在宅でイラストを描いていると家事をやることになってしまう……子育てイラストレーターのお悩み相談

2025.3.20

こんにちは。子育てしながらフリーランスとしてイラストを描いたり、漫画家を描いたりしている斎藤充博です。

前回に引き続き、子育てフリーランスの先輩である漫画家・イラストレーターの川口真目さんにお悩みをぶつけています。全3回の連載です。

第1回 子どもの夜泣きで仕事が進まないとき、どうすればいい?
第2回 在宅でイラストを描いていると家事をやることになってしまう……
第3回 子育てをしながら「営業活動」ってできるの? 

お話を聞いた人

川口真目(カワグチマサミ)さん
13歳の子どもが一人。育児をしながらフリーランスで絵や漫画を描いている。子育てフリーランスに関する講演や、「川口真目の【子育てフリーランス】コミュニティ」の運営なども行っている。

インタビューした人

斎藤充博
3歳の子どもが一人。育児をしながらフリーランスで絵や漫画を描いたりしている。それだけで毎日いっぱいいっぱい。

在宅で仕事をしているとついつい家事をしてしまう

斎藤
僕はまだまだ悩んでいることがあって……。うちは夫婦共働きをしています。僕は在宅でイラストや漫画の仕事をしていて、妻は会社員として外で働いています。

斎藤
すると、在宅で仕事をしている方が家事たくさんをすることになってしまうことになりませんか? そうしていると、だんだんと家事ばかりやっていて、仕事の時間が削られてしまっているようになってきてしまって……。仕事がなんだかはかどらないんです。

川口
これはめっちゃわかります。自分だけに負担がかかっていないか、ということですよね。

斎藤
そうなんです。川口さんも在宅でお仕事していて、パートナーは会社員ですよね。このあたりどうでしょうか?

川口
私は家で働きながら、その合間に家事ができるのは、イラストレーターや漫画家などの在宅フリーランスの醍醐味だとも思うんです。夫婦共働きで、両方とも会社員だと、より家事が大変になりますよね。

斎藤
それは……たしかにそうですね。

川口
斎藤さんは大変だと思いますよ。
私も家事が好きじゃないし、すごく負担が重たかったときもあるんで、めっちゃわかります。だけど、家庭全体で見れば決して悪い状況でもないと思うんです。

斎藤
自分が家事負担が多くなっている気はするんですが、それによっていいこともあるわけですね。たしかに、仕事をしながら豚の角煮を作ったりとか、できますからね……。

共働き夫婦で家事の分担どうしてる?

斎藤
川口さんの家は家事分担をどうしていますか? ルールなどを作っているんですか?

川口
ルールは作っていないんです。きっちりとしたルールを作ると、そのルールを守るためにやることが増えてしまう気がするんですよね。

だから、「朝はちょっと苦手だからゴミはお願いします」とか、「水回りは嫌いじゃないし、きれいにしたいんで私がやるようにします」みたいな、夫婦それぞれの向き不向きにあわせてゆるく決めています。

斎藤
なるほど……。僕は非常に自分一人で抱え込んでしまうみたいな性格で。ルールをゆるくしたら、自分でなんでもやってしまいそう。手放す考え方があったら教えてほしいです。

川口
斎藤さん真面目に家事しそうですよね(笑)。家事ってそんなにキッチリやらなくてもいいと思うんです。家事をため込んでも、そうそう死なない。部屋の片隅にホコリが落ちている。でも、死なない。まずはそう思ってみたらどうでしょうか。

斎藤
死なない! それはたしかにそうだ。死なない。

川口
海外の様子を見ると、衛生観念が日本と根本的に違う国ってあるじゃないですか。そういうところでも人は生活を送っている。日本で「家の中が汚い」なんて思っていても、世界レベルではそうとうきれいな方だと思いますよ。

斎藤
アメリカの映画を観るとみんな平気で靴を履いたままベッドに寝転がったりしていますよね。それが当たり前で、平気なんですもんね。たしかに掃除がどうこうのレベルをはるかに超えている……。

家事負担を減らすための家電選びのコツ

斎藤
家事負担を減らすために家電を買う、という話もよくありますよね。川口さんはどうでしたか?

川口
いろいろ買いましたね。ポイントは「自分じゃなくて、家族に選んでもらう」ことです。家電を使っているYouTubeや、通販番組などをあらかじめ見せておいて、買いに行くときは夫や子どもの判断で選んでもらう。

斎藤
えっ。どうしてですか?

川口
そうすれば、家族が使ってみたくなるじゃないですか。最近の家電って性能が良くなっているんで、調べているうちにだんだんと興味が湧いてくるんですよ。

斎藤
なるほど。家電を買っても使うのが自分だけだと、そこまで家事負担が減らなかったりしますもんね。

川口
買った後はみんなで使い方を勉強したりして、そういう時間も楽しいです。

斎藤
買ってよかった家電はありますか?

川口
定番ですが、ドラム式洗濯機ですね。洗濯物を干さなくていいのはすごくラクです。それから家電といっていいかわかりませんが、水道につける浄水器もよかったです。水がおいしいと、夏場に麦茶を作る必要もない。

斎藤
なるほど~。ドラム式洗濯機はあるんですが、浄水器はないです。買ってみようかな。

川口
逆にうまくいかなかったのはロボット掃除機ですね。家の中を片付けないといけないから、大変になってしまって。

斎藤
うちはロボット掃除機を使っているんですが、悩ましいですね。子どもはまだ3歳だから家の中はおもちゃだらけ。それらをいったん片付けないと掃除できないという……。すごく大変です。

川口

替わりに軽いスティック掃除機を買いました。気楽にできるし、小学校くらいになると子どもでも使えていいですよ。

家事の問題は感情の問題?

