GENSEKIマガジン

モノづくりを広げる・支えるメディア

「子ども向けの絵で気をつけた方がいいことってなんですか」さいとうなおき先生Q&Aインタビュー 第二弾 第2回

 

さいとうなおき先生縛りイラコン「水着縛り」講評会レポートに続き、QAインタビュー 第二弾 第2回をお届けします。

イラコン応募者のみなさんからお寄せいただいたイラストの描き方やお仕事のお悩みに、さいとう先生の経験談を交えてお答えいただきました!

第二弾 第1回「肌の色を含めた全体の色のバランスの取り方」絵の描き方・キャライラスト編
第二弾 第2回「子ども向けの絵で気をつけた方がいいことって?」ブランディングと働き方編(この記事)

答えてくれた人
さいとうなおき(X:@_NaokiSaitoYouTube
イラストレーター・ユーチューバー。
1982年生まれ。山形県出身。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。『ポケモンカードイラストレーター』。
YouTubeチャンネル登録者130万人以上を記録。『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。


 ■絵の内容について

Q. 先生は子ども向けのお仕事もされていますが、子どもが目にするもので「水着」がテーマの場合、気をつけたほうがいいことはあるでしょうか?

A.自分の子どもに見せられるか? を想像しよう


さいとうなおき先生
自分が親になって、自分の子どもに見せるときに、どこまでOKだと思うか、想像してみてください。親目線で「ちょっとイヤだな」と思うものは、避けたほうがいいです。

日本のオタクコンテンツに慣れていると「これぐらい大丈夫」と甘く考えがちです。でも実際に親になってみると「これ、大丈夫?」と感じることは多いです。

海外の監修を受けると、胸の線1本でもNGなときがあります。内股ポーズはセクシャルさを感じるからやめてほしいとか、日本ではOKでも海外から見たらダメ、ということはよくあると思います。

Q.伝えたいことは絵に込めるのが第一ですが、コンセプトや考えた過程を追加で伝えるためには、どうしたらいいでしょうか?

A.絵の意味が変化するようなタイトルを考えては。


さいとうなおき先生

質問者さんは、きっとキャプション文を読んだら深みが出る、みたいな作品を見かけたのでしょう。実際にうまく伝えることができている作品を参考にしてみるのが一番だと思います。

【佳作】 チョイス!!真夏の戦闘服/グラス

例えば今回のコンテストのグラスさんの作品。水着を選んでいる女の子達に、タイトルで「 戦闘服」のキーワードを加えることで、絵にまた違う情緒が足されています。右の子は悪いことを考えてるかも? とか、左の子も、オススメされたから、とあざとく黒いセクシーな水着を選ぶ言い訳にしているようにも見えてきます。 別の角度から見ることができるようになるのは、大切じゃないでしょうか。

まずタイトルでやってみるのがいいかもしれません。こうやって、想像が増すような文がつけられたら最高ですよね。


Q.絵の描写力には自信がありますが、いまいち盛り上がりに欠けます。見た人に「楽しい」と感じてもらうには、どのような心掛けが大事ですか? 

A.流行のテクニックを学んでみて。


さいとうなおき先生
描写力に自信があるぶん、流行のエフェクトなどは使わない、と思っていませんか? 僕は割とそのタイプだったのですが、やっぱり使った方が、受けがいいんです。

流行の絵柄が表紙になっている「お絵描き本」を買うなどして、今まで自分がやってこなかったテクニックを取り入れてみてはどうでしょうか。

「そんなこともう知ってる」みたいに思っていたことを、実際にやってみたら、確かに絵がよくなったり、発見があります。僕も経験しましたが「今まで馬鹿にしてたけど……いいな、これ!」みたいになりますよ(笑)。

 MLM #3『言語化能力ちゃん』


 ■イラストレーターの活動について

Q.自己アピールの書き方に悩みます。イラストを描く上でのこだわりはありますが、いろいろな表現を模索中なので、断言するのが難しいです。 自己アピールや自分のキャッチコピーは、どんなふうに考えればいいでしょうか?

A.現状の自分か、なりたい自分を、時間を決めて言ってみよう!


さいとうなおき先生
自分のキャッチコピーって難しいですよね。自分について語ろうとしても、いろいろな面を知っているため、いつまでも決められません。かといって、ブランディングのために「こう言ったら有利かも」と考えると、成功したときに自分の気持ちがどんどん辛い方向に行ってしまうかもしれません。だから、あまり嘘はつかない方がいいです。

僕のキャッチコピーは「元気と本気をプレゼント」のような感じです。自分にあっていると思いますが、これはあるとき急に「1分以内で自己紹介してください」と言われて、口をついて出てきました。

なので時間を決めて、今だけ切り取って作ってしまうのが早そうです。もしくは、今の自分は置いておいて「理想はこうなりたい」を言ってしまう。そうしたらキャッチコピーが目標にもなります。

今の自分か、将来なりたい自分か。その2つぐらいで考えて作るのがいいと思います。

 さいとうなおきの描くことはプレゼント

Q.プロのイラストレーターを目指しています。依頼はいろいろといただいていますが、生計が立てられるレベルではありません。得意なジャンルの絵だけポートフォリオに載せていますが、そうではない絵も見せた方がいいでしょうか? 経験とお金を稼ぐためになるべく多くの仕事をしたいので、描き慣れないジャンルの依頼も受けていったほうがいいですか? 

A.自分の長所が見つかるかも。まずはやってみよう!


