しています!
元のイラストの良さはそのまま活かして、さらにクオリティを上げるポイントが満載の、学びの多い添削です! 皆さまからのご応募お待ちしております✨
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執筆
kao(X:@kaosketch/Web/GENSEKI)
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