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「バズるだけがSNSじゃない」サタケシュンスケが語るプロモーションスキル【イラストレーター7つのスキル】第2回

 

イラストを仕事にしようとしていているけど、うまくいかない。そんなときには、自分のイラストがよくないからだろうか、と悩んでしまいますよね。しかし、イラスト以外のところに原因があるのかもしれません。

イラストレーターのサタケシュンスケさんは「イラストレーターにはイラストスキル以外に7つのスキルが必要」とおっしゃっています。

分析スキル
・プロモーションスキル
・コミュニケーションスキル
・ヒアリングスキル
・提案スキル ☆有料記事
・交渉スキル
・リスク対応スキル ☆有料記事
・良いイラストレーターとは

この連載では、それぞれのスキルはどんなものなのか、どうやったら身につくのかをサタケシュンスケさんにおうかがいします。今回は「プロモーションスキル」です。

お話を聞いた人サタケシュンスケ(X:@satakeshunsukeWeb
イラストレーター。広告制作会社勤務のグラフィックデザイナーを経て2007年に独立。よく同業者から相談を持ちかけられる。著書に『イラストレーターのためのお金の話』『配色アイデア手帖 色とイラスト かわいい世界観を作るヒントが詰まった本』など。

プロモーションは泥臭くていい

――イラストレーターなら、自分の作品をなるべくいろいろな人に見てもらいたいという気持ちがありますよね。今回はそんなときに必要になる、プロモーションスキルについてうかがいたいと思います。


サタケ

イラストのプロモーションと聞いて、皆さんが最初に思い浮かぶのはSNSでバズることかなと思います。ですが、毎日たくさんの作品が流れるタイムラインの中で、自分の絵だけ注目してもらうのはなかなか難しい。

僕は完成した絵を上げるだけではなく、完成までのプロセスや、自分がなぜこの絵を描いたかというストーリーもSNSに投稿しています。たとえば下描きの時点で、「こういう絵を描き始めます」とまず投稿する。その後、進捗を少しずつアップしていく。最終的に完成するまでの、1つのストーリーを見てもらうイメージです。

絵そのものだけじゃなくて、「なぜこの絵を描こうと思ったか」という気持ちが載った方が、見る人に届くんです。言葉とイラストとの組み合わせ次第で、反応が大きく変わります。絵だけ出しても皆さんはどこをどういう目線で見たらいいかわからないので、そこを誘導してあげるような形ですね。


――作品に情報がくっついていると野暮かなと思っていたんですが、見る人にとっては親切な導線になるんですね。


サタケ

あとは恥ずかしがらずに、見てほしいときは「見てください」と大きな声で言うことも大事かなと。まっすぐな気持ちって、人の心を動かしやすいんですよ。「プロモーション」って言葉ではちょっとかっこいいイメージありますけど、もっと泥臭いものでいいかなと僕は思っています。

 

SNSが伸びている=売れっ子とは限らない

――プロモーションのためにSNSをやっていると、フォロワーやリアクションなどの数が気になりがちです。サタケさんはどのようなマインドで運用していますか?


サタケ

なんでも数字で表れてしまうのが、うれしくもあり残酷な部分でもありますよね。SNSではみんなが同じ土俵に立っているように見えるかもしれませんが、アカウントを作ってこれからがんばっていく人と、10年前からやっている人ではスタートラインも進んでいる距離も全く違いますから比べようがありません。

それに、フォロワーやいいねの数が多いから仕事も多い、というわけではないんです。僕はクライアントワークを生業としていますので、一つの投稿のいいねがいくら伸びても、仕事につながらなければ商売としては意味がありません。

そして、5年後、10年後も同じSNSが今のとおりあるとは限らないので、あまり執着しない方が良いとは思いますね。


――おっしゃる通り、最近はXの様子がだいぶ変わってきて、別のSNSへ引っ越すイラストレーターも多いですもんね。


サタケ

SNSのポジティブな面を言うと、いろんな人の絵を見る場としてはすごく有益です。人気がある人にはきちんとその理由があるので、そこを学ぶだけでも使い方としては十分だと思いますね。

 

SNS以外のプロモーション方法

サタケ
プロモーションの方法はSNSだけではありません。僕が駆け出しのころはそもそもSNSがなかったので、ポートフォリオを持って直接イラストエージェンシーに売り込みに行っていました。「この人に見てもらいたい」と思える人に出会えたら、1回フィードバックをもらって終わりにせず、また次の作品を見せに行く。これを大体半年に1回ペースで、2~3年は続けたと思います。

――すごいですね。今の時代でもその方法は使えるんでしょうか?


サタケ

もちろんです。いただいたアドバイスで成長できた所を見せると、向こうとしてもアドバイスのしがいがあるでしょうし、「また次も見たいな」と思ってくれるでしょう。そういうやりとりを重ねていくと信頼関係もできてきますし、実際に「一緒にやろうか」という話になったこともあります。成長した姿を見てもらうことが、一番のプロモーションになるんじゃないかと思いますね。


――何回も売り込みに行くのは、なかなか強い心が必要だと思うんですが……。


サタケ

もちろん、思ったような反応が得られないこともありますし、僕は「全然ダメだね」みたいなことを言われたこともあります。でも、そうしたコメントがあったから改善できた部分もあったので、ちゃんと見てもらえるのであれば厳しい意見も受け止める覚悟が必要です。

持ち込みは緊張するものですし、心が折れそうなときもありますが、それよりも「仕事を獲得したい」という思いの方が上回っていましたね。そもそもイラストレーターは、人に絵を見てもらうことが仕事。むしろ最初に厳しいことを言ってもらった方が、その後の成長の糧になると思います。

 

サタケシュンスケインタビュー連載「イラストレーター7つのスキル」

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聞き手・編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI

構成ヒガキユウカ(X:@hi_ko1208

イラスト華緒はな/お花(X:@hanao_hanao_twiGENSEKI