さいとうなおき先生
仕事が来ているなら、得意なジャンルだけでもいいと思います。不得意なものを載せて、その仕事が増えたら困りますよね。

でも、現状が理想に達していないのなら、違うアカウントでもいいから不得意なジャンルの絵も全部、見せた方がいいかもしれません。僕はかわいい女の子やキャラクターを描きたいと思っていましたが、グロテスクなモンスターを頼まれる期間が長くありました。(詳しいお話は「リメイク縛りQ&A連載 第3回」も参照)

描きたい、得意だと思っていたジャンルと違う依頼が来たら、他人からはその絵がよく見えているんだとわかります。自分の得意なことは、自然にできすぎて「みんなもできる」と思っているので、案外わかっていないことも多い。そういった意外な長所が見つかる可能性もあるので、仕事は選り好みしないほうがいいと思います。お金と経験値を稼ぐためというのも間違っていません。仕事がたくさん来るようになってからが「仕事が選べる」フェーズです。

例外があるとすれば、将来はクリーンな全年齢向けのジャンルを描きたいのに、今はアダルトの仕事が来るからしぶしぶ描いている場合。これは描かない方がいいと思います。

アダルトのときだけペンネームを変えることもありますが、バレたときに痛いですよね。本当に生活に困っていて、後で言われてもいい覚悟があるなら、それを言い訳に自分を許せるなら、いいと思いますが……。そこはブランディングとして、今からイメージを作っていくのが大事だと思います。


Q.47歳のアラフィフです。絵を描きはじめて4年目で、ようやく人の形を描けるようになりました。さいとう先生をはじめプロの動画を見て独学でやってきましたが、行き詰まっています。50歳までにイラストレーターになりたいと思っていますが、目標を叶えるためにはどう行動したらいいでしょうか? 

A.今の自分の強みを生かそう!


さいとうなおき先生
「イラストレーター」にはどういった需要があるのか、自分はどれに向いているのか? は考えた方がいいでしょう。一つは、すごくうまく描ける人。 キャラクターやモンスター、背景や物の形が「うまく描ける」需要はあると思います。

もう一つは、うまくなくても「気分」をちゃんと表現してくれる人。例えば『ちいかわ』は「~っていうこと?」というノリが絵とマッチして「私もそういうことを言いたかった!」みたいな気持ちをすくい上げてくれます。

もし、謙遜ではなく本当に4年目でギリギリ人の形を描けるようになったのなら「すごくうまい」の需要には向いていないかもしれません。だとすると、今の画力で「自分が日々感じていることを表現する」方向に舵を切ってみるのもいいと思います。

「アラフィフ」自体が強みになるのではないでしょうか。若い人では表現できない、50歳近くになって得られる情緒や、自分にしかない渋みのようなものを染み出していく。50歳にもなると、人生でいろいろ諦めてきたと思うんです。20代の若い人に、諦めの数では負けないじゃないですか。そういうものが絵で表現できたら、強い気がします。

絵はうまさだけで評価されるものではなく、いろいろな形があります。自分だけの強みを生かしていってください。

 オリジナル作品

 

さいとう先生のQ&Aインタビュー、いかがだったでしょうか?

配信では、まだまだ記事に載せきれなかった話題も視聴できます。 音声がメインなので作業や通勤通学のおともにピッタリ。ぜひお楽しみください。

「水着縛り」イラストコンテスト オンライン講評会

SNSで感想を投稿する際はぜひ「#ゲンセキ講評会」 をつけてお寄せください!

さいとう先生が審査員のイラストコンテストや講評配信は、今後も開催予定です。ご参加お待ちしています!

▼縛りイラコン

https://img.genseki.me/compes/compe_1719450292_nwybEbt4GX.png

▼関連記事

さいとう先生の記事一覧

「イラストレーターの活動や仕事について」さいとうなおき先生Q&A連載 第3回
「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」 さいとうなおき先生に聞く【イラストお仕事道】第2回

▼協賛

パソコン工房

https://img.genseki.me/compes/V9qWqq4Wp27/attachments_UadPhnZ3gL.jpg

パソコン工房は、国内工場受注生産のBTO(Build To Order) パソコンや短納期PCの他にも、パソコン自作パーツ、各種周辺機器、組立キット、デジタル雑貨などを販売する全国店舗・WEB通販サイトです。
24時間365日電話サポートと全国店舗展開だから充実したサポートが可能です。

パソコン工房のiiyama PC SENSE∞(センスインフィニティ)シリーズは、動画編集・イラスト制作・写真編集・CG制作・音楽編集など、多種多様なクリエイターニーズにお応えすべく、用途ごとに必要なスペックを検証しております。
クリエイターパソコンをお探しの際は、パソコン工房のSENSE∞シリーズをご覧ください。
今回協賛するパソコンについてもマンガ、イラストレーター向けのパソコンとしては必要十分なスペックを備えています。

CLIP STUDIO PAINT

https://img.genseki.me/images/compes/202209/CLIP%20STUDIO%20TABMATE.jpg

CLIP STUDIO PAINTは、3,500万人以上が利用したイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリです。 タブレット、スマートフォン、パソコンといったあらゆるデバイスに対応し、気持ちの良い描き味と豊富な機能を備えており、世界各国のエントリーユーザーからマンガ家、イラストレーター、アニメーターなどのプロのクリエイターまで幅広く愛用されています。


執筆

kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集

斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI