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「イラストの人気ジャンルって?」 さいとうなおき先生に聞く【イラストお仕事道】第5回

 

「イラストを仕事にしたいけど、どうしたらいいかわからない……」そんな悩みを持っている人はいませんか。

この連載では、大人気イラストレーターのさいとうなおき先生に「イラストを仕事にするための質問」に答えていただきました。

今回のテーマはイラストのお仕事の人気ジャンルって?です。第一線で活躍するプロの知見、ぜひ参考にしてください!

 

第1回 イラストを仕事にしたい人が「用意すべきモノ」
第2回「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」
第3回「イラストで初めて仕事をもらったときにどうすればいいか」
第4回「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」
第5回「イラストの人気ジャンルって?」(この記事)
第6回「イラスト全般についての疑問解消Q&A」

 

答えてくれた人

さいとうなおきTwitterYouTube
イラストレーター/YouTuber。1982年生まれ、山形県出身。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。『ポケモンカードイラストレーター』。
YouTubeチャンネル登録者130万人以上を記録。『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。


Q.イラストのお仕事の人気ジャンルってなんですか?

A.最近人気なのは、「ゲーム系」「カード系」「漫画系」。それぞれ求められるスキルが異なる。

 

ーーイラストのお仕事って挿し絵を描くだけじゃなくてもっとたくさんありますよね。イラストのスキルを生かした、最近人気のお仕事ジャンルってどういうものがありますか?

 

さいとう先生
私の知っている範囲でお答えしますが、最近人気なのは「ゲーム系」「カード系」「漫画系」です。求められるスキルも含めてそれぞれ順に説明しますね。

 

  • 「ゲーム系」

さいとう先生
まずは「ゲーム系」です。いわゆるソシャゲや、コンシューマーゲームのデザイン制作ですね。イラストのスキルはもちろんですが、背景が描けることと3Dモデリングの技術が必要になってきます。

3Dモデリング用に三面図が描けて、全体的な世界観を整えるために絵柄合わせもできなければいけないので、ややハードルは高いかもしれません。

あとゲーム作りの現場はだいたいチームプレーなので、作業が早くて周囲とのコミュニケーションがしっかり取れることも求められます。

 

  • 「カード系」

さいとう先生
次はいわゆるトレーディングカードの絵を描く「カード系」です。決められたフォーマットに従って絵柄をまとめる必要があるので、構図力構成力が重要になってきます。

「フレームからはみ出さないように」「フレーバーテキストが載るので要調整」などけっこう縛りが多いので、その特殊仕様にあわせていかに見栄えをよくできるかが問われてきます。

カードはゲームとは違って紙の印刷なので、CMYKで作業する必要があります。出力環境への理解も大切です。

 

  • 「漫画系」

さいとう先生
3つ目は「漫画系」です。商業や同人など問わず漫画全般ですね。既に原作があるもののコミカライズや、自費出版のオリジナルの漫画などさまざまです。

漫画はある意味「漫画を描く能力」というような、総合的な能力が求められます。企画力から構成力、そしてコンスタントに作品を出す生産力や、アシスタントがいるならマネジメント力など、もうほぼ全部の能力が必要です。他人におもしろさを理解させるための伝達力も重要になります。

 

Q.「ゲーム系」「カード系」「漫画系」それぞれ向いている人は?

A.「ゲーム系」、「カード系」は自己表現よりも人を喜ばせることに快感を感じる人、「漫画系」は明確に表現したいことがあり、全部自分でやりたい人。

 

ーー「ゲーム系」、「カード系」、「漫画系」それぞれ伺いましたが、どういう人が向いているかを教えてください。

 

さいとう先生
「ゲーム系」、「カード系」は基本的に企業から発注される仕事なので、先方が求める要件を満たした成果物を納品する必要があります。

そういう意味で言うと、イラストを通して自己表現したい人ではなく、何かをクリエイトすることに喜びを感じる人が向いていると思います。

僕もそうなんですけど、自分の思っていることを表現して誰かにわかってもらいたいというよりも、自分が作ったもので誰かを喜ばせることに快感を感じる人ですね。

この2つの中では「ゲーム系」は基本的に大人数でのチームプレーでです。「カード系」は個人制作することになります。その点は好みが分かれるかもしれません。

 

ーー「漫画系」はどうでしょう?

 

さいとう先生
明確に表現したいことがある人ですかね。あとは企画から制作まで全部自分でやりたい人でしょうか。

漫画のいいところは、ひとりで作品作りを完結させられることです。自分の想いを貫けるといいますか。そこに魅力を感じるなら、漫画を仕事にするのはひとつの手段だと思います。

ただ、漫画には他にも、芸能人や企業の歴史などを漫画化するコミカライズのお仕事もあります。表現したいことが明確でなくとも、絵が上手くて発注要件に対してコンスタントに返せる生産力のある方は、こうした仕事も向いていそうです。

 

Q.「ゲーム系」「カード系」「漫画系」。何がきっかけで声がかかる?

A.やはりSNS。自分の興味のあるジャンルの投稿をするほか、どのようなスキルがある人なのかがわかると発注者も声をかけやすい。

 

ーー先ほど伺った「ゲーム系」「カード系」「漫画系」の人気ジャンルですが、そうした案件は何がきっかけで声がかかるのでしょう。

 

さいとう先生
やはりSNSですね。例えば「ゲーム系」がやりたいのなら、ゲーム関連のイラストを投稿して多くの人の目に触れるようにしたほうがいいですし、やりたいジャンルのイラストや熱量を伝える投稿などを積極的にしておいたほうがいいと思います。

加えて、3Dモデリングなど、その人が持っているスキルがわかると、特有の技術が必要なジャンルにもハマりやすいです。

僕は「ポケモンカードゲーム」(ポケカ)のイラストのお仕事をしていますが、ポケカ含めてトレーディングカードは今世間的にすごく人気が高まっているなと実感があります。その世間の注目もあってか、肌感ですがどんどん新規のイラストレーターさんにも声がかかっているようですね。

ちなみに漫画は出版社への持ち込みのほか、SNSの人気具合、Kindleの売れ行きなどを指標にして声をかけることも多いみたいです。いずれにせよ、積極的な自己発信が大切だと思います。

 

ーーやっぱりやりたいジャンルをどんどんSNSでアピールすることが大事ですね。

 

さいとう先生
結局はそこに尽きると思います。いくら自分がやりたいと思っていても、発信して誰かに伝わらないとお仕事にはならないためです。常日頃から自分のやりたいことを形にしていくことで、その積み重ねがどこかで実を結ぶかもしれません。

 

第1回 イラストを仕事にしたい人が「用意すべきモノ」
第2回「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」
第3回「イラストで初めて仕事をもらったときにどうすればいいか」
第4回「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」
第5回「イラストの人気ジャンルって?」(この記事)
第6回「イラスト全般についての疑問解消Q&A」

 


執筆
神田匠(Twitter:@gogonocoda

イラスト
きびのあやとら(Twitter:@kibinoayatra

編集
斎藤充博(Twitter:@3216