「イラストを仕事にしたいけど、どうしたらいいかわからない……」そんな悩みを持っている人はいませんか。
この連載では、大人気イラストレーターのさいとうなおき先生に「イラストを仕事にするための質問」に答えていただきました。
今回のテーマは「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」です。第一線で活躍するプロの知見、ぜひ参考にしてください!
第1回 イラストを仕事にしたい人が「用意すべきモノ」
第2回「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」
第3回「イラストで初めて仕事をもらったときにどうすればいいか」
第4回「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」(この記事)
第5回「イラストの人気ジャンルって?」
第6回「イラスト全般についての疑問解消Q&A」
答えてくれた人
さいとうなおき(Twitter・YouTube)
イラストレーター/YouTuber。1982年生まれ、山形県出身。多摩美術大学卒業後、ゲーム会社を経て現在フリーランス。『ポケモンカードイラストレーター』。
YouTubeチャンネル登録者130万人以上を記録。『お絵描き上達テクニック』などの情報も発信中。
Q.イラストの金額ってどう決めたらいい?
A.自分が1ヶ月にいくら必要かを考えて、そこから逆算してみよう。
ーーイラストの金額って、最初はどのように決めたらいいんでしょう?
さいとう先生
イラストで生計を立てていくことを考えてみましょう。一般的に考えると、普通に生活を送るのには1ヶ月に20万円くらいはあったほうがいいですよね。
例えば20万円を30日で割ると……6666円。ここでは計算しやすいように1日約7,000円程度としましょうか。1日で終わるイラストなら7,000円以上。2日かかるイラストなら14,000円以上。まずは、こんなふうに考えてみるのはどうでしょうか。
ーー最初から工数換算で考えていくと、最初の頃は選べる仕事が少なくなる気もします。
さいとう先生
そうなんですよね。最初は経験としてある程度は金額を妥協することも必要でしょう。その場合、どこかのタイミングで金額を上げていく必要があります。
Q.金額を上げてもらうにはクライアントになんと伝えたらいい?
A.工数の負担や、相場感を正直に伝えて交渉しよう。
ーークライアントに金額を上げてもらうにはどうしたらいいでしょうか?
さいとう先生
やみくもに「安いから金額上げてください」ではクライアントの会社の中で稟議が通るはずもないので、きちんと理由を説明して交渉しましょう。
例えば「この作業はこれくらいの日数がかかるので1日あたり◯万円増やしてください」みたいな形ではどうでしょうか。そうするとクライアントも納得できるので、交渉を飲んでもらいやすくなるでしょう。
このように、納得できる理由があれば、クライアントも交渉をにべもなく断ることはないと思います。それに、きちんと正当な対価をもらってお仕事をするのであれば、相手に過度な遠慮はしなくても大丈夫です。
切り出し方としては、工数で相談する方法や「同ジャンルの別案件では◯円だったので」と業界の相場感を理由に交渉する方法があります。
あとは拡散力を担保にして、SNSのフォロワー数で相談する方法もあります。ただ、これはPVなどを保証できない場合もあるので良し悪しはありまね。
Q.リテイクの工数ってどう考えたらいい?
A.イラストの金額に含めておくのが原則。
ーーイラストを納品するとクライアントから修正の要求(リテイク)をもらうことがありますが、そのあたりの工数や負担って、駆け出しのときはどう考えたらいいのでしょう。
さいとう先生
原則的に、最初に自分が見積もっていた金額に含めるしかないと思います。そもそも、リテイクはお互いが方向性をすり合わせたうえでの微調整です。最初に打ち合わせで要件を確認しておけば、不幸なリテイクの応酬は少なくなるはず。
そのうえでリテイクが多数発生するようなら、先方のこだわりが強いか、または自分が相手の求めるものをビジュアル化できていないということなので注意してみましょう。
ただし、あまりにも大量なリテイクを避けるためには、受注前に「リテイクは◯回まで」「それを超えたら◯円の追加料金をいただく」と条件に盛り込んでおく方法もあります。
Q.収入を増やすためにはどう立ち回ったらいい?
A.第1段階で依頼を増やして、第2段階で単価を上げて依頼を絞るのが定石。
ーーイラストレーターとしての収入を増やしていくには、どうしたらいいんでしょうか。
さいとう先生
イラストの仕事で急に大口が決まって収入が増加するのはまれなので、基本的には仕事の数をこなすことが大事です。
その次のステップとして、単価を上げて仕事を絞っていくというのが一番の流れなのではないでしょうか。
ーーやはりSNSでバズったほうが仕事が増えるものなんですかね……?
さいとう先生
露出が増えるとその分多くの人に絵を見てもらえるので、仕事依頼が増える可能性は高いです。実績にもなりますし、バズるに越したことはないです。
でも、一寸先は闇なので方向性は気をつけたほうがいいですね。バズだけを目的として、突飛なことはしないことをおすすめします。
Twitter(現:X)でバズっているものは、多くの人に需要があるということ。なので、何がウケているかを知るための市場調査として、自分の作品づくりに生かすのはひとつの手です。
人気のイラストレーターがどういうイラストを描いているかを見て、自分だったらどうするだろうと考えてみると、より多くの人に刺さりやすいエッセンスを盛り込めると思います。もちろん盗作や剽窃は絶対NGです!
SNSで投稿したイラストも実績になるので、サイトにポートフォリオをアップして自分の作品を見やすくまとめておくと、依頼者側からするとありがたいはず。
あわせて連絡先の問い合わせフォームやメールアドレスも準備しておくといいでしょう。あとはわかりやすく「仕事募集中」とアピールすることですかね。
Q.自分に合った案件ってどう見つけたらいい?
A.自分の興味のある分野のイラストをしつこく描くこと。そうするとそのジャンルのクライアントが目に留めてくれて依頼が来る確率が上がるはず。
ーー自分が興味のある分野の仕事をしたいんだけど、生活するにはそうじゃない仕事も大事ですよね。どのようにしたら自分の興味のある案件に巡り合えるのでしょう。
さいとう先生
僕は駆け出しの頃は何でも受けたいと思って幅広くイラストを描いていろんなお仕事をしていました。しかし、それだと自分の好ましい案件は来にくいです。今思えば、自分が興味のある分野のイラストをしつこく描くのが重要だと思いますね。
仕事のバランスも大切です。市場調査をして需要が高いものを描く”マーケットイン”のほうが仕事にはつながりますが、それが自分のやりたくないことだと、心はすさんでいきます。
だから、7割は”マーケットイン”で収入を得つつ、残り3割は自分の好きなものや強みを押し出した”プロダクトアウト”で「本当はこういう絵を描きたいんです!」とアピールしておくとそっち方面のお仕事ももらいやすくなるはずです。
第1回 イラストを仕事にしたい人が「用意すべきモノ」
第2回「イラストレーターはどうやって営業すればいい?」
第3回「イラストで初めて仕事をもらったときにどうすればいいか」
第4回「イラストで収入を増やすにはどうしたらいいか」(この記事)
第5回「イラストの人気ジャンルって?」
第6回「イラスト全般についての疑問解消Q&A」
執筆
神田匠(Twitter:@gogonocoda)
イラスト
きびのあやとら(Twitter:@kibinoayatra)
編集
斎藤充博(Twitter:@3216)