GENSEKIマガジン

モノづくりを広げる・支えるメディア

モチーフはリアルなものを見て気持ちが熱いうちに描こう! 【出水ぽすか先生 1on1 レッスン by GENSEKI 学生応援 PJT】

OGP画像

 

こんにちは、GENSEKIの坂本です。
本日ご紹介するのは、東京/大阪アニメーションカレッジ専門学校と一緒に生徒の方に向けて開催させて頂いた出水ぽすかコンクールのご紹介です。

GENSEKI専門学校プロジェクトとは

バナー

 

専門学校で切磋琢磨する学生クリエイターの皆様を応援させていただくべく、GENSEKIでは2022年夏〜秋にかけて、いくつかの専門学校と、各校の生徒さん向けにイラストコンクールを開催させて頂きました。

優秀賞に選ばれた方は、出水ぽすか先生とオンラインでの1on1レッスンをプレゼント。

今回ご紹介するのは、「東京/大阪アニメーションカレッジ専門学校」と開催したコンクールです。

テーマは「ご馳走」でした。

 

出水ぽすか先生の1on1レッスン参加者

 

出水ぽすか先生

アイコン週刊少年ジャンプ「約束のネバーランド」の作画、他にもコロコロコミック、ポケモンカードゲーム等のイラストを手掛ける。
今回のコンクールでは審査員を務めて頂いた。

 

齋藤佳輝

アイコンGENSEKIにてイラストコンテストの運営や新規営業を担当。
1on1レッスンでは全体の進行を務める。

 

おもむろさん

アイコン東京/大阪アニメーションカレッジ専門学校の漫画イラスト学科 キャラクターイラストコース2年生に通う学生。
今回のコンクールで最優秀賞に選ばれ1on1レッスンに挑んだ。


大好きな餃子をたくさん研究!最大級の美味しさを表現するための「野球少年」

涙と餃子

涙と餃子

 

齋藤
おもむろさん、この度は最優秀賞の受賞、おめでとうございます。作品のコンセプトについて改めて教えてください。

 

おもむろ
はい…。あの…すみません。緊張しすぎて声が震えています。この度は最優秀に選出頂き、ありがとうございます。今回はテーマが「ごちそう」だったので、私が大好きな餃子を描きました。

 

出水ぽすか先生
餃子、美味しいですよね。

 

おもむろ
はい。美味しいものをさらに美味しく食べることができるのはスポーツのあとだなと考えて、大事な試合のあとに餃子を頬張る野球少年を描きました。

 

出水ぽすか先生
ストーリーがあってすごくいいですね。

 

齋藤
それでは、出水先生から講評をお願いします。

 

出水ぽすか先生
はい。おもむろさんの作品は数ある作品の中でもぱっと目を引きました。非常に良かった点をまとめると下記のとおりです。

 

  • 絵から感じるストーリー性
  • お箸の持ち方・餃子の焼き目など細かいところまでよく観察して描けている
  • リアリティある背景と、ぼかしをうまく使い適切に視点誘導が行えている

 

齋藤
ありがとうございます。それでは1から順番に伺っていきたいと思います。

絵から感じるストーリー性が素晴らしい

イラスト

出水ぽすか先生
おもむろさんは野球が好きなんですか?

 

おもむろ
いえ、好きというわけではないのですが、スポーツといえば野球かな、と思いました。

 

出水ぽすか先生
そうだったんですね。私も野球について詳しくないのですが、この絵を見た時に「あ、試合に負けて悔し泣きしているんだろうな」というストーリーやキャラクターの気持ちがしっかりと伝わってきました。

 

齋藤
わかります。胸にぐっとくる感じがしますね。

 

出水ぽすか先生
うまくいかない事があって、すっごく悔しい時に美味しいごはんを食べると泣けてくる。これって、すごく共感できるシーンなんです。このストーリーはどのタイミングで思いついたんですか?

 

おもむろ
絵を描きながらストーリーを考えて描きました。

 

出水ぽすか先生
自分で考えたストーリーを、しっかりと具現化できている点も素晴らしいと思いました。

 

おもむろ
でも、描くのに時間がかかってしまったのが反省点です。特にアイディア出しに時間をかけてしまいます。

 

出水ぽすか先生
時間がかかることは必ずしも悪いことではないですが、効率的にアイディア出しをするコツとして、アイディアの引き出しを増やすと良いと思います。
例えば、おもむろさんが日常で「悔しい」「嬉しい」「悲しい」といった自分の感情をしっかり覚えておきましょう。それが絵を描く時の、アイディアの引き出しになります。

 

お箸の持ち方・餃子の焼き目など細かいところまでよく観察して描けている

齋藤
おもむろさんが今回、一番よく描けていると感じた点はどこですか?

 

おもむろ
やっぱり、餃子です!ここはすごく頑張りました。写真を何度も見て資料もたくさん集めました。

 

出水ぽすか先生
本当に、この餃子はとっても美味しそうに描けています。

 

齋藤
僕も食べたくなりました。

 

おもむろ
ありがとうございます。

 

出水ぽすか先生
この餃子は、おもむろさんの「餃子愛」という気迫を感じました。この気迫ある絵を今後も描き続けてほしいです。普段から食べ物は、よく描くんですか?

 

おもむろ
私自身は動物を描くことが多いです。でも、グルメ漫画はすごく好きでよく読みます。

 

齋藤
この餃子もグルメ漫画に出てきてもおかしくないクオリティです。

 

出水ぽすか先生
餃子も素晴らしいのですが、お茶碗を持つ手、箸をもつ手も非常に上手く描けています。資料をしっかり見て描けていると思いました。

 

おもむろ
出水先生も絵を描くときは資料を見て描くのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
資料を見るときもあるし、見ないで描いてしまうときもあります。でも絶対見て描いたほうが良いと思っています。

 

イラスト

齋藤
逆に出水先生がこの絵を見て、改善することでさらに良くできる点があるとすればどこでしょうか?

 

出水ぽすか先生
そうですね。コップをもっと精密に描けると良いと思いました。ガラスがきれいに描けると絵が映えるので練習すると良いと思います。キラキラと光るものがあると目を引くので、「お絵かきチャンス」です!

 

齋藤
少しの「引き」を丁寧に描くことが大事なんですね!

 

出水ぽすか先生
そうですね。餃子をこんなに観察して美味しそうに描けるおもむろさんなら、コップも資料を見れば描けると思います。資料を観ると、「あ、コップの中に入っている水って実は青くないんだな…」とかわかるので、ぜひこの「お絵かきチャンス」をモノにしてください!

 

リアリティある背景と、ぼかしをうまく使い適切に視点誘導が行えている

齋藤
最後は背景ですね。

 

おもむろ
実は、今回の絵で一番苦労したところは背景なんです。普段、背景をあまり描かないので。

 

出水ぽすか先生
そうなんですか !? そうは感じませんでした。パースも気にならないですし、何よりおもむろさんが見せたいと思っているところに、しっかりと視点誘導が出来ていると思います。

 

齋藤
視点誘導は背景のぼかしのところでしょうか?

 

出水ぽすか先生
はい。背景はしっかりとリアリティある描写をしながら、ぼかしを入れてメインである少年達に目がいくようになっています。あと個人的には、背景のサインがすごく好きです。自分で考えたんですか?

 

 

おもむろ
はい。自分で考えました。

 

出水ぽすか先生
サインを置こうと思ったのは実際にモデルにしたお店にも置いてあったんですか?

 

おもむろ
はい。今回は居酒屋の資料をたくさん集めて参考にしました。

 

出水ぽすか先生
なるほど、居酒屋もしっかりと資料を集めて描いたんですね。そしたら是非、次は自分が居酒屋に行って観察してみてほしいです。

 

イラスト

齋藤
どういったところを観察すると良いのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
写真だけだと分からない「ここ、どうなっている?」と思うところは見ておくと良いと思います。例えば、レジの横に飾ってある小物とか、カウンターに並んでいるものは何か、とか。

 

齋藤
確かに居酒屋さんのレジ横は色々なものがおいてあったりしますね。招き猫がたくさんいたり…。

 

出水ぽすか先生
はい。実際に行って自分の目で見たらモチーフの幅が広がるのでおすすめです!

 

齋藤
先生、講評とアドバイスありがとうございました。

 

出水ぽすか流の絵を描くコツは「鉄は熱いうちに打て」方式

イラスト

齋藤
おもむろさんから出水先生へ聞きたいことはありますか?

 

おもむろ
先生の絵は構図が素晴らしいと思っています。どうやって思いつくのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
私は、構図から考えずに「何を描きたいか」を考えて構図を考えます。

 

齋藤
出水先生は、どんな時に描きたい!と思うのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
常に描きたいものにあふれています (笑) 例えば、街に出てアンティークショップで素敵な時計と出会ったら時計が描きたくなりますし、悔しい出来事と遭遇したらそれも描きます。本当に常に描きたいものにあふれていますよ。

 

齋藤
描きたいものが常にたくさんある出水先生ですが、お仕事もお忙しいですよね。どうやって描きたいアイディアをストックしているのでしょう?

