こんにちは、GENSEKIマガジン編集部です。
ピクセルアート(ドット絵)って誰にでも描くことができますが、魅力的に見せるのって難しいですよね。
先日、GENSEKIでは「GENSEKIピクセルアートコンテスト第一弾『女の子と日常』」を開催いたしました。
今回は審査員のななみ雪先生に、同コンテストで受賞した作品を例に挙げてピクセルアートの表現方法や、技術について解説していただきました。
参考にすれば、きっとワンランク上のピクセルアートが作れるようになるはずです!
ピクセルアートは省略の美
サイトウ
今回の審査ポイントにもある「ピクセルの活きる描き方」についてくわしくお伺いしたいです。
ななみ雪先生は、大きめのピクセルアート(バイナリアート)作品を制作していらっしゃいますが、作品からしっかりとドットで描かれた魅力が感じられます。
ただ解像度を低くしただけのイラストではなく「ピクセルアートらしさ」を出すためには、どうすれば良いのでしょうか?
ななみ
私は、ピクセル一つひとつを大事にして描くのがピクセルアートだと思っています。きれいに見えるピクセルの置き方や、省略の仕方を学ぶのがとても大事になります。
例えば、線を引くときに、一旦できあがった線を削ってきれいにする意識があるといいですね。ドットで斜めの線を引くと階段状になってしまうのですが、ピクセルは頂点と頂点で接するように整えるとピクセルアートらしさが出ます。
サイトウ
実際に比べると、ピクセル一つひとつが意味を持っていることが感じ取れます。
ななみ
また、色数も絞ることでよりピクセルが活きてきます。
空の青と小物の色味が近ければいっそ同じ色に統一したり。色の技術も勉強するといいでしょう。
サイトウ
省略の美学なんですね。
ななみ
なるべく削っていくという面はありますね。今回賞に選んだ作品は、そういった基本的な部分がうまいものばかりでした。
ななみ
こちらの作品は、ピクセルアートを描くレベルが非常に高いです。
また、光の描写もいいですね。基本的に明るいところに目は行きやすいので、中央に光を当てて明るくすることで、女の子が際立つ構図になっています。
サイトウ
画面全体の密度が高いのに、自然と女の子に目がいきますね。
ななみ
色の選び方もよく考えられていると思います。
落ち着いた緑や茶色で構成された室内に比べ、女の子はパステルカラーで明るく、ぱっと目がいくようになっています。また、髪や服のシワはまわりに馴染むような配色ですが、一番外側のアウトラインだけは濃い色を使っています。こうすることで主役の女の子が背景に埋もれません。
サイトウ
魅力の裏には細かい工夫がなされているんですね。勉強になります!
ドットのグラデーション表現とメリハリ
ななみ
ピクセルアートの技法として、「メッシュ」というドットのグラデーション表現があります。
ななみ
こちらの作品は、メッシュがうまく使われていますね。
サイトウ
服の陰などに使われていて、肌にはあまり使われていませんが、メッシュの効果的な使い方はあるのでしょうか?
ななみ
メッシュを使いすぎると質感がわかりづらかったり、ぼやけた印象になります。また、つるっとした素材に使うと、質感が損なわれてしまいます。
こちらの作品でいうと、服の繊維や地面のざらっとした部分を考慮して、使う・使わないところのメリハリをしっかり作っています。うまいし好きな使い方ですね。
ななみ
こちらもメリハリのあるドットの打ち方ができている作品です。特に髪の毛にこだわりが詰まっていますね。陰影のグラデーションがていねいに描かれています。空を反射した青色が端々に入り、よく馴染んでいます。いい色が置けていると思いました。
サイトウ
先に出た2つの作品と比べると小さめのサイズですが、そういった細かい描き込みによってか、情報量に大きな差を感じませんね。
ななみ
Necoyuさんは、普段32x32px以内で描かれているとのことなので、小さいサイズで身に付けた技術が生きて、ドット絵らしいまとまりやかわいさが出せているんだろうなと思います。制服のリボンについた猫や鈴、肉球のワンポイントのかわいさからもそれを感じますね。
先ほどのikedaさんも、2枚目の作品に小さく描かれたペットボトルが上手でした。
サイトウ
わずかなドットなのに、スポーツドリンクだとわかります。
ななみ
私もペットボトルはどう描くかいつも迷います。細かいドットで文字を表現するのも難しいのですが、ちゃんと読めるように省略できていますよね。こういった細かい描写がきちんとできているのを見ると、基礎がしっかりしている上級者の方なんだなと感じます。
省略のバランスをとって描き込む
サイトウ
ピクセルアートは、サイズによって表現方法も変わってくるのでしょうか?
ななみ
はっきり分類するのは難しいですが……大き目のキャンバスだとドットが細かいので、気を抜くと普通のイラストのようになりがちなんです。だから、まずは小さいサイズのドット絵で練習することで、ピクセルアートとしてきれいに見える描き方がわかってきます。
ななみ
ガラムマサラさんは「dotpict」の公式イラストも描かれている方で、以前から存じ上げていました。この方も普段は小さいサイズで描かれることが多い方で、小物一つ一つの描き方がすごく上手です。
やはり少ないドット数で過不足ない表現ができると、大きいキャンバスサイズになっても上手ですね。
サイトウ
寝癖もかわいいです。よく見ると、鏡に後ろの写り込みも描かれていますね。
ななみ
一見シンプルですが、物の特徴をとらえて細かいディテールや空気感まで描けています。今まさにコンセントを挿そうとしている、女の子の動きが見えるようなシーンの切り取り方も上手です。朝を感じるさわやかな色使いからも空気感が伝わってきますね。
ななみ
こちらも、空気感がすばらしい作品です。
サイトウ
引きの構図が印象的です。ドット絵で風景を描くってすごく難しそうに感じます。
ななみ
そうですね。線でたくさん描き込もうとするとピクセル同士がくっついて潰れてしまうので、ドット絵で風景や空気感をきれいに描くのは難しいんです。1ピクセルにどれだけ情報を詰められるかが大事になってきます。
その点、こちらの作品は、いろんな所にドット絵の省略がうまく使われていて、描き込みのバランスが絶妙です。右手前の手すりも、色数を絞ることで、写り込みをきれいに見せています。
また、距離の表現が上手で、とくにつり革を見るとわかりやすいです。
ななみ
手前はアウトラインをしっかり描き、後ろに行くにつれて淡い色になっています。さらに奥は、アウトラインをなくしていて、でも、ちゃんとつり革に見えるように描かれています。
サイトウ
本当だ……! ドアや広告も、手前のものと奥のもので、描写の違いを見比べてみると楽しいですね。
エモさを表現するコツとは
ななみ
線と色あいがとてもすてきな作品です。髪の後れ毛など、線をあえて途切れてさせているのが、ドット絵であまり見ない表現です。杏仁茶さんが独自で編み出したのでしょうか? 髪の細さや柔らかさが出せていて、すごくすてき。私も取り入れたいし、勉強になりました。
サイトウ
確かに軽やかな感じがします。表現力がすごいですね。
ななみ
また、くすみ感のある色選びができています。服や肌、小物など、光と影の間のピンク色にエモさがあり、きれいです。
サイトウ
ドット絵でエモさを表現するコツはありますか?
ななみ
しっかり光と影を意識して、調和した色選びをするといいと思います。
つい頭の中の「モチーフそのものの色」で描きがちですが、背景と人物の色が調和すると、空気感が出せます。私は、先に背景の色を決めてから人物を入れますね。
ななみ
また、光を当てるところはしっかり当てて、「こんなに暗くしていいのかな?」と思うぐらい影を暗くすると、より存在感が出てエモさに繋がります。
そういった工夫で、空気感や、気温、風、においまで感じるように描けるといいですね。
サイトウ
エモさには「そこにある感じ」が大切なんですね。
気軽に描ける楽しさがドット絵の魅力! 1ピクセルを大切に
ななみ
「女の子と日常」という一つのテーマから、みなさんそれぞれの世界を表現してくれました。多様な作品が見れて楽しかったです。
サイトウ
最後に、これからピクセルアートを始めたい方に向けてピクセルアートの魅力を教えて下さい。
ななみ
ピクセルアートは気持ちよくドットが打てたときに、パズルが解けたような気持ちよさがあります。
16ピクセル、32ピクセルのような小さな作品から気軽に作れるのもいいところですので、どんどん作品を描いて、楽しんでいただければと思います!
▼コンテストページ
賞に選ばれた作品を細かく見ていくと、技術や工夫が見えてきますね。
GENSEKIではこれからもピクセルアートコンテストを予定しています。ぜひチャレンジしてみてください!
GENSEKIピクセルアートコンテスト第二弾
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執筆
GENSEKIマガジン編集部