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デジタルで表現する「アナログタッチ」で、心の奥に沁み入る “儚さ” を描く ー イラストレーター・oo6

Twitterのフォロワー数11万人(2022年6月時点)、現役大学生のかたわら人気イラストレーターとしても活動するoo6(おーおーろく)氏。

息をのむような繊細で美しいオリジナルイラストに加え、力強いタッチで描かれるファンアートでも多くのファンを魅了している。

今回はどこまでも儚く透明感のある色使いを始めとして、その美しいイラストの制作過程の謎を紐解いていこう。

表現したいものに出会うきっかけをくれた作品

『​​morning glory』

ーーoo6さんの代表作品をご紹介いただけますか?

oo6:作品のタイトルは「morning glory」。絵にタイトルをつけることが少ないので、そのまま「朝顔」を英語にしました。自分の絵の方向性が定まらなかった時にこの絵を描いて、自分の表現したいことや描きたいものがわかったので、この絵がなかったら今のoo6はいないんじゃないかって思うくらい思い入れのある作品です。2、3年前に制作しました。

ーーすごく大事な作品ですね。とても夏らしい印象を受けました。

oo6:季節感を感じられるような絵を描いてみたいなとずっと思っていたんです。実際に描いてみて、季節の中でも夏が1番好きだなっていうことに気づかせてもらえました。あとは単純にお気に入りなので、年に一回は同じテーマでイラストを描いています。

ーーこの作品を描く前と後で画風が変わりましたか?

oo6:結構変わっていますね。最初はデザインっぽい原色でパキッとした感じのものを描いていたんですが、ここからは儚い感じ・透明感を意識して描くようになりました。

ーー今のoo6さんの儚くも美しいイラストは、この作品が原点なんですね。作風を変えてから周りの反応は変わりましたか?

oo6:TwitterやInstagramなど、SNSでこの絵を見て興味を持ってくれた人が沢山いましたね。今までよりもたくさんの人に見てもらえるようになって、すごくありがたいです。

ーーこちらはアナログの水彩画のように見えますが、デジタルで描かれているのでしょうか?

oo6:デジタルです。Procreate(プロクリエイト)というソフトを使っています。以前は別のソフトを使っていたのですが、Procreateが自分の描きたい表現とぴったりマッチしていたんです。元々アナログで透明水彩を描いてたこともあり、その経験がデジタルでも活かせたんじゃないかなと思ってます。

ーーProcreateに出会って、描き方が変わったのですね。いつも使われている機材はなんですか?

oo6:iPad Proの11インチを使って描いています。12.9インチと迷ったのですが、持ち運びしやすいように少し小さめのサイズを選びました。自宅だけではなく、いろんな場所で制作することが多いので、自分にはこのサイズが合っていると思います。​​

​​​​​​見る人が心地よくなる色使い

『はる』

ーー本格的に絵を描き始めたのはいつからでしょうか?

oo6:中学生の頃から落書きしたものをネット上に載せていたんですが、高校一年生の頃その延長で初めてTwitterを触った時に有名なイラストレーターさんの作品を見て「世の中こんなすごい人たちがいるんだ」って感動したんです。そこから自分も憧れに近づきたいな、と思いながら描き続けて今に至ります。

ーー憧れの存在に出会ったことが、今の道へ進むきっかけになったのですね。自分の作風について意識していることやこだわりのポイントはありますか?

oo6:ひたすら儚さと透明感と…イラストを見てくれた人の心が心地よくなるような色使いを大事にしています。自分の中で好きだなと思った色をたくさん詰め込みつつ、全体を見るとそれぞれがあまり主張しすぎないような色使いを意識しています。

ーーTwitterに色塗りのメイキングをあげていますが、前々から塗り方や色使いについての質問が多かったのでしょうか?

oo6:そうですね、結構周りから「どうやって塗ってるの?」って聞かれてたんですが、色に関しては正直完全にフィーリングなので(笑)主にペンの使い方などをメイキングに載せたりしています。

 

▼ SNSでは数々のイラストメイキングを公開している

ーーすごい、Twitterのメイキング投稿で11万いいねもついていますね!このタイミングでフォロワーが増えた、などは感じましたか?

oo6:はい、すごく反響があったのでフォロワー数もぐっと伸びましたね。Twitterだけではなくpixivでも沢山のいいねをいただきました。メイキングを試して実践してくれている方もいて、嬉しかったですね。また別のメイキングも作ろうと思っています。

ーー次回のメイキングも楽しみにしています。絵が上達したと実感したタイミングはありますか?

oo6:自分に合ったソフト(Procreate)に出会えたことが1番大きいかなと思います。初めて使った時、あまりの描きやすさに驚いてドキドキしながら描いていました。

ーードキドキするほど違ったのですね!Procreateのこの機能が好き、というものはありますか?

