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「イラストレーターの活動や仕事について」さいとうなおき先生Q&A連載 第3回

 

こんにちは! GENSEKIマガジン編集部です。

以前の記事でさいとうなおき先生審査員の縛りイラコン「リメイク縛り」講評会をレポートしました。

オンライン講評会では、イラコン応募者のみなさんに質問を募り、さいとう先生にお答えいただくQ&Aの時間がありました。この連載はその内容を再構成し、全3回のQ&A連載としてお届けします!

第1回「キャラデザや構図、イラストの描き方」
第2回「配色と参考資料、仕上げについて」
第3回「イラストレーターの活動や仕事について」(この記事)

答えてくれた人
さいとうなおき(X:@_NaokiSaitoYouTube
イラストレーター・ユーチューバー。
1982年生まれ。山形県出身。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。『ポケモンカードイラストレーター』。
YouTubeチャンネル登録者130万人以上を記録。『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。


Q.現在、無名のイラストレーターだったとしたら、どんな活動をはじめますか?

A.ティックトッカーになるかもしれません。

さいとうなおき先生
今はもうイラストレーターが珍しくないので、あえて目指さないかもしれません。僕が大学生のころはまだ珍しく、「イラストレーターです!」と言うと驚いてもらえました。ぎょっとされるのは重要で、最初にそうやって目立つと、活動もだんだん軌道に乗せていけます。

でも今は驚かれないので、たぶん他のことでがんばると思います。ティックトッカーから始めるかな? それから「実は絵もうまい!」なんてやるとよさそうです。最初の立ち位置をイラストレーターにしないと思いますね。


Q.YouTubeやTikTokなど動画の次に来るのは何だと予想しますか?

A.動画はまだしばらく続く。クリエイターは先のことまで考えなくていいかも。


さいとうなおき先生

まだしばらく動画は続くんじゃないかと思います。でも次に来るといえばAIでしょうか。どんな形のAI技術が来るのか今はまだわかりません。意識はしておいた方がいいと感じていますが、正直なところ、今はそこまで考慮に入れていません。

クリエイターがやっているのは大喜利のようなものです。「時代はこうなったけど、君はどうする?」という世界で、先まで見ている余裕はない。クリエイターにとって、先を見ることはそこまで重要ではないかもしれません。

『NAOKICHI WORKS』(ダウンロード版)

Q.無名の状態で、著作権を保有したまま自分の世界観や物語を広めたい場合、どういった活動をすればいいでしょうか?

A.難しいですが、できるとしたら漫画かもしれません。


さいとうなおき先生

これはとても難しい。イラストだけでは僕にはちょっと思いつきません。ただ、ストーリーがおもしろくて、キャラクターが魅力的で、その世界観を広めたいということなら、一番実現できそうなのは漫画やアニメじゃないでしょうか。それもできるだけ有名な媒体で発表することです。

「ジャンプでデビュー」「タテヨミで話題になる」など、すごい新人がいきなり出ることはあります。見いだされて駆け上がる。ただ、そういう人は下積みが長かったりするんですが……。いずれにしろ無名の場合は、有名で強いプラットフォームに依存する形になると思います。

僕が思いつくのはこれぐらいです。俺はできる! という気持ちと、作品に自信があるのなら、実現できるかもしれませんね。


Q.(海外からの質問)日本以外でイラストレーターとして活動している場合、日本の有名なイラストレーターや企業との関係は、どのように作ればいいでしょうか?

A.アピールしておく、他のイラストレーターさんから学ぶ。


さいとうなおき先生

その状況になったことがないのでわかりませんが、僕の場合でお話しすると、YouTubeで翻訳をつけて発信していたら、海外からお声がけいただいたことがあります。なので日本語で発信する、あと単純に「日本の仕事がしたいです」とプロフィールに書いておくのは大事かもしれません。

日本で好まれる絵柄にしてみるのも必要かもしれません。日本で人気のある海外イラストレーターさんは多いので、そういった方達から学ぶといいと思います。


Q.画風は統一すべきでしょうか?メリットはありますか?自分の画風はどうしたら身につくのでしょうか?

A.統一するべきではない。たくさん描いて見つけよう。


さいとうなおき先生

統一すべきかというと、「べき」ではないです。僕が20代のころは統一感がなく、厚塗りもアニメ塗りもいろいろ描いていましたが、楽しかったですね。逆に30代になってからはものすごく統一しようと思って描いていました。それに疲れてもういいや、となったのが今です(笑)。

統一するメリットは「この絵の人だ」と思ってもらいやすいことです。

画風については、やっぱりたくさん描くことです。自分の画風というのは、身につけるものではなく「見つかる」ものなので、描いて見つけていくしかないと思います。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/f/fushigishiatsu/20230725/20230725213549.jpgGENSEKI展示会 販売予定作品
『【邪姫】オメガ・デスワーム【OBAKE Proj】』


Q.どうしたら企業のキャラクターデザイナーになれますか?

A.やりたいことを大事にしながらチャンスを狙う。


さいとうなおき先生

一番早いのはSNSでキャラ絵をアップして「キャラクターイラストが得意な人」だと注目されること。そのために、キャラ絵をたくさん描いて能力を上げるのも近道です。

でもきっと、すぐにそれをやるのが難しいから悩んでいて、「他にどういうルートがあるか」知りたいのですよね? 僕は今まさに企業のキャラデザのお仕事ができているので、僕のルートをお話しします。

まず僕は「キャラクターを作っている会社に就職すれば、自分がデザインできるかも」と考えていました。でも、実際に入ってみたら、できませんでした。これは落とし穴でしたね(笑)。

そこで会社を辞めて、フリーランスになりました。それでもキャラの仕事が全然来ないので、なんでもいいから一歩進めようと、モンスターイラストの仕事をいただいて描いていました。

それを続けていると、当時はソシャゲバブルの時期だったので、たまにキャラのご依頼もいただけることがあったんです。当時の僕の実績ではそこまでいいキャラを期待されていなかったでしょうが、修行のチャンスだ!と思ってがんばって、だんだんキャラが描けるようになりました。そこから徐々にキャラの仕事が増えていって……今に至ります。

キャラクターデザインというのは花形で、相当な理由がない限り新人に任せることはないので、チャンスは少ないです。

なので自分ができることを大事にしつつ、やりたいことになるべく関われそうな位置にいて、チャンスがあったら掴める用意をしておく。そのスタンスを崩さない。そんな感じだと思います。みんなが同じルートではないと思いますが、僕の場合はそうやって理想に近づいていきました。


Q.得意なリアル系の男性イラストで仕事をしたいのですが、SNSで注目されにくいジャンルです。かといって、かわいい女の子を描いて知名度を上げると、その絵柄の仕事しか来ないのでは、と悩んでいます。
目指す絵を描くか、万人受けする絵を描くか、どうしたらいいでしょうか?

A.一歩進むために、まずは何でもやってみよう。


さいとうなおき先生

昔の僕と似ている悩みです。先ほどの話のように、僕もキャラを描きたかったのに、モンスターを描いていたら「君は気持ち悪いモンスターが得意だね」と、次々依頼が来てしまいました。最初からキャラクターのお仕事に一直線ではなく、紆余曲折あり曲がりくねった人生を歩んできました。

得意な絵柄でもまだお仕事をしたことがない段階なら、まず何か仕事を受注するところまで進めてみるのはどうでしょうか? 女の子の絵を描くことで仕事が来るなら、それでもいい。モンスターや、背景でもいい。次の一歩を進めるために、まずは何でもやってみましょう。

僕はモンスターが得意と思っていませんでしたが、描いてみたら仕事になりました。そこで得たものもありましたし、キャライラストに活かせる部分もあった。巡り巡って認められ、次の仕事に繋がって、最終的にキャラデザのイラストが描けるようになりました。

自分の得意な分野は意外と自分でも認識しづらいものです。何でもチャレンジしてみるというのは、大切なことだと思いますよ。



さいとうなおき先生のQ&Aインタビュー、いかがだったでしょうか? お話が聞ける記事はまだまだマガジンにたくさんありますので、ぜひご覧ください。

さいとうなおき先生審査員のイラストコンテストや講評配信は、今後も開催予定です。ご参加お待ちしています!

 

第1回「キャラデザや構図、イラストの描き方」
第2回「配色と参考資料、仕上げについて」
第3回「イラストレーターの活動や仕事について」(この記事)


▼開催中の縛りイラコン

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執筆kao(X:@kaosketchWebGENSEKI

編集斎藤充博(X:@3216WebGENSEKI