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妄想から溢れるロマンチックな世界を描く<前編> ー イラストレーター/漫画家・シェリーリリー

長崎県出身のイラストレーター・漫画家のシェリーリリー氏。

フォロワー20万人を超えるInstagramでは、恋人たちのロマンチックな世界観がたっぷり詰まったイラストを「妄想日記」と題して日々更新中。

思わず胸がときめくようなイラストで、多くのファンを魅了する人気イラストレーターだ。

2018年8月には、河出書房新社より初のイラスト集「星降る夜のロマンチック妄想録」を出版。

今回は、シェリーリリー氏の原点やアイデアのみなもと、人気イラストレーターまでの道のりなど、幅広く伺った内容を【前編・後編】にてお送りしていく。

【前編】では、シェリーリリー氏のファンシーさ溢れるイラストの原点、価値観や作風についてご紹介していこう。

頭の中の “妄想” という楽しみを描く 

『こつんにきゅんする朝』

『こつんにきゅんする朝』

ーーイラストレーターとして大変ご活躍されていらっしゃいますが、ご自身の代表作品だと思うものを教えていただけますか?

シェリーリリー:漫画とイラストの両方あるのですが、イラストでは2018年に「星降る夜のロマンチック妄想録」というイラスト集が出ていて、その時の表紙でしょうか。
漫画は趣味でブログに連載しているものがあるのですが、その漫画ですね。

ーーイラストと漫画の両方で代表作があるのですね!まずはイラスト集についてお伺いさせてください。

シェリーリリー:2018年の夏に出版したのですが、Instagramにアップしてるイラストを集めたものと、描き下ろしの漫画が入っています。ちょっと過去の絵を見直すのは恥ずかしいのですが、最初に話を頂いて出させてもらった本なので思い出深いですね。
Instagramを始めたのが2017年の夏ですが、それまで絵の仕事をしたこともなかったですし、本当に趣味でたまに描いていて…。
インスタに絵をアップしてフォロワーさんが増えることも、こういう風に本を出せるとも思ってなかったので本当に驚きでした。
「こんな事ってあるんだ!」と感じた時に描いた表紙の絵なので印象に残っています。

イラスト集「星降る夜のロマンチック妄想録」表紙 河出書房新社(2018)

イラスト集「星降る夜のロマンチック妄想録」表紙 河出書房新社(2018)

ーーイラスト集の出版はどのようにしてお声がけがきたのですか?

シェリーリリー:Instagramでフォロワーが増えてきたときにDMで出版社の方からご連絡をいただきました。同じタイミングで何社かからお声がけいただき、良さそうだなと感じたところとお仕事をさせていただきました。お話を頂いてから半年くらいで出版しましたね。

 ーーInstagramにあげているような恋愛系のイラストがこの中に詰まっているんですね。

シェリーリリー:そうです、恋愛系のイラストが多いですね。
昔、好きな作品の二次創作夢小説を読んでいて…自分の気に入ったお話やシチュエーションがあったら寝る前に何回も何回も繰り返しそのことを考えながら寝ていたんです(笑)
妄想で楽しめるタイプなので、自分が思い描いたことを絵にしてみようかなって思って恋愛系のイラストを描き始めました。
自分が妄想した絵を描く場合もありますし、今まで読んだ漫画だったりアニメだったりドラマとか映画とかの、自分がいいなって思ったシチュエーションを描いていこう!っていうのを一つのテーマとして決めています。
リアルな体験というよりも「妄想世界で楽しむ」という事をコンセプトとしているので、Instagramのタイトルも「妄想日記」にしています。

ーーどのイラストも、女の子が一度は憧れるようなシチュエーションですよね!ブログでは漫画も連載されていらっしゃるんですよね?

シェリーリリー:はい、最近は週1回更新2Pだけなんですが、すでに200ページぐらいは描いてます。Instagramの「妄想日記」で1日1枚こういう妄想世界があったらいいなみたいな感じで描いていたら、描いてるうちに固定のキャラクターが何人かできて…。
フォロワーさんが見てくれてる中で一番人気だったキャラクター達の漫画を連載し始めたんです。

『両手いっぱいにロマンスかかえて Vol1-1』

『両手いっぱいにロマンスかかえて Vol1-1』

ーー自分のイメージを具現化できるって、とても羨ましいです!

シェリーリリー:理想の男性キャラクターを描きたいなと思いつつ、私の頭の中ではもっとかっこいいんだけど!と、自分の力不足を感じています(笑)
女性も憧れというか、こういう女の子かわいいなみたいな感じの子を描くことが多いです。
女の子はとにかく明るくて少女漫画のヒロインみたいな、例を挙げるとセーラームーンの月野うさぎちゃんみたいな「ザ・少女漫画の主人公」みたいな感じの華やか系の明るい女の子ですね。

継続と新しい挑戦によって磨かれたセンス

『似合いそうだなって思ったから』

『似合いそうだなって思ったから』

ーー最初に絵を描き始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

シェリーリリー: 幼い頃から絵を描いたりするのが好きでしたが、毎日描くようになったのは9歳か10歳ぐらいの時ですね。
そのタイミングで引越ししたんですが、同じクラスに絵を描くのが凄く上手な子が一人いて、私が絵を描いてたらその子に「ここをこうしたらもっと上手に描けるよ」って言われたんです。
それからその子と仲良くなって、同じノートに一コマずつ交換漫画みたいなのを描いていたんです。進級してクラスが別れてしまってからは交換漫画も途中で終わってしまったんですけど、それからは一人で漫画を描くようになって…月刊誌に漫画を応募してみたり。
なので、今まで描き続けてこられたきっかけはその子との出会いだったかもしれないなと思います。

ーーその子の影響が大きかったのですね。応募した漫画は入選されたんですか?

シェリーリリー: 入選とかには全然引っかからない感じでした(笑)なのでプロになるのは難しいなと思っていましたし、それを仕事に!とも真剣には思ってませんでした。学生時代は絵を描いていれば満足!みたいな感じでしたね。
高校を卒業するタイミングで新しい世界も見てみたいなと思っていて、絵の方向に行くかそれとも全然違うほうに行くかどうしようか悩んだ結果、絵じゃない方をやってみたいと思いブライダル専門学校に行きました。

ーー絵とは全然違う方向に行かれたんですね!

シェリーリリー:そうなんです(笑)でも、自分ではこっちに行って良かったと思っています。色の勉強とかメイクの勉強のようなセンスを磨く授業があったので、今やってる色塗りの色の使い方とか役に立っているのではと思います。

ーーご自身の作風について、意識していることやこだわりがあれば教えていただきたいです。

シェリーリリー:最初から自分の好きなものや憧れを詰め込むイメージで描いています。
色使いも自分のその時好きなカラーで塗ってみたり。
あとはちょっとした表情とか、眉の感じとか、細かい顔のニュアンスを意識して描くようにしています。

『ケーキはいかが?』

『ケーキはいかが?』

 

ーー絵がものすごく上達したなと感じたタイミングはありますか?

シェリーリリー: どこかで大きく変わったというよりも、毎日描いてることが大事だったかなと思います。適当に描くよりも毎回一個テーマを決めて完成まで描くようにしていて、それをコツコツ続けているうちに少しずつ上達してきたと思います。

ーー継続が力になったのですね!普段はどんな画材を使われてますか?

シェリーリリー:線画までがアナログでその後がデジタルです。アナログはミリペンとかシャーペンとか、デジタルだとペンタブ(板タブ)で、ソフトはCLIP STUDIO PAINTを使って描いています。 
アナログ歴が長かったので、ペンタブを貰っていたんですけどあまり使ってませんでした。
なので、デジタルに慣れるために、練習がてら描いたものをアップして「描きながら練習!」みたいな形でインスタを更新していました。最初の頃は無料のペイントソフトを使っていたのですが、全然使い方がわからなくて「デジタル難しいな~」と苦戦しながら色を塗っていましたね(笑)

好きな作品たちから受けた大きな影響

『すべて大切な一瞬』

『すべて大切な一瞬』

 

ーー影響を受けた作品やルーツはありますか?

シェリーリリー:最初は「セーラームーン」だと思います。私が保育園くらいの時にアニメが始まったんですが、子供だったから登場人物たちがすごく大人な感じがして、私も早く大人になりたい!って思ってたぐらい憧れの存在でした。
高校生になったら、魔法を使ったり悪と戦ったりするんだろうかみたいな(笑)

ーー私も同世代なので、将来夢見ていた気持ちわかります!(笑)

シェリーリリー:この辺ぐらいからセーラームーンの絵を真似して描いていました。小学生に上がって「魔法陣グルグル」というアニメを見始めたんですが、とにかく面白くて!
それまでは1枚の紙にアニメや漫画の絵を描く!だったのが、同じ時期に漫画を描いてる友達が出来たっていうのもあって、一緒に漫画を描いたり、魔法陣グルグルみたいに旅をする漫画を描いたりしていました。
中学生になって「フルーツバスケット」とか絵を真似したり、その時その時でハマった漫画をとにかく真似するみたいなことをやってきましたね。

ーー好きな漫画を真似してきたことが、今のイラスト制作に活かされているのかもしれませんね。尊敬しているイラストレーターさんはいますか?

シェリーリリー:イラストレーターではないのですが、漫画家のCLAMP先生が大好きです。
CLAMP先生の描くファンタジーな世界がすごく好きで、「カードキャプターさくら」を見た時には「この世にこんなに可愛いイラストがあるんだ!」と衝撃を受けました。
小さい頃に祖母が誕生日プレゼントに、なかよしを買ってくれたんです。その時の表紙がさくらで衝撃を受けて、中身の漫画を見てもレースの表現や描き込みに感動しました。
それまで漫画本を読むということがあまりなくアニメで見るだけだったんですが、さくらを見てからその単行本を買ったり漫画も見るようになりましたね。
CLAMP先生はどんなお話を描いてもヒットしていますし、少女漫画も描けるしちょっと大人な青年誌の漫画も描けるし、絵柄が本当に素敵で尊敬しています。

ーーCLAMP先生への熱意がとても伝わってきました。他にも尊敬している先生はいらっしゃいますか?

シェリーリリー:矢沢あい先生も大好きです。絵柄も好きですし、お話も好きですし、とにかくおしゃれ!高校生の頃に、よく真似してイラストを描いていました。
あとは高橋留美子先生の描く肉感的な女性のキャラクターが素敵だなと思っていて、影響を受けていますね 。
あとは成田美奈子先生。70年代80年代に活躍されていた少女漫画家さんの描く、外国人っぽいというか、中性的な男性を描かれる作家さんが好きでした。大変参考にさせていただいています。

 

シェリーリリー

長崎出身のイラストレーター・漫画家
河出書房新社よりイラスト集『星降る夜のロマンチック妄想録』発売中