oo6:1番大きいのはデジタルなのに「アナログ」っぽく表現できるところですね。油絵や水彩のような表現ができる。その二つを混ぜた、逆にアナログではできないような表現が出来るというのも面白いです。

ーー影響を受けたり、尊敬しているイラストレーターさんはいらっしゃいますか?

oo6:巻田はるかさんです。日本画の画材を使ってコミックアート的な作品を作られている方なのですが、色彩と瞳の表現がキレイですごく憧れです。絵を描く前に、その方の作品を見て創作意欲を刺激してます。Instagramを始めた時に他の方の作品を見ていた時に出会いました。

ーーよくInstagramでイラストをご覧になりますか?

oo6:はい。イラストも良く見ますが、写真家さんの投稿もよく参考にしています。岩倉しおりさんという方がとても好きで、自分の絵にも岩倉さんの写真の雰囲気を落とし込めないかなと思いつつ、日々制作してます。

タッチを使い分けて表現するさまざまなイメージ

ーー大学に在学中だと思うのですが、現在絵のお仕事は受けてらっしゃいますか?

oo6:はい、受けています。大学が美術系でデジタル作品について学んでいるのですが、勉強したことを活かしながら仕事をさせていただいています。

ーーお仕事では、どういった内容のご依頼が来ることが多いですか?

oo6:現在携わらせていただいているのは、ゲームのPRイラストです。実は儚い系のイラストとは別に二次創作をする際によく使う力強い迫力のある絵柄があるのですが、そちらのタッチを活かせるお仕事もいただけるようになって嬉しいです。
あとは透明水彩のアナログで展示の企画を進めています。個展ではなく2人でやる展覧会で、夏頃に1週間くらい開催を予定しています。

『HUNTER×HUNTER ファンアート』

ーー展覧会を予定されているのですね、楽しみです!今まで手がけた絵のお仕事の中で印象に残っている作品はありますか?

oo6:講談社タイガさんから発売されている『唐国の検屍乙女/小島 環(著)』という小説の装画と、その小説のキャラクターイラストのお仕事が1番心に残ってます。
去年にご依頼いただいて春くらいまで制作させていただいたものなのですが、Twitterに載せている連絡先に「表紙を担当しませんか?」と連絡が来てびっくりしました(笑)

ーー嬉しいサプライズですね。作家さんと直接お話しされたりはしたのですか?

oo6:基本的には担当の編集者さんとお話しして進めていくのですが、制作終わった後に原作者の小島さんからTwitterのリプライで話しかけてもらって…。直接コメントをいただけて、すごく嬉しかったです。楽しんでお仕事をさせていただきました。

著・小島 環『唐国の検屍乙女(講談社タイガ)』表紙イラスト

ーーイラストレーターをしていて1番幸せを感じる時と逆に辛い時があれば教えてください。

oo6:1番嬉しいのは「あなたの絵が好き」と言ってもらえることですね。その中でも1番印象に残ってるのは、高校の卒業間際に全く関わりのなかった高校の後輩からoo6の名前宛にファンレターが届いたことです。「なんで知ってるんだ...!」という驚きと共に嬉しかったです。
苦労していることは、まだ学生なので社会人としての振る舞いが分からず、お仕事の際に右往左往していることが多々あることです。最初にお仕事をいただいた時、マナーが分からずメールでぐちゃぐちゃな文章を送ってしまっていて…見返すと恥ずかしいですね。

ーー社会に出る前に仕事のマナーを身につけるのは難しいですよね。将来的にはどういった道を目指していますか?

oo6:まずは自分のイラストを活かせる職業に就いて、色々と基礎を学んでからいずれはフリーランスのイラストレーターとして活躍できたらいいなと思っています。

ーー今後やっていきたいお仕事はありますか?

oo6:小説の装画やCDのジャケット、キャラクターデザインなどの自分のイラストで作品のイメージを表現できる仕事にすごく興味があります。

ーー沢山のご質問にお答えいただき、ありがとうございました。最後に、GENSEKIというサービスについての印象があれば教えてください。

oo6:クリエイターと社会を繋ぐ素敵なサービスだなと思います。コンテストが豊富なのも魅力的ですし、受賞者の方の作品をチェックさせていただいたり、情報収集の場としても使わせていただいています。これからのGENSEKIも楽しみにしています。

oo6氏の澄み渡るような美しい色使いに込められた「イラストを見てくれた人が心地良くなれるように」という思い。

憧れの存在を追いかけながら、自分の作品に合ったものをどんどん取り入れていく、oo6氏の探究心を感じられるインタビューとなった。

これからも美しく繊細なイラストで、たくさんの人々の心を潤していくだろう。


oo6(Twitter:@oo6____6oo/Instagram:@oo6____6oo
現役大学生でありながら、商業イラストも担当する注目の若手イラストレーター。
アナログ、デジタルを問わず透明感のある儚くみずみずしい印象を受けるイラストを作り続けている。『ILLUSTRATION2022』にも掲載。