斎藤
こういった分担やツールで家事負担が減るということもあると思います。ただ一方で、家事負担の問題って、夫婦間での感情の問題なんじゃないかなって思うこともあるんです。だって、一人暮らししている人は家事で悩むことってほとんどないじゃないですか。

川口
わかります。子どもが産まれて間もないころ、私は夫と感情的なすれ違いがありました。夫は「家事をするよりもお金を稼ぐことで家庭を助ける」みたいな発想だったんです。これに怒りを感じていました(笑)。

斎藤
ちょっと以前だったらよくあった男性像ではありますよね。

川口
そうですよね。そこで私は怒りの勢いもあって「自分がお金を稼いで家事もすればいいんや!」みたいに張り合ってしまったんです。そうしたら、働き過ぎとワンオペ育児がたたって倒れてしまったんですね。

斎藤
ああ……。

川口
一度倒れたら、いろんな感情が変わっていって。夫への怒りもなくなったんです。そうしたら夫婦で冷静に話し合えました。夫は「妻を働かせたらかわいそうだから、自分ががんばって働く」みたいに考えていたみたいなんです。

斎藤
ちゃんと、川口さんを思ってやってくれていたことだったんですね。

川口
そこからは自分も感情的になることが少なくなりましたし、夫も家事を少しずつしてくれるようになりました。いま思えば、早い段階で一度倒れておいてよかったと思うくらいです。

斎藤
夫婦でのコミュニケーションが必要なんですね。自分の中に感情を放置しておくと、どんどん膨れ上がってしまうから……。

仕事をするために夫婦のコミュニケーションを維持する

斎藤
そこから夫婦でのコミュニケーションは良好ですか?

川口
ずっと良好というわけにもいきませんよね。私は家事はしないのは得意なんですけど、夫がそれに対してイライラしてるって思い込んでました。でもそれは、
単純に仕事で疲れている表情で、怒っていないんです。それを見て私が勝手に罪悪感からイライラするみたいな感じでした。

斎藤
疲れてる人の顔って機嫌悪く見がちというのもありますよね。とくに年齢を重ねていくとそうなる……。

川口
そうなんです。だから、夫の状態をあまり気にしすぎないようにしました。

斎藤
ああ、僕も妻の顔色をうかがう癖があるんですが、止めた方がいいんだろうな~って思います。自分でも顔色うかがわれたくないし。

川口
それから、うちでは1~2か月に1回、夫婦で一緒になにか楽しむ時間を作っています。これがあるのとないのとでは、家庭運営がまったく違ってきますから。

斎藤
どんなことをしているんですか?

川口
子どもが小さくて外出が難しかったころは、家でアニメを一緒に見ていました。子どもが大きくなってからは外出してデートですね。映画を観たり、ちょっといい食事をしたりして。

斎藤
デート! そういうことは意識していなかったです……。子どもももう3歳だし、うちもデートに行ってもいいのかもしれないですね。

川口
仕事じゃなくても保育園にお子さんを預けて、1~2時間くらい楽しんでみたらいいと思いますよ。楽しいことを一緒にするだけで「この人と引き続き楽しくやっていこう」という気になると思うんです。それってなにかの錯覚かもしれないけど(笑)、重要。

斎藤

フリーランスとして仕事をするには、夫婦の協力が必要で、夫婦の協力を密にするためにはデートが必要、と。遠回りのように思えるけど、こういうのが効いてくるわけですね。いまさらデートなんて、と思うけれども、本気で取り組まなくてはいけない。

川口
そうだと思います。そもそも夫婦なんて他人ですから。ボーッとしていたら、関係はあっさり悪くなりますよ。そうならないためには、物理的に二人の時間を用意しないと。

斎藤
なるほどなあ~! いや、本当に身につまされます……。


今回は川口さんに「家事と仕事のバランスをどのように取っていくか」みたいな相談をするつもりだったんです。でも話をしていく中で「家庭が良好でないと、仕事をするどころではない」ということに気づかされました。在宅フリーランスに近道はないですね。

子育てフリーランスの相談は続きます。次回のトピックは「子育てしているときの営業活動」です。

第1回 子どもの夜泣きで仕事が進まないとき、どうすればいい?
第2回 在宅でイラストを描いていると家事をやることになってしまう……
第3回 子育てをしながら「営業活動」ってできるの? 

お話を聞いた人

川口真目

X:@kawaguchi_game
note:川口真目(Masami Kawaguchi)

『子育てしながらフリーランス』(左右社)
子育てをしながらどうやってフリーランスとして活動しているかを、赤裸々な体験談を踏まえて書いた一冊。


『マンガでカンタン! デザインの基本は7日間でわかります。』(gakken)
デザインのコツを超簡単にサクッと抑えたい! という想いから作られたデザイン漫画本。

『みんなの自己肯定感を高める 子育て言い換え事典』(KADOKAWA)教育家の石田勝紀先生に聞いた子どもへの声掛けの本。息子が不登校のとき何度も読み返しました。

@kawaguchi_game
X(Twitter)で、子育てフリーランスや不登校について発信しています。

企画・取材・執筆:斎藤充博

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