 

出水ぽすか先生
思いついたら線画だけ描いています。やはり、「鉄は熱いうちに打て」だと思うので、描きたいと思った時に、描くようにしていますね。

 

齋藤
描き溜めた線画を実際のお仕事で使うこともあるのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
そうですね。単体で使ったり、2つのモチーフを組み合わせて新しいものを描くこともあります。

 

おもむろ
思いついたら描く、今後実践してみようと思います。

 

実際に自分の目で見ることの重要性

齋藤
さきほどの講評で、先生は「次は自分が居酒屋に行って観察してみてほしいです」と仰っていました。先生も描きたいモチーフがあるときは、実際に見に行くんですか?

 

出水ぽすか先生
見に行きます。例えば、木が描きたいときは公園まで見に行きます。絵は自分が見た雑多なものを組み合わせて描いているので。

 

齋藤
ファンタジーを描くときは実在しないですよね?

 

出水ぽすか先生
その時は、モチーフを組み合わせて描きます。例えば、さきほど、公園の木の話を出しましたが、そこに変な虫を描くといった感じです。

 

齋藤
物理的に見に行けないものもありますよね。

 

出水ぽすか先生
そうですね。たとえば魚が見たい!と思ったら水族館に行かずとも、スーパーの鮮魚コーナーで匂いや形などを感じることができます。何を描くにせよ、自分で見たものが絶対基準になるので、インターネットで資料を探すこともありますが基本的には自分の目でみて描くことが多いです。

 

おもむろ
ドラゴンなどを描くときはどうしているのでしょうか?

 

出水ぽすか先生
ドラゴンを描くのは難しいですよね。好きなんですか?

 

おもむろ
ファンタジーが描きたいと思っているので、ドラゴンも描いてみたいんです。

 

出水ぽすか先生
なるほど。私は恐竜が好きなので、ドラゴンも好きなんです。
だから自分の漫画にもだしたいと相談したら「漫画でファンタジーを描くのに、ドラゴンはイマドキじゃないので辞めておこう」と言われたことがあるんです。

 

齋藤
ドラゴンはイマドキじゃないとかあるんですね。

 

出水ぽすか先生
なので、おもむろさんがファンタジーを描きたいなら無理にドラゴンという縛りを設ける必要はないと思いました。

 

齋藤
自分の描きたいモチーフから考えたほうが良い、ということですね。

 

出水ぽすか先生
それを踏まえてなのですが、私にとってのドラゴンは恐竜の代わりなんです。恐竜は今でも研究が進んでいて日々学術が変わるんですよ。自分で描いた恐竜が学術的に間違っている状態になるのは嫌なので、羽をつけてドラゴンにしているんです。
あとはドラゴンを「倒したい相手」の象徴として描くこともあります。

 

キャラクターの活き活きとした表情をたくさん描くなら漫画家を

齋藤
おもむろさんは将来、イラスト系の職を目指しているとのことでした。

 

おもむろ
はい。特にこれを目指すというところまでは決めておりません。

 

齋藤
出水先生は、おもむろさんのどういったスキルを今後伸ばしていくと良いと思いますか?

 

出水ぽすか先生
そうですね。職業イラストレーターを目指すなら、絵のディティールを詰める作業に時間を使うと良いかもしれません。

 

齋藤
ディティールとは具体的にどういった点でしょうか?

 

出水ぽすか先生
さきほどお話した通り、コップと水の表現やあとは服のシワですね。例えば洋服も自分が着てる服を観察してみてください。

 

齋藤
やはり「リアルなものを見る」が大事なんですね!

 

出水ぽすか先生
もし漫画家を目指すなら、表情の描き方が今の時点でもとても良いのでキャラクターの表情を描く表現力をさらに伸ばすと、さらに良くなると思います。最初この絵を見た時あまりに表情を描くのが上手いので、普段から漫画描かれる方なのかと思ってしまいました。

 

齋藤
確かに、悔しさが伝わってくる絵です。

 

出水ぽすか先生
もし、おもむろさんが、キャラクターの表情を描くのが好きなのであれば、漫画は存分にやれますよ!


【全体講評】素敵な絵が多数集まった

齋藤
では最後に今回のコンテストの全体講評をおねがいします。

 

出水ぽすか先生
はい。今回のコンテストで、たくさんの素敵な絵を描いて頂き、ありがとうございました。

 

齋藤
今回は、なんと135人の学生さんにご参加頂きました。

 

出水ぽすか先生
素敵な絵を見ている時間は、すごく幸せでした。基本的にみなさんお上手ですし、食べ物をおいしそうに魅せる構図をしっかりと考えて描かれている人が多かったです。

 

齋藤
非常にレベルの高いイラストが多かったですね。本日はありがとうございました。

 

 

編集

坂本彬
GENSEKIマガジンの編集 / ライティング・マーケティングを担当。

挿絵

チナップ(twitter