<登場人物>岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
漫画家デビューして12年。アラスカに住んでいたことがある。
今回、応募してくれた理由を教えてくれるかな?
現在、私は「なろう系」小説のコミカライズの連載をしています。この連載は長期になる予定で、恐らく3~4年くらいは続くはずです。「なろう系」は好きですし、私にとっては比較的安定した仕事です。自分の絵で漫画をヒットさせたい、という野心もあります。
ただ、コミカライズの案件は金銭的な条件が厳しく……。さらに、仕事が1本だけでは不安で、他にも収入の柱を作りたいと思っています。
なるほど! 以前はどんなことをやっていたのかな?
最初は、少女漫画でデビューし、その後はエッセイ漫画に転向しました。エッセイ漫画は4冊ほど出しています。その後、現在のコミカライズの仕事という流れです。自分で言うのもなんですが、結構いろんなことをやっています。器用貧乏というか……。
逆にすごいと思うな! もはや、この経験自体をまとめてほしいくらい! すると、業界歴もかなり長いってことだよね?
そうですね。デビューして12年位になります。
できることがたくさんありそう!
ちなみに、すでにエッセイ漫画で本を出している話があったけど、エッセイ漫画の新作をTwitterで出していくのはどう?
それは、すごくやりたいんですけど…。子どもがまだ小さくて、定期的にアップするために描き下ろす時間がないんです。
頭の中では「こんなネタを描きたいな」とか思っているんですが、時間に追われているうちにネタの鮮度も落ちてきて、結局お蔵入りということを繰り返しています……。
もしかしたら、これが一番の課題かもしれません。でも、結局のところ私がどうにかがんばるしかないですよね……。
子育て・仕事・家事を個人のがんばりで乗り切ろうとすると、絶対無理が出ちゃうよ。そんな話はたくさん聞いてきたから、それは回避した方がいいね。一緒にいい方法を考えていこう!
過去のリソースがあるなら、どんどん活用すべし!!
以前描いたエッセイ漫画は、どんな内容だったんだろう? 過去のリソースがあるなら、活用できるかもしれない。
私がアラスカに住んでいた時のことを描いたもので、日本にいるほとんどの人には身近ではないというか……共感しにくいかもしれません。
アラスカ……!? すごい! 行ったという話を聞かない場所だから、気になる人多そうだと思うな! 印象的なエピソードとかある?
朝、学校に行こうと玄関を開けたら、でっかい鹿がいたり、山の方に住んでいる友人の家にいったら、クマの糞がたくさん落ちてて「昨日、来てたみたい~(笑)」と当たり前のように話していたり……。
エピソードが強い! アラスカ在住の経験は絶対に活かしたほうが良いね。SNSを見ると「日本は息苦しい」といった発信をしている人も多い。そこで「そんなことアラスカと比べたらたいしたことないぜ!」みたいなパワフルさを出せると良さそう!
なるほど……。
世鳥さんはすごくよいリソースを持っているよ! これを流用すれば、一番の悩みである時間の問題を解決できるんじゃないかな?
どんなふうに流用すればいいでしょう?
例えば、過去のエッセイを小出しにしながら、その後日談を時々描き下ろしていく。エッセイは共感するからこそ、その後どうなったのかを読者は気にするからね!
後日談を描くことで、前段の内容が気になって、本を買うという人も現れるはず。現在の自分のブランディングと、既刊本の購入動機をつくることができるんだ。
それは、いい相乗効果になりそうですね……!
ここでいくつか注意しておきたいことがある。
まず、自分の漫画をSNSに流用していいか、出版社にちゃんと聞いておこう。
そして、Twitterアカウントを話題毎にわけるようにしよう。現在のコミカライズ・育児・エッセイの3つだと、情報量が多すぎると思うんだ。
最後に、初見さんを置いていかないように、「なんでアラスカにいたのか」という動線は必ず入れた方がいいね。もちろん、全部を漫画の中に入れるのではなくTwitterであれば「アラスカの話」という説明を毎回添えて投稿すると良いと思う。
細かいところまでありがとうございます!
なろう系のタイトルは良いSNS投稿に通じる
現在、なろう系のコミカライズの仕事がメインということだけど、そっちの方はどんな状況なのかな?
コミカライズは作画が不足しているようで、依頼はとても多いんです。
ただ、今は子どもが小さいので、これ以上請け負うのは難しいですね。なろう系のコミカライズは金銭的な条件が厳しいという話をしましたが、手間もかかって、資料を探すところから大変なんです。衣装とか、魔法のエフェクトとか……。
子どもが生まれる前は、コミカライズ以外の仕事もしていて、2~3作品ほど掛け持ちしていました。子どもが5~6歳になったら、もう少しいろいろなことをしてみようかなと考えているのですが……。
なるほど。であれば、仕事を増やすよりは、仕事の単価を増やすことを考えたほうが良さそうだね。世鳥さんだからこそお願いしたいと思わせるバリューを、お子さんが5~6歳になるまでに作ろう。
その一つの軸が、先程話したTwitterのエッセイ漫画アカウント。世鳥さんのような経験をしている人は少ないからね。アラスカの部分はどんどん出していこう!
実は今も、せめてもの抵抗でTwitterのプロフィールに「アラスカが好き」って書いてるんです(笑)。
ほんとだ! 逆にコミカライズしている作品のタイトルは入れていないんだね。
長すぎてプロフィール欄に入らないんです………。
確かに、なろう系ってタイトル長いよね……!
でもあの長いタイトルにはSNS投稿にもめちゃくちゃ活かせるノウハウが詰まっているんだ。
だって、なろう系のタイトルって見ただけで内容がわかるでしょ? SNSでもそれが大事なんだよね。わかっているから安心して楽しめる、ある程度のネタバレがポイントなんだよ。
な、なるほど……!
世鳥アスカさんの作戦
ここまでの話をまとめると、世鳥さんは引き続きコミカライズの仕事を中心にやっていく。そして、その合間に以前描いたエッセイ漫画や、その後日談などを出していく、ということになるね。
それなら、そこまで手をかけずにできそうです。
こうやってエッセイ漫画家としてのアカウントを育てていくんだ。そして育児に余裕ができた段階で、エッセイ漫画を描き下ろしたらどうだろう?
子どもが5~6歳くらいになったらできそうです。希望が見えてきました!
描き下ろしたエッセイ漫画は、Kindleインディーズで出版することをおすすめするよ!
この連載内でも何度かでてきている、Kindleインディーズは読者は0円で読めるのに作家には読まれたページ数に応じて報酬が入ってくるのでとってもおすすめな仕組みなんだ。
ユーザーに好まれるのは1冊あたり40ページくらいの作品だよ。
意外と短い……?
0円だからこそ、手軽さが求められるんだよね。読者に「もう少し読みたい」と思わせるくらいがちょうどいいよ!
確かに「0円だから読むかー」って気持ちですもんね。
さらに世鳥さんはコミカライズ本も出しているから、よりアドバンテージがある! Amazonには作家をフォローする機能があるから、エッセイきっかけでフォローしてもらえたらコミカライズに新刊のお知らせもより多くの人に届けられるんだ!
なるほど!!
では、本日のアドバイスをまとめるよ!
世鳥アスカさんへのアドバイスまとめ
- しばらくはコミカライズの仕事を中心にする
- できるだけ作業時間がかからない形で、昔描いた作品を活用しながらエッセイ漫画家としてのTwitterアカウントを育てる
- 描き下ろしのエッセイ漫画ができたらKindleインディーズで出してみる
これならやれそうな気がしてきました……!
ただ、今の世鳥さんにとって一番大事なのは今の仕事と育児だと思う! Kindleインディーズに話を聞いて育児エッセイ漫画の制作魂に火がついたかもしれないけど、最初の1年間はほぼ昔のエッセイをそのまま使うくらいの気持ちで挑もう!時間に追われると心にも体にも良くないからね!
ありがとうございました!
ぬこー様ちゃん先生の生徒を改めて募集します!
ご好評いただいているこちらの「教えて!ぬこー様ちゃん先生!」は、迷えるクリエイターの方にインタビューをして、ぬこー様ちゃんからアドバイスを送るという趣旨の連載記事です。
現在、ありがたいことにたくさんの方々からご応募いただいております! ただ、昨年の10月から募集を開始したこともあり、応募時から状況や目標が変わってしまっている方も多くいらっしゃるかと思います……。
そこで、新たな生徒は今年2023年4月以降に応募していただいた方の中からお声かけすることにいたしました。3月以前に応募していただいた方の中で「今でもやっぱり相談したい!」という方も、お手数ですが、改めてフォームからご応募をお願いいたします。
引き続き「教えて!ぬこー様ちゃん先生!」をどうぞよろしくお願いいたします!
▶▶【応募フォームはこちら】
※応募者全採用ではございませんので予めご了承ください。
執筆者と被験者
漫画
ぬこー様ちゃん (Twitter @nukosama)
岡山県出身の漫画家。
ブラック企業在籍中、有り金全部溶かしたことをきっかけに10数年ぶりに漫画を描き始める。
その流れで専門学校のイラスト科講師となり、それから漫画家となった。
代表作は「専門学校JK」「人見知り専門家庭教師坂もっちゃん」「ぬこー様ちゃん絵日記集」など。
被験者
世鳥アスカ (Twitter @aska_setori)
インタビュー記事
執筆